エンドリケリーとは、ポリプテルス目ポリプテルス科の淡水魚である。エンドリと略されることもある。
概要
エンドリケリー | |
目 | ポリプテルス目 |
科 | ポリプテルス科 |
学名 | Polypterus endlicheri endlicheri |
英名 | Saddled bichir |
学名のPolypterus endlicheri endlicheriをローマ字読みした「ポリプテルス・エンドリケリー・エンドリケリー」から、日本ではエンドリケリーの通称で親しまれている。
現生するほかのポリプテルス属同様、アフリカ大陸のみに分布しており、白ナイル、チャド湖、ニジェール水系での生息が確認されている。
下顎が上顎より長く、しゃくれている、いわゆる「下顎突出タイプ」。同じく下顎突出タイプには、ビキール・ビキール、ビキール・ラプラディ、近縁種のコンギクス(むかしビチャーと呼ばれていた種)などが存在する。
ポリステルスの名がラテン語で「たくさんの(Poly)ヒレ(pterus)」からきている通り、エンドリもまた小離鰭(しょうりき)と呼ばれる複数の独立した背ビレを有し、本数は11~14本。ごくまれに15本の個体もいる。背ビレ15本のエンドリを飼っている人は自慢してもいいかもしれない。ステゴサウルスみたいでかっこいいよね。
扁平な顔つき、レンガのような深みのある体色を背景に走る黒い稲妻とでもいうべきバンド模様、成熟した個体の盛り上がるような肩などなど、本種に人生を狂わされた魅了されたアクアリストは数知れない。アフリカの過酷な環境を生き抜いてきただけあって非常に頑健で、水質にもうるさくなく、飼育は簡単。下手すれば夜店の金魚にひと夏越えさせるより容易である。
バンド模様、ならびに体色は個体により千差万別で、同じ形質の個体はふたつと存在しない。また、ポリプテルスに共通する性質であるが、ポリプテルスどうしならまったくといってよいほど喧嘩をしないので、一本の水槽に複数の個体を混泳させられることも大きな特徴だろう。それこそ底がポリプテルスで見えなくなる「ポリプ絨毯」だって可能だ。成魚のポリプがいる水槽に一口で食べられるようなサイズの幼魚を入れても平和に同居してくれる(ただしたまたま成魚が口を開けているときに幼魚がスッと入り込んだとかいうような場合はそのまま胃袋送りになってしまうので、混泳は自己責任で)。
飼いやすく、個体差が激しく、喧嘩しないことからコレクション性が高く、本種のみ何十頭も飼育している愛好家さえいるほど。写真を見せただけで「これは87年にニジェール便で入ってきた個体だね」と言い当てるマニアまでいたりするぞ。
また、これもエンドリに限らずポリプ全般に共通することだが、エンドリをじっくり観察するとじつに面白いしぐさをみせてくれる。胸ビレで背中を掻いたり、大あくびをしたり、ウィンク(?)をしたり、ふと思い出したように水面に上がって空気呼吸したり・・・。魚類なのに意外と表情豊かであることに気づかされるだろう。ポリプのあくびが感染るようになったら一人前である。
エンドリを飼いたい!
どんな個体が「いい個体」?
エンドリは体色もバンド模様も個体によりまるで違う。慣れると顔にさえ違いがあることがわかってくる。ではどんなエンドリがいいエンドリなのだろう? なにか基準があるのかしらん?
答えは簡単。あなたが気に入ったエンドリが最高のエンドリである。
ニジェール産がいいとか、チャド湖産がいいとかいったって、飼う本人が気に入らなければなんの意味もない。名前や他人の基準に惑わされることなく、実際にショップに足を運んで、水槽を覗いて、これと思うエンドリを持って帰ればいいのである。
なお、ハマるとショップに行くたび「最高のエンドリ」にめぐり合うようになって、お家のエンドリたちがどんどん増えていくことになるのはご愛嬌。
水槽に、フィルターに、底砂に・・・
まずは水槽を用意しよう。最初から巨大な個体を買ってくるならともかく、幼魚からであるなら60cmレギュラーでいい。
食欲旺盛で水をよく汚すのでフィルターは必須。上部式でも外部式でもかまわないが、とにかくろ過能力が高いものを選ぶ。外部式の場合はワンランク上のものをチョイスするべき。ふたつ以上のフィルターを併用する手もある。底面式はエンドリが底砂をかきまわしてしまうので適していない。
ろ材はオーソドックスなもの、使い慣れたものでかまわない。リング状ろ材はメンテナンス間隔が長いが表面積が粒状よりは大きくなく、粒状の性質はおおむねその逆となる。多数のポリプを飼う場合、水質が極端に酸性化してしまうことがあるので、フィルターにサンゴ砂を混ぜておくという選択肢もある。
コンセントの数が許すならエアレーションをおすすめする。ポリプは空気呼吸も可能なので水中の溶存酸素量が少なくなっても生命に支障ないが、ろ過バクテリアには大量の酸素が必要だ。溶存酸素が豊富な環境は、活発化したろ過バクテリアの働きで水質が浄化され、健康なエンドリを育んでくれるだろう。
底砂はあったほうがいい。魚類は周囲の環境に応じて体色をある程度変化させることができる。エンドリも例外ではない。底砂のない水槽という明るい環境だとエンドリの体色が白く飛んでしまうのだ。エンドリ特有の深い色合いがよければ、ガーネットサンドのような暗赤色の砂や、真っ黒な砂を敷くといい。底砂があると水質も安定する。
底砂は低層で一日の大半を過ごすエンドリの足場にもなる。底砂がないと、たとえばエンドリの一頭が空気呼吸しに水面へ上がって、下りてきたときにツルツル滑って、じっとしている群れに突っ込んでしまってみんなが大パニック、ということもある。敷いてあげたほうがポリプも安心するだろう。厚く敷くと水質悪化のもととなるので底面のガラス面が隠れる程度がベスト。
蛍光灯は、通常の昼白色に加え、フィッシュルクスのような赤い光を照射するものをカクテルすると、よりエンドリの美しさが際立つ。
余談だが、周囲の環境に体色を合わせるという性質から、目が潰れたエンドリは美しくなるという都市伝説めいた話がある。盲目になると視覚は真っ暗なので体色も暗くなるということらしい。だからといってわざとエンドリの目を潰すなどという行為は虐待以外でもなんでもない。くれぐれも試したりしないように。
エサはバランスよく
エサは金魚、ドジョウ、ジャイアントミールワームなどの生き餌から、クリルやペレット状の人工飼料、冷凍フナや冷凍キビナゴといった冷凍飼料を解凍したものを、幼魚では毎日、成魚なら1日おきに与える。おやつとして牛ハツやピンクマウスも喜ばれるだろう。とくに人工飼料は栄養価が高く、なにより調達も保存も給餌も楽なので、ぜひとも餌付けさせたいところ。さいわいにもポリプは人工飼料にも容易に慣れてくれる。ただし幼魚に人工飼料ばかり与えていると突然死するという意見もある。複数のエサをバランスよくローテーションするとよい。人間だって毎日カロリーメイトばっかりじゃイヤんなるでしょ?
ポリプ以外に同居させている魚がいるなら、すべての魚にエサを行き渡らせる工夫が必要になる。ガーパイクやアロワナには浮上性のものを、ポリプには沈下性のエサを与えるようにすれば食いっぱぐれることもない。逆にいえば、生息圏が重なるナマズや、浮上性だろうが沈下性だろうがすばやく貪欲に食べつくしてしまうシクリッド類は、混泳させる相手としてはあまり向いていない。同居させるなら時間差をつけて与えるといった方法で、ちゃんとみんながエサを食べられているか観察してあげたい。見てあげられるのはあなただけなのである。
エンドリをでっかく育てたい!
図鑑や雑誌などでは、エンドリの全長は70cmとしているものが多い。事実、自然下では70cm以上の個体が採集されることもある。
書籍に書かれてあるならたいていの人はエンドリはいかなる環境でも70cmに育つと思い込む。当然であろう。いくら細長い体型の魚とはいえ、そんなに大きくなるなら相応に巨大な水槽が必要になるから、エンドリを飼いたいけど飼えない・・・そう思う人もいるかもしれない。
では、逆に訊きたい。
「飼育下で70cmにまで育ったエンドリを見たことがありますか?」
エンドリはじつは大きく育てることがかなり難しい魚である。これがアリゲーターガーやピラルクーなら水槽のサイズなどお構いなしにすくすく巨大化するのだが、エンドリは飼育者の住宅事情というか水槽に自らの成長を合わせるので、小さな水槽では決して大きくならない。
たとえば筆者のところでは、20cmほどの若魚を2頭購入し、60cmレギュラーで2年ほど飼育したあと、念願かなって導入した90cmレギュラーに移し、早13年になるが、いまだに2頭とも購入時よりまったく成長していない。
大型の水槽が置けない人にはありがたい話だが、大きく育てたい愛好家には難題である。どうせ飼うならでっかく育てようぜ!
というわけで、ここではエンドリをできるだけ大きく成長させる方法についてよく知られている事柄を述べる。
購入する個体
入荷されて間もない幼魚、または稚魚が望ましい。エンドリはいったん成長を止められると二度と成長が再開されない魚である。ショップは基本的にエサを大量に毎日与えることはしないので、どうしても成長が制限されてしまう。よって長期ストックされた個体を大きく育てることは難しい。
人間に背の高い者と低い者がいるように、同じ環境で育てても成長にばらつきがでることがある。こればかりは飼育者側にはどうしようもない。動物は持って生まれた素質の100%以上は発揮できないのだ。大きくなる個体もいればそうでない個体もいる。それを幼魚の段階から見極めるのは不可能に近い。よって複数の個体をまとめ買いするのがもっとも単純かつ効果的な方法となる。これには別の理由もある。詳しくは後述する。
水槽
エンドリは水槽の奥行き以上には大きくならない。できるだけ大きくしたいなら最終的には150cm×75cmクラスの水槽が必要になる。ちなみに高さも75cmだとその水量は800リットルを超える。一般的な家庭の浴槽がだいたい200リットル程度なので、水だけで湯船4据え以上もの重さになる計算だ。これに水槽そのものの重量に砂にフィルターも加わる。とくに、これほどの大きさの水槽だとフィルターはおおかたオーバーフローになるだろうが、オーバーフローは水槽をもう1本置くようなものなのでまたまた重さがかさむ。
設置場所はなるべく1階か地下室にして、床は補強し、地震対策も施しておくことを強くおすすめする。
ただし、最初から大型水槽で飼うと、幼魚には広すぎて逆に摂餌効率が落ちてしまう。最初は60cmレギュラーで、少し育ったら90cmへと、適時ステップアップしていくほうがいいだろう。エンドリが「狭い」と感じたら成長にストップがかかる可能性がある。引越しのタイミングには細心の注意を要する。
水温
代謝を高めるために、28~30度に設定しておく。電気代は気合でカバー。
エサ
金魚漬けとは何ぞや?
金魚漬けとは、エンドリのいる水槽に、エンドリが見えなくなるほどの大量のエサ用金魚をぶちこむことである。エンドリの水槽に金魚を入れるというより、金魚のストック水槽にエンドリが紛れ込んでいるといったほうが正しいくらいがいい。これだとエンドリが好きなときにエサを食べられるので、エサ切れで成長が止まるということはない。金魚が減ってきたら補充しよう。口を開けたら金魚が入ってくる状況が理想である。
難点は、エンドリ飼ってるのか金魚飼ってるのかわからなくなるときがあることだが、将来の勇姿のためにここは我慢しよう。たまに金魚の群れの隙間からいつのまにかやや大きくなっているエンドリが垣間見えたりするのもまあまあ乙な楽しみかたである。
換水
水が古くなると代謝が落ちる。代謝が落ちると食欲が減退する。食べる量が減ると成長にも支障をきたす。
金魚漬けにしていると水の汚れかたは半端なものではないので、換水は頻繁に。
エンドリは単独で飼うよりも複数を同居させたほうがエサの食いがよくなる傾向にある。競争心が働くのだろう。そんなわけで大きく育てるためには同じ水槽で複数を飼うのがよい。まとめ買いを勧めたのはこれが理由でもある。で、そうするとさらに水が汚れる。水槽のサイズ、エサ、水換えこそが、エンドリの成長の鍵である。
虐待じゃないの?
人間でいえばわが子を小学6年生になるまでに身長180cmにしたいというのに近い印象があるためか、エンドリを大型化させるというと白い目で見てくる人もいないではない。
しかし、自然下では実際に70cmという大きさに育っているのだし、ましてガチョウやアヒルの肝臓を肥大させるみたいに無理やりエサを胃に詰め込んでいるわけでもない。あくまでエンドリの持っているポテンシャルを飼育下で引き出しているだけで、生体に負担がかかってはいない。
たしかに、ベルツノガエルをパワーフィーディング(大量に給餌して急速成長させること)で一気に巨大化させると多くの場合で短命に終わるが、大きく育てたエンドリが突然死したという話は寡聞にして聞かない。むしろ幼魚期にじゅうぶんなエサが与えられないと成長不良をおこし、特徴的な背ビレがいびつに曲がってしまったりするといった弊害のほうが多い。
でっかく育てるのは虐待ではない。むしろ正しい育て方のひとつとさえ断言できるだろう。
ポリプテルス属のほかの記載種
下顎突出タイプ
- ビキール・ビキール:最初に発見されたポリプテルスにして、最大最強のポリプテルス。背ビレ数は最多の14~18本。19本という記録も。
- ビキール・ラプラディ:背ビレ数は13~15本。
- コンギクス:長らく本種の亜種とされてきたが、近年は独立した種として扱う傾向が強いようだ。背ビレ数は12~15本。
- アンソルギー:背ビレ数は13~15本。
非下顎突出タイプ
- セネガルス・セネガルス:背ビレ数は8~11本。
- セネガルス・メリディオナリス:背ビレ数は8~10本。
- デルヘジィ:背ビレ数は10~12本。
- オルナティピンニス:背ビレ数は9~11本。
- パルマス・パルマス:背ビレ数は7~9本。
- パルマス・ブュティコファリー:背ビレ数は7~10本。
- モケーレムベムベ:背ビレ数は6~8本。
- レトロピンニス:背ビレ数は7~9本。
- ウィークシー:背ビレ数は8~11本。
関連動画
ニコニコ動画では「PO・エンドリケリー・エンドリケリー」というタグを付けられている事が多い。
関連商品
関連項目
- 熱帯魚
- 古代魚
- アクアリウム
- シーラカンス - 生きた化石仲間
- ガーパイク ‐ ポリプテルスと同じくガノイン鱗をもつ
- アミア・カルヴァ ‐ ポリプテルスと同じく鼻管をもつ
- 肺魚 ‐ 空気呼吸をする共通点がある
- 溺れる魚の一覧
- 動物の一覧
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