マセラティ(Maserati)とは、イタリアの高級スポーツカーメーカーである。
概要
マセラティは1914年にマセラティ兄弟の三男・アルフィエーリによって開設された。戦前はレーシングカー専門のメーカーであったが、戦後は会社の株式を取得したアドルフ・オルシにより乗用車の製造・販売が始まる。しばらくはレーシングカーの開発も継続していたが、1957年の「3500GT」を皮切りに本格的な高級スポーツカー中心のメーカーへと転換。1963年には4ドアの「クアトロポルテ(伊語で4ドア)」を製造した。これは当時最速のセダンと呼ばれており、今日では当たり前となった「高性能でスポーティーな高級セダン」の走りと言えるだろう。しかし経営は常に不安定であり、紆余曲折を経ることになる。
1960年代には、世界を代表する変態企業のシトロエンと提携。フランスの変態紳士と性欲旺盛なイタリアマダムのコラボが上手く行くとも思えないが、意欲的なモデルを発表した。その一つがシトロエン・SMである。DS譲りのハイドロニューマチックとマセラティのエンジンを搭載した2ドアクーペで、流麗な姿は今見ても新鮮なもの。駄菓子菓子、やはり変態は変態である。油圧を用いてセンタリングを強制的に出す操舵系は、ちょっとハンドルを切っただけで物凄い旋回角がつき、恒例となったお漏らしプレイもある。雑誌などのメディアで国内オーナーの話を読むと、一年の殆どは調子が悪いものの、時々ある絶好調の日のよさが忘れられず維持していると言う。完全なシトロ菌キャリアであり、灰泥沼に嵌っている。
一方のマセラティ側では、新型のクアトロポルテの開発を行っていた。所謂、クアトロポルテⅡである。これはシトロエン・SMがベースとなっている。共同開発のコアの部分を共有し、ブランド毎に車を作ると言う手法自体は合理的であるが、如何せん変態×ヘタリア。オイルショックという世情に翻弄されたこともあるが殆ど売れず、わずか13台の製造で終了している。 というかそれ、作ってないのと同じじゃないの。陸自のAH-64か。SMも商業的に成功とは言いがたいが、マセラティは明らかな失敗。辛い、辛すぎる。
両者とも「やっぱり私たちのマッチングはダメだよね」と気付いたのか、提携を解消。1970年代には同じイタリアのスポーツカーメーカー、デ・トマソ傘下に。ここでマセラティ史上、良くも悪くも重大な試みが行われた。1981年、「ビトゥルボ(ツインターボ)」シリーズが発売されたのだ。これはそれまでのものと比べて小型で安価な商品で、クーペや4ドアがあった。名門が求めやすい価格の商品を販売したことで、顧客を広げることに成功。ここまで見れば良いことのように思える。
しかし篠原重工のHOSがそうであったように、チャンスはピンチにもなりうる。元々少量生産の高級車メーカーであるので、生産体制はそれにあわせたものであり、他の日欧米企業のような大量生産をやる組織になっていなかった。そうであるにもかかわらず、ビトゥルボでBMWを向こうに回すが如き生産を行おうとしたために、明らかにキャパオーバーとなる。そのしわ寄せは全て品質にくることになり、品質は不安定であった。こうして、すぐぶっ壊れるマセラティの汚名を被ることになったのだ。キャパの把握は大事だよね。
そのデ・トマソもお亡くなりになってしまったので、1993年にはイタリアの大手大衆車メーカーであるフィアットの傘下に入る。これ以後マセラティの品質向上が行われる。1997年にマセラティは同じフィアット傘下のフェラーリの管理下に置かれ、更なる品質向上が行われた。現在は高級セダンのクアトロポルテ、ベースを同じくするグランツーリスモ、そのオープンカーであるグランカブリオを製造し、高級車史上で確固たる地位を築いている。生産はフェラーリ社の本社工場で行われている。
元々が少量生産のメーカーであるのだが、フィアット傘下後に大規模な生産ラインの改修が行われ、現在では年産3万6000台規模、将来的には7万台超程度にまで増やすとのこと[1]。
トライデント
マセラティのCIは、海神ネプチューンの三叉矛(トライデント)である。理由はマセラティ兄弟が会社を興した地であるボローニャでは、ネプチューンをシンボルにしていた為、らしい。類似例に、シュトゥットガルト市の紋章を取り入れたポルシェがある。
現行モデル
カタカナ表記
外国語のカタカナ表記をどうするかで悩むのが、日本人のいいところ。マセラティも例外ではない。
- マセラティ
- マゼラーティ
日本における輸入販売
日本での正規輸入・販売は2010年までコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドで行われていたが、同年に設立され2011年より業務開始のマセラティジャパン株式会社に輸入権が移り、それに伴いコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドは日本総代理店から正規代理店へと移行した。
日本市場ではここで10年ほど500台/年程度の販売台数で推移していたが、2014年に1407台、2015年に1449台と、以前の3倍程度にまで大きくなっている。「どこにそんな金があるんだ」とか思ってはいけない。あるところにはあるものなのだ。
関連動画
外部リンク
関連項目
脚注
- *新車試乗記 第794回 マセラティ ギブリ ディーゼル
- *乗用車の他、輸送機械や農機、船舶用などに向けた産業用ディーゼルエンジンも手がけている。乗用車用ディーゼルエンジンはイタリア各メーカーの他、クライスラーのジープやダッジ、ヒュンダイグループなどに供給している。親会社はフィアット社。イタリアは何も持っていないが、フィアットはイタリアを持っている。
- *公道を走る自動車全体で見れば、農業用トラクターは最高で500馬力程度、トラックは最高で700馬力超、戦車は1000馬力を超えている。
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