トラクターとは大型自動車及び特殊自動車のひとつ。何かを牽引することで作業を行う機械。
概要
トレーラー(被けん引車)の項目も参照
牽引すること自体を大きな目的としている自動車は、全てトラクターと言って差支えがない。一般的に単にトラクターといった場合は農業用トラクターを指すことが多いが、セミトレーラーを引っ張るのも(セミ)トラクターであり、業種や分野によって何を指すかは異なる。トレーラーのことを法律では被けん引車と言い、特に車両総重量が750kgを超えるものは重被けん引車という。
トラクターと一口に言っても、どういう目的で何を引っ張るかによって、構造も運転資格も異なる。以下に一般的に知られるトラクターを記していく。
農業用トラクター
農業の作業機を牽引しあるいは装着して、作業機に動力を与え、農作業を行うための機械。日本では特殊自動車となるので、運転するには小型特殊自動車又は大型特殊自動車の免許が必要。作業機を動かすためのPTO(パワーテイクオフ:エンジンの回転力を他の機器に伝えるための装置)や油圧装置を装備している。
また、タイヤの形状もフルクローラー・セミクローラーなど様々な土壌に合わせたタイプがある。
農作業と農作業に付随する作業に特化しているため、低速は時速0.07km/h程度から高速は35~130km/hと、低速寄り且つ超広範囲の速度に対応しているが、大抵のトラクター(海外産)には速度のリミッターが掛けられており、税金を安くしている。(小型特殊)
一部、広範囲を走行する必要がある大規模経営の農家やコントラが、高額(25万円程度)な自動車税を毎年支払って白ナンバーを取得し、リミッターを解除している。
小型特殊の範囲である35km/h以下の場合は年額2000円程度(緑ナンバー)である事から、通常販売ディーラーは速度リミッターを掛けた状態を標準仕様として販売している。
日本は一戸あたりの耕作面積が狭く、よって大型トラクターを必要とする農家は少数派で、農機市場での主流は10馬力~50馬力程度のものである。一方で諸外国、特に大陸国では広大な農地を耕すために、100馬力~600馬力台の大型トラクターが用いられることが多い。日本でも道央や道東などの耕地面積の大きい地帯の農家では大型トラクターが主として使用されており、また青森以南の農家でも、大規模営農をしている農家では使用されている。
こういった日本の特性から、2chの農林水産板や大型・特殊車両板では、
などというゲハ板のようなやり取りも見られる。農業という社会の礎に携わる同志であってもこうなのだから、人間の業の深さが分かると言うもの。やはり人類は地球の重力に魂を(ry。
セミトラクター
荷物を運ぶセミトレーラーを牽引するためのトラクター。積載能力はない。トラックの先頭の部分だけ切り取ったような形状をしており、セミトレーラーと連結するための連結部(第五輪)を有する。連結部付近には、トレーラーのエアブレーキや電気系統を作動させるための回路コネクタ部もある。軸数は様々で、一般的なものは二軸または三軸。重量物輸送用に作られたものは、4~5軸になることもある。長距離輸送に対応するため運転席後部にスリーパー(寝台)が付いている場合も多く、特にアメリカの長距離用セミトラクターはカプセルホテルより快適なスリーパーを装着しているものがあり、運転席の後ろに大きなスペースがある。
通常のトラックでは貨物の最大積載量があるが、セミトラクターでこれに相応するのは第五輪の最大荷重である。ここでセミトレーラーの重量の何割かを受け止める構造になっているからで、この重量を超える荷重のセミトレーラーを連結することはできない。
最高速は日本国内では一般道は乗用車と同じ60km/h、高速道路では80km/h。諸外国でも概ね日本と同程度の速度規制がかけられている。運転するには頭の部分だけなら車両に応じた免許(中型、大型など)、トレーラーを引っ張る場合には頭の部分の免許に加えて牽引免許が必要。
トレーラーを二両以上連結することもあり、3両以上のものは米豪ではロードトレインと呼ばれる。オーストラリアやアメリカでは一般道をロードトレインが走っており、ヨーロッパではEuroCombiなどと呼ばれる長編成のものが多用されている。日本では法規上、トレーラーを二両以上連結して走る事は認められていない。よって 一般道で見る機会はないものの、山口県の宇部興産は自社専用高速道路でロードトレインを運用している。
フルトラクター
一見すると普通の大型トラック。だが後ろに連結器を有し、フルトレーラーという自重を自分の車輪で支えられるトレーラーを牽引する構造になっている。その形状から分かるとおり、フルトラクター自体に積載能力がある。後方に連結するトレーラーはフルトレーラーが一般的であるが、着脱式のドーリー(台車)を使ってセミトレーラーを牽引することも可能になっている。
各国での傾向は以下の通り。
日本
日本ではJR貨物のコンテナを運んでいる車としてよく見かける。また国土交通省が平成25年に行った分割可能な貨物を輸送する車両の長さに係る規定等の見直し(注:所謂「バラ積み緩和」の一環)を行い、フルトレーラーに関しては従来の最大19mが21mに変更されたことで、更なる活用が考えられる。既に一部の事業者は、21m規格に適合したフルトレーラーのカーキャリアやウィングカーゴを導入・運用している。
日本ではドーリー式については先述のJR貨物や粉流体輸送車(粉物輸送車)、原木輸送車などで使われている。一方で昨今発表されている新型のフルトレーラーはセンターアクスル式が多い。どちらかが良いとは一概には言えないが、センターアクスル式はセミトレーラーと同じく関節が一つしかなく後退が容易であること、トラクターとトレーラーの間隔を詰めることで全長に対する効率が良い事、などが原因だと思われる。
欧州
ヨーロッパでは活発に利用されており、先述のEuroCombiにはフルトラクターを用いるものも多くみられる。特に北欧四ヶ国では最大25.25mまで許可されており(西欧は概ね18.75m)、一台の編成で大量の荷物を運ぶことで効率的な輸送を行えるようにしている。また、この長大な編成による効率的な輸送を広める為、European Modular Systemというコンセプトも考案された。
北米
北米は元々セミトレーラー自体の規制が緩いからか、あまり使われていない。アメリカを例に取ると。トレーラーの連結全長規制については連邦レベルでは規制がなく、州ごとの規制になっている。州によって規制はマチマチなものの、概ね20m前後の長さまで認められることが多い。加えて人口密度の低さ、広大な国土、貨物列車王国と言うこともあり、フルトレーラーは一部の工事現場などで限定的に使われている程度。
トーイングトラクター
空港で飛行機を押したり引いたりするための車。船のタグボートと同じ意味で、トーイングタグなどとも呼ばれる。前方にジェット噴射を指向させるスラストリバースを有する昔のジェット機を除いて、普通の飛行機はバックができない。というか昔の飛行機も普通はやらないが。そこで駐機場からのプッシュバックに際して、トーイングトラクターが飛行機をタキシーウェイまで押す。また駐機場から整備場までといった空港内を移動する場合でも、一々飛行機のエンジンを始動するのは燃料が勿体無いので、ここもトーイングトラクターが牽引する。昔は飛行機のノーズギアとトラクターをトゥーバーと呼ばれる棒で連結して押していたが、最近はトラクター自体でノーズギアを抱え込み持ち上げるタイプの物も増えてきた。運転するにはグランドサービスの会社に就職するのが一般的。
グランドサービスの会社では、飛行機を引っ張る物をトーイングカーと呼び、航空コンテナを載せた何両もの台車を引っ張るこういう車 ↓ をトーイングトラクターと呼ぶことがある。またその逆パターンもあるよう。
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│来│
│ね│
│え .|
│よ .|
バカ ゴルァ │ !!.│
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ヽ(`Д´)ノ ヽ(`Д´)ノ (`Д´)ノ ( `Д)
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キャンピングトレーラーやボートトレーラーを牽引する乗用車
この乗用車をトラクターと思う人は少ないかも知れないが、役割的には立派なトラクター。よって牽引する際には普通の牽引と同じ知識を踏まえて牽引しないと、事故にもつながる。トレーラー重量が750kg以下なら牽引免許は必要ないが、その場合でも作業は同じなので勉強は必要。
連節バス
連節バスは厳密に言うとトラクターにもトレーラーにもなりない。一般的なセミ/フルトラクターとトレーラーが前後別々の車で自由に切り離しができるのに対し、連節バスは半永久連結装置によって前後の車両が繋がっており、工場等で工具を使わなければ連結を解除できない。前後で一台の車となるのが連節バスなのである。
そういう話はさておき機能的なことを言うと。昔の高床式連節バスにおいては、前部車両はトラクターの、後部車両はトレーラーの機能があったとは言える。高床式のエンジンは前部車両の前後車軸間にエンジンがあり、前部車両後輪を駆動するミッドシップレイアウトであったからだ。編成は前部車両の駆動力によって推進し、後部車両は前部車両に牽引されていた。
だが現代的なノンステップ連節バスはこれとも異なる。前部扉から最後部扉付近までをノンステップにする必要から、エンジンは後部車両最後尾に搭載され、後部車両の車軸を駆動軸としているため。つまり前の車は運転席はあるがエンジンと駆動軸はないし、最後尾の車両は駆動力を生じさせるが運転装置はない。高床式以上に前後一体構造となっている。
これとは別にトレーラーバスと言うのもあるが、これは連節バスとは違う乗り物。
トラクターを運転するのに必要な免許・資格
共通しているのは、トラクター自体の運転免許が必要と言うこと。公道を走る場合は当然必須だが、公道を走らない場合でも事業に従事する場合には、事業者から当該免許の取得を求められることがある。重被けん引車を公道で運行する場合は、けん引免許も必要となる。
農業用トラクター
農業用トラクターは道路交通法によって大型特殊又は小型特殊に分類される。よって運転するには大型特殊又は小型特殊免許が必要。また750kgを越えるトレーラーを牽引する場合はけん引免許も必要。農業用トラクターだけを運転する農業者向けの農耕者限定大型特殊及び牽引免許があり、これは農業大学校で取得できる。
取得年齢は小型特殊自動車免許が満16歳以上、大型特殊自動車免許が満18歳以上となっている。小型特殊扱いとなるトラクターは、我が国の市場においては概ね10馬力~20馬力台ばの物が該当。よってこれらのトラクターを運転することは満16歳から可能であり、及川雫の特技が「トラクターの運転」であったとしても不自然では無い。
道路交通法と道路運送車両法の定義の違い
日本の農業用トラクターを法制面から理解する上で注意すべき点は、道路交通法と道路運送車両法では小型特殊自動車の定義が違うこと。よって小型特殊自動車として登録されている農業用トラクターでも、公道で運転するには大型特殊免許が必要なものがある。
道路交通法 | 道路運送車両法 | |
全長 | 4.7m | なし |
全幅 | 1.7m | なし |
全高 |
2.0m |
なし |
最高速度 | 15km/h | 35km/h |
表と法規を照らし合わせると、時速35km/h以下なら小型特殊自動車として登録されるが、最高速度が15km/hを超えると大型特殊免許が必要ということになる。
なぜこのような事になっているかというと、理由の一つは税金である、と編集者は思っている。
自動車に関する税金は道路運送車両法の区分に基づいて都道府県及び市町村が徴税するが、小型特殊自動車の場合は市町村が徴収する軽自動車税の課税対象となる。税額は1600円~3100円(茨城県美浦村)というところもあるが、大抵は1600円で済む。ところが大型特殊自動車の場合は自動車関連の税は非課税となるものの、固定資産税の課税対象である償却資産となってしまう。償却資産に対する固定資産税は、取得価格及び前年評価額に原価残存率をかけて当年の評価額を算出し、それに基づく課税標準額に税率をかけて課税額を算出する(ソースは東京都主税局とwikipedia)。
農業用トラクターの価格は10馬力台でも100万円前後、100馬力以上になると1000万円台になるため、固定資産税だと高額となってしまう。そこで国内で広く利用されている時速35km/h以下の農業用トラクターに関しては、車体の大きさに関係なくこれを小型特殊に分類することで税金を安くしている、のだろう。
一方で道路交通法は定義の根拠となる考え方が道路運送車両法とは異なり、飽くまで安全に運転する為の技能を有しているかに力点が置かれる。よって小型特殊自動車に関してはより厳しい基準を設けていると思われる。小型特殊という名称は同じでも、その根底にある考え方は法律ごとに異なるというわけだ。
当然ながら、時速35km/hを超えるトラクターは登録上も大型特殊自動車になるため、固定資産税の課税対象となる。国内メーカーのものは、マッセイ・ファーガソンのOEMであるヰセキ・ビッグTシリーズを含めてその速度を超える事はないが、ジョンディア、ニューホランド、フェント、クラースなど海外メーカーは、100馬力以上の商品から35km/hを超えるものが増えてきて、200馬力前後以上のものになると殆どの最高速度は50又は60km/hになってしまう。購入する場合は税コストと農業収入とのバランスを考えて機械を選ぼう。
尚、登録上は小型特殊自動車である交通法上の大型特殊自動車が、750kgを超える重被牽引車を引っ張れるかどうかに関しては色々議論があるらしい。詳しくはyahoo!知恵袋あたりを参照。
セミトラクター/フルトラクター
セミトラクターやフルトラクターは自動車の大きさに関係ないので、原則的には大型免許、中型免許、普通免許を所持していればけん引車を運転できる。しかし国内で事業で使われる物の多くは大型車であり、実質的に大型免許を保有していることがセミフルトラクターを運転する条件となっている。この大きな車で引っ張る貨物を積んだ被けん引車が750kg以下で収まるはずもなく、当然ながら牽引免許も取得しなければならない。
トーイングトラクター
車自体は大型特殊車両であるので、大型特殊免許になる。但し実際に業務付くにはその会社の社内資格を取得する必要がある。
キャンピングカー
今まで述べたとおり、トラクターの免許に加えてトレーラーが750kgを超えるかどうかがポイント。これ以内に収まればけん引免許は必要ないし、超えるのであれば免許が必要となる。尚キャンピングカーやボートトレーラーを引っ張る人向けの軽量被けん引車用限定免許も存在するようだが、車両持込になるとか面倒くさいので普通のけん引免許を取ったほうが早い。
さすがに最近はいないと思うけど、以前は被けん引車を登録をせず検挙される事例があった。被けん引車はそれ単体で自動車であるので、自動車として登録しなければならない。
連節バス
「あの空気になっている、けん引二種免許だろ」かと思いきや、そうではない。既に述べた通り自由に切り離せる構造ではなく、法律上のトラクター/トレーラーには当てはまらないので。よって通常は大型二種での運行となる。但し後退に関してはセミトラクター/セミトレーラーと同じような動きになるので、けん引免許保有者と同等の知識や技術は必要となる。
連結装置
トラクターはその性質から、トレーラーとの連結装置を持つ。詳しくは自動車の連結装置の記事を参照。
トラクターの「やっちまった」
- ジャックナイフ
ジュニアさんのことではない。トラクターと被けん引車の屈折が強くなり、この二つの角がぶつかってしまうこと。トラクターがスリップする、後退の時に角度をつけすぎるなどが原因。 - 後ろから押される
減速の時などに、トレーラーが慣性力でトラクターを押してくること。大型トレーラーのように被けん引車にブレーキが付いている場合はトレーラー自体にもブレーキがかかるが、キャンピングトレーラーやボートトレーラーなどの場合はトレーラーにブレーキが付いていないことが多いので、このようなことが起きる。よってトレーラーにブレーキが付いていない場合は、後ろからの慣性力考えて運転しなければならない。 - 前輪が持ち上がる
農業用トラクターで作業機が重いのに、それを高く持ち上げて段差を乗り越えようとすると起きる。セミトラクターでも、重量物を牽引中におきることがあるらしい。宇部興産ではこれが起きたため、運転手が血まみれになった事例もあったとか…。対策としては、農業用トラクターの場合は作業機の高さを下げる、バランスウェイトをしっかりつける。セミトレーラーの場合は、運転手が運転を頑張る。
トラクターを運転できるゲーム
ここまで読んで「トラクターを運転してみたい!」と思った君。そう、君だよ君、まぁこっちへ来なさい。
ほぅ、何と良い面構えだ、ピンッときた!君のような人材を求めていたんだ。
この記事では「就職する程でもないけどトラクターは運転してみたい」というゲーマー運転手を募集中だ。
どうだ、なかなか有望そうだろ?きっとゲーム達も君を気に入ると思うよ。
まぁ詳しくは購入してからということで、まずはゲームを始めてくれたまえ。
あっ?どこへ行くんだね?我が記事は、いつでも君を待っているぞー!
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