「青ガエル」の愛称を持つ1954年に営業運転を開始した初代5000系と、2002年に営業運転を開始した2代目5000系が存在するが、本項では2代目を中心に記述する。
狭義の東急5000系(2代)は主に田園都市線で活躍する車両を指すが、東横線を走る5050系、目黒線を走る5080系、5000系をベースに製造された横浜高速鉄道Y500系についても記述する。
なお、同じ東急でも、8500系や8090系などは全て「8000系」が正式な系式区分であるが、これらよりも全体的な差異が少ない5000系列ではなぜかきっちりと「5000系」「5050系」「5080系」と系式区分が分けられている。
ただし、設計変更による次車区分は共通カウントとなっているようである。(例:5050系第1編成は3次車の扱い)
概要
それまで東急線内で活躍していた8000系・8500系などの車両は、陳腐化が進んでいたものの、オールステンレス車両であり更新工事を行えば半世紀近く使用することも可能だった。
だが、制御装置などを含めた大規模な更新を行う場合、新車を導入した方がよいのではないかという試算から新形式の導入となった(これにより8000・8500系の更新計画は中止に)。
折しも、JR東日本では旧国鉄から継承した老朽化の進む車両を「重量半分・価格半分・寿命半分」という新しい設計思想の車両(209系)を東急グループの東急車輛製造などで開発していたこともあり、同時期のE231系と車体構造の一部を共通化し、なおかつ大量投入することによりコストダウンを行うことにした。
車両のコンセプトは「人と環境に優しい車両」。東急電鉄内では「今後の標準車両」と位置付けられており、既存の車両に比べバリアフリー・メンテナンスフリー化が進められている。そのため、大井町線用の6000系・池上・東急多摩川線用の7000系も当形式がベースとなっている。
車体はE231系をベースにした20m4ドアのオールステンレス車両だが、地下鉄直通を前提とした車両のため裾絞りのない車体で、前面に貫通扉を設置している。前面デザインは初代の5000系を意識したともいわれる。
車内設備はE231系をベースにしたオールロングシートだが、ドア上に15インチLCD(液晶ディスプレイ)を2基設置し、右側で次の停車駅・ドアの開閉方向・乗換案内などを行い、左側では「TOQビジョン」と呼ばれCMなどの放映を行っている(5080系の一部車両はLEDによる案内)。
なお、LCDは2011年度の編成単位での増備車からワイド17インチに変更し、表示方法も大幅に変更されている。
すべての車両が3000系同様、英語放送対応車内自動放送を導入している。東横線所属車については原則的に英語放送はカットされていたが、2011年7月25日から英語放送が復活した。
ただし、ラッシュ時などは「ラッシュモード」設定となり英語放送は省略される。
東急5000系列は、車体構造こそ一部E231系と共通化されているものの、基本的な設計思想や機器類は3000系から引き継いだものであり、E231系とは全く別物である。ゆえに、一部で「E231系とほぼ同一の車両」「E231系のコピー」などと言われることがあるが、決してそうではない(鉄道趣味誌でさえ勘違いしていることもある)。
主電動機は同じE231系ベースの相鉄10000系などと異なり、3000系と共通で出力190kWのTKM-98・TKM-99型(両者は製造メーカーが異なるだけであり実質同じ)を使用している。台車も3000系とほぼ共通のTS-1019A(M台車)・TS-1020A(T台車)となっている。
10両編成のE231系(モーター出力95kW・4M6T)と5000系(モーター出力190kW・5M5T)では、編成総出力にして5000系がE231系の2.5倍のパワーを持つ。2.5倍の出力差がある車両を、「ほぼ同一」などと果たして言えるであろうか。地下鉄直通のE231系800番台(6M4T)と比較してなお、1.7倍の出力差がある。
これを8両編成でMT比も同じ5050系(190kW・4M4T)で考えると、とあるハイスペックで有名な車両と全く同一の編成出力を叩き出す。それは「京急2100形(190kW・4M4T)」である。
アルミ車体とステンレス車体の重量差や車体長など、5050系のほうが編成重量が重くパワーロスになる要素を含んでいるが、私鉄車両として極めて高性能で知られる京急2100形と同じ編成出力を持つ5050系は、一般型電車(通勤型・近郊型両方の設計思想を含む電車)の汎用型であるE231系のコピーであるどころか、通勤型電車としては非常にハイスペックな部類に入るといえよう。
実際、東横線の運用では、日吉~綱島間の1駅間(この区間は2.2kmあり東急最長だが、他の鉄道では一般的な駅間であると言える)でさえ、東横線最高速度の110km/hで走行できるほどに、全速度域において加速性能は非常に良い。5050系の導入により、8000系列を東横線から駆逐し、日中の東横線特急・急行のスピードアップを実現したのは、5050系の大きな功績である。
これが、鉄道趣味誌で語られることのない、秘めたる東急5000系列の底力である。
・・・が、2013年、新たな展開が5000系列に巻き起こった。
4月10日、東急電鉄と総合車両製作所はニュースリリースで、次世代ステンレス車両「sustina(サスティナ)」の第1号を、5050系として5月中旬に東横線に導入すると発表した。
ニュースリリースには5176Fの5号車になる(と思われる)5576号車の写真が使われており、「レーザー溶接の多用による車両構造の変更」「ドア枠、窓枠などの凹凸を廃し外板の更なるフラット化」「アルミ車並みの軽量化」「衝突安全性の向上」「製作工数の削減と制作費の削減」が図られているという。
元々足回りは独自仕様だったという事もあり、ここまで来るともはや「E231系をベースとした」とは言えない様相を呈してきている。
■5000系
2002年5月に営業開始。10両編成18本、180両が長津田検車区に所属し、田園都市線・半蔵門線の他、東武線内まで乗り入れる他、後述する6ドア車3両化のあおりを受けてラインカラーなど東横線仕様に変更を受けて8両編成4本、32両が東横線の元住吉検車区に所属している。
2007年当初発表された計画では2007年度から3か年で合計25編成の5000系を新造、計35本体制とする事とされていたものの、景気悪化とJAL問題を受けてか計画がとん挫している。このため、残る8500系の置き換えは、2018年度から運用開始する全くの新形式である2020系が担うことになった。
なお、この計画変更については東急からは何のアナウンスも無く、問い合わせても「教えられない」の一点張りである。(筆者調べ)
登場時には東武線に直通することが決まっていたことから製造当初より直通運転に対応している。
首都圏でも屈指の混雑率を誇る田園都市線という路線を走るため、2005年より6ドア車の組み込みが進んでおり、2012年3月改正時点ではラッシュ時には長津田駅を7時台に発車する準急(ただし7時台ラスト1本を除く)13本に専属的に充当されている。
なお、オール4ドア車で運転する場合はその旨の駅構内アナウンスが流れることが多い。
2009年から従来の5・8号車に加え、4号車も6ドア車両組み込みになり、本家JRですらビックリの1編成中3両6ドア車という編成が完成している。
なお、この組み替えにより2009年にまだ営業に入っていなかった5118・5119・5122Fは6ドア車を抜き取られて、代わりに既存編成からねん出された4ドアサハを組み込むなどして8連化、東横線で営業している。
また、いったんは田園都市線で営業を始めた5121Fも、なぜか6ドア車2両を抜き取られ、代わりに他の編成の4ドアサハを1両組み込み、デハ5921を外した上で東横線に転属させられている。なお、6ドア車2両は新造された1両とともに5104Fに組み込まれた。
最大で15本の編成が6ドア組み込みとなっていたが、平日の6ドア車指定運用は13本のため、他の運用でも最大2本6ドア車組み込み編成が走る事がある。
6ドア車の導入により、渋谷駅での停車時間を短縮し、また渋谷手前で電車が詰まることが少なくなり、「1秒でも早くお客様を混雑から解放する」所期の目的を達成している。
なお「6DOORS」のステッカーは、わざわざ本家のJR東日本から使用許諾を得たうえで同じデザインとしている。
ところがこの6ドア車45両は、田園都市線各駅にホームドアが設置されたことで、4ドア車に置き換えられた。
混雑緩和より安全性を優先した形となるが、果たしてこれがどのように混雑に影響するかが注目される。
■5050系
2004年4月営業開始。8両編成24本、192両が元住吉検車区に所属し、東横線・みなとみらい線で活躍する。
2010年度から副都心線直通のための改造が行われた(2010年度以降の増備車は新製時から対応)。
5050系には世界初の設備がある。前面と側面の行先・種別表示にフルカラーLEDおよび白色LEDを導入したのは鉄道車両としては世界初である。
なお、5155Fは2012年9月7日に副都心線04S運行で営業運転を開始している。東京メトロ10000系10104Fも同日に東横線08運行にて営業を開始しているため、直通開始前のトレード運行が実現した。
その後、定期的に車両の入れ替えを行いつつ、5050系のメトロ車扱いでの副都心線系統運用、メトロ車(10000系・7000系)の東横線内運用が行われている。
2013年度導入5176Fでは、上述の通り、サハ5576号車が次世代ステンレス車「sustina」の第1号として登場した。
どうやら東急のお気に入りらしく、東急のCMやポスターなど各種広告では大抵この5050系が写っている。
2014年2月14日の大雪の中、元住吉駅で5155Fが横浜高速鉄道Y500系Y516Fと衝突する事故が発生。当該編成の5155F、Y516Fは、事故の損傷が大きく揃って廃車となっている。
その代替として5177F、5178Fが製造されているが、5176F以前とは若干仕様が異なる箇所もある。
■5050系4000番台
2011年に入り登場した5050系の10連バージョン。番号が5080番台に近づきつつあったためか、空き番号である4000番台に区分されて登場した(東急のデフレナンバーは8500系・8090系に続いて3例目である)。
同じ10両編成ではあるものの、5000系とは編成組成が異なっており、東京メトロ10000系に合わせた編成組成になっている。
2022年8月現在、10両編成12本が営業運転に就いている。
4101・4102Fは当初暫定的にデハ4600・サハ4700の2両を外した暫定8両編成で営業運転に入っていた(外された2両は長津田検車区で絶賛ニートレイン中であった)。
4103F以降の編成は号車表示や弱冷車ステッカー・女性専用車ステッカーの貼り付け車両などから8両での暫定使用は行われないものと推測されている。…が、4103Fは8両化の上2012年6月29日より営業運転を開始した(外された2両の処遇は他と同じ)。
これらの暫定8両編成3本は2012年2月から順次長津田検車区に回送され、10両編成に組成が戻された。
しかし、4103Fは2014年2月の元住吉駅での衝突事故の影響で5155Fが離脱し8両運用の本数が不足したため、再び8両編成での運用に戻されている。(前面には「8CARS」と書かれたステッカーが貼られている)
その後2015年3月に重要部検査を実施した際におよそ1年ぶりに10両編成に復帰し、しばらくの後に代わりに4102Fが8両編成化された(4102Fは2016年4月に10両編成に復帰)。
5050系4000番台においても、東武・西武車扱いによる副都心線・有楽町線系統での営業運転が実施されている。
それとトレードされる形で、東武車・西武車の東急貸し出しも行われているが、10両編成のため東横線内での営業運転は行われていなかった。
2013年度新製分となる4110Fは車内外を他の編成との差別化を図った特別仕様となり、「Shibuya Hikarie号」として2013年4月28日から運行開始した。通常の営業運転のほか、イベント列車としても使用される予定。
2022年8月には、東横線への「Qシート」導入に向けて5166FにQシート用車両(新製)を組み込み10両化され、4112Fに改番された。
2023年2月には5169FにQシート車を組み込んで10両化され、4115Fに改番された。
追って4113、4114Fも登場するものと思われる。
なお、西武線の直通運転の最も遠い駅は飯能駅だが、そこから先の西武秩父方面は8両までしか対応していない関係で武蔵丘車両検修場への回送を除いて乗り入れていないのだが、2013年に4102Fが西武秩父駅まで試運転を実施したことがある。この時のデータが西武40000系の座席指定列車に反映されたようである。
2023年3月18日の相鉄・東急直通線開業後は相鉄線にも顔を出すようになったが、車両運用の都合で西谷~横浜を走行するほか、「西谷発横浜行」といった相鉄線完結運用もある。
■5080系
2003年3月に営業開始。8両編成10本、80両が元住吉検車区に所属し、目黒線や乗り入れ先の東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道線・都営三田線で活躍。
主制御装置は5000系・5050系が日立製なのに対して5080系は東芝製である。
ワンマン運転対応。当初は6両編成だったが、相鉄・東急直通線開業に向けて目黒線も8両化することになり、中間車が増備された。大井町線のQシート導入時に出た余剰車がここに混ざっているけど
東急線内の複々線区間では5000系同士のデッドヒートが見られることも・・・?
営業運転開始当時は、車内表示機は5181F・5182Fは乗り入れ協定により2段式LED表示5183F以降は5000系・5050系同様の15インチLCDだったが、こちらも相鉄・東急直通線対応なのか17インチ化している。
2023年3月18日の相鉄・東急直通線開業後は、相鉄線にも顔を出すが、車両運用の都合で西谷~横浜での運用もあり、相鉄線内完結運用も多数存在する。
Y500系
2004年2月のみなとみらい線の開業に合わせて登場。8両編成6本、48本が元住吉検車区に所属し、保守管理は全て東急に委託されている。
基本構造はすでに登場した5000系2次車をベースとしているが、車体の塗色が特徴的で、「ヨコハマの海」や「躍動感のある都市」をイメージしたグラデーションは強いインパクトを与えている。
音色こそ同じだがドアチャイムが5000系列より半音ほど高くなっているほか、開く時と閉まる時で音程が異なるのが特徴。
なお、当形式も2010年度から副都心線乗り入れ対応工事が行われた。
5000系2次車がベースのため、5050系に比べると座席が固い(田園都市線の5101~5106F・目黒線の5181・5182Fも同様)。
ただしY517Fは少し事情が特殊で、Y516Fが前述の元住吉駅での衝突事故により運用不能になったため、その代替として5156FをY516Fと現物交換という形で編入されている。
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