生き抜いて、そして何をするか、だと?
取り戻す。奪い返す。
烙印の紋章とは、作品打ち切りをファンに心配されてしまうことに定評のある杉原智則著作の電撃文庫レーベルのライトノベルシリーズである。表紙・挿絵イラストは3(イラストレーター名)が担当している。ジャンルはSF・ファンタジー戦記モノ。全12巻完結。
概要
杉原智則による、『レギオン きみと僕らのいた世界』の次の著作として、電撃文庫で刊行された戦記小説。奴隷剣闘士の身分から皇太子の影武者へと仕立て上げられた少年オルバの、復讐と立身の国盗り物語。
表紙イラストに可愛らしい女の子が溢れんばかりに描かれるのが主流の近年のライトノベル業界にあって、「見るからに目つきの悪い主人公と気の強そうなヒロイン」の表紙が目印の作品である。内容もだいたいそんな感じ。現在二部構成にわかれており、一巻から四巻までが第一部(復讐編)、四巻から八巻までが第二部(再起編)、第九巻以降が第三部となっている。
ストーリー
宇宙まで進出し、移民として地球外の惑星に移り住んだこの世界の人類は、永い時と騒乱の末にその高度な文明を後退させ、科学技術の多くは失われた。この物語の時点では、大陸はいくつもの国によって領土が分割統治され、惑星独自の生物「竜」に乗った騎兵や、同じく独自の鉱物「竜石」を使った飛空艇などで軍が武装する、群雄割拠の時代である。
故郷の村を領土を守るはずのメフィウス国軍に焼かれ、奴隷剣闘士に身をやつし日々命をすり減らす少年オルバ。奇妙な虎の鉄仮面を付けられた彼が運命か皮肉か、憎悪の対象であるメフィウスの皇太子の影武者となったとき、オルバ自身の生存と、復讐のためのあらなた戦いが始まる。
皇族・貴族・市民・奴隷の身分制度が厳しく定められたメフィウス国で、皇太子ギルとしての至高の地位と、仮面の剣闘士オルバの行動力という異なる立場を巧みに利用するオルバ。その心の中には、家族を離散させたメフィウス国への復讐心と、奴隷から皇太子という馬鹿馬鹿しいまでの出世によって、どこまで上り詰められるかという野心に満ちていた。
「皇太子」としての婚約者である隣国ガーベラのビリーナ姫や、オルバを影武者を仕立て上げた陰謀屋の重臣フェドム、酷薄な「父」皇帝グール・メフィウス、西方蛮族の老獪な頭首アークス、そして村を焼いた主犯、オーバリー将軍。彼らとの駆け引きや戦いの先に、「オルバ」は何を見るのか。
登場人物
- オルバ
- この物語の主人公。故郷と家族を大国同士の戦争の余波で失い、少年盗賊団を率いてメフィウス領内を荒らしていたが、投獄され奴隷の烙印を背中に押され、剣闘士として売り払われた。謎の男とフェドムらによって鉄仮面を顔に貼り付けられ、そのまじないによって顔を焼くような苦しみに悶えながらも、二年を闘技場で生き抜いた剛の者。その後、顔が皇太子ギル・メフィウスにそっくりであることから、ある事情によって婚礼に出席できなくなった皇太子の身代わりとして奴隷剣闘士から解放されることになる。農村出身で奴隷の身分ながら、兄の影響で本を読むのが好きであり、兵法や戦術の類に理解がある。無愛想だが闘技場仲間からはそれなりに人気者。ギルの影武者としては、有事に際し「あまりに有能すぎる」ためか周囲から疑いの目を差し向けられることも……
- ビリーナ・アウエル
- ヒロイン。メフィウスの隣国ガーベラの王女であり、両国の戦争終結のための和平政策の一環としてギル・メフィウスの婚約者となり、来国した。ガーベラは小型飛空艇を多く保有しており、ビリーナは男勝りの名うての飛空艇乗りである。婚約者であるギル・メフィウス(オルバ)に対して、想像していたのは違う苛烈さを見出し戸惑いつつも、彼女もまた、王女として自分のなすべき道を探す。その一方で、ギルの直属の部下という触れ込みの、剣闘士オルバを一人の戦士として尊敬しており、同一人物とは知らないまま親交を深める。なお、ビリーナがほとんど登場しない巻が二冊続き、著者は担当編集者にヒロイン不在を随分睨まれたらしい。戦記モノだからヒロインがなおざりになるのは仕方ないね。
- ゴーウェン
- タルカス剣闘会子飼いの剣奴養成係。ゴーウェン自身もかつては剣奴として闘技場で死線をくぐりぬけた古強者である。奇妙な仮面をつけた少年奴隷のオルバを鍛え、闘技場で通用するいっぱしの剣士に育てた。オルバがギル・メフィウスに成り代わったときに、ゴーウェンを含む他の何人かの剣闘士とともに皇太子の側仕えに召上げ、ゴーウェンはオルバの陰謀の「共謀者」となった。
- シーク
- タルカス剣闘会の剣奴。自他共に認める女性のような美貌で、闘技場でも己の美しさを売りにしている双剣の人気剣闘士。オルバを気に入っており、何かと世話を焼き、オルバに奴隷から解放され、「共謀者」として皇太子の直属となったあとも彼の参謀役のように振る舞う。自称女嫌いだがビリーナ姫のことはそれなりに認めている。
- ホゥ・ラン
- よく焼けた肌と白い髪のタルカス剣闘会の竜丁(闘技用の竜の世話係)の女性。龍神信仰をもつ遊牧民の出身者で、竜の感情を理解し、対話できる特殊な能力がある。非常に無口で神秘的な美女だが、オルバとはある出来事以来、それなりに口をきく仲。
- フェドム・オーリン
- メフィウスの重臣でビラク領主。皇帝の御前会議である帝朝評議会にも参加できる議員権限を持つが、近年のグール皇帝の専横に内心叛意を抱き、皇太子ギル・メフィウスの替え玉であるオルバを操ることで、皇太子を後ろ盾にした政変を画策し、権力拡大を目論む。しかし、焦りが表情や会話に出たり、影武者の計画そのものが裏で別の人間によって用意されたものであったりと、陰謀家としては一流になりきれない愛すべきオッサンである。
- ギル・メフィウス
- メフィウス皇帝グール・メフィウスの息子であり皇太子。父親に蔑まれて育ったためか屈折しており、いろいろ残念な人物だった。そんな彼でも第一巻であのようなことをしでかさなければオルバの物語が始まらなかったことを考えるとある意味烙印の紋章の最重要人物と言える。
- イネーリ・メフィウス
- メフィウス皇帝の後妻メリッサのおっぱいのでかい長女。メリッサが皇帝の寵愛を受ける以前に前夫との間に生んだ子供であり、ギル皇太子からは義妹にあたる。自分の魅力をよくわきまえており、「おねがい」と称して男を操る手管にたけるが、皇太子に成りすますオルバには軽くあしらわれ、ビリーナは女同士の感情には鈍感なためにイネーリの皮肉や意地悪が通用しなかったりと、彼らを苦々しく思っている。そしてギル・メフィウスの突然の変貌(影武者オルバの存在)を疑問に思い……
- オーバリー・ビラン
- メフィウス軍の将軍。上級将校であるメフィウス十二将に叙されるほどの人物だが、自国の領土で略奪・放火を働くなど配下の軍団含め素行は良くない。冷酷で野心家で俗物でHAGE。そんな彼の最大の不幸はオルバに名前を覚えられ、復讐すべき相手リストの第一候補に挙げられてしまったことだろう。なんだかんだで悪運は強い。
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関連項目
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