FM TOWNSとは、富士通が1989年2月より発売を開始した「ハイパーメディアパソコン」である。
愛称はTOWNS、うんずなど。富士通公式の正式な表記はFMTOWNS。
概要
日本で初めてCD-ROMを標準搭載したパソコンであり、32ビットCPU、32768色表示同時発色や1024個まで表示可能(実質的に使えるのは220~280個程度)なスプライト機能、FM音源6和音+PCM音源8和音+BEEP1和音を標準搭載しているなど、当時としては強力なマルチメディア性能を備えていた。
OSはTownsOSをMS-DOSのラッパーとして標準搭載。このOSでは32ビットのメモリ空間をフルに活かすことができた。また、同社のビジネスパソコンである「FMR-50」シリーズと一部互換があり、TOWNS用MS-DOSを用いるとFMR-50向けのビジネスソフトが動作した。当時一定のシェアを占めていたワープロ「OASYS」のTOWNS版「FM OASYS」も有名。
開発環境のF-BASIC386とコンパイラが結構優秀だったり、TownsGEARというオーサリングソフトが標準でついていたり、OSのおまけソフトが充実したりしていたので、割と容易にその性能の恩恵を受けることができた。ただ、さらに上を目指すとなるとHigh-Cコンパイラと386|ASM Toolkitというかなり高価な開発キットが必要となっていた(それぞれ別売)。後にデバッガと統合されたセットが発売されたがそれでもホビープログラマには結構な負担となった。ちなみにC++コンパイラもあったそうだが15万円したらしい。後に、フリーソフトであるGNU C Compilerが使えるようになりだいぶ障壁は下がった。
また、教育用のソフトを多く出す戦略を取っていたので、当時は小中学校に結構納入されていた。小さい頃に学校でTOWNSの姿を見たことがある人は決して少なくはないはずだ。また文教市場専用モデルとして、ノート型(ただしバッテリー駆動はできず、重量は5kgあるのでラップトップと言った方がふさわしい)も存在する。
あまり知られてないが、TOWNS専用のWindows95が存在し、多くの対応ソフトウェアが動作する(また逆に多くの対応ソフトが動かない)。時代がWindowsに染まりつつあったTOWNS末期には、AT互換機(FMV)にTOWNSのパーツの一部をくっつけてTOWNS互換機能を実現させた、FMV-TOWNSなんてのも発売された。
同時期の国産パソコンであったPC-9801やX68000と比べるといまいち地味である。X68000とは方向性に一部似ている点があったので、発売当時はしばしば信者間で論争になったらしい(今でいうゲハみたいな感じ)。
CD-ROMの大容量やCD-DAの高音質を活かしたアドベンチャーゲーム等ではアドバンテージを持っていた。データウエストによる「サイキックディテクティブシリーズ」など、ゲーム内にアニメーション・動画を取り入れたタイトルが登場して一世を風靡した一方、スプライト性能が微妙だったり、PCM音源の扱いが難しいなどもあり、アーケードゲームの移植では完成度で他機種の後塵を拝することがあった。そんな中でも英国シグノシス社の「マイクロコズム」「スカベンジャー4」などはいずれも滑らかなCGムービーで展開する3Dシューティングで、素の386でも全く処理落ちしないという抜きんでた技術力を見せつけていた。
アドベンチャーゲーム、RPG(と、エロゲ)などはPC-9801からの移植も多く、こちらは概ねアップグレード移植になっていたのだが、なぜか「イース」シリーズだけはついに移植されなかった。FM-77とかには移植されていたのに。
なお、FMV-TOWNSを含めた本体色が白い機種は内蔵音源の他にDAT同等音質のリニアPCMを音源として使用することができる。
フリコレ
TOWNSという文化において重要な位置づけを占めていたのが、富士通より公式的に年2回発行されていた「フリーソフトウェアコレクション」、略して「フリコレ」である。1989年から1995年までに11巻まで発行されたほか、FM TOWNS マーティー用にフリコレ4~6の収録内容を再編集した「フリコレMARTY」も発行された。
これはTOWNSユーザーが作成したBASICプログラムやツール・ゲームなどのフリーソフト、絵・音楽・動画などの自作データ、サークル募集などのテキストデータを郵送などで募集して集めてCD-ROMにし、2500円(ほぼ実費に近い)で販売していたものである。
インターネットがなかったこの当時、フリーソフトを公開したり入手したりするにはものすごく高い接続料(1分ウン十円とか)を払ってパソコン通信をやる必要があったので、その恩恵を受けられる人はかなり限られていた。しかしTOWNSでは、CD-ROM標準搭載という利点を活かしてこういうことを公式的にやってくれたので、パソコン通信とは縁遠い人を含んだかなり幅広い層のユーザーにフリーソフトの文化が広まることとなった。
フリコレとは別に、旺文社が実施していた中高生対象のソフトウェアコンテストの入選作品集もCD-ROMで発売されていた。値段はフリコレと同等。中高生の作品と言うことで完成度はピンキリだったが、中には腰を据えて遊べる本格RPGがあったりと侮れないものがあった。
関連動画
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関連項目
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