トールポピー(Tall Poppy)とは、2005年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牝馬。
伝説の新馬戦を彩った1頭であり、大荒れの2008年牝馬三冠で2歳女王の意地を見せた……が、その勝利はむしろ「物議を醸したレース」として主に悪い意味で記憶されることになってしまったオークス馬。
主な勝ち鞍
2007年:阪神ジュベナイルフィリーズ(JpnⅠ)
2008年:優駿牝馬(JpnⅠ)
父ジャングルポケット、母アドマイヤサンデー、母父*サンデーサイレンスという血統。
父は2001年の日本ダービーとジャパンカップを制して年度代表馬に輝いた馬。種牡馬としてもトールポピーのほかトーセンジョーダン、オウケンブルースリ、アウォーディーなどGⅠ馬8頭を送り出して*トニービンの後継として活躍した。
母は8戦3勝。1998年のオークスに出走(11着)、同年の阪神牝馬特別2着などの実績がある。
母父は説明不要のレジェンド種牡馬。
全兄にはウオッカの被害者代表フサイチホウオー、全妹には2011年の秋華賞馬アヴェンチュラがおり「アドマイヤサンデー3兄妹」と呼ばれたりする。また半妹ヴェラブランカ(父クロフネ)の産駒に2022年のジャパンカップを勝ったヴェラアズールがいたりもする。
2005年1月30日、ノーザンファームで誕生。オーナーは一口馬主クラブのキャロットファーム。募集価格は1口7万円×400口(=2800万円)だった。
シーザリオやハットトリックなどでキャロットファームとは縁の深い栗東・角居勝彦厩舎に所属。主戦騎手は池添謙一で、デビューから引退まで1戦を除いて騎乗した。
馬名意味は「高いひなげしの花。オーストラリアでは成功を収めた人の意」。キャロットクラブ公式ページによると、
Tall Poppy(英語) 「成功を収めた人、傑出した人物」の意。 傑出した能力で他を圧倒し、成功を収めるように。ポピーは日本では「ひなげし」の意で「虞美人草」とも呼ばれる。
とのこと。
2007年7月8日、阪神・芝1800mの新馬戦でデビューしたトールポピー。この年夏競馬は北海道をメインに騎乗していた池添謙一はトールポピーのために阪神へと遠征してきたが、この新馬戦のメンバーが凄かった。単勝1.8倍の1番人気に支持されたのが後の皐月賞馬キャプテントゥーレ。3.3倍の2番人気がトールポピーで、8.6倍の3番人気が後の宝塚記念馬アーネストリーである。後のGⅠ馬3頭が顔を揃えた新馬戦というのは、長い日本競馬の歴史でも他に翌年のアンライバルド・ブエナビスタ・スリーロールスのものしかない。
さて、レース本番、トールポピーはスタートで出遅れてしまう。しかしグイグイ巻き返していくと、そのままインを通って前に取り付く。馬群に揉まれ、直線では一度は進路を失うも、狭いスペースに突っ込んで抜け出しを図ったが、そこでソラを使ってしまい、最内を通って突き抜けたアーネストリーに突き放されて2着。ちなみにクビ差3着のドリームシグナルも後にシンザン記念を勝つ実力馬であった(キャプテントゥーレは8着)。
一休みして10月の京都・芝2000mの未勝利戦をハナ差の接戦ながら1番人気に応えて勝利。続いて京都・芝1800mの黄菊賞(500万下)に向かうも、先に抜け出したがここでもソラを使ってしまい、後の芝ダート両重賞馬ヤマニンキングリーにクビ差かわされて2着。賞金加算に失敗する。
これで阪神ジュベナイルフィリーズ(JpnⅠ)の出走は6/12の抽選になってしまったトールポピー。このレース、池添謙一は他にも後の桜花賞馬レジネッタと2勝馬ヤマカツオーキッドという出走確実のお手馬が2頭いたのだが、除外のリスクを込みでトールポピーを優先。無事に抽選を通過し出走可能となった。このときの1番人気と2番人気はファンタジーS組のオディールとエイムアットビップで、トールポピーは1勝馬ながらそれに次ぐ6.6倍の3番人気に支持される。
7枠15番の外枠から、枠なりに外目の中団につけたトールポピーは、そのまま外を回して直線へ。直線入口で内の馬にぶつけられたりもしつつも、兄フサイチホウオー譲りのストライド走法でそのままじわじわと脚を伸ばし、横並びの大混戦となったゴール前、クビ差抜け出して池添の派手なガッツポーズとともにゴール板を駆け抜けた。
角居厩舎で黄菊賞2着から抽選を通って阪神JF制覇というのは、この年のダービー馬ウオッカと同じ流れ。トールポピーも1800mでデビューし2戦目で2000mを勝ち抜けているように陣営も中距離が本命と見ていたようで、翌年の牝馬クラシック、特にオークスへ視界良好となる2歳女王戴冠となった。もちろんJRA賞最優秀2歳牝馬も受賞。
明けて3歳、トールポピーは桜花賞へ向けて、まずはトライアルのチューリップ賞(JpnⅢ)へ。単勝2.2倍の1番人気に支持され、中団から直線脚を伸ばしたものの、逃げたエアパスカルと2番人気オディールとの3頭横並びのゴールとなり、ハナ差エアパスカルを捕らえきれず2着。
敗れたとはいえ内容は悪くないということで、本番の桜花賞(JpnⅠ)では混戦ムードながらも、クイーンC勝ち馬リトルアマポーラ、前走も接戦だったオディールと3頭で人気を分け合うことになり、リトルアマポーラと3.8倍の同オッズで1番人気に支持される。
ところがハイペースで流れる展開を後方から進め、外を回して直線では大外でリトルアマポーラと馬体を併せて追い込んだが、最後は伸びを欠いて8着。リトルアマポーラは5着、オディールは12着で12番人気レジネッタが勝ち、2着に15番人気エフティマイアが突っ込んで3連単700万馬券という超大荒れ決着(この時点でJRA重賞歴代2位、2024年現在も4位)をアシストしてしまった。
気を取り直して向かった優駿牝馬(JpnⅠ)。前述の通り陣営的にはこっちが本命だったわけだが、前走の末脚勝負でリトルアマポーラにも競り負けてしまったことも響いて評価を落とし、トールポピーは9.7倍の4番人気に留まった。
前日からの雨で稍重の馬場となったレース本番。7枠15番という外枠になったトールポピーだったが、スタートからインに寄せていってスムーズに中団好位のインに潜り込む。直線でも馬群が横にばらける混戦の中、トールポピーは馬群の中から内に切れ込んで抜け出しを図る。前走フロック視されてまた13番人気だったエフティマイアが外から抜け出したが、最内からそれをかわしてアタマ差押し切ったのはトールポピーだった。
結果だけ見れば2歳女王-桜花賞2着馬-桜花賞馬という実績通りの決着だったが、2着エフティマイアは前述の通り13番人気、3着レジネッタも桜花賞フロック視と距離不安で5番人気だったので馬券的には3連単44万馬券と今回もなかなかに荒れた。
ともあれ2歳女王が意地を見せての樫戴冠である。池添謙一はアローキャリーの桜花賞、スイープトウショウの秋華賞に続いてこれで牝馬三冠(+阪神JF)を制覇達成。よかったね、おめでとう!
……と、素直に祝福できていればよかったのだが……。
結論から言うと、この2008年オークスはどちらかというと悪い意味で競馬ファンに印象を残すレースになってしまった。なんでかというと、映像を見れば一目瞭然。直線で馬群を抜け出す際、トールポピーがそれはもう明らかに内に斜行しまくっていたのである。
池添は追うのに必死で右鞭を連打、それでますます内にササっていくトールポピー。押し込められる内の馬たち。すぐ横にいた3着レジネッタをはじめ、明らかにこれで不利を受けた馬が4~5頭はいた。
レース後は当然長い審議に。池添は検量室に戻るまでコトの重大さに気付いておらず(なのでゴール時のガッツポーズもいつも通り派手だった)、審議の対象が自分だとも思っていなかったという。
見ていた競馬ファンも「さすがにこれは降着では」と思っていたが、結果は着順変更なし、池添は2日間の騎乗停止という裁決。降着制度導入以来、GⅠで騎手が騎乗停止だが降着はなしという裁決はこれが初だったので、この裁決は大きな議論を呼んだ。柏木集保は「普通のレースなら文句なく降着」と言い切り、一部では社台への忖度だとかなんとか陰謀論まで飛び交う始末。池添も勝利騎手インタビューでは「他の馬に迷惑をかけて申し訳なかったです」と冴えない表情で、後味の悪いレースになってしまった。
ちなみに池添は2016年にシンハライトでオークス2勝目を挙げた際にもやらかしているが、それについてはシンハライトの記事に譲る。
なんともモヤモヤするオークス馬となってしまったトールポピー。悪評はその後の活躍で払拭……したかったのだが、残念ながらこの後の彼女の戦績は見る影も無い。
オークス後は1歳上のVM勝ち馬エイジアンウインズと一緒にアメリカ遠征しアメリカンオークスに挑む予定だったが、疲れが抜けず遠征回避。
秋はローズS(JpnⅡ)から復帰するも6着に沈み、それでも1番人気を背負った秋華賞(JpnⅠ)では見せ場なく10着に撃沈。桜花賞に続いて3連単1000万馬券(JRA重賞歴代1位、2024年現在も2位)の超大荒れ決着をアシストしてしまった。
4歳以降はレースが嫌いになってしまったらしく、2桁着順の惨敗が続き、2010年の阪神牝馬S(GⅡ)でブービー17着に沈んだところで現役引退となった。通算14戦3勝 [3-3-0-8]。
全兄フサイチホウオーも1番人気に支持されたダービーで沈んで以降は見る影も無くなり、全妹アヴェンチュラは秋華賞を勝ってエリ女も2着に好走したがその後故障で引退となってしまった。なんというか、そういう血であったのだろうか……。
引退後は故郷のノーザンファームで繁殖入り。2年続けてキングカメハメハを配合されたが、2012年の第2仔を3月に出産したあと、6月に腸捻転を発症し、僅か7歳で急逝。幸いというべきか、初仔のオリエンタルポピーが繁殖入りし、彼女も2022年に死亡してしまったが3頭の牝馬を残したので、牝系の血はなんとか繋がっている。悪評のイメージを吹き飛ばすような強い仔が出てくることを祈りたい。
ジャングルポケット 1998 鹿毛 |
*トニービン 1983 鹿毛 |
*カンパラ | Kalamoun |
State Pension | |||
Severn Bridge | Hornbeam | ||
Priddy Fair | |||
*ダンスチャーマー 1990 黒鹿毛 |
Nureyev | Northern Dancer | |
Special | |||
Skillful Joy | Nodouble | ||
Skillful Miss | |||
アドマイヤサンデー 1995 鹿毛 FNo.1-p |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ムーンインディゴ 1986 鹿毛 |
El Gran Senor | Northern Dancer | |
Fairy Bridge | |||
Madelia | Caro | ||
Moonmadness |
クロス:Northern Dancer 4×4(12.50%)
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最終更新:2024/05/11(土) 08:00
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