バレンシアサーキットとは、以下のものを指す。
に建設され、2008年から2012年までF1のヨーロッパGPが開催された。本項目では、1.について記述する。
バレンシアサーキット
とは、スペイン東部・バレンシア州バレンシア県チェステにあるサーキットである。
地元出身の名ライダー リカルド・トルモ
にちなみ、リカルド・トルモ・サーキットとも呼ばれる。
11月にMotoGPのバレンシアGPが行われる。
1999年に開業し、1999年9月17日~19日にバレンシアGPという名でMotoGPを初めて開催した。それ以来、2020年の時点まで22年連続でMotoGPを開催している。
2000年から2010年までスーパーバイク世界選手権
を11年連続で開催した。
2006年2月頃には、サーキットを改修してF1を誘致する計画が立てられたが(記事
)、その計画は実行されなかった。
バレンシアサーキットはこの場所
にある。
本サーキットは、バレンシア州バレンシア県バレンシアの市街地から西へ20km離れたこの場所
にあり、高速道路A-3で行くことができる。バレンシア市街地から本サーキットへ行く道は高速道路A-3の一本だけで、毎年大渋滞になってしまう。
本サーキットから東に12km離れたこの場所
にバレンシア空港がある。
サーキットがある自治体はバレンシア州バレンシア県チェステ(Cheste)
で、これを本サーキットの愛称としている。「皆さんチェステで会いましょう」とMotoGPライダーが発言することもある。
海岸線からの距離は26kmで、海風の影響が少ない内陸部のサーキットである。
Google地形図
で見てみると、サーキットの北西にやや大きい山があり、東や南は平らな地形になっていることが分かる。Googleアース
で見てみると、サーキット北西の山の標高が230m程度で、サーキットの標高が150m程度であることが分かる。
サーキット北西の山は狩猟ができるような大きな山で、この場所
に狩猟射撃の練習場がある。画像欄
を開くと猟銃を持った人たちが映っている。公式ウェブサイト
も作られている。
サーキットの北西側(2コーナーや6コーナー)は山に近いので、すこし上っている。サーキットの南東は平野部で、サーキット南東側(メインストレート)は少し低い場所である。
サーキットから南に1kmだけ離れたところに、東西を真っ直ぐ貫く高速道路A-3が通っている。
サーキットがある場所の緯度は39度29分で、岩手県北上市
と同じ緯度にある。
7月~8月のバレンシアは雨が降らずカラカラに乾燥する。しかし、9月から12月のバレンシアは降水量が50mmを超える(資料
)。東京において最も雨が少ない月が降水量55.2mmの1月なので(資料
)、9月から12月のバレンシアは大して雨が多いわけではないのだが、この地域の中では雨が多い部類に入る。
バレンシアGP(MotoGP)が開催される11月のバレンシアは、平均最高気温が19.5度であり、東京の4月下旬ごろに相当する。
バレンシアの気候は温暖で、一番寒い1月の平均最高気温は16.1度、平均最低気温は7.0度である。これは日本の種子島とだいたい同じ(資料1
、資料2
)。
このため、本サーキットは11月から3月のシーズンオフのテストコースとして盛んに使用される。四輪モータースポーツのテストも行われるし、MotoGPのテストも行われる。
予算があるMotoGP最大排気量クラスのチームは、セパン・インターナショナルサーキット(赤道直下で常夏)、チャーン・インターナショナルサーキット(常夏)、フィリップアイランドサーキット(南半球で11月~3月は暖かい)でテストをするようになったが、予算がやや少ないMoto2クラスやMoto3クラスのチームはバレンシアサーキットやヘレスサーキットでテストをすることが多い。
バレンシアサーキットは冬の雨が少なく、テストが雨で潰れる危険性が少ない。11月~3月の雨が少ないという点で、本サーキットはヘレスサーキットよりも優れている。
ヘレスサーキット近くのヘレス・デ・ラ・フロンテーラとバレンシアサーキット近くのバレンシアの11月~3月の降水量を比較すると次のようになる。
| 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 資料 | |
| ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ | 96 | 109 | 78 | 56 | 37 | ◇![]() |
| バレンシア | 51 | 52 | 36 | 32 | 35 | ◇![]() |
とはいえ、バレンシアサーキットはやや特殊なレイアウトでテスト走行に向かないということも事実である。ヘレスサーキットは低速コーナーと中高速コーナーがバランスよく配置されていてテストコースとして最適なのだが、バレンシアサーキットは中高速コーナーがやや少なくて低速コーナーのほうが多く配置されておりテストコースにはあまり向いていない。
メインストレートの外側にコントロールタワーとレストランがある。どちらも直方体の建物で、簡潔な見た目である。
コントロールタワーは、レース運営の人が占拠してタイム計測をしたりペナルティを下すかどうかの判断をしたりする場所である。背が高くて横に狭い8階建ての建物で、灰色に塗装されている。1コーナーのほうから見ると文字が見えないし(画像
)、最終コーナーのほうから見ても文字が見えないが(画像
)、メインストレートの反対側から見ると「Circuit Ricardo Tormo」の文字が書かれている(画像
)。
レストランは、ちょっと高い料金を払った観客が優雅に観戦するところである[1]。背が低くて横に長い4階建ての建物で、灰色に塗装されている。屋上にナイフとフォークの絵を描いた看板がある(画像1
、画像2
)。そして、このレストランの壁にはリカルド・トルモの肖像画が掲げられていて、その下に「THE LEGEND」と書いてある(画像1
、画像2
、画像3
)。
改めて位置関係を説明すると、メインストレートの1コーナー寄りの場所からチェッカーラインを見た場合、手前が背の高いコントロールタワーで、奥が背の低いレストランということになる(画像
)。
2015年11月まではこれらの建物は黄色とオレンジ色の中間色に塗装されていた(画像1
、画像2
)。2016年4月頃に塗装が行われ(画像
)、2016年11月には黒っぽい灰色に変わっている(画像
)。2017年4月には、コントロールタワーに「Circuit Ricardo Tormo」の文字を貼り付ける作業が行われた(画像
)。
ちなみに、2014年11月まではレストランの壁面が平凡なポスターだった(画像
)。2015年11月にはレストランの壁面にリカルド・トルモの肖像画が掲げられている(画像
)。
2016年4月には「レストランを4ツ星ホテルに改装する計画が進んでいる」という報道が行われたが(記事1
、記事2
、記事3
)、その計画は進んでいないようである。
最終コーナーに青い池がある。最終コーナーの外側から青い池とメインストレートとレストランを映すのが定番のカメラアングルである(画像
)。
メインストレートの下には地下道が2ヶ所ある。1つはスターティンググリッドの真下のこの場所
で、もう1つは1コーナー進入のこの場所
である。
転倒してコース内側に放り出されたライダーは、この地下道をくぐって移動してコース外側にあるピット施設に辿り着くことになる。
高速道路A-3を降りたトラックは、一般道路を通り、この場所
にまで辿り着く。ここにサーキットの正門があり(ストリートビュー
、画像
)、検問を受けたトラックが通っていく。
2016年11月までの縁石は、スペイン国旗やバレンシア州旗にならい黄色と赤色になっていた(画像
)。2017年11月になると、縁石の色がオレンジ色と白色に変わった(画像
)。
サーキットの外側のどこかにオレンジの木を植えてあり、レース開催中にオレンジを映すことがある(画像1
、画像2
)。バレンシアといったらバレンシアオレンジなので、そういう写真を撮る。
このサーキットもTTサーキット・アッセンのような「ピコーンピコーン」というサイレンが鳴らされる(動画
)。
4~5コーナーのイン側、7~8コーナーのイン側、11~12コーナーのイン側の地面において、何らかの木が等間隔に植樹されている(航空写真1
、航空写真2
)。2016年から植えられたようである。
本サーキットは、コースをぐるりとスタンドが囲むスタジアム形式になっている。観客にとってはどこのスタンドからもレースの状況がよく分かり、非常に観戦しやすい。
サーキットが売り出すチケットの種類を示す画像
を見てみると、コースのほとんどを観客席で囲んでいることが分かる。観客席が隣接していないのは、最終14コーナーからメインストレート中盤の部分だけである。
メインストレートの中盤から終盤にかけて、ピット施設が隣接している。そのピット施設の上に観客席を設置している(画像
)。
1コーナーから2コーナーにかけて観客席が連続的に設置してあり(画像
)、また2コーナーから最終14コーナーまで、観客席が連続的に設置してある(画像
)。
メインストレートの中盤から最終14コーナーまで観客席が連続しているので、観客席でウェーブが起こることがある(動画
)。
広々としたコースを作ってから観客席でぐるりと囲むと、大勢の観客が押しかけても観客席に空席が目立ってしまい、スタジアム形式が名ばかりのものになってしまう。
このためバレンシアサーキットは、コースを狭い面積に詰め込んで、そうした上で観客席でぐるりと囲んでいる。こうすればどこの観客席も満員になり、正真正銘のスタジアム形式になる。
狭い面積にコースを詰め込んでいるので、コーナー数が多くなっている。狭い面積にぎっしりとコーナーを詰め込んでいる様子は、自動車教習所を連想させる。
ちなみにバレンシアサーキット
は、ツインリンクもてぎのオーバル
とだいたい同じ大きさである。上の2つの航空写真の縮尺はほぼ同じで、見比べてみるとだいたい同じ大きさだと分かる。
バレンシアサーキットのいくつかのコーナーには異名が付けられている。
| 名称 | 由来 | |
| 1コーナー | ホルヘ・マルチネス・アスパー(Jorge Martínez Aspar) | MotoGPの80ccクラスで3回、125ccクラスで1回のチャンピオンを獲得したホルヘ・マルチネスのこと。バレンシア州出身である。アスパーは「エスパドリーユ 」という意味で、靴屋の孫であるホルヘ・マルチネスに付けられたニックネームである。 |
| 2コーナー | ミック・ドゥーハン(Mick Doohan) | MotoGPの500ccクラスで5回のチャンピオンを獲得したミック・ドゥーハンのこと。オーストラリア出身だが、このサーキットのコーナー名になっている。 |
| 3コーナー | ||
| 4コーナー | ニコ・テロル(Nico Terol) | 2011年にMotoGPの125ccクラスチャンピオンを獲得したニコラス・テロル のこと。バレンシア州出身である。 |
| 5コーナー | ||
| 6コーナー | アンヘル・ニエト(Angel Nieto) | MotoGPの50ccクラスで6回、125ccクラスで7回のチャンピオンを獲得したアンヘル・ニエト のこと。スペインの首都マドリッドで育った。生涯で13回のチャンピオンを獲得したが、13という数字を嫌って「12+1」というステッカーを好んで貼っていた(画像 )。 |
| 7コーナー | コルヴァ・デ・ラ・アフィシオン(Curva de la Afición) | 「趣味のカーブ」といった意味。 |
| 8コーナー | ||
| 9コーナー | ||
| 10コーナー | ||
| 11コーナー | ||
| 12コーナー | チャンピ・エレロス(Champi Herreros) | 1989年にMotoGP80ccクラスのチャンピオンになったスペイン出身のマヌエル・エレロス のこと。チャンピは彼に付けられたニックネームで、「キノコ」という意味である。1989年のチャンピオンは勝利を挙げず2位を4回獲得して得られた。ちなみに1989年は、80ccクラスを最後に開催した年である。 |
| 13コーナー | ||
| 14コーナー | エイドリアン・カンポス(Adrián Campos) | バレンシア州出身の四輪レーサーであるエイドリアン・カンポス のこと。ドライバーとしてF1に2年間参戦し、現役を引退してからは四輪レーシングチームの監督として活躍している。 |
コース全長は4005mで、2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で上から18番目であり、小さいサーキットである。コーナー数は14ヶ所で、2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で上から9番目である。つまり、「コースの長さに対してコーナーの数が多いサーキット」ということができる。
もっとも長い直線は876mで、2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で上から10番目となっている。そのため、最高速はそれなりに高くなっており、2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で上から10番目程度となっている。
それでもコーナー数が非常に多いことが影響して、平均速度を著しく低くしている。2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で、平均速度が最下位となっている。
「わりと長い直線が1本あり、それ以外はコーナー、コーナー、またコーナー」といった感じのレイアウトである。
ハードブレーキングの箇所が少なく、コーナー数がやたらと多い。マシンが垂直になる状態が短く、常にマシンが左右のどちらかに倒れているという、忙しいサーキットである。
切り返しが多く、アクセルを開けずに待つ時間が長く、休むに休めず、気が抜けない。とにかくストレスの溜まるサーキットといえる。
路面のカント(左右の傾斜)が少ないフラットなコースで、フロントもリアもグリップが薄く感じられ、タイヤも温めにくい。ライダーにとって難しく、緊張させられるサーキットである。
路面の勾配(前後の傾斜)がかなり多いコースで、少し難しい。
こちら
がMotoGP公式サイトの使用ギア明示動画である。一番低いギアは2速で、1速を使わない。
主なパッシングポイントは、メインストレート
、1コーナー
、2コーナー
、4コーナー
、6コーナー
、8コーナー
、11コーナー
、最終14コーナー
となっている。
2013年のMoto3クラス決勝で女性ライダーのアナ・カラスコ
が8位に入賞した。
このサーキットは筋力を要求するハードブレーキングのコーナーが非常に少ない。筋力の点でどうしても後れを取る女性ライダーでも太刀打ちできるコースなのである。
バレンシアGPは11月に開催されるため、秋真っ最中であり、朝晩が結構冷える。路面温度が午前と午後で10度以上の差が出てしまう。
金曜日の朝一番に行われるMoto3クラス・FP1の路面温度と、金曜日の午後の最後に行われるMoto2クラス・FP2の路面温度が大きく変化した例は、次の通りである。
| 朝一番 | 午後 | 路面温度の変化 | |
| 2010年の金曜日(晴れ) | 路面温度10度 | 路面温度28度 | 18度上昇 |
| 2013年の金曜日(晴れ) | 路面温度13度 | 路面温度25度 | 12度上昇 |
| 2016年の金曜日(晴れ) | 路面温度11度 | 路面温度27度 | 16度上昇 |
| 2017年の金曜日(晴れ) | 路面温度9度 | 路面温度22度 | 13度上昇 |
これだけ路面温度が変わるとマシンのセットアップにも大きな影響がある。午前中のウォームアップで仕上げたマシンが午後にはイマイチになる、ということもありうる。
最終14コーナーは進入部分から脱出部分に至るまで一貫して下り勾配になっている。
最終14コーナーを脱出したあと、ピットレーン入り口のあたりでグイッと上り勾配になっている(画像
、動画
)。
ピットレーン入り口付近からは緩やかな下り勾配が続いていく。876mの長い下り勾配の直線で目一杯加速し、各マシンは最高速に到達する。
Googleアース
で路面にカーソルを合わせると右下に標高が表示されるが、最終14コーナー脱出部分が標高155mで、メインストレートは一貫して下り勾配になっており、1コーナーが標高145mである。高低差は10mで、3階建てビルと同じぐらいである。
この写真
やこの写真
を見てもメインストレートが下って斜めになっていることがよく分かる。メインストレートが下り勾配だが建物を斜めにするわけにはいかないので、階段のようにしている。
メインストレートに隣接するピットロードも下り坂
である。
1コーナーは下っており、速度が乗りやすく、マシンを減速しにくい。最大排気量クラスではリアタイヤを浮かせるジャックナイフがよく見られる(画像
)。
1コーナーは直角(90度)よりも緩い角度(105度ぐらい)の高速コーナーで、ブレーキを掛けすぎずに速度を保たねばならない。
1コーナーはけっこう難易度が高い高速コーナーで、ここをオーバーランしてしまうライダーも多い。
2009年には250ccクラスでチャンピオン争いを続ける青山博一が1コーナーでオーバーランし(動画
)、日本人観戦者を絶叫させた。
2017年にはチャンピオン争いを続けるマルク・マルケスが1コーナーにて転倒しそうになっている(動画
)。
先行車と同等のエンジンパワーがある場合は、メインストレートでスリップストリームを効かせつつ横に並びかけ、1コーナーでパッシングすることができる。
先行車よりも低いエンジンパワーで最高速が時速で5km以上遅い場合、メインストレートでスリップストリームを効かせていても横に並び掛けることができないので、1コーナーでのパッシングが難しい。そういうときは1コーナーで抜きに掛からず先行車の真後ろに付いたまま1コーナーを旋回する。先行車の真後ろについているのだからスリップストリームがよく効き、1コーナーにおけるコーナーリング速度が上がる。そして、続く2コーナーでのパッシングに挑むのである。
2コーナーまでは上り勾配になっている。Googleアースで調べると、1コーナーの標高は145mで、2コーナーの標高は150mであり、なかなかの上りである。
2コーナーはパッシングが多いところだが、フロントからスリップダウンする転倒が多い場所でもある。
2コーナーと3コーナーは同じぐらいの標高だが、3コーナーから4コーナーの進入まではかなりの下り勾配になっている。
4コーナーは右コーナーで、冷え切ったタイヤ右側を久々に使うコーナーであり、転倒が多い難所となっている(動画
)。
本サーキットで一番の危険な場所である4コーナーを慎重に走り終えたことで気が緩み、5コーナーで転倒することが多い(動画
)。5コーナーに入るときもまだタイヤの右側が温まりきっていないので、5コーナーは転倒多発地帯となる。
5コーナーを立ち上がってから6コーナーまでの短い直線は上り勾配になっている。短い距離でありながら、5mほどを駆け上がる。5mというのは2階建てビルと同じぐらいである。
6コーナーの脱出から7コーナーまでじわじわと上り勾配になっている。7コーナーは珍しい高速コーナーで、ここで背後にぴたりと付けて、スリップストリームの恩恵を受けたい。
8コーナーの進入部分は同じ勾配が続く場所だが、脱出部分が急な下り勾配になっていて、進む先が見えないブラインドコーナーとなっている。ライダーはブレーキングポイントを見つけづらく、なかなか難しい。
9~10コーナーはこのサーキット唯一のS字であり、各ライダーが華麗に切り返す。
ライダーがS字を切り返している姿が見えたら「9~10コーナーでこれから後半に入っていくんだな」と見て良い。
10コーナーは右コーナーで、使用頻度が低く冷えやすいタイヤ右側を久々に使う場所で、転倒が多い。フロントタイヤがグリップを失うスリップダウンや(動画
)、リアタイヤが滑って制御不能になり振り落とされるハイサイド転倒が(動画
)、過去に繰り返されてきた。
11コーナーは半径が小さいUの字ヘアピンで各ライダーの速度が落ち、パッシングしやすい場所である。
バレンシアGPは11月に開催されるため、太陽の高さがずいぶん低くなっている。それを実感するのは12コーナーで、ここを切り返すときのライダーは真西を向く格好になる。午後3時頃に走行している場合、太陽の光が眼に入ることがあり、なかなかうっとおしい。
Moto2クラスの予選は現地時間の午後3時~午後4時に行われる。Moto2の前方車載カメラの画像を見ると、12コーナー付近で西日が視界に入ることがよく分かる。
バレンシアサーキットはコース全長に対してメインストレートの割合が大きいサーキットなので、タイム向上のためにメインストレートを速く走ることを狙っていきたい。そのためには最終14コーナーを上手く走る必要があり、それには13コーナーを上手く進入すべきで、さらには12コーナーを上手く止める必要がある。この12コーナーはタイムの良し悪しに直結する場所になっている。
12コーナーの途中は登り坂になっており、フロントを浮かせてリアタイヤ一本で切り返すこともある(動画
)。ライダーのテクニックを大きく問われるコーナーである。
13コーナー~最終14コーナーは、左コーナーが連続する場所になっている。
同じ左コーナーが続くのだが、途中まで上り勾配で、途中から下り勾配になっていて、山のようである。
上り勾配の部分を13コーナー、下り勾配の部分を14コーナーと呼ぶ。
Googleアースで調べると、12コーナーの標高が155mで、そこからどんどん上り勾配になり、13コーナーで標高164mになる。そしてそこからどんどん下り勾配になり、最終14コーナーの脱出部分では標高155mになる。最終14コーナーは、9mほどを一気に下りながら曲がるコーナーとなっている。
Moto2クラスやMotoGPクラスでは、13コーナーや最終14コーナーでライダーたちが見事なドリフト走行を披露する。深いバンクのまま高速コーナーリングしつつリアタイヤがスライドし、カウンターステアとなり、フロントタイヤが(左コーナーなのに)右方向を向く(動画
)。
最終14コーナーは一気の下りとなっていて、ライダーが沈んでいくように見える。下り勾配で、先が見えないブラインドコーナーとなっていて、難しい。
この最終14コーナーはコーナー外側が見えづらく、ブレーキングポイントを見つけにくい。ミスしてブレーキングが遅れるとアウト側に孕んでしまい、メインストレートの車速が落ちてしまう。前にライダーがいるとブレーキングポイントをなんとか見つけることができるのだが、前にライダーが誰もいない単独走行だとブレーキングポイントを見失いやすい。単独走行しているライダーがセクター4(最終14コーナーを含む区間)でタイムを落とすケースがしばしば発生する。
ロングストレートの前のコーナーではパッシングを仕掛けずに綺麗なラインを通りストレートでの加速に備える、というのが格言だが、最終コーナーは超低速コーナーなので、その格言を無視して抜きにかかるライダーもいる。
最終14コーナー立ち上がり付近からメインストレートにはタイヤカスが転がっていることが多い。2014年
、2015年
、2016年
がタイヤカスだらけだった(2017年
は比較的に綺麗だった)。タイヤカスを踏んづけてしまうと大変で、そのタイヤカスがタイヤにめり込んで付着してしまう。すぐに取れてくれれば良いが、しばらくタイヤに付着したままになり乗り心地が最悪になることが多い。もちろん走行速度も落ちてしまう。
最終14コーナーで一気に接近して並びかけ、そのまま横に並んだ2台がぴたりと併走することがある。そういうとき、ライダー同士が肘を出してお互いをつつき合うことがある。そうした光景は2013年Moto2クラス決勝ラストラップで見られた(動画
)。
これは意地悪やラフプレーのため行っているのではなく、安全確保のために行っている。バイク2台がぴたり横に並んで併走すると、サイドスリップが効いてカウルサイドの乱気流が発生し、お互いが吸い込まれるように少しずつ接近する。接近しすぎると衝突してしまうので非常に危ない(動画1
、動画2
)。このため、接触を避けるためにライダーは安全のため相手ライダーを肘でつつく(動画1
、動画2
)。
ちなみにサイドスリップでマシンが加速することもある。スリップストリームは横に付けたときも発生するのである。
バレンシアサーキットは「キャリア初優勝」が起こりやすいサーキットである。
1990年から2017年までに13回以上MotoGPを開催した15ヶ所のサーキットで、キャリア初優勝が起こった確率を算出してみた。
| 優勝総数 | キャリア初優勝 の数 |
キャリア初優勝 の発生確率 |
|
| バレンシアサーキット | 57 | 9 | 15.8% |
| 鈴鹿サーキット | 39 | 6 | 15.4% |
| ヘレスサーキット | 84 | 11 | 13.1% |
| ル・マンブガッティサーキット | 63 | 8 | 12.7% |
| TTサーキット・アッセン | 84 | 9 | 10.7% |
ドニントンパーク![]() |
60 | 6 | 10.0% |
| ブルノサーキット | 81 | 8 | 9.9% |
| カタルーニャサーキット | 78 | 7 | 9.0% |
| ツインリンクもてぎ | 57 | 5 | 8.8% |
| ロサイル・インターナショナルサーキット | 42 | 3 | 7.1% |
| ザクセンリンク | 60 | 4 | 6.7% |
エストリルサーキット![]() |
39 | 2 | 5.1% |
| ムジェロサーキット | 81 | 4 | 4.9% |
| フィリップアイランドサーキット | 66 | 2 | 3.0% |
| セパン・インターナショナルサーキット | 56 | 1 | 1.8% |
トリッキーなコースでベテランライダーでさえ足元をすくわれる可能性が高いこと、10何戦も続く長いシーズンを経ていて若手ライダーが技量を上達させた状態で臨むこと、CEV(スペインなどで行われる若手向け選手権)が毎年行われていて若手ライダーが多くの走行経験を重ねているサーキットであること、そうした要因が重なり合って、バレンシアサーキットでのキャリア初優勝が増えていると推察される。
ちなみに、集計の際に判明したライダーの名前は以下の通りになる。











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最終更新:2025/12/11(木) 04:00
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