ヤングケアラー(英young carer)([1])とは、弟妹の世話や家族の介護・家事など、本来は大人が担う役目を日常的に行っている子どものことである。
現在のところ法的定義はないが、日本では概ね18歳未満の未成年者を対象[2]とする。本項では、主に日本のヤングケアラ―について述べる。
いつ頃からある概念かは定かではないが、文部科学省では令和2(2020)年度から毎年実態調査が行われている。なお、日本の省庁[3]では以下のように規定している。(2022年11月3日現在)
法令上の定義はありませんが、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもとされています。(厚生労働省特設サイト「ヤングケアラーについて」より)
家事や家族の世話をすること自体は、家族という共同生活集団の一員が果たす役割として不自然なことではないが、年齢にそぐわない責任や負担を背負うことで学業・就職などの進路選択や交友関係に著しく支障をきたすことが問題となっている。家族のケアや家事を理由に、放課後に友達と遊んだり家庭学習の取り組んだりできない、クラブ活動・部活動に入れない、家族の世話を理由として夏休みの遠出や修学旅行等に行けない等の事態は、健全な児童・生徒の発達に多大な影響をもたらす。中学校を卒業後、家族のために就労を余儀なくされ、低水準の労働環境しか選べないことも課題である。
子どもにとって、友人を作り一緒に遊ぶ時間は健全な心身の発達を促す貴重な時間である。ジャン=ジャック・ルソーは、幼少期には特有の感性や価値観が存在し、それらは尊重し守られるべきだとして「子どもの発見」という主張をした。中世まで「子ども=小さな大人」という扱いが世界中で一般的であり、徒弟制度や丁稚奉公[5]・家業の手伝いをして成人となることは当たり前のことであった。しかし、印刷技術や産業革命に伴う職業と社会構造の高度複雑化は、読み書きをはじめとする多様な能力をある程度獲得していることが前提の世界を作り上げた。現代社会では、読み書き計算以外にICTリテラシーも重視される[6]など求められるスキルは増加の一途であり、子どもとされる範囲は伸びているという考えもある。
ほかの子どもが当たり前に享受している「子どもとしての時間」を引き換えにケア責任を担う背負う子どもたちは、自覚がないまま進路選択を狭められてしまっているのが現状である。また、時間的拘束と肉体疲労以外だけでなく感情面の負担も大きいことも指摘されている。
ヤングケアラー当事者にとっては、当たり前のことと考えたり、家庭のことを相談することに恥ずかしさや抵抗感を覚えたりすることがある。「自分の家は普通ではないのか?」と家族や家庭環境を疑うことは子どもにとって相当のストレスであり、ましてや誰かに相談することは心理的ハードルが高いことである。また、ケア対象が家族であることから逃げ場のない苦しみを抱く子どももいる。
近所や学校教員など周囲の大人にとっては、他所の家庭環境というプライベートな領域に踏み入ることに抵抗感を覚えたり、いらぬおせっかいがトラブルを招くことを危惧して不干渉の態度をとる大義名分が立ちやすい。また、核家族世帯の増加等やライフスタイルの多様化も地域コミュニティの希薄化に拍車をかけている。警察や児童相談所等も誤報による訴訟等を警戒して、「慎重な対応」にとどまるケースも多い。
そして、仮にヤングケアラ―がSOSを発しても、周囲の慎重な対応や悪い意味での自己責任を押しつけられる経験を重ねることで「相談しても無駄ではないか」という無力感に至り、事態がより見えにくくなる悪循環もある。こうしたSOS発信と受信の難しさは、老老介護や介護自殺等の大人にも起こりえる問題と共通している。
厚生労働省・文部科学省の副大臣を共同議長とするヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチームの第2回会議は、令和3(2021)年度のとりまとめとして、今後の施策の指針を以下のように示している。
○ 福祉・介護・医療・教育等関係機関、専門職やボランティア等へのヤングケアラーに関する研修・学ぶ機会の推進
○ 地方自治体における現状把握の推進2 支援策の推進
○ 悩み相談支援
支援者団体によるピアサポート等の悩み相談を行う地方自治体の事業の支援を検討(SNS等オンライン相談も有効)。
○ 関係機関連携支援・ 多機関連携によるヤングケアラー支援の在り方についてモデル事業・マニュアル作成を実施(就労支援を含む)。
・福祉サービスへのつなぎなどを行う専門職や窓口機能の効果的な活用を含めヤングケアラーの支援体制の在り方を検討。○ 教育現場への支援 スクールソーシャルワーカー等の配置支援。民間を活用した学習支援事業と学校との情報交換や連携の促進。
○ 適切な福祉サービス等の運用の検討 家族介護において、子どもを「介護力」とすることなく、居宅サービス等の利用について配意するなどヤングケアラーがケアする場合のその家族に対するアセスメントの留意点等について地方自治体等へ周知。
○ 幼いきょうだいをケアするヤングケアラーがいる家庭に対する支援の在り方を検討。3 社会的認知度の向上
2022年度から2024年度までの3年間をヤングケアラー認知度向上の「集中取組期間」とし、広報媒体の作成、全国フォーラム等の広報啓発イベントの開催等を通じて、社会全体の認知度を調査するとともに、当面は中高生の認知度5割を目指す。
文部科学省は、福祉、介護、医療、教育等、関係機関が連携し、ヤングケアラーを早期に発見して適切な支援につなげることを掲げている。全国の学校に向けて、ヤングケアラ―(疑いも含む)に当てはまる児童・生徒の実態把握と適切な関係諸機関の連携を要請している。理由として、欠席早退、課外活動への不参加など、子どもの異変に家族以外で気づきやすい立場が教員であるとしているが、教員自身が職務内容の増加、公立学校の給特法[7]に基づく不透明な残業等の課題を抱えている。また、かつて一般的だった家庭訪問や電話連絡網の作成が廃止され、オンライン授業準備や不登校生徒の対応など学校内のセーフティーネット構築も重視されるなど、学校現場を取り巻く状況は大きく変化している。
なお、令和2年度の実態調査[8]では、回答した中学校の46.6%、全日制高校の49.8%にヤングケアラーが「いる」という結果が出ている。また、同調査では、「家族の中にあなたがお世話をしている人はいますか」という質問に対し、「いる」と答えた中学2年生は5.7%(17人に1人)にのぼり、1クラスあたりヤングケアラ―は2名[9]はいると推定される。
厚生労働省で2022年1月に有識者シンポジウムを開催し、タレントの武井壮の対談動画を公開した。武井壮は幼少期に兄と二人で生活していた時期があり、当事者の一人として今回のシンポジウムに参加した。
埼玉県や三重県を皮切りに地方自治体では、ヤングケアラ―支援条例(2020年~)が制定されるなど、少しずつ対応のために行政も動き始めている。また、民間でも宮崎成吾氏が中心となって一般社団法人ヤングケアラ―連盟が設立され、コミュニティ組織Yancle Community(日本最大のケアラーコミュニティ:2022年現在)が運営されている。
■電話相談
■SNS相談
■コミュニティ組織
ヤングケアラーに関するニコニコミュニティもしくはニコニコチャンネルを紹介してください。
現状まだ、存在していません。
掲示板
18 ななしのよっしん
2024/02/29(木) 14:11:56 ID: fqMkcPQQdU
「ヤングケアラーは、かっこいい」 厚生労働省作成の啓発ポスターが物議…… 「ズレてる」「美化しないで」
https://
嫌な注目を受けている
19 ななしのよっしん
2024/03/29(金) 16:30:36 ID: R9L1ZogUni
やり方がまんま昭和の薄っぺらい美化称賛のヨイショだ
そんなやり方で誤魔化せる段階じゃないのに
20 ななしのよっしん
2024/11/01(金) 20:45:34 ID: shPWUYjlOl
戦前から1970年頃の時点でも、百姓の子供に学はいらん、子供も労働させないと稼業が回らないという家庭は存在して、先生が家庭訪問で親を説得する、子供を連れ戻しに学校に乗り込む父母、という過去もあった。
つまり百年保たずに戻ってきてしまってると見るしかないんじゃないのか。
義務教育という制度の本来の精神は立派だけど…。
別面では、受験競争やいじめ暴力が深刻、という学業になんの関係もない汚染があるのも現状。
また、文明が積み上がるほど義務教育期間、基礎学力学習期間は伸び続けてしまう、しかしそれだと労働人口が足りなくなる、だけど基礎学習不足の人間は高度文明の労働はできない、という問題もあると思うが、この点の議論はさっぱり聞かない。
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最終更新:2024/12/27(金) 01:00
最終更新:2024/12/27(金) 01:00
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