森秀行

森秀行(もり・ひでゆき)とは、JRA・栗東トレーニングセンター所属の調教師である。
海外遠征に積極的な一方、その裏返しともいえるが、超合理主義でも知られる。

概要

1959年3月12日生まれ。実家は印刷所と競馬とは縁がないところで生まれる。

高校卒業後調教師は儲かると聞き、北海道で修行を積んだ後、二冠馬ミホノブルボンを育てることになった故・戸山為夫調教師の弟子になる。

1993年に戸山師が死去し、それを受け継ぐ形で厩舎を開業。故障休養中の二冠馬ミホノブルボンを走れない馬を預かるわけにはいかないと拒否し、早くも超合理主義の片鱗を見せた。一方で戸山師から引き継いだレガシーワールドは同年にジャパンカップを勝ち、厩舎開業年に早くも初GI勝利をもたらした。

受賞歴

• JRA賞優秀技術調教師 4回 (1994年・2001年・2003年・2006年)
• JRA賞最多勝利調教師 2回 (2001年・2006年)
• JRA賞最高勝率調教師 1回 (1994年)

超合理主義

森調教師といえば超合理主義といわれる。
これは「馬を預かったからには馬主のためならばどんな手を使ってでも一円でも多く稼ぐ」といったポリシーで、時に賛否両論が起こることもある。同じようなポリシーを標榜するのは他の厩舎にもないわけではない（例えば矢作芳人厩舎も「一銭でも多くぶんどる」考えで倹約につとめ勝てる相手を選んだレース出走を行っている）が、森師の場合は成績下位の馬に対する極端な事例が目立つのが特徴的である。

例を挙げると……

• 戸山師の弟子で自身の兄弟子でもあったベテラン騎手小島貞博、小谷内秀夫をいっさい起用しなかった。夫婦ともども実の息子かのように両騎手を愛していた戸山未亡人はこれに対して「森はいったい誰に育ててもらったと思っているのか」と不快感を隠さなかったが、森は「馬を預けてくれる馬主に対して、はっきり言えば技量の劣る騎手を乗せます、とは自分の口からは言えない」と明言した（なお戸山師は馬主に対して、馬を預かるに際し必ず「うちに馬を預けていただいた場合、ヤネは必ず小島か小谷内を乗せる。それが嫌なら他の厩舎に預けてもらって構わない」と事前に断りを入れていた）。もっとも、小島はその窮状を見かねた戸山厩舎の兄弟子・鶴留明雄調教師の後ろ盾を得て、チョウカイキャロルでオークスに勝ち、そしてタヤスツヨシで2度目のダービー優勝の栄光を得るに至る。
• 1997年当時まだ権威があったジャパンカップ(GI)に重賞未勝利のスノーエンデバーを出走手当目的で出走させた(14頭立て13着)。
• 2018年弥生賞(GII)に未出走馬のヘヴィータンクを出走手当目的で出走させた(10頭立てシンガリ負け、9位入線馬から20.7秒差)。なお翌年から未出走馬・未勝利馬が重賞などで特定のタイム差以上を付けられた場合手当が交付されない「ヘヴィータンクルール」が施行された。
• 2020年もみじS(OP)に新馬戦ブービー・未勝利戦シンガリ負けの未勝利馬ジャスパーメジャーを出走手当目的で出走させた(8頭立てシンガリ負け)。なおこの馬は上記の「ヘヴィータンクルール」をクリアし手当が貰えた模様。
• 2020年に重賞未勝利馬ヨシオをジャパンカップ(芝GI)、チャンピオンズカップ(ダートGI)と連闘させ(両方ともシンガリ負け)、翌年1月から3月にかけて障害を使った。ジャパンカップ出走は馬主（故人）の夢だったといいまだ理解のできるものだったが、連闘のチャンピオンズカップには特に疑問の声が集まった。

海外遠征

森は1994年の香港カップ以降から稼ぐ選択肢の一つとして海外遠征を積極的に取り入れている。また、早い時期から海外遠征馬に帯同馬を取り入れている。ちょっと海外競馬に詳しい人ならば「日本のほうが賞金が高いんじゃないの？」と思うかもしれないが、繁殖馬としての価値が上がることも考慮に入れてのことである。

競争名	施行日	参戦馬	着順	備考
香港カップ	1994年12月11日	フジヤマケンザン	4着
クイーンエリザベス2世カップ	1995年4月1日	フジヤマケンザン	10着
ケンタッキーダービー	1995年5月6日	スキーキャプテン	14着	日本調教馬の米三冠競走初出走
香港ヴァーズ	1995年12月10日	タニノクリエイト	4着
香港マイル		ドージマムテキ	5着
香港カップ		フジヤマケンザン	1着	日本調教馬の海外グレード競走初勝利
香港マイル	1996年12月8日	ドージマムテキ	2着
香港カップ		シーズグレイス	9着
モーリスドゲスト賞	1998年8月9日	シーキングザパール	1着	日本調教馬初欧州GI勝利
ムーランドロンシャン賞	1998年9月6日	シーキングザパール	5着
サンタモニカハンデキャップ	1999年1月23日	シーキングザパール	4着
アベイドロンシャン賞	1999年10月3日	アグネスワールド	1着
		ドージマムテキ	13着
キングズスタンドステークス	2000年6月20日	アグネスワールド	2着
		ドージマムテキ	22着
ジュライカップ	2000年7月13日	アグネスワールド	1着	日本調教馬初英国GI勝利
キングジョージVI世&クイーンエリザベスS	2000年7月29日	エアシャカール	5着
モーリスドゲスト賞	2000年8月6日	ドージマムテキ	11着
ブリーダーズカップ・スプリント	2000年11月4日	アグネスワールド	8着
ゴドルフィンマイル	2001年3月24日	ノボトゥルー	9着
マンノウォーステークス	2001年9月8日	フサイチゼノン	4着
クリスフライヤーインターナショナルスプリント	2002年5月11日	エアトゥーレ	3着
モーリスドゲスト賞	2002年8月11日	エアトゥーレ	2着
スプリントカップ	2002年9月7日	エアトゥーレ	11着
ジュライカップ	2004年7月8日	シーキングザダイヤ	11着
シティウォールステークス	2004年7月10日	ドルバコ	4着
モーリスドゲスト賞	2004年8月8日	シーキングザダイヤ	15着
		ドルバコ	18着
シンガポール航空インターナショナルカップ	2005年5月15日	シーキングザダイヤ	7着
ゴールデンジュビリーステークス	2005年6月18日	キーンランドスワン	10着
ジュライカップ	2005年7月7日	キーンランドスワン	12着
クレイグリーステークス(豪)	2005年9月3日	フサイチオーレ	12着
アスコットベールステークス(豪)		ゼンノゴウシュウ	9着
ダットタンチンナムステークス(豪)	2005年9月10日	トーセンダンディ	10着
マニカトステークス(豪)		キングオブサンデー	12着
クランポーンカップ(豪)	2005年10月5日	トーセンダンディ	2着
フライングハンデキャップ(豪)		キングオブサンデー	10着
ハロルズファッションプレート(豪)	2005年10月8日	ゼンノゴウシュウ	12着
コックスプレート(豪)	2005年10月22日	トーセンダンディ	11着
ベンディゴカップ(豪)	2005年11月9日	トーセンダンディ	6着
マジックミリオンズトロフィー(豪)	2006年1月14日	ゼンノゴウシュウ	16着
ウイリアム・レイドステークス(豪)	2006年2月18日	ゼンノゴウシュウ	10着
ジェイコスプリント(豪)	2006年3月18日	ゼンノゴウシュウ	9着
UAEダービー	2006年3月25日	ガブリン	7着
ドバイゴールデンシャヒーン		アグネスジェダイ	6着
ドバイワールドカップ		スターキングマン	7着
トロア&ウイリアムハンデキャップ(豪)	2006年8月28日	フサイチオーレ	12着
アスコットベールステークス(豪)	2006年9月3日	ゼンノゴウシュウ	11着
カランケミカルフライングハンデキャップ(豪)	2006年9月16日	フサイチオーレ	9着
アルバスタキヤ	2007年3月1日	ビクトリーテツニー	2着
マハーブアルシマール		アグネスジェダイ	5着
UAEダービー	2007年3月25日	ビクトリーテツニー	5着
ドバイゴールデンシャヒーン		アグネスジェダイ	10着
		シーキングザベスト	11着
UAEダービー	2016年3月26日	ユウチェンジ	3着
		オンザロックス	5着
ドバイゴールデンシャヒーン	2018年3月31日	マテラスカイ	5着
アイリッシュサラブレッドマーケティングカップ (カタール)	2019年2月22日	ユウチェンジ	9着
ドバイゴールデンシャヒーン	2019年3月30日	マテラスカイ	2着	日本調教馬同競走初連対
ブリーダーズカップ・ジュヴェナイル	2019年11月1日	フルフラット	5着	日本調教馬初の2歳馬の海外GI出走
ブリーダーズカップ・スプリント	2019年11月2日	マテラスカイ	8着
サウジアスプリント	2020年2月29日	マテラスカイ	2着	サウジカップデー設立年
サウジダービー		フルフラット	1着	同上、日本調教馬初のサウジアラビアの競走勝利
ブリーダーズカップ・スプリント	2020年11月7日	ジャスパープリンス	14着
リヤドダートスプリント	2021年2月20日	マテラスカイ	2着
サウジダービー		ピンクカメハメハ	1着	森厩舎の同競走連覇
UAEダービー	2021年3月27日	フランスゴデイナ	6着
		ピンクカメハメハ	10着
ドバイゴールデンシャヒーン		マテラスカイ	12着
プリークネスステークス	2021年5月15日	フランスゴデイナ	7着
ベルモントステークス	2021年6月5日	フランスゴデイナ	8着

管理馬のGI(級)勝利

• レガシーワールド(1993年ジャパンカップ)
• フジヤマケンザン(1995年香港カップ、但し当時国際グレードはGII)
• シーキングザパール(1997年NHKマイルカップ、1998年モーリス・ド・ゲスト賞)
• アグネスワールド(1999年アベイ・ド・ロンシャン賞、2000年ジュライカップ)
• エアシャカール(2000年皐月賞、菊花賞)
• ノボトゥルー(2001年フェブラリーステークス)
• ノボジャック(2001年JBCスプリント)
• スターキングマン(2003年東京大賞典)
• キャプテントゥーレ(2008年皐月賞)

関連動画

関連商品

関連コミュニティ・チャンネル

関連リンク

• 森秀行 / Twitter - ※但し2011年8月14日から更新が止まっている。

関連項目

• 競馬
• JRA