JR四国2000系気動車とは、JR四国が保有・運用している特急用気動車である。
瀬戸大橋の開通や高速道路の延長によりやってくるモータリゼーションの脅威に対抗するため、JR四国がJR総研と協力して開発した特急用気動車。世界初の振り子式気動車であり、日本初の制御付き自然振り子車両である。
後に、当車両を元に開発された智頭急行HOT7000系気動車や、JR北海道キハ281系・キハ283系が各地で大活躍している。
日本の非電化在来線の高速化に多大な功績をもたらした、まごうこと無き名車である。
2000系が開発されるまで、気動車は振り子式車両にできないといわれていた。気動車はエンジンの回転力を台車に伝えるためにドライブシャフトを通さねばならないのだが、このくるくる回るドライブシャフトが車体の中央を貫いてるので振り子動作に悪影響(作用反作用法則でドライブシャフトの回転方向と反対の方向に傾こうとする)を及ぼすからである。
ところが、『エンジンを二つ積んで互いのドライブシャフトを逆回転させたら相殺されるんじゃね?』という発想の転換がブレイクスルーとなった。そもそも四国は峻険な土地で急勾配など当たり前、エンジン2台搭載上等。大体現行のキハ181系だってエンジン2台積んでるし(先頭車両だけでアレ発電用だしとか言うなし)。
だけど理論上はそうでも本当に効果あるのかわからない。それに制御付き振り子は日本初の試み。ということで試作車をとりあえず作って長期間走らせデータ収集を行うこととなった。こんなわけで1989年に作られたのが2000系試作車『TSE』。“Trans Shikoku Experimental”の略で、『四国横断実験』という意味の英語の頭文字である。
各車にはAV(アダルトでもアニマルでもなくオーディオ&ヴィジュアル)機器、ぶっちゃけ大きなテレビが置いてあり先頭車の風景が映し出す機能がついていたり(記事主の記憶ではカラオケもあった気がする)、前述のとおりソファーがあったり椅子が窓のほうに少し傾けて固定できたりとジョイフルトレイン風の装備がつけられていた。失敗したときはジョイフルトレインとして使う気だったんだろうな。1年に及ぶ試験を行い、1990年より量産車が現れるとこれらの装備は全部取っ払われて量産車同然の扱いを受けている。
2018年1月現在も特急『宇和海』として現役。
老朽化が激しい事(すでに登場から25年以上経過)から、8600系特急電車の導入によって玉突き廃車の噂も 2018年2月、3月ダイヤ改正をもって定期運用から離脱、7月3日にサヨナラ運転を行うことが発表された。
TSEの運転データを元に1990年から配備された量産型。後に痛車化アンパンマンのラッピングが施されるのはすべてこの系列。
先頭車に字幕式の列車愛称表示器が取り付けられ、黒一色だった先頭は黄色の警戒色の線が入った。また非貫通先頭車は半室グリーン車となった。
現時点で徳島線・牟岐線・予土線・予讃線海線を除く路線で運行されている。
ただし高徳線は定期運用が無いため、臨時列車・車両故障による代走のみ。以前は定期運用があった。
土佐くろしお鉄道も1編成所有しており、高松・岡山~宿毛間の特急として運用されている。高知県のロゴや土佐くろしお鉄道のコーポレートマークが車体に張られているので一発でわかるが内装とかは他の量産車と変わらない。
近年、すべての先頭車両を対象に車内設備のリニューアルを行っている。
座席のモケット張替えや客室内インテリア更新などが行われ、すでに全車両のうち3割近くがリニューアル完了となっている。
なお中間車両はリニューアルの予定がされていない。JR四国の経営状況が見える気がする・・・と思いきや2700系置き換えで中間車はお役御免になる為
※「振り子式車両」の記事も読んでね。
予讃線や土讃線は全線ATSを配備しているが、2000系はこのATSの線路に配備された『ATS地上子』を読み取り、「現在地はどこどこで、もうすぐR=○○の左曲線」などのデータを自分のコンピュータ内の記憶から引っ張り出す。そして空気シリンダーで車体を適正な角度に傾けるという動作を行う。
シリンダーで傾けられた車体は、カーブに入ると自然振り子車両と同じく自重で振り子動作を行う。
ぶっちゃけ、乗ってる人の乗り心地(というかカーブで人が吹っ飛ばされないため)のための機能である。
実際は振り子車両の方が重心が外側に移るため、軌道を痛めやすいことから路盤が貧弱な路線では振り子機能が使用できない場合もある。
なお、JR四国2000系に搭載されているのは「制御付自然振り子」であり、カーブ進入前の傾斜をアシストするが、基本的な振り子機能は自然振り子車両と同じである。
そのため、制御機能が故障した際などは、自然振り子車両と同じ挙動になる。(実際は振り子装置自体を固定し、振り子機能が動かない状態で走行する。)
近年では、メンテナンス費用が一般車に比べ高額な事や、構造上の問題で劣化が早いなどから、空気バネを使った車体傾斜式車両が増加している。
JR四国も2000系の老朽化車両置き換えのために、振り子式ではなく空気バネ車体傾斜式の8600系特急電車を導入した。
高徳線特急『うずしお』の高速化のために増備された車両。なんと130km運転対応型。その代わりグリーン車はなく全部普通車。
前面は試作車(2424+2458、↑の画像)は前期量産型っぽく、プラグドアと貫通扉の赤が130km対応を強烈にアピールしていた。
その後の量産型(最初の画像)は空力を考慮したと思われる形状に変わり、色も変更。もはや別物である。
現在は高徳線だけでなく、土讃線『南風』『しまんと』『あしずり』や予讃線の『宇和海』『いしづち』などにも投入されている。
高徳線の『うずしお』は2015年時点で、この車両で統一されている・・・訳ではなく、1日2往復のみキハ185系による運用があった。
前期量産型は『それいけ! アンパンマン』の全面ラッピングが施された車両が存在する。それがアンパンマン列車。一応編成ごとに統一されたカラーリングのはずなのだが、車両検査や故障の関係でしょっちゅう編成の色が変わったり普通色の車両が混じったりとカオスな状態になる。余談だがヘッドレストカバーまでアンパンマンの絵がかかれてたり到着メロディーも『アンパンマンのマーチ』と凝りに凝っている。
この車両の一番のセールスポイントである「曲線通過速度の向上」は、急峻な地形を縫うように走るJR四国の路線にピッタリであった。
特に「土惨線」などと揶揄され、山間部をカーブで張り付くように走っていた土讃線では絶大な効果をもたらし、従来車両に比べ平均20分、最大40分もの時間短縮を実現した。
また、330psの大出力エンジンを各車両2基搭載し、25‰上り勾配でも90km/hで走行できる性能を発揮している。
峠越え区間の土讃線猪ノ鼻峠や予讃線八幡浜~宇和島、高徳線大坂峠などではその性能を十分に発揮し、軽快に峠を超えている。
製造から30年が経過し経年劣化の激しい車両が増え始め、JR四国は2000系気動車の後継車両を開発することに。
2017年にまず登場したのは、すでに登場していた8600系と同じ空気ばね式車体傾斜装置を搭載した2600系気動車であった。
車内設備は8600系とほぼ同等で、なおかつ空気ばね式車体傾斜装置を採用しメンテナンスコストの削減を目指した。
しかし、量産先行車にて走行試験を行った結果、土讃線のような急カーブの連続する区間では車体傾斜に使用する圧縮空気の供給が追いつかない問題が発覚。
同じ空気ばね式車体傾斜装置を搭載した8600系電車とは違い、機関出力の限られた気動車では圧縮空気の供給量に限界があり、土讃線などの急線形には対応しきれないことが判明した。
JR北海道ではキハ261系が線路設備の整備不足により、車体傾斜装置が使用停止となった経緯があるものの、空気ばね式車体傾斜装置の限界を見せつけられる結果となってしまった。
そのため、JR四国は2600系の量産を諦め、再び振り子式車体傾斜の特急型気動車を製造することとなった。
そんな紆余曲折を経て新たに開発されたのが、2700系気動車である。
車両デザインは2600系とほぼ同じだが、車両断面を振り子式車体傾斜対応の設計とするなど、細かな点で変更がある。
2018年より製造が始まり、続々と四国に到着し試運転が行われ、四国内の2000系(N2000系除く)を置き換えるために投入が進んだ。
なお、延命措置を施された2000系のうち、2700系の投入完了後も残存する11両については、台車を2700系相当の装備である川崎重工製のS-DT69型のベアリングガイド式振り子装置へと換装されており、N2000系と共通運用で当面の間2700系への置き換え予定がない「宇和海」及び一部の「あしずり」運用に就いている。
置き換えを免れたN2000系も「あしずり」から撤退、活躍の場を松山に移し、宇和海で2000系と共に歩むことになった。当然自慢の130キロ走行も封印され120キロ止まりになった。(なおキハ185系は剣山送り込みの関係で1往復残存)
残存するとはいえ、岡山口・高松口での運用は多客期を除いて消滅した為、現在は高知/松山まで行かないと見ることが出来ない。
掲示板
8 ななしのよっしん
2018/11/17(土) 08:52:54 ID: ZmkO5ZIHi/
https://
素人の質問で申し訳ないけど、
現在JR四国が試験を行ってる試作台車の技術って
「ベアリングガイド式振り子台車」?
台車がキハ187系のと少し似てたので気になった。
富士重工業はもう鉄道車両関連の技術造ってないから
今この台車造ってるのは川崎重工のみ?
9 ななしのよっしん
2019/08/11(日) 13:35:11 ID: 256f/1ajQ+
初めて四国に行って乗ったけど、とても気持ち良く走るな
鉄道車両の進歩という意味でも大きな役割を果たしてるし、名車の一角だと思う
10 ななしのよっしん
2021/03/13(土) 15:28:39 ID: 4EjBv49IH+
土讃線高知以東から撤退するとともに
予讃線松山以南で10年以上使い倒すとか言う記事で変な笑い出た
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最終更新:2025/12/06(土) 07:00
最終更新:2025/12/06(土) 07:00
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