アレクサンデル・イサク(Alexander Isak, 1999年9月21日 - )とは、スウェーデンのサッカー選手である。「アレクサンダー・イサク」、「アレクサンデル・イーサック」とも表記される。
イングランド・プレミアリーグのリヴァプールFC所属。サッカースウェーデン代表。
概要
スウェーデンのソルナ出身。両親はアフリカの角とも呼ばれるエリトリア出身のため、エリトリア国籍も有している。16歳でAIKソルナでデビューし、早くから母国の英雄であるズラタン・イブラヒモビッチの後継者として期待される神童として注目されていた。2017年1月には17歳でボルシア・ドルトムントへ移籍。その後、移籍したヴィレムⅡやレアル・ソシエダで才能が開花すると、2022年8月にニューカッスル・ユナイテッドへ1億ユーロという巨額の移籍金で移籍。
ニューカッスルではエースとしてチームを上位進出へと押し上げる活躍を見せ、プレミアリーグでもトップクラスのストライカーとして注目され、その市場価値は1億5000万ポンド(約200億円)に設定されている。スウェーデン代表には2017年1月に17歳でデビューしており、スウェーデン代表史上最年少得点記録を保持している。
192cmという大型ストライカーながらも敏捷性に優れており、柔軟性やスピード、そしてゴール前での冷静さはティエリ・アンリを彷彿とさせる。ボールコントロールにも優れており、テクニックを活かしたキープ力も大きな武器となっている。
2025年8月31日には英国史上最高額となる1億3000万ポンド(約253億円)でリヴァプールFCに移籍。
経歴
生い立ち~AIKソルナ
1999年9月21日、エリトリア出身の移民である両親のもとストックホルムの都市であるソルナで生まれる。6歳となった2005年に地元最大のサッカークラブであるAIKソルナのアカデミーに入団。入団後は飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を重ね、14歳となった2015年にはU-19チームに飛び級でステップアップしている。
2016年2月28日、スウェーデンカップのテンフルツIF戦に後半30分から途中出場し、16歳にしてプロデビューを飾る。しかもこの試合で初ゴールを決めたことでスウェーデン国内ではズラタン・イブラヒモビッチ二世と騒がれるようになる。4月7日にはアルスヴェンスカン第2節エステルスンドFK戦で初スタメンの座を飾ると、16歳199日でのリーグ戦初ゴールを記録。このゴールはクラブでのリーグ最年少得点となった。5月3日にはクラブと正式にプロ契約を交わすと、チームでレギュラーの座を掴み、17歳の誕生日である9月21日には宿敵ユールゴーデンIFとのダービーマッチで2ゴールの活躍を見せる。プロ1年目のシーズンで公式戦29試合13得点という成績を残し、スウェーデンの神童に対して国外の有力クラブも注目するようになっていた。
ドルトムント
2017年1月23日、ドイツ・ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントへの移籍が発表される。2022年夏までの長期契約で移籍金は900万ユーロとされ、一部ではレアル・マドリードからのオファーを断ったと報じられている。2017年3月14日のDFBポカールでデビューしたものの、トップチームでの出場はこれのみだった。
2017-18シーズンはシーズン前半戦はトップチームのベンチ入りする機会が多く、2017年10月24日のDFBポカール2回戦1.FCマクデブルク戦では移籍後初ゴールを決める。しかしこのシーズン、不調だったチームは若いイサクにチャンスを与える余裕がなく、リーグ戦での出場はわずか5試合に終わる。
2018-19シーズンはトップチームのメンバーから外れ、3部に在籍するセカンドチームでプレーする状況に陥っていた。
ヴィレムⅡ
2019年1月25日、オランダ・エールディヴィジのヴィレムⅡへレンタル移籍する。オランダの地でドイツでは燻っていた才能が開花するようになり、2月18日のKNVBカップ準決勝フォルトゥナ・シッタート戦では2ゴールを決め、チームを決勝進出へと導く。3月30日のエールディヴィジ第27節フォルトゥナ・シッタート戦ではリーグ史上初となるPKだけでのハットトリックという珍記録を作る。結局加入から半年間ながらも16試合13得点とゴールを量産し、リーグ後半戦に限ればもっとも多くゴールを決めた選手となった。このオランダでの活躍によって再び脚光を浴びることとなる。
レアル・ソシエダ
2019年6月12日、スペイン ラ・リーガのレアル・ソシエダに5年契約で完全移籍する。プレシーズンマッチで5試合4ゴールと結果を残したものの、開幕当初はウィリアン・ジョゼの控えという立場になっていた。それでも9月22日ラ・リーガ第5節エスパニョールで公式戦での加入後初ゴールを記録。その後は同じくノルウェーの神童と呼ばれていたマルティン・ウーデゴール、クラブ生え抜きのホープであるミケル・オヤルサバルとの若手トリオで攻撃陣を形成し、ソシエダの前半戦の躍進に貢献。2月19日のコパ・デル・レイ準々決勝レアル・マドリード戦では2ゴール1アシストの大活躍を見せ、クラブにとって32年ぶりのタイトル獲得となるコパ・デル・レイ優勝の立役者となる。2020年2月9日のアスレティック・ビルバオとのバスク・ダービーでは決勝ゴールを決める。
2020-21シーズンはイマノル・アルグアシル監督から1トップのファーストチョイスとして起用されるようになり、ウーデゴールに代わって加入したベテランのダビド・シルバとの連携から前年以上にゴールを量産するようになる。ボール保持を重視する魅力的なフットボールを見せていたチームにあって、イサクのフィニッシャーとしてのプレースタイルは適合性が高かった。2021年2月21日のデポルティボ・アラベス戦ではリーガ移籍後初となるハットトリックを達成。ちなみに、スウェーデン人選手がリーガでハットトリックを記録したのは1949年のヘンリー・カールション以来であった。この頃から国内外からのビッグクラブからの関心がたびたび報じられるようになり、リーグ戦ではキャリアハイ記録となる17ゴールを挙げる。クラブはCL出場権獲得にあと一歩届かなかったものの、8年ぶりのトップ5入りを果たす。
2021-22シーズンもシルバ、ポルトゥ、オヤルサバルと共に魅力的な攻撃陣を形成したものの、膝やハムストリングの負傷に悩まされたこともあって調子を落とし、たびたび決定機を決めきれず、ゴール数が伸びずにいた。UEFAヨーロッパリーグでは6試合で3ゴールを記録したが、リーガでは33試合6ゴールに留まり、ビッグクラブ移籍は厳しいと見られていた。
2022-23シーズンは開幕から新加入の久保建英と2トップを組み、2022年8月22日ラ・リーガ第2節エスパニョール戦でシーズン初ゴールを記録。しかしその直後に巨額のオファーに応じ、シルバ、久保とのトリオはわずか2試合のみでしか見られなかった。
ニューカッスル
2022年8月26日、イングランド・プレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドと6年の長期契約を結ぶ。移籍金はクラブ記録となる6300万ポンド(約100億円)という天文学的な巨額であるとされている。8月31日にはプレミアリーグ第5節アンフィールドでのリヴァプールFC戦でデビューを果たし、早速初ゴールを決め、敗れたもののMOMに選出されている。その後ハムストリングの負傷によって数か月の長期離脱を強いられるが、復帰後は本領を発揮。2023年4月23日のトッテナム・ホットスパー戦では2分間で2ゴールを決める。移籍1年目は10ゴールとまずまずの成績となった。
移籍2年目となった2023-24シーズンのプレミアリーグ開幕戦アストン・ヴィラ戦で2ゴールを決める最高のスタートを切る。2023年9月27日にはEFLカップのマンチェスター・シティ戦で決勝ゴールを決め、前年度の三冠王者相手の勝利に貢献。その後鼠蹊部の負傷で一時欠場するが、自身にとって初出場となったUEFAチャンピオンズリーグでは11月28日のグループステージ第5節パリ・サンジェルマン戦で初ゴールを決める。前年度躍進したチームは低調なシーズンとなっていたが、自身はゴールを量産し不動のエースストライカーの座を確立。2024年4月14日のトッテナム戦では2ゴールを決め、4-0の大勝に貢献。さらに、4月28日のホームのシェフィールド・ユナイテッド戦でも2ゴールを決める。最終的にプレミアリーグでは得点ランク3位の21ゴールを記録。公式戦通算でも40試合25ゴールという成績を残し、ワールドクラスのストライカーとして大きく価値を高めたシーズンとなった。
2024-25シーズンは9月1日の第3節トッテナム戦でシーズン初ゴールを記録。シーズン序盤は筋肉系の負傷による欠場もあってゴール数が伸びていなかったが、10月27日のチェルシーFC戦を皮切りにアーセナル戦、ノッティンガム・フォレスト戦といずれも上位勢相手にリーグ戦3試合連続ゴールを記録。12月14日第14節首位のリヴァプール戦では理不尽ともいえる強烈なミドルシュートを決めるなど、1ゴール1アシストを記録。12月21日、第17節イプスウィッチ戦ではプレミアリーグでの初のハットトリックを達成。12月のプレミアリーグでは6試合全試合で8ゴールを決める爆発ぶりで12月度のリーグ月間最優秀選手賞を受賞。さらに2025年1月15日のウルヴァーハンプトン戦までリーグ戦8試合連続ゴールを達成している。2月23日の第26節ノッティンガム・フォレスト戦で2ゴールを決め、プレミアリーグ通算50ゴールを達成。3月16日のカラバオカップ決勝リヴァプールFC戦では、後半に追加点を挙げ、クラブの70年ぶりとなる国内3大タイトル獲得をもたらす。CL出場権争いが激化したプレミアリーグ終盤戦でもコンスタントにゴールを決め、ニューカッスルの5位でのCL出場権獲得に貢献。最終的には前年を上回る得点ランキング2位の23ゴールを記録し、多くのメガクラブが大金を叩いて獲得を狙う存在となった。
2025年夏、リヴァプールFCへの移籍話が加速し、本人も移籍を希望したがニューカッスル側はこれを認めなかったことでクラブとの対立が深まる。チームへの合流や練習への参加を拒否するなど移籍を強行しようとしたことで移籍期間最終日まで泥沼化する。
リヴァプール
2025年9月1日、イングランド・プレミアリーグのリヴァプールFCへの移籍が決定。契約は6年間の長期契約で移籍金はイギリス史上最高額の1億6000万ユーロとされている。しかし、調整不足に加えてチームへの適応に苦しみ、11月30日の第13節ウェストハム戦でようやくプレミアリーグでの移籍後初ゴールが生まれることとなる。
スウェーデン代表
2015年にU-16代表に選出されると、2016年にはU-19代表、U-21代表と各年代の代表チームに飛び級で選出されている。
2017年1月には初めてフル代表に選出されると、1月8日のコートジボワール戦で17歳にしてのスウェーデン代表デビューを果たす。1月12日のスロベニア戦では前半19分に代表初ゴールを決め、スウェーデン代表の史上最年少得点記録を樹立する。
2021年には自身初のメジャーな国際大会となるEURO2020のメンバーに選出。大会を通してレギュラーとして起用されたが、4試合無得点に終わっている。
個人成績
| シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2016 | AIKソルナ | アルスヴェンスカン | 24 | 10 | |
| 2016-17 | ドルトムントⅡ | レギオナルリーガ | 1 | 0 | |
| ドルトムント | ブンデスリーガ | 0 | 0 | ||
| 2017-18 | ドルトムント | ブンデスリーガ | 5 | 0 | |
| 2018-19 | ドルトムントⅡ | レギオナルリーガ | 11 | 5 | |
| ヴィレムⅡ(loan) | エールディヴィジ | 16 | 13 | ||
| 2019-20 | レアル・ソシエダ | ラ・リーガ | 37 | 9 | |
| 2020-21 | レアル・ソシエダ | ラ・リーガ | 34 | 17 | |
| 2021-22 | レアル・ソシエダ | ラ・リーガ | 32 | 6 | |
| 2022-23 | レアル・ソシエダ | ラ・リーガ | 2 | 1 | |
| ニューカッスル | プレミアリーグ | 22 | 10 | ||
| 2023-24 | ニューカッスル | プレミアリーグ | 30 | 21 | |
| 2024-25 | ニューカッスル | プレミアリーグ | 34 | 23 | |
| 2025-26 | ニューカッスル | プレミアリーグ | 0 | 0 | |
| リヴァプール | プレミアリーグ |
個人タイトル
プレースタイル
ポジションはセンターFWで母国のレジェンドであるイブラヒモビッチと比較されることが多いが、実際のプレースタイルはティエリ・アンリに近いと言われている。「真のモダンストライカー」と評され、足元の技術の高さとスピードを持ち味とし、狭いスペースを巧みに動き回り、ディフェンスラインの裏を突く動きからゴールを陥れるのがもっとも得意なゴールパターンである。
ドリブルの特徴として、相手を引きつけてから素早く方向転換する動きがあり、DFは彼の動きを予測しづらくなり、簡単に置き去りにされてしまう。相手のプレスを受け流すために、ボディフェイントやステップオーバーを効果的に使用する。ただのスピードスターというわけでもなく、2023-24シーズンのプレミアリーグにおいて、ドリブル突破成功率が50%以上を記録しており、爆発的な加速力に加えてファーストタッチが柔らかく、両足を正確に使い分けることができる。狭いスペース・オープンスペースを問わず突破できるのもこの足元の正確さがあるからである。
身長とスピードを活かし、幅広い動きで相手DFを翻弄しており、非常に戦略的なフリーランニングから攻撃の状況に応じて異なるパターンを瞬時に判断するのも大きな強みになっている。サイドから中央へ切り込んでシュートチャンスを作り出すことも多く、ただスピードやスプリントに頼るストライカーではない。
ターゲットマンとして機能することは少ないが、中盤に下がり、ボールを受けてから再び攻撃に参加することを好む。DFを引き付け、その背後にスペースを作り出すことができ、カウンターアタック時に効果を発揮する。さらにポゼッション志向の強いレアル・ソシエダでプレーしていたこともあってパスワークに関与することも多く、ボールの循環に深く関与するといった攻撃の起点としても機能する。イサクが多機能型ストライカーたらしめる要因でもある。
ゴール前での冷静さが際立っており、特にボックス内でのシュート精度が高い。特に、柔らかなタッチで相手マーカーを剥がしつつ、右足で冷静にゴール隅を狙う形が得意だ。また、アンリを彷彿とさせる左斜めからのシュートやアクロバティックな得点も見られる。
前線からのプレッシングにも積極的に参加し、現代的なストライカーとしての役割を果たす。敏捷性とスピードを活かし、ボールを持たない時にもハードワークも厭わない。ソシエダのイマノル・アルグアシル監督やニューカッスルのエディ・ハウ監督のように前線からの守備のデザインにこだわる監督の指導を受けている影響も大きく、ボールを奪った後には迅速な攻撃に移行する。
弱点は長身ではあるが細身のため体の線が細く、大型ストライカーながらセンターバックとのフィジカルなデュエルを得意としていない。また、空中戦を避ける傾向があり、ヘディングでの競り合いやボディコンタクトを伴うポストプレーの精度が課題となっている。
関連項目
- サッカー
- サッカー選手
- スウェーデン / エリトリア
- サッカースウェーデン代表
- ボルシア・ドルトムント
- レアル・ソシエダ
- ニューカッスル・ユナイテッド
- リヴァプールFC
- ズラタン・イブラヒモビッチ
- ティエリ・アンリ
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