ゴージャス★アイリン 荒木飛呂彦短編集とは、荒木飛呂彦の初期作品をまとめた短編集である。
概要
代表作『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる荒木飛呂彦の、デビュー作『武装ポーカー』からジョジョ連載前に発表した『ゴージャス★アイリン』までの短編全6(単行本版は5)作をまとめた短編集。
1987年に単行本版、2004年に愛蔵版、2011年に文庫版が発売されている。
収録作品紹介(掲載順)
ゴージャス★アイリン
「わたし残酷ですわよ」
『バオー来訪者』連載終了後に執筆した表題作にもなっている短編。「大女の館の巻」「スラム街に来た少女の巻」の2作発表している。ゴー☆ジャスとは関係ない。
イタリア・シシリーの殺人技術を受け継ぐ家系の末裔、アイリン・ラポーナは、普段は純粋な性格をした16歳の少女だが、アメリカで一大犯罪組織を作った父から技術と才能を受け継ぎ、化粧の力による催眠術で自分の肉体すらも暗示にかけ、ある時は老婆の召使いに、ある時は完璧なプロポーションと残忍な性格を得た殺し屋に化けさせ、正義のための殺しを行う。
荒木飛呂彦作品で初の女性主人公で、肉体のテーマを女性版にした『バオー来訪者』の延長線上にある作品。読者人気も高く、連載化の話もあったが、闘う女性主人公で少年漫画の連載を描くことに抵抗があったため、代わりの作品として『ジョジョ』を企画した。その後、女性を主人公にした連載はジョジョ第6部『ストーンオーシャン』にて初めて実現する。
ちなみに、ジョジョ第1話でディオが読んでいた本のタイトルは「GORGEOUS IRENE(ゴージャス★アイリン)」。
スラム街に来た少女の巻はジョジョ連載前に描いたエピソードの為か、アイリンとマイケルがエリナとジョナサンにしか見えない。
魔少年ビーティー
中学生の少年、麦刈公一が自分の親友である悪魔的頭脳を持った罪悪感ゼロの魔少年、ビーティー(イニシャルでB.T)と関わった「有罪くずし事件」を公表する。ある日、公一たちの町でルポライターが殺害される。殺人を自供したのはビーティーのあこがれの先輩である中川冬子。ルポライターに暴行されそうになったところをハサミで背中を刺したが、正当防衛は成り立たないという。ビーティーは彼女を無罪にすることに決めるが…。
麦刈公一を語り部にした構成、ビーティーが年上の女性にあこがれを抱く点や考える時に耳をなでるクセ、「無罪を証明する」ではなく「(証拠をでっち上げてでも)無罪にする」という思考、力が上の大人にトリックで対抗、作中に出た手品やトリックの解説など、連載版と違わない完成度を持つ。連載版『ビーティー』が好きなら一読の価値あり。
ちなみに、連載版第1話で「以前一遍だけ公表したエピソード」とあるが、おそらくこの読み切り版の事と思われる。
バージニアによろしく
1981年週刊少年ジャンプ8月1日増刊号掲載のデビュー2作目。初出の表記が1982年になっているミスがあり、後述の『アウトロー・マン』と発表順を勘違いさせてしまっている(雑誌掲載時の作者のコメントで「第二作目ではじめてSFに挑戦」とある)。
宇宙航海士、ヒロシ・タケモトはマット・ジャクスン船長とロボットのクライドと共に、宇宙船デリンジャー号にて金星から地球ステーションまで片道158日の生活物資運搬をしていた。平穏で退屈な旅の中、ヒロシは不審な通信を受ける。その内容とは、デリンジャー号内に爆弾を2個仕掛けたというものだった。初めは冗談だと思っていたが、仕掛けたうちの1個を爆発させ脱出用シャトルを破壊させる。さらに60分後にエンジンの隣に仕掛けた爆弾『バージニア』を爆破させると予告し、通信は途切れる。ヒロシは船長とクライドと共に爆弾の解体を始めるが…。
2015年現在、荒木飛呂彦作品の中で人類が宇宙進出を果たしたSFの世界観を扱った唯一の作品。
デビュー当時は「ストーリーの基本はサスペンス」と信じて研究し、「密室こそ究極のサスペンス」と考えて描いた作品。なお、本作の最期のコマには雑誌掲載時には台詞がなかったが、単行本収録時に追加された。
武装ポーカー
「それではお話ししましょう「武装ポーカー」です……」
第20回手塚賞準入選し、1981年週刊少年ジャンプ1号に掲載された、荒木飛呂彦のデビュー作。
詳細は、『武装ポーカー』の記事を参照。
アウトロー・マン
「逃げるだけが かれの人生 かれは 孤独なアウトロー・マンだ」
1982年週刊少年ジャンプ1月10日増刊号に掲載された第3作目。本作品は集英社ビルの移転作業の際に原稿が紛失してしまい、単行本未収録となっていた幻の作品(『バオー来訪者』連載開始時にジャンプ表紙を飾ったカラー原稿も同じく紛失している)。2004年の愛蔵版刊行に際して、雑誌掲載時の紙面からデジタル復刻掲載がかなった。2011年の文庫版にも掲載している。
西部開拓時代のアメリカ、主人公である「アウトロー・マン」は賞金首であり、愛馬のキャメロンと共にピンカートン探偵社の追跡から逃れていた。どんなに足跡を消そうとしても、葉についた埃や川底の水苔から追跡し、ついにキャメロンを狙撃されてしまう。絶体絶命の危機に追い込まれたアウトロー・マンはどう切り抜けるのか…。
『武装ポーカー』と同じく西部劇を舞台にしており、主人公の正体は本名すら一切明かされず、逃走と追跡だけを描いてサスペンスを追求した作品。幻にしておくのはもったいないほどの作品であるが、作者のあとがきには「原稿紛失のため、今まで未収録だった作品」としか語られていないのも非常にインパクトが高い。
関連静画
関連項目
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