バロンドール(Ballon d'Or)とは、フランスのサッカー専門誌「フランス・フットボール」が主催するサッカーの個人賞である。
2010年度よりFIFAの管轄する賞となり、「FIFAバロンドール」として表彰されていたが、2016年から元の形式に戻っている。
概要
1956年にフランスのサッカー専門誌「フランス・フットボール」が創設したその年のもっとも活躍した選手に贈られる最優秀選手賞であり、現在はFIFAが選定するFIFA最優秀選手賞よりも権威は上と位置づけられており、サッカー選手にとってもっとも名誉のある個人賞となっている。言葉の意味は、フランス語で「黄金の球」という意味で、その年の受賞者には金色のサッカーボールを模したトロフィが贈られる。
当初はUEFAが管轄するリーグでプレーする欧州国籍の選手に与えられる賞であったため、ディエゴ・マラドーナやジーコ、ペレといった過去の伝説的なスーパースターたちは受賞歴が無い。1995年より受賞資格者がUEFAに加盟するクラブチームでプレーする選手であれば国籍を問わないよう拡大され、2007年からは「全世界でプレーするプロサッカー選手」が受賞資格者となった。以降事実上の世界最優秀選手に与えられる賞となっている。
2010年より、FIFAが選出していたFIFA世界最優秀選手賞と統合されて「FIFAバロンドール」となっていたが、2016年にFIFAとフランス・フットボールがパートナーシップを解消したことによって再びフランス・フットボールが独自に表彰する賞に戻っている。
現在の最多受賞者はリオネル・メッシ(8回)であり、2008年から2017年までの9年間はメッシとクリスティアーノ・ロナウドが受賞を分け合うような形になっている。
2019-2020シーズンは、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大によって各国リーグや主要な国際大会が相継いで日程が変更されたり、中止になったことから公正な選考が不可能であるとして、史上初となる表彰中止が決定されている。
選考方法
かつては欧州52か国のサッカー記者の投票によっておこなわれていたが、2007年の選考対象者の拡大に伴い、世界中のサッカー記者が選考に加わることができるようになった。
毎年10月頃に30名の最優秀選手候補リストが発表され、この中から記者による投票がポイント制でおこなわれ、12月に受賞者が決定する。
なお、日本人選手では、中田英寿が1998年、1999年、2001年、稲本潤一が2002年、中村俊輔が2007年に投票ポイントは獲得しなかったものの候補者としてノミネートされている。
また、FIFAバロンドール時代の2010年から2015年までの間は全世界の記者による投票に加え、FIFA加盟国の代表監督と主将の投票によって選出されていたが、両者の投票結果に差異が生じたことがあり、受賞の公正さを欠くとして問題視する声があがっていた。
2022年度より選考対象期間が欧州のシーズンに合わせた2021年7月から2022年7月までとなった。また、これまで不明確と言われていた選考基準を明確にし、個人のパフォーマンスと印象度が最優先されることとなった。
歴代受賞者
再評価による受賞
2016年、フランス・フットボールはバロンドール創立60周年の記念として欧州国籍以外の選手に受賞資格のなかった1995年以前の賞の再評価をおこない、下記の表の選手は遡及的にバロンドール受賞の価値があったと認めた。ただし、この再評価によって元の受賞者が変更されるわけではなく、公式な受賞回数にもカウントされない。
年度 | 受賞者 | 当時の所属チーム | おもな受賞内容 |
---|---|---|---|
1958 | ペレ | サントスFC | W杯優勝 |
1959 | ペレ | サントスFC | |
1960 | ペレ | サントスFC | |
1961 | ペレ | サントスFC | |
1962 | ガリンシャ | ボタフォゴ | W杯優勝&得点王 |
1963 | ペレ | サントスFC | |
1964 | ペレ | サントスFC | |
1970 | ペレ | サントスFC | W杯優勝 |
1978 | マリオ・ケンペス | バレンシア | W杯優勝 |
1986 | ディエゴ・マラドーナ | ナポリ | W杯優勝 |
1990 | ディエゴ・マラドーナ | ナポリ | W杯準優勝、セリエA優勝 |
1994 | ロマーリオ | FCバルセロナ | W杯優勝、ラ・リーガ優勝&得点王 |
バロンドール・ドリームチーム
新型コロナウィルス感染拡大の影響で受賞がおこなわれなかった2020年に、フランス・フットボールが代わりとして歴代ベストイレブンを発表したものである。
ポジション | 選手 | おもな所属チーム(~2020年) |
---|---|---|
GK | レフ・ヤシン | ディナモ・モスクワ |
RSB | カフー | サンパウロFC、ASローマ、ACミラン |
LSB | パオロ・マルディーニ | ACミラン |
CB | フランツ・ベッケンバウアー | バイエルン・ミュンヘン、ニューヨーク・コスモス |
CH | シャビ | FCバルセロナ、アル・サッド |
CH | ローター・マテウス | ボルシアMG、バイエルン・ミュンヘン、インテル |
OH | ペレ | サントスFC、ニューヨーク・コスモス |
OH | ディエゴ・マラドーナ | アルヘンティノス・ジュニアーズ、FCバルセロナ、ナポリ |
RWG | リオネル・メッシ | FCバルセロナ |
LWG | クリスティアーノ・ロナウド | マンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリード、 ユヴェントス |
CF | ロナウド | FCバルセロナ、インテル、レアル・マドリード |
記録
受賞回数
順位 | 選手 | 受賞回数 | 受賞年度 | 2位、3位も含めた回数 |
---|---|---|---|---|
1位 | リオネル・メッシ | 8回 | 2009,2010,2011, 2012,2015,2019, 2021,2023 |
13回 (2位が5回、3位が1回) |
2位 | クリスティアーノ・ロナウド | 5回 | 2008,2013,2014, 2016,2017 |
12回 (2位が6回、3位が1回) |
3位 | ミシェル・プラティニ | 3回 | 1983,1984,1985 | 5回(3位が2回) |
3位 | ヨハン・クライフ | 3回 | 1971,1973,1974 | 4回(3位が1回) |
3位 | マルコ・ファン・バステン | 3回 | 1988,1989,1992 | 3回 |
6位 | フランツ・ベッケンバウアー | 2回 | 1972,1976 | 5回 (2位が2回、3位が1回) |
6位 | ロナウド | 2回 | 1997,2002 | 4回 (2位が1回、3位が1回) |
6位 | カール=ハインツ・ルンメニゲ | 2回 | 1980,1981 | 3回(2位が1回) |
6位 | ケビン・キーガン | 2回 | 1978,1979 | 3回(2位が1回) |
6位 | アルフレッド・ディ・ステファノ | 2回 | 1957,1959 | 3回(2位が1回) |
国籍別受賞人数&回数
順位 | 国 | 受賞人数 | 受賞回数 | 受賞者 | 受賞年度 |
---|---|---|---|---|---|
1位 | ドイツ | 5人 | 7回 | ゲルト・ミュラー、フランツ・ベッケンバウアー、 カール=ハインツ・ルンメニゲ、ローター・マテウス、 マティアス・ザマー |
1970,1972,1976, 1980,1981,1990, 1996 |
2位 | フランス | 5人 | 7回 | レイモン・コパ、ミシェル・プラティニ、 ジャン=ピエール・パパン、ジネディーヌ・ジダン、 カリム・ベンゼマ |
1958,1983,1984, 1985,1991,1998, 2022 |
2位 | イタリア | 5人 | 5回 | オマール・シボリ、ジャンニ・リベラ、パオロ・ロッシ、 ロベルト・バッジョ、ファビオ・カンナヴァーロ |
1961,1969,1982, 1993,2006 |
4位 | ブラジル | 4人 | 5回 | ロナウド、リバウド、ロナウジーニョ、カカ | 1997,1999,2002, 2005,2007 |
4位 | イングランド | 4人 | 5回 | スタンリー・マシューズ、ボビー・チャールトン、 ケビン・キーガン、マイケル・オーウェン |
1955,1966,1978, 1979,2001 |
6位 | ポルトガル | 3人 | 7回 | エウゼビオ、ルイス・フィーゴ、クリスティアーノ・ロナウド | 1965,2000,2008, 2013,2014,2016, 2017 |
6位 | オランダ | 3人 | 7回 | ヨハン・クライフ、ルート・フリット、 マルコ・ファン・バステン |
1965,2000,2008, 2013,2014,2016, 2017 |
8位 | スペイン | 4人 | 4回 | アルフレッド・ディ・ステファノ、ルイス・スアレス、ロドリ | 1957,1959,1960., 2024 |
9位 | ソ連 | 3人 | 3回 | レフ・ヤシン、オレグ・ブロヒン、イーゴリ・ベラノフ | 1963,1975,1986 |
10位 | チェコ | 2人 | 2回 | ヨゼフ・マソプスト、パベル・ネドベド | 1962,2003 |
11位 | アルゼンチン | 1人 | 8回 | リオネル・メッシ | 2009,2010,2011, 2012,2015,2019, 2021,2023 |
エピソード
- ワールドカップの前年度にバロンドールを受賞した選手は、その年のワールドカップで優勝することができないというジンクスがあり、「バロンドールの呪い」とも呼ばれている。
- 賞が作られたきっかけは、初代受賞者でもあるスタンリー・マシューズがその輝かしいキャリアとは裏腹にタイトルに恵まれず、マシューズの功績を称えるためだと言われている。
- EURO2000の優勝など、本来であれば受賞に値する活躍を見せたジネディーヌ・ジダンが2000年の受賞を逃したのは、CLにおいて相手選手に報復で頭突きをしたことで退場になり、5試合の出場停止を受けたことで記者の心象が悪くなったからだと言われている。ちなみにこの年のFIFA世界最優秀選手賞はジダンが受賞している。
- FIFAバロンドール時代だった時期、選考方法に公正さを欠いているという批判が多く、仮に従来通りの記者投票のみであれば2010年はオランダのヴェスレイ・スナイデルが、2013年はフランスのフランク・リベリーが受賞していた。
関連動画
関連項目
脚注
- *W杯:FIFAワールドカップ、CL:UEFAチャンピオンズリーグ、CC:チャンピオンズカップ、ICFC:インターシティーズ・フェアーズカップ、UCWC:UEFAカップウィナーズ・カップ
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