ロドリ(Rodrigo Hernández Cascante, 1996年6月22日 - )とは、スペイン主審のサッカーである。
イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティFC所属。サッカースペイン代表。
ポジションはMF(アンカー)、DF(センターバック)。190cm78kg。利き足は右足。
ロドリとは通称であり登録名であり、正式な名前はロドリゴ・エルナンデス。
概要
スペインの首都マドリード出身。2020年代に入って世界最高のピボーテ(アンカー、守備的MF)と呼ばれている選手。「マンチェスター・シティの心臓」「シティの頭脳」と呼ばれている。
2024年のバロンドール受賞者。
アトレティコ・マドリードとビジャレアルCFの下部組織で育ち、2019年にプレミアリーグのマンチェスター・シティに加入。以降は不動のアンカーとして変えの効かない欠かせない選手となっており、2021年から2023年までのリーグ三連覇に大きく貢献。
2023年のUEFAチャンピオンズリーグ決勝のインテル・ミラノ戦では決勝ゴールを決めており、マンチェスター・シティのシーズン三冠(トレブル)をもたらしている。
スペイン代表には2018年にデビュー。代表を引退したセルヒオ・ブスケツの後継者としてこちらでも欠かせない重要なプレイヤーとなっている。2023年にはUEFAネーションズリーグで優勝し、決勝の最優秀選手に選ばれた。また、EURO2024ではスペインの4度目のEURO制覇に大きく貢献し、大会の最優秀選手に選出されている。
プロのアスリートでありながら並行して大学に通い経営学の学士も取得しており、正真正銘文武両道を実現させている。
経歴
生い立ち
スペインのサッカー都市でもあるマドリードで生まれ育ったこともあり、美しいフットボールに夢中になることはごく普通のことだった。子供の頃のアイドルはレアル・マドリードで活躍していたジネディーヌ・ジダンだったが、地元のクラブであるアトレティコ・マドリードのファンだった。
物心ついた頃から暇さえあればボールを蹴っており、両親はそんなロドリの夢を応援しなるべく早くサッカーを始めさせようと考えていたが、同時にサッカーのために学業を妥協しないことを約束。現在のロドリの文武両道のスタイルに繋がっている。
10歳の頃にはトライアルに見事に合格し、地元クラブのラージョ・マハダオンダでキャリアをスタートさせる。ここではリュカとテオのエルナンデス兄弟と一緒にプレーし、クラブのリーグ優勝に貢献。小さな頃からピボーテ(アンカー)のポジションが好きだったそうで、監督からどこでプレーしたいか問われると、いつもピボーテと答えていた。
1年後の2007年にはクラブと提携関係にあるアトレティコ・マドリードの下部組織へ移籍。ちなみにエルナンデス兄弟も一緒に移籍している。ロドリは同じポジションのセルヒオ・ブスケツやシャビ・アロンソの試合映像を参考にしながらワンタッチやツータッチのプレーの質を高めていた。世代別代表に選ばれることもあったが、フィジカルを重視するアトレティコのカンテラは、身体の成長が遅く小柄だったロドリを弱すぎると判断し、放出することを決める。
2013年にビジャレアルCFの下部組織へ移籍。大きな挫折を経験することになったが、諦めずに前向きに練習に取り組む。アトレティコと違ってポゼッションスタイルを重視するビジャレアルでは信頼を勝ち取るようになり、身長も191cmにまで成長。弱点と言われていた体格面の弱さが克服されるようになる。
ビジャレアル
2015年2月7日、セグンダ・ディビシオンB(3部リーグ)に所属するビジャレアルBのRCDエスパニョールB戦のベンチ入りメンバーに招集され、後半から途中出場。2週間後のレアル・サラゴサB戦で初スタメンを飾っている。2014-15シーズンはリザーブチームで公式戦6試合に出場する。
2015-16シーズンもビジャレアルBの選手として開幕を迎えるが、2015年12月17日、コパ・デル・レイのUDウエスカ戦でトップチームでのデビューを19歳にして果たす。2016年4月17日のラージョ・バジェカーノ戦ではリーガ・エスパニョーラで初出場。トップチームでは公式戦6試合に出場している。
2016-17シーズンはビジャレアルCFのトップチームに正式に昇格。徐々に出場機会が増えるようになり、U-19欧州選手権で優秀選手に選ばれたこともあってスペインでも期待の若手として注目度が増すようになっていた。
2017-18シーズンになると、中心選手のブルーノ・ソリアーノが負傷したこともあってレギュラーを獲得。その穴を埋めて余りあるハイレベルなプレーを披露するようになり、気が付くとビジャレアルの中心選手となっていた。クラブ首脳陣は引き抜きを予想してロドリとの契約を2022年にまで延長。2018年2月18日のエスパニョール戦ではラ・リーガでの初ゴールを決める。当時21歳ながらも卓越したインテリジェンスによって中盤でチームをコントロールする存在となり、リーグ全体でも2位のパス成功率を記録。さらにボール奪取数ではリーグトップを記録と、すでにラ・リーガのトッププレイヤーの一人となっていた。
アトレティコ・マドリード
2018年5月24日、アトレティコ・マドリードへの移籍が決定。念願だった古巣への復帰が実現することになる。5年契約で移籍金は2500万ユーロとされている。加入してすぐにディエゴ・シメオネ監督の信頼を掴み取ると、チアゴ・メンデスやガビの後釜としてアンカーの定位置を確保。2018-19シーズンはサウール・ニゲス、コケと共にリーグ屈指の中盤のトライアングルを形成し、下部組織時代にはなかった圧巻の強度とテクニックで評価はうなぎ登りとなっていく。2018年11月10日のアスレティック・ビルバオ戦では移籍後初ゴールをマーク。シメオネ監督から守備意識について学んだものの、ロドリのレベルはもはやアトレティコにずっと留まるほどのものでもなくなっていた。
マンチェスター・シティ
2019年7月5日、稀代の名将ジョゼップ・グアルディオラ監督が率いるイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティFCに5年契約で移籍。移籍金は7000万ユーロと伝えられている。加入当初はイングランドではまだまだ名の通った選手ではなく、懐疑的な声も聞こえていたが、加入早々にペップ・グアルディオラのスタイルにフィットしてみせ、主将のフェルナンジーニョからポジションを奪ってしまう。10月にハムストリングの負傷で1か月離脱するが、チームの舵取り役としてペップからの信頼は揺るぎないものになっていた。2020年3月1日のカラバオカップ決勝アストン・ヴィラFC戦ではCKからのヘディングシュートを決め、チームのタイトル獲得に貢献。移籍1年目はリーグ戦29試合に出場し、アンカーながらも4ゴール2アシストを記録。ボール奪取数とパス成功率では驚異のスタッツを残している。
2020-21シーズンになると、もはやシティの中心選手として不動の立場になっていた。ダビド・シルバの退団や怪我人の続出でチームのパフォーマンスが低下したシーズン前半戦でもロドリは安定したプレーを披露。台所事情の厳しいチームを支えていた。カンセロロールやイルカイ・ギュンドアンの偽のストライカー化など次々と新しい戦術を施すペップのフットボールにも順応。また、プレミアリーグのミッドフィールダーの中で最も高いパス成功率を記録し、90分あたりパス成功率91.8%を記録。この年自身のキャリアでは初のリーグ優勝を経験する。
2021-22シーズンにはプロサッカー選手としてのキャリアと並行して続けていた学業において、大学を卒業。経営学の学士を取得する。晴れてサッカーに専念できるようになったことから充実したシーズンを過ごすこととなり、特に得点力が大幅に向上。キャリア最多となるシーズン7ゴールを記録。またタックル成功率、パス成功率もこれまで通り高いスタッツを記録。特に、勝ち点1差で2位リヴァプールFCに迫られたプレミアリーグ最終節のアストン・ヴィラ戦では2点ビハインドから追いつく貴重な同点ゴールを決めており、シティのプレミアリーグ連覇に貢献している。
2022-23シーズンは第5キャプテンに任命される。開幕直前には2027年までシティとの契約を延長。稀代の戦術家ペップが進化系偽SBや偽CBと新たなスタイルに着手した中、優れたバランス感覚で全体の歪みを巧みに修正しながら常に的確なプレー選択でゲームをオーガナイズし続ける。重心は後ろに置きながらも2ゴール6アシストと数字面でも貢献し、プレミアリーグ3連覇を達成。
UEFAチャンピオンズリーグでは2023年4月11日の準々決勝バイエルン・ミュンヘンとの1stレグで先制ゴールを決め、CL初ゴールを記録。6月10日のインテル・ミラノとの決勝ではスコアレスでの重苦しい試合展開が続く中、68分にベルナルド・シウバのアシストから値千金の決勝ゴールを決め、シティの初の王者戴冠に貢献。自身も決勝のMOMに選ばれている。
怪物アーリング・ハーランドを手に入れたこの年のシティだったが、リーグ、FAカップ、CLのトレブル獲得に必要不可欠な人材だったことは誰もが認めるところであり、影のMVPの呼び声も高い。
2023-24シーズンは開幕戦のバーンリーFC戦で1ゴール1アシストの活躍。2023年9月23日の第6節ノッティンガム・フォレスト戦では乱闘を引き起こしたモーガン・ギブス=ホワイトに対して暴言を吐いたとして退場処分となり、3試合の出場停止となる。ロドリを欠いた3試合でシティは公式戦3連敗を喫し、ロドリの存在がいかに必要不可欠かを物語ることとなる。2023年12月22日の2023 FIFAクラブワールドカップでは決勝のフルミネンセ戦で悪質なタックルを受け、負傷交代したものの大会のゴールデンボールを受賞。2024年3月3日、第27節のマンチェスター・ユナイテッドとのマンチェスター・ダービーでは2アシストの活躍を披露。シティが前人未到のプレミアリーグ4連覇を決めた5月19日の最終節ウェストハム戦ではダメ押しの3点目を決める。シーズンを通してのパス本数はリーグダントツ1位の359本ながら、パス成功率が92.9%という異次元のスタッツを残し、シティのポゼッションにおいていかに重要な存在であることを証明。さらに8ゴール9アシストというアンカーの選手としては異常なゴール関与の記録も残し、世界最高のアンカーの地位をしっかりと築いている。
この年のEURO2024でもスペイン代表の優勝に大きく貢献し、最優秀選手も獲得。この功績が評価され、2024年のバロンドールを受賞。
2024-25シーズンはEURO2024決勝で負った怪我の影響で開幕から欠場が続くが、2024年9月14日のプレミアリーグ第4節ブレントフォード戦でシーズン初出場。ところが9月22日の第5節アーセナル戦の前半21分に右膝十字靭帯と半月板に重傷を負い、シーズン中の復帰が絶望的となる。
スペイン代表
2012年にはU-16スペイン代表、2015年にはU-19スペイン代表でプレーし、2017年からはU-21スペイン代表でプレー。2015年にギリシャで開催されたUEFA U-19欧州選手権2015に出場し、U-19スペイン代表は準決勝でU-19フランス代表を、決勝でU-19ロシア代表を破って優勝。ロドリは18人の大会優秀選手に選ばれている。
2018年3月、スペイン代表に初めて招集され、3月24日のドイツとの親善試合でフル代表デビューを飾っている。しかし当時のスペイン代表の中盤は黄金時代のベテランがまだ健在だったこともあって2018 FIFAワールドカップのメンバーからは落選している。
ワールドカップ後のUEFAネーションズリーグ、EURO2020予選では代表に定着するようになる。しかし、ルイス・エンリケ監督はアンカーにセルヒオ・ブスケツを信頼して使い続けたことから代表での立ち位置はアンカーの二番手という立場だった。
2021年6月に開催されたEURO2020ではブスケツが新型コロナウィルスに感染したことから最初の2試合はスタメンで起用される。しかしその2試合が引き分けに終わり、内容も乏しかったこともあって第3戦からはブスケツがスタメンに復帰。そのため控えに回ることに。ブスケツ復帰によってチームが復調したこともあって決勝トーナメント以降もスタメンには復帰できず、準決勝までの3試合に途中出場となった。
2022 FIFAワールドカップ カタール大会ではブスケツが引き続きアンカーのレギュラーとなったが、ルイス・エンリケ監督のアイディアによってセンターバックとしてプレーすることに。慣れないポジションながらも卒なくこなし、ビルドアップで貢献。しかし、チームはグループリーグで日本に敗れ、ラウンド16ではモロッコに敗れて敗退。このCB起用について後に「本当につまらなかった」と本音を明かしている。
カタールワールドカップを最後にブスケツが代表を引退したことで、2023年以降はようやく代表のアンカーに定着するようになる。2023年6月19日のUEFAネーションズリーグ2022-23決勝のクロアチア戦では120分間フル出場し、PK戦では2人目のキッカーとして成功させ、スペイン代表のタイトル獲得に貢献。
2024年6月にドイツで開催されたEURO2024には不動のピボーテとして出場し、スペインの心臓として常に高いパフォーマンスを発揮。ラウンド16のジョージア戦では狙いすましたミドルシュートによる同点ゴールを決めている。その後も攻守両面で屋台骨としての役割をこなし、決勝のイングランド戦ではハムストリングの負傷によって前半で交代となったものの、4度目のスペインの欧州制覇に大きく貢献。大会の最優秀選手に選出される。
大会後、祝勝会のステージでマイクを握り、「ジブラルタルはスペイン」と歌い出したことが物議を醸し、ジブラルタルサッカー連盟から抗議を受ける。
個人成績
シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
---|---|---|---|---|---|
2014ー15 | ビジャレアルB | セグンダB | 7 | 0 | |
2015ー16 | ビジャレアルB | セグンダB | 32 | 1 | |
ビジャレアル | リーガ・エスパニョーラ | 3 | 0 | ||
2016-17 | ビジャレアル | ラ・リーガ | 23 | 0 | |
2017-18 | ビジャレアル | ラ・リーガ | 37 | 1 | |
2018-19 | アトレティコ・マドリード | ラ・リーガ | 34 | 3 | |
2019-20 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 35 | 3 | |
2020-21 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 34 | 2 | |
2021-22 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 33 | 7 | |
2022-23 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 36 | 2 | |
2023-24 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 34 | 8 | |
2024-25 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ |
個人タイトル
プレースタイル
長身で細身の体格からもスペイン代表の先輩であり、本人も尊敬していると明言するセルヒオ・ブスケツとプレースタイルは非常に似ている。プレッシャーをかけられても両足を巧みに操りながらプレスを剥がす技術の高さやスタイルはブスケツそのもの。ボール捌き、正確なパスワーク、高度な戦術的インテリジェンスによってピッチを制圧する、スペインらしい理想的な「ピボーテ」である。
プレーの選択肢の多さとインテリジェンスの高さは多く知られるところであり、理論とフィジカルを活かしてボールを回収し、重要なラインブレイクのパスを提供することができる。ビルドアップにおいては中心としての役割を担い、ハイプレスをかけられてもうまくいなしてボールを死守するテクニックを持っている。
毎シーズン、高いパス成功率のスタッツを残していることからもパスの技術は世界でもトップレベルであり、長短のパスをうまく使い分ける姿からシティの熱狂的なファンからは「ロドリのパスはイングランドの銀行よりも安心」と評されている。実際、ピッチを幅広く使うペップ・シティの攻撃において、サイドへの展開はロドリを挟むことが多く、パスの中継地点として重要な役割を担っている。的確なポジショニング、味方の次のプレーを考えたパスができるため、常に攻撃の起点として重宝される。
ディエゴ・シメオネ監督から指導を受けたこともあってボールを奪う技術にも長けており、地上戦でも空中戦でも競り合いで強さを発揮できる恵まれたフィジカルを持っている。守備の局面では恵まれた体格をフルに活かしており、長い手足を使って効率よくボールを奪い、対人守備の勝率も高い。危機察知能力も非常に高く、危険なエリアを見つけると的確かつ瞬時にスペースを埋める。味方が危険なボールロストをした際はすぐにカバーに入り、即時奪還を実現させる。
また、アンカーというポジションでありながらもミドルシュートからの得点力の高さが光っており、これはブスケツと大きく違う特徴だと言える。また大舞台での決定力が高く、2023年のCL決勝などチームの攻撃が停滞しているときにゴールを決めることが多い。
弱点はスピードと俊敏さが平均よりも無いことで、広大なエリアでボールホルダーを追いかけ回す局面になると厳しくなる。そうなると無理にファウルで止めてカードを貰うようになる。
豊富なタレントが揃うマンチェスター・シティにおいても、彼がいるのといないのとではチームの出来が全然違うと言われるほど重要なキープレイヤーである。
人物・エピソード
- 幼い頃からの両親からの教えを守ってプロサッカー選手になってからも大学に通っており、イングランドに移籍してからはテストがあるたびにスペインへ戻っていた。ちなみに講義には一度も欠席したことがなかったほど超真面目。
- リヴァプールに敗れた試合の後は、悔しさから気を晴らすために勉強をしていた。
- 体にタトゥーを彫ることを嫌がっている。
- 自分自身のプレーについては「私はフットボールを理解しようとする選手だ。私が持っている最も優れている点の1つは、フットボールを理解する力だ。試合を見ていても、ボールはあまり見ず、ピッチの周りで何が起こっているかに注意を払っているんだ。」と分析している。
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