マヌエル・ジョアン・パトリシオとは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。CV.中博史(オーディオブック版)。
概要
外伝『ダゴン星域会戦記』に登場する自由惑星同盟最高評議会議長。
帝国軍の大規模侵攻という、同盟建国以来最大の危機を乗り越えた大政治家である。
経歴
温和で調整者タイプの政治家として知られ、最高評議会の閣僚を二度大過なく務めた後、宇宙暦639年、60歳にして最高評議会議長に当選。この時、対立候補であったコーネル・ヤングブラッドを国防委員長に迎えている。
その翌年、同盟と帝国のファーストコンタクトから帝国軍の大規模侵攻という緊急事態が発生すると、統合作戦本部長ビロライネン大将の進言に基づいて軍内でもトラブル・メーカーとして知られていたリン・パオとユースフ・トパロウルのコンビをそれぞれ総司令官と総参謀長に選び、国防委員長ヤングブラッドを始めとする多くの反発を抑えて迎撃の総指揮を任せた。
そして同盟軍は、運命のダゴン星域会戦を迎える。ヤングブラッドとの三次元チェスの勝負中に戦闘の結果を知ったパトリシオがまずしたことは、「酒屋の100軒ばかり」にTV電話をかけることであった。彼の任じた総司令官の要求通り、20万ダースのシャンペンを用意するために。
政治家として
彼はまさに”古き良き時代(グッド・オールド・デイズ)”の民主政治家というに相応しい人物であった。
その精神は第一に国防委員長の人事に表れている。コーネル・ヤングブラッドは単に対立候補であっただけでなく、調整者タイプのパトリシオとは正反対にリーダー気質の進歩派の旗手であり、しかも弱冠40歳という若手の改革政治家であった。にもかかわらず彼は選挙後、彼に国防委員長の重職をもって入閣を求め、ヤングブラッドも平然とそれに応じたのである。
しかし、このようなパトリシオが、本来緊急時の指導者として期待されるような人物ではなかったのも確かで、もし選挙時に帝国軍の襲来がわかっていたら、危機の時代を主導する強力な指導者としてヤングブラッドが議長に選ばれていただろうとされている。だがパトリシオは、「人事の王道とは言えんかもしれんが、トラブル・メーカーを最上位に据えておくほうが、中間においておくより、えてしてしまつがよいもの」という彼の経験に基きあえてリン・パオを女学生の寄宿舎の舎監迎撃総司令官に、リンと犬猿の仲であるユースフ・トパロウルを総参謀長に選んだのだった。
そして同盟の存亡を決するダゴン星域会戦の戦端が開かれても、その態度は落ち着き払ったものであった。勝敗いずれか、緊張する三次元チェスの勝負相手に彼が伝えた勝報は、「若い連中が、ひと仕事すませたようだよ」という、簡潔な一言のみだったのである。
彼の在任時期より30年ののち、同盟はコルネリアス1世の大親征に直面することになる。その時、パトリシオのような指導者が同盟に存在したかは定かではない。歴史に残るのは、同盟がダゴンの勝利に驕って帝国を侮り空前の危機に直面したこと、そして帝国の内紛がなければ滅んでいたであろうということだけである。
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関連項目
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