三浦弘行(みうら ひろゆき)とは、将棋棋士である。1974年2月13日生まれ。群馬県出身。西村一義九段門下。棋士番号204。
棋歴
1992年に18歳で四段昇段(プロデビュー)。1995年、棋聖戦でタイトル初挑戦。このときは羽生善治に3連敗で敗れたが、翌年の棋聖戦でもタイトル挑戦。当時七冠だった羽生を3勝2敗で破り、初タイトルの棋聖を獲得。同年の将棋大賞の殊勲賞を受賞した。2001年にはA級順位戦に昇級し、八段に昇段。2002年、NHK杯で優勝。2015年、将棋日本シリーズで13年ぶりの棋戦優勝を果たす。
2013年、第2回電王戦に出場。第5局でGPS将棋と対局。疑問手が見つからないまま、東大が生んだモンスターマシーンの前に敗れた。
棋風・人物
居飛車党。24時間将棋のことを考えていた時期もあるほど将棋に対して非常に真摯で、寡黙な性格、独自の戦略をつくり上げることから“武蔵”の異名を持つ。矢倉の脇システムなど研究が必要とされる戦法を得意とする。一方で、研究手順を明かしたくないのか、感想戦でだんまりを決め込み、対局相手を怒らせたことも。藤井システムに対抗するための新しい囲いを創案し、2000年度の升田幸三賞を受賞した。
将棋解説の際も朴訥で寡黙なのだが、ニコニコ生放送出演時は少々違って、
等はっちゃけており、そういう姿を見たことのない複数の棋士に「三浦さんってあんな人でしたっけ?」と言われる始末である。
同じ群馬県出身の棋士、藤井猛とは兄弟弟子の関係であり、奨励会時代はずっと将棋を指し続け、現在はお互いをトークのネタにしあうほど仲が良い。また、屋敷伸之とは棋聖戦で対局して以来の研究仲間である。
好きな飲み物はゼナ。和服での対局で、巾着袋(普通は小物や鍵などを入れる)からゼナを取り出して飲み、対局相手の羽生も思わず失笑。
将棋に真摯過ぎて異性との付き合いは縁遠いのかと思われたのだが、「2014年秋に17歳年下の女性と結婚していた」ことが2015年7月に報道され、将棋界に衝撃が走った(村山慈明に「叡王戦どうされました」事件の原因扱いされている)。当然ながら、報道後に初めてニコニコ生放送での解説番組に出演した際には、登場時のコメントで弾幕状態、視聴者からのメールはほぼその話だったため、将棋の質問だったときには当人もホッとしていた有様であった。なお、結婚生活はいろいろ我慢している模様。
ソフト指し疑惑冤罪事件
発端
2016年、第29期竜王戦。1組3位から挑戦者決定戦まで勝ち進んだ三浦は、丸山忠久を2勝1敗で破り渡辺明竜王への挑戦権を獲得する。三浦は順位戦でもA級に返り咲き、苦手としている渡辺を直近の順位戦で撃破するなど、研究の大家として知られる両雄による熱いタイトル戦が期待された。されていた……。
2016年10月12日。竜王戦第1局開催を3日後に控えた将棋界に、激震が走る。
「三浦九段は竜王戦不出場、休場届も未提出のためペナルティとして2016年12月31日まで出場停止。第29期竜王戦の挑戦者は繰り上がりで丸山九段」。すべての将棋関係者が、ファンが目を疑ったニュースであった。そして、その不出場に至った経緯が連盟より記者会見でリリースされる。
- 今年の7月頃より、不自然な離席が多いと言う指摘が対局相手よりなされる
- 連盟が10月11日に「事情」を聞いたところ、「別の部屋で休んでいた」と三浦九段は回答
- 納得できない連盟側に対し、「スマートフォンなどを使って不正していた……などと疑われたままでは対局はできない。竜王戦は辞退し、休場したい」と三浦九段が申し出た
- 10月12日15時までに休場届が提出されなかったため、連盟は竜王戦の不出場と棋戦への出場停止処分を下す
というものであった。事件に対して数多の憶測・流言が飛び交い続ける中、10月27日に将棋連盟は「第三者調査委員会」を設置。元検事総長の但木敬一を委員長に据え、事態への対処を試みた。
第三者調査委員会の調査結果
出場停止期間も終わりに近づいた12月26日。第三者委員会より連盟に対して報告書が提出され、同日15時より記者会見が行なわれた。第三者委員会の報告概要は以下の通り。
- 疑惑の根拠として指摘された点はいずれも、証拠価値が乏しく「不正行為に及んでいた」と認めるに足る証拠はないと判断する
- 連盟が下した出場停止処分については「竜王戦が直近に控えている中で、疑惑が解消されない非常事態が生じているため、連盟の判断は規律範囲内に収まるものでありやむを得ない」と考える
- 調査委員会としては、
との見解が示された。
本人による記者会見
第三者委員会の記者会見が行なわれた翌日、三浦本人による記者会見が行なわれた。
会見の冒頭では、「そもそも疑惑はなかった。また理事が監視していたにも関わらず、不審な点がなかった。それなら竜王戦七番勝負に出場させれば良いのでは。出場できなかったのは本当に残念」と悔しさを露わにした。また、出場停止明けに予定されていたYAMADAこども将棋大会・上州将棋祭りへの出演を本人の承諾なしに勝手に連盟側がキャンセルしていたことを明かした。
そして、「竜王戦への挑戦は難しいでしょうが、元の状態に戻してほしい」と訴えたうえで、「一刻も早く騒動が落ち着いて、結果が残せるように頑張りたい」と今の心境を語った[1]。
その後
2017年1月19日に将棋連盟会長の谷川浩司、常務理事の島朗が辞任した。
2月7日、三浦の独占インタビュー記事が公開された[2]。連盟の処分について疑問点と不当性を訴えたうえで、丸山を筆頭に初めから三浦を信じていた人たちに感謝の思いを語った。また、谷川浩司の兄から手紙を受け取ったことで「怒りの感情みたいなものが少し収まった」ことを明かした。一方で、三浦と将棋界を苦しめた一部のメディアと一部の棋士、さらに特定の観戦記者に対して強く非難した。連盟に対しては「私を含めた他の棋士たちも気持ちよく指せる状況づくりに心血を注いでほしい」と語った。
同日、三浦への記者によるインタビューが行われ、その模様が将棋プレミアムで配信された。
復帰
2月13日、竜王戦1組ランキング戦1回戦、羽生善治戦で4ヵ月ぶりの復帰を果たした。三浦の意向により対局前のボディチェックが行なわれる予定であったが、対等な条件で戦いたいという羽生の申し出により、両者にボディチェックが行なわれた。対局はニコニコ生放送で生中継され、午前中のアンケート「どちらを応援していますか?」では三浦の支持率が羽生の支持率を上回るという異例の結果となった。一時、形勢は三浦有望と見られていたが、難解な終盤戦を制した羽生に軍配が上がった。
4月14日、銀河戦の対局で復帰後5局目にして復帰後初勝利を挙げた。
4月23日、第62回天童桜まつりの人間将棋に対局者として登場した。対局相手は弟弟子の阿部健治郎、解説者は兄弟子の藤井猛で、同門ならではの掛け合いで会場を沸かせた。
和解
5月24日、一連の騒動について日本将棋連盟と和解合意したと発表した。主な内容は以下の通り。
- 第三者調査委員会の調査報告書における「三浦九段が不正行為に及んでいたと認めるに足りる証拠はない」こと、「連盟による対応は許容される範囲内の措置で、やむを得ない」ことを相互が受け入れる。
- 連盟が三浦九段に謝罪したうえで、慰謝料を支払う。金額は非公表。
- 合意の成立をもって円満解決とし、相手方の名誉毀損等をしない。三浦九段は関係棋士とも円満解決とし、今後は民事・刑事を問わず請求をしない。
関連動画
第2回電王戦
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関連項目
外部リンク
脚注
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