ボーイング747とは、(B747, Boeing 747)とは、アメリカ合衆国のボーイング社が開発したワイドボディ・ジェット旅客機である。
概要
ボーイング747 Boeing 747 |
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用途 | 民間旅客機 / 民間貨物機 |
分類 | ワイドボディ・ジェット旅客機 |
製造者 | ボーイング・コマーシャル・エアプレインズ |
製造期間 | 1969年 - |
総生産数 | 1418機(2010年9月現在) |
初飛行 | 1969年2月9日 |
運航開始 | 1970年1月22日 パンアメリカン航空 |
大量航空輸送の時代に新たな1ページを開いた革新的な機体で、現代においてもトップクラスの座席数、収容力を誇り、ジャンボジェット、あるいは単にジャンボ機とも呼ばれている。
アメリカ空軍の次期戦略輸送機計画に提出する機体として設計された大型軍用輸送機をベースとしており、当時出現が予想されていた超音速旅客機の就航後は貨物機に転用することを想定していた。1階部分を全て客席とし、2階部分にコクピットを置く設計はこの構想による(現に、貨物機型のボーイング747では、機首部分が大きく上に開くノーズカーゴドアが設置されている)。
座席数400を超える、途方もない収容力は過大であると考える航空会社も多かったが、その分1席あたりのコスト、すなわち運賃が下がることとなり、空の旅をより身近にする結果となった。
日本の空においても、主要な航空会社が軒並み採用しており、身近な機体といえる。特にJAL(日本航空)は一時期世界最大の保有機数の記録を持っていたこともあり、発注機数は合計113機にもなる。
現在では、初飛行から40年を経て、エンジンの性能が劇的に向上したため、より燃費の良い双発機に活躍の場を奪われ、旅客型の退役が進みつつある。
前述のように、一時は世界最大の747運航者であったJALにおいても会社更生法適用申請による経営再建の中、2011年3月1日のJAL75便(JA8089号機 ホノルル国際空港発 成田空港行)とJAL3098便(JA8077号機 那覇空港発 成田空港行)をもって保有機材全てが退役。 ANA(全日本空輸)でも2014年3月の完全退役が決定。3月31日のANA126便(JA8961号機 那覇空港12:35発 羽田空港15:00着)をもって全ての営業運航を終了した。日本国内の民間航空会社では日本貨物航空のみ保有となる。
最後に製造された機体(1570機目)が2022年3月に初飛行し、製造を終了している。[1]
バリエーション
長い生産期間の間に改良が加えられ、大きく以下の3つの世代に分けることができる。
クラシックジャンボ
- -100・・・747の初期モデル
- SP・・・-100の短胴型。「Special Performance」の頭文字。航続距離を延長する為に短胴化したが、これが巡航速度の向上という予想外の結果を生み出し、-300の製造に繋がった。
- SR・・・日本の航空会社の需要に応えた国内線用の短距離向け。胴体や着陸装置を強化。「Short Range(短距離)」の頭文字。500人以上が乗れる。運用者はJAL・ANAのみ。このうちJAL所有のJA8119号機は「日本航空123便墜落事故」の当該機。
- -200・・・-100の改良型。
- -200F・・・-200の貨物仕様。「Freighter」の頭文字。
- -200C・・・-200の貨客混載仕様。乗客と貨物の両方を同時に輸送出来る。「Combi」の頭文字。-300にも設定。
- -300・・・-200をベースにアッパーデッキ(2階席部分)を延長させたSUD(Stretched Upper Deck : 2階部分延長型)。4機のみSRも製造。
747-400
機体の空力特性を改善した他、翼端の誘導抵抗を減らすためのウイングレットも採用した。全体の燃費は9%向上し、航続距離も300型より1500km伸ばすことが可能となっている。コクピットはシステムの自動化とデジタル表示方式の導入により、機長と副操縦士の2人だけで運行が可能になった。[2]
- -400・・・基本形態。国際線仕様。
- -400F・・・純正貨物仕様。アッパーデッキが-200と同様の短いタイプになっているのが特徴である。
- -400M・・・貨客混載仕様。
- -400ER・・・航続距離延長型。外観は通常の-400と同じ。製造数は6機のみで、全機がオーストラリアのカンタス航空にて運航されている。
- -400ERF・・・-400ERの貨物仕様。-400F同様アッパーデッキが短い。-400ERに比べ世界中から多くの貨物航空会社から発注された。最後に製造されたハイテクジャンボはこのタイプであった。
- -400D・・・SR型の後継となる国内線仕様。狭い日本の空港事情と短距離では燃費向上の効果が薄い事からウイングレットは非装着。「D」は「Domestic(国内)」の頭文字。運用者はJAL・ANAのみ。このうちANA所有JA8963は「マリンジャンボ」と呼ばれる日本初の特別塗装機。
- -400LCF・・・-400の中古機材をベースに胴体を大型化した、ボーイング787コンポーネント輸送機。通称「ドリームリフター」。日本では中部国際空港に飛来する。振動を防止する為、こちらもウイングレットは非装着。
747-8
現在生産中の第3世代ジャンボ機で、胴体を延長すると共にボーイング787の技術を一部導入。B747シリーズでは初めて旅客型より貨物型が先行してロールアウトすることになった。
- -8IC・・・旅客機型。ICとは「InterContinental」の頭文字。B777やB787等の長距離双発機に比べ販売業績が芳しくない状況となっている。旅客型は現在、ルフトハンザ航空、大韓航空、中国国際航空の3社によって運航中。またアメリカ合衆国では次期大統領専用機として-8ICをベースとした軍用型が開発される見込みである。
- -8F・・・貨物機型。旅客機型に比べ多くの受注数を得ており、日本では日本貨物航空が-400Fに代わる新しい主力機材として導入している。
これ以外にも、旅客機から貨物機への転用改造機などが存在している。このうち-300以降の改造機は2階席部分の長さがそのままの為、純正の貨物機との見分けが付きやすい。またNASA(アメリカ航空宇宙局)にも元パンナム→ユナイテッド航空のSP型を飛行天文台として使用している他、元アメリカン航空の-100と元JALのSR型(JA8117)をスペースシャトル輸送機として使用していた。
その他
- アメリカ合衆国大統領専用機(VC-25 -200型がベース、通称「エアフォース・ワン」)
1990年就航。アメリカ空軍第89空輸航空団(メリーランド州アンドルーズ空軍基地)が運用。日本と違い、もっぱら大統領輸送任務に就いている。
機内は執務室や寝室、会議室、通信室(2階席)などに改造され、報道関係者向けの一般客室も備えている。空中給油も可能。定員数はJALで500人以上に対し、80人程度。
-200がベースだが、改造時期が-400製造開始と重なった事から、一部計器類はグラスコックピット化されるなど、過渡期ならではの改良が施されている。2021年頃を目途に747-8ICにバトンタッチする予定。 - E-4B 国家緊急事態空中指揮機(NEACP)
747-200Bを改造して作られた機体で、有事には合衆国大統領も搭乗して空飛ぶ最高司令部となる。空中給油を受け続ければ、理論上はエンジンの潤滑油が切れるまで7.3日間は滞空し続けることが可能。常に1機がエアフォース・ワンに同行している。[3] - 日本国政府専用機(-400型(国際線仕様)がベース)
1993年就航。航空自衛隊特別航空輸送隊第701飛行隊(北海道千歳基地)が運用。皇族・内閣総理大臣等の要人輸送任務を中心に使用。機内は空中給油機構がない事以外は基本的にアメリカとほぼ同じ構成だが、在外邦人救出や有事における自衛官緊急輸送等のミッションにも運用される為、会議室などは一般客室に改造出来る。
2019年3月末で退役、任務はB-777に引き継がれた。[4]
関連動画
クラシックジャンボ関連
-400シリーズ関連
-8シリーズ関連
スペースシャトル輸送機
アメリカ大統領専用機特集「On Board Air Force One」
日本国政府専用機
MikuMikuDance
左:予選 右:本選
関連コミュニティ
関連項目
脚注
- *最後のボーイング747、製造終了 UPS向けに塗装作業へ 2022.3.7
- *「日本航空宇宙産業の挑戦」 駒橋 徐 にっかん書房 1988 pp.8-9
- *「NASA-X機 天才たちの挑戦」 中冨信夫 講談社 2002 p.182
- *地球365周で退役 写真特集・政府専用機B-747-400 2019.3.31
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