「COPPERS」とはオノ・ナツメの漫画作品である。COPPERとは警官を示すスラングで、昔の警官が銅のボタンを身につけていたことから。ここから警官のことを「COP」と呼ぶようになった。
概要
2008年から、モーニング増刊「モーニング・ツー」誌にて9号より連載された。
同人誌「I've a rich understanding of my finest defenses」の設定を受け継ぎ、ニューヨーク市ブロンクスに所在するNYPD51分署や特殊部隊ESU4の警官達と、彼らの周囲にいる人々を描いている。 この同人誌とCOPPERSを含む作品群は「NYPDシリーズ」として知られている。
絵柄はオノ・ナツメファンにはお馴染みの「小さい絵」で描かれているが、一部は大きい絵で描かれている。小さい絵では人物はデフォルメされている一方で、自動車は細かく描かれるなど、独特の雰囲気がある。
あらすじ
※Case.1より
その日51分署は、署長不在初日を迎えていた。手術の為に署長が入院してしまい、副署長のカッツェル警部補が署長代理となって初めての日である。カッツェル警部補には不名誉なジンクスがついて回っていた。彼の異動や役職の初日と最後の日は、決まって悪いことが起きるというのだ。
ジンクスが当たったのか否か、早速大きな事件が発生してしまう。車両で逃走中の強盗犯をアーロン巡査が発見しパトカーで追跡したところ、追い込まれた犯人が車を捨てて店に逃げ込み、人質を取り篭城したのだ。人質事案や事故などの人命救助を手がけるNYPDの特殊部隊・ESUも出動し、地域一体は封鎖された。現場の指揮を執るのは、冷静沈着で有能な51分署のヴォス警部補。51分署の巡査たちは野次馬と報道の整理に勤しむが、アーロンはチケットを取ったヤンキース対レッドソックスの試合が、モーリーンは美容院の予約が、それぞれシフトの後にあるので事件が早く解決するのを願っている。51分署刑事課のキース刑事とヴァル刑事は事件には直接携わらなかったものの、食事を買うために立ち寄った店がたまたま現場の近くだった為に覆面パトカーを出せなくなった。
それぞれがこの大きな事件に振り回されつつ、署長不在初日を過ごしていくのだった。
キャラクター
ニューヨーク市警察
51分署
- グラント警部
51分署の署長。良性の腫瘍が出てきたため、切除手術を受けるために入院。それまでは爺さんの苦情を引き受け、話し相手になっていた。単行本1~2巻は不在初日から最終日までなので登場せず、カッツェルと電話で話す場面だけである。 - カッツェル警部補
無口な中年男性。署長が入院した為、署長代理を務める。とっつきにくい様相から署員は皆苦手としている。彼の役職や赴任初日と最後の日は、何かしら悪いことが起きるというジンクスがある。巡査時代は12分署に勤務していたが、巡査最後の日に親しくしていた相棒が殉職し、その時は自分のジンクスを恨んだ。だが相棒の婚約者からそんなことで悩まないよう諭された。「食べたいものは、食べられる時に食べておけ」が信条。愛煙家。 - ヴォス警部補
有能な若手警部補。巡査時代はアルコール中毒の相棒を上席者に報告するなど、外見に違わぬクールな人物である。一方で署員たちには良く目を配り、彼らに適切なアドバイスをする。巡査時代に、留学生ビザで取材活動をしているアキに職務質問をして以来、彼とは腐れ縁。かつて内務調査の仕事をしていた時に、アキと一緒に市警と外部との不適切な関係について調べたことがある。 - アーロン巡査
若くて威勢の良い青年。将来はESU入りを希望するなど、警官という仕事に対して前向きな意欲がある。相棒のタイラーが覇気が感じられない万年巡査の中年男なので、彼を軽視していたものの、徐々に彼から警官としてのあり方を学ぶようになる。 - タイラー巡査
中年の男性警官でアーロンの相棒。腹が出ていて、服装既定に引っかかりそうなヒゲを生やす。51分署署員の最古参。自分が万年巡査なのは重々承知しており、出世欲などとは無縁。その代わり地元のことは誰よりも詳しく知っている。「次会うまで生きてろよ」と町の人々を励ます。 - モーリーン巡査
アフリカ系の女性警官。本人は頑張り屋で一生懸命だが、生真面目なのか自分をからかおうとする人を軽くあしらえない不器用さもある。 肉体労働の現場を理解しない両親に育てられたので、親が来るときは身支度などに気を遣う。結婚を考えている刑事の恋人がいる。 - ティック巡査
イケメンの男性警官。モーリーンの相棒。自他共に認めるほど異性にもてるが、それ故にトラブルが生じることも。 - ハウスマン巡査
内勤の警官。おとなしく内気な性格で、自ら望んで内勤になった。その性格から威勢の良いアーロンにからかわれる事もある。署に入ってくる情報を把握しているので、それを活かしてアーロンらパトロール警官を支援するなど縁の下の力持ち。タイラーには「勇気が沸いたら外に出ろよ」と励まされ、自分もいつかタイラーのような警官になりたいと思うようになる。運動は苦手だが、トランペットが得意なので腹筋と肺活量はすごい。 - キース刑事
51分署刑事分隊に所属する刑事。かつてクィーンズ地区の108分署でパトロール警官をしていた。 冷徹そうに見えるところもあるが、巡査時代はアル中の相棒を庇い通したこともある。妻のメリッサは108分署時代の相棒で、彼女とは再婚。前妻は男を作って出て行き、その後夫に射殺された。
前妻が"Unmarked"を嫌っていたので刑事にはならないつもりだったが、メリッサと縁が出来て考えが変わった。108分署の前に所属していた分署で、前妻のことを侮辱した当時のダールウィッツ署長を殴った。ヴァルのことはなんだかんだ言って、相棒として気にかけている。実は薄くなってきた頭部が心配。シナモンが大好きで、ドーナツはシナモンドーナツ、リンゴの味よりシナモンが強いアップルパイなどを好む。 - ヴァル刑事
キースの相棒で新米の刑事。キースからは「覚悟が足りない」といつもお説教される。車をぶつけたことから、キースに運転させてもらえなくなる。また「シナモンの取り過ぎはハゲる」というガセネタをキースに教えたところ、一時キースが口をきいてくれなくなった。
ESU
- ビクター
クィーンズ北地域を担当するESU10の隊員。元軍人。離婚した妻が死亡したので、娘を引き取って育てるために退役し、コネを利用してNYPDに転職した。クィーンズ時代のキースを知っている。 彼と知り合った時は悪い噂を聞いて悪い印象を抱いていたが、後に彼をよく知ることで信頼を置くようになった。今では親しい間柄。好物はチキンシチュー。
市警本部
- ダールウィッツ
NYPD刑事局長。キースやヴァルにとっては直系の最高責任者ということになる。かつて署長だった時、キースの当時の妻に関して冗談を述べたところ、それを侮辱と受け止めたキースから殴られたことがある。しかしかといって恨みに思うわけでもなく、むしろ彼を特に気にかけるようになった。ある刑事の葬儀でキースと再会した際には、刑事に志願したキースに対して「全く君は遅咲きだ」と励ました。息子もNYPDの警官で、卒配で108分署に勤務しキースの教育を受けた。
民間人
- ラス
51分署の近くにあるデリカテッセンの店員。人に親しまれる性格なのか、51分署の面々の愚痴をよく聞かされる。気遣いやサービスはかなり良いほう。 - 中野秋光(通称:アキ)
日本人のジャーナリスト。ヴォスとは腐れ縁。取材の為にお土産を持ってヴォスのところを度々訪れるが、その都度邪険にされる。51分署の面々とは顔なじみで、アジア人の人相確認に協力することも。今はちゃんと報道ビザを取り、ニューヨーク市警やニューヨークのことについて記事を執筆中。 - 爺さん
51分署の取り壊しを陳情する為に、頻繁に分署に出入りしている爺さん。爺さんの祖父が住んでいたスラム化したアパートを取り壊され、そこに51分署が建てられたのが原因。 かつて「BEARS,Inc」というエレベーターの修理会社で働いていた。 - メリッサ
キースの妻。元108分署パトロール警官で、キースの相棒でもあった。現在は専業主婦。「警官には別世界があるべき」と、キースを支える為に家庭を守る。 - リサ
ビクターの娘。ビクターが軍隊へ入った後に親が離婚し母親に育てられたが、母親の死後にビクターと暮らすようになる。
薀蓄
「51分署」という名称
NYPDには多数の分署(所轄署)があるが、50番台の番号が振られた分署は50分署と52分署であり、共にブロンクスにある。51分署は欠番なので実在はしないが、上手く欠番を利用してそれを設定に活かし、さらにブロンクスに配置するという作者の発想は絶妙であるといえるだろう。
ESU4
NYPDの特殊作戦局(Special Operation Bureau)に所属するESU(Emergency Service Unit、緊急対応部隊)は、本部直轄の予備部隊を含めて市内に11のESS(Emergency Service Squad、緊急対応分隊)を配置しており、各分隊に一台の重機材車・Eトラックを配置している。
51分署の隣にいるESUはESU4と呼ばれており、Eトラックにも「Truck Four」と書かれているので、これは実際のESUで言うところのESS4であろう。ESS4は、ブロンクスの西236丁目とキングスブリッジアベニューの角の50分署
に居を構えている。編集者がGoogle Mapの画像を見て、署の周辺の駐車場にESUの車両が止まっていること、ESUの駐車スペースがあることを確認したので、多分あってると思う。
話にあわせてESS4の配置は変えてあるものの、その置き方は先述の51分署とあわせてやはり上手いと言える。
ちなみにESUは秘密部隊でもなんでもないので、街中で警戒中の隊員の話しかければ、記念撮影に応じてくれることもあると思う。気軽に声を掛けて、M4カービンを構えたESUの隊員と一緒に写真を撮ってみよう。
ラスの店
その50分署の周囲の店舗を見てみると、署の向かいにドッカーンとマクドナルドがあり、キングスアベニュー沿いにデリカテッセン、ドミノピザ、動物病院、ペットショップのような店、なんだか良く分からない店、NYPDの制服など装備品を売る店、自動車修理工場などをできた。地図によるともう1つデリカテッセンがあるようだが、シャッターが閉まっていて看板もないので店じまいをしたのかもしれない。
51分署の所在地が正確にわからないが、他の分署の周囲も大体似たようなもののようだ。デリカテッセンはニューヨーク市内に沢山あるし、お巡りさんは昼食には困らない。
既刊情報
COPPERS 1
署長不在初日から始まる第1巻。カッツェル警部補のジンクスから始まり、アーロンとタイラーの話、エレベーターの伝説などが語られている。
COPPERS 2
何時までも新米気分が抜けないヴァルの刑事としての覚悟や、若かりし頃のカッツェル警部補の話、そして署長不在最終日までが描かれる。またアキとヴォスの腐れ縁を描いた外伝も収録。
Danza
様々な作品を収録した短編集。この中に、キースとヴァルの絆を描いた「パートナー」が収録されている。
COPPERS 108→51
モーニング2 2009年8月2日号におまけの冊子として掲載された短編。108分署でパトロールをしていたキースがめりっさと結婚し、刑事試験に合格して51分署に赴任するところまでを描く。同人誌とCOPPERSの間を埋める話と言えるだろう。他の作品とは異なり、大きい絵で描かれている。またこの号の表紙には、制服姿のキースが描かれている。
I've a rich understanding of my finest defenses
オノ・ナツメの同人誌。NYPDシリーズは全てはここから始まった。新人のESU隊員ビクターを中心とし、その周辺にいるキースや他のESU隊員も描いている。話と話の間にはESUの説明が入り、ESUについて日本語で書かれた資料的価値もあったりする。
関連動画
空あります
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単行本
モーニング2(Coppers番外編冊子付録)
ドラマCD
関連項目
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- 0pt

