イワン・コーネフ(Ivan Konev)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
CV.鈴置洋孝(石黒監督版OVA)、鳥海浩輔(Die Neue These)
自由惑星同盟軍人、単座式戦闘艇スパルタニアンのパイロット。明るい色の髪と目をもつ、すっきりとした容貌の青年軍人である。ユーモア精神に富み、クロスワード・パズルを好む、おだやかで人当たりがよい好青年だが、相方オリビエ・ポプランと組むと的確かつ痛烈な毒舌をしばしば炸裂させる。
同盟軍が誇る撃墜王のひとりであり、“ハートのエース”ポプランとならぶ“クラブのエース”として知られる。ヤン・ウェンリーのもと、イゼルローン要塞第二空戦隊長、同要塞駐留艦隊(ヤン艦隊)空戦隊コーネフ戦隊隊長としても活躍したが、バーミリオン星域会戦において戦死した。
同盟首都ハイネセンの実家に両親と4人の弟妹が住む(宇宙暦797年3月時点)ほか、フェザーン自治領の独立商人ボリス・コーネフは従兄。
時系列上では外伝「千億の星、千億の光」が初登場。宇宙暦794年の第六次イゼルローン要塞攻防戦において、第八八独立空戦隊所属の少尉としてオリビエ・ポプラン、サレ・アジズ・シェイクリ、ウォーレン・ヒューズとともに戦果を挙げる。続いて外伝「星を砕く者」では795年のレグニツァ上空遭遇戦に第2艦隊所属の空戦隊員・中尉として参加。ガス状惑星の表面爆発により同盟軍が敗勢に陥るなか、ポプランとの連係プレイで帝国軍巡航艦1隻を完全破壊し、味方の士気を高めている。
刊行順での初登場は本伝1巻黎明篇で、796年の帝国領侵攻作戦に際し、ヤン・ウェンリー中将の指揮する第13艦隊の旗艦<ヒューベリオン>所属の搭乗要員・大尉として参加。ケンプ艦隊との交戦では4機の敵機を撃墜した。のちにユリアン・ミンツに語ったところでは、つづくアムリッツァ会戦でも1機を撃墜したようである。戦後には少佐に昇進し、ヤンが司令官となったイゼルローン要塞に着任する。
この直後数ヶ月を描いた外伝「ユリアンのイゼルローン日記」では、ユリアンの歳上の悪友のひとりとしてしばしば登場する。796年12月3日条でユリアンと初対面を果たして以降、796年12月17日条ではユリアン、ポプランと要塞内マイナス〇一四一レベルでの幽霊事件の調査を担当、2月19日の捕虜交換後には、帰還兵とともにハイネセンに向かうヤンの随行員にやはりポプランとともに加わり、道中に生じたドールトン事件の解決にも寄与した。
いっぽうで本伝2巻、3巻には登場がなく、「イゼルローン日記」終盤でのイゼルローン要塞帰着以降しばらくは動向が記述されなくなる。このため要塞帰着直後に生じた救国軍事会議のクーデターの討伐、翌798年のイゼルローン回廊帝国寄り宙点における戦闘、つづく第八次イゼルローン要塞攻防戦などでも登場しないが、やはりイゼルローン要塞所属のまま各戦闘にも参加していたとみるのが順当であろう(アニメなどでは問題なく登場・戦闘参加している)。
再登場するのは本伝4巻策謀篇、798年夏の銀河帝国正統政府成立時。同年末にはじまる第九次イゼルローン要塞攻防戦中にも登場し、つづく本伝5巻風雲篇では要塞第一空戦隊長ポプランと並ぶ第二空戦隊長の任にあると紹介されている(就任時期は作中に記載がないものの、796年末のイゼルローン要塞着任の時点からすでに第二空戦隊長の任にあったと思われる[1])。
その後、同盟軍がイゼルローン要塞を放棄するとふたたびヤン艦隊旗艦<ヒューベリオン>所属の戦闘艇搭乗員となったようである。同年4月末、バーミリオン星域会戦(本戦)時にはコーネフ戦隊を隊長として指揮し、会戦前半の4月29日にはポプラン戦隊とともに帝国軍ワルキューレ部隊を迎え撃つ。しかしヤン艦隊空戦隊が過去にない苦戦を余儀なくされたこの空戦中、巡航艦の砲撃により戦死した。
コーネフ戦隊の指揮は副隊長コールドウェル大尉が隊長代行として継承した。戦死時の階級は明確でないが、799年3月初の時点でポプランが中佐に昇進していることから、イワンもおそらく同様に中佐に昇進していたものと推定される。
「玄武岩でつくられたようにものがたい男」と評され、ふだんは堅実で落ち着いた雰囲気を崩さないが、いざというときにはファイター・パイロットらしい機敏な反応をしめす。常識人の雰囲気を漂わせつつも、新年の祝祭の際には頭からビールを被ってびしょ濡れの状態で悠々と歩いているところを目撃されるなど、これはこれでヤン・ファミリーのご多分に漏れないたぐいの人物でもある。
あまり積極的に行動するたちではないようで、たとえば797年2月1日の要塞内各部局対抗フライング・ボール試合では「見物役」として参加しなかった模様。帰還兵の船団で乱闘事件が起きた時(「イゼルローン日記」797年3月3日条)も、ポプランが危険におちいったら手を出すつもりで見てはいたが、ついに危険にならなかったため「目撃者兼証言者」に落ち着いた。
趣味はクロスワード・パズルで、辞書のように分厚いクロスワードの本を相手にしていたという。特に「イゼルローン日記」でのイワンの登場時にその場面が多く、ユリアンにクロスワードの本を貸したり、「三次元クロスワード・パズル」なるものに熱中していることもあった。石黒監督版OVAでは、バーミリオン星域会戦中に出撃を控えた操縦席でクロスワードを楽しみ、「FUNERAL(葬式)」という縁起でもない単語を導き出してポプランに苦い顔をされるオリジナルシーンがある。
同盟軍のファイター・パイロットとして最高級の空戦技倆を有し、その武勲と空中戦技は同盟軍史上屈指の撃墜王として知られるポプランにも匹敵したとされる。
ポプランにくわえ、のちに帝国領侵攻時に戦死したヒューズ、シェイクリと四人チームを組んだ第八八独立空戦隊当時(第六次イゼルローン要塞攻防戦当時)には、自分たちの存在をそれぞれカードのエースになぞらえて誇示しており、イワンは“クラブのエース”だった。帝国領侵攻当時にあっても、彼の愛機にはクラブのAの印が特殊な塗料で描きこまれていた。
同盟軍中でも、スパルタニアンのパイロットたちは「戦争における個人プレイを技術から芸術にまで高めようという、不敵な小集団」としての傾向を持つが、彼ら四人組もそのひとつで、戦闘ごとに撃墜数を競いあい「死と戦慄のゲーム」を楽しんでいた。彼らは戦争もスポーツの一種ととらえる不謹慎な図太さで数多くの戦いを生き延びたが、いずれ自分も敵のより卓越した撃墜王の手にかかる時が来るだろうと信じており、その日まで戦場でも陽気さを失わず生きることを信条としていたのである。
ポプランとは10年来(797年当時)の親しい友人どうし[2]であるとともに、互いに自身に匹敵するファイター・パイロットとして技倆を認め、戦闘時には撃墜戦果を競い合う間柄だった。日常的にもよく連れ立っていたが、放蕩者のポプランとは対照的な人となりで、「性格の相反するこの両人は、当人たちが考えているよりはるかに歩調のそろったコンビなのだった」と評されている。
自己の操縦技倆には強い自負を持つポプランをして、イワンを「同盟軍で二番めの名パイロット」と評し[3]、戦死の報に「イワン・コーネフが一騎撃でやられるはずはない」と断言する、カーテローゼ・フォン・クロイツェルを評するに「第二のオリビエ・ポプランは無理でも、第二のイワン・コーネフにはなれる」と名前を引くなど、相方からも技倆に高い評価を与えられていた。
たいていポプランとふたりで行動していたことはユリアンも日記に記しているが、作中でもイワン単体での登場は日常ものの色が強い「イゼルローン日記」中にわずかに見られる程度である(逆にポプラン単体はイワン生前から意外と多い)。調子の良い色男ポプランに対するツッコミ役であり、シニカルで辛辣なジョークを交わしたり、ユリアン相手に格好をつけたがるポプランの横から絶妙なタイミングで冷静な指摘や痛烈な皮肉を挟み込む場面がしばしば描かれる。
物腰おだやかな好人物であるにもかかわらず、ポプランとふたりづれとなると「毒舌のミサイル射手になる」ことはユリアンに不思議がられているが、無害な化学物質も有害な物質と化合させると有害になるのと同じ、とはヤン・ウェンリーの言(ヤンを触媒とする朱に交われば現象が当時のイゼルローン全般に蔓延していたのは明らかである)。面白そうな揉め事を見れば顔と手を突っ込みにいくポプランのストッパーという感もあるが、これもヤンいわく、いろいろ言うわりに実際に制止した例はめったにない、とか。
なお、両者は飛行学校の同期として知り合ったらしいが、ユリアンがイワンに経緯をたずねた際には「『イワンが家庭の事情でぐれて放校処分になりかけたところを風紀委員だったポプランがかばった』とポプランは言いふらしているがまっかな嘘」という話だけが得られた(ユリアンは別途ポプランにも尋ねているが、まさにイワンが言った通りのことをしかめつらしく語って笑い出したのみだった)。
作中で登場する唯一の血縁者である従兄ボリス・コーネフについては、駐在武官としてフェザーンに旅立つユリアンに「フェザーンにはたしかおれの従兄がいたと思う」と伝えてはいるが、曖昧な言の通り(少なくともこの時点では)会ったことはなく存在を知る程度。ボリスとは後にユリアンやポプランも仲間付き合いを持つことになるが、イワン自身は終生対面せずに終わった可能性が高い[4]。
なお、ボリスはバーミリオン星域会戦ののちにヤンを官舎に尋ねて再会した際、従弟イワンの戦死を知らされている。やがてイゼルローン共和政府の成立後には、ポプランがハイネセン在住のイワンの家族の消息をボリスに訊ねている。
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最終更新:2025/12/13(土) 12:00
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