ウィザードリィ・V 災渦の中心とは (メイルストロームノチュウシンとは) [単語記事]

ウィザードリィ・V 災渦の中心（原題：HEART OF THE MAELST ROM/メイルストロームのちゅうしん）は、Wizardryシリーズ5作目。

表記揺れについて

「ウィザードリィ・V 災渦の中心」はSFC版のタイトルだが、機種によってサブタイトルの和訳がなかったり表記が違ったりするため、本記事名では独断でこれを採用する。Vの前に「・」があるのもSFC版に準拠した。「ウィザードリィ #5」という表記もよく使われる。
タグ名では「ウィザードリィ5」か「災禍の中心」が多いようだが、SFC版は災「渦」の中心だ。だがPS版だと災「禍」の中心になっているので間違いとも言い切れない…

概要

「リルガミンの遺産」から数年、リルガミンの町を再び災厄が襲う。
「三軸の門」を守るブラザーフッド寺院のまさに真下で、災害の原因たる災いの渦（メイルストローム）が生じているのだ。この危機を救える大魔法使い・ゲートキーパーは、かつて弟子であった魔女ソーンにより渦の中心に囚われてしまった。賢者フォンティザンとイェルダーブに導かれた冒険者たちは、ブラザーフッド寺院の地下深くに広がる「災渦（メイルストローム）の中心」に挑み、ゲートキーパーを救い出し、ソーンを打ち倒さなければならない。

ウィザードリィ4のような異端路線は取らず、初代のゲームシステムから正当進化した作品。街を拠点にパーティを組むという基本設計は従来の通りに戻ったが、内容は高度に進化している。
これまで1フロア20×20に限定されていたマップは広大なものに変化し、迷宮の雰囲気がよりリアルなものへと変わっている。鍵のかかったドアや、迷宮を探索しなければ発見できないアイテム、迷宮内で遭遇するNPCの存在、そして難解なシナリオ、複雑な謎解きと、バトル以外の要素が大幅に強化されている。

バトルシステムも見直され、後列攻撃の追加と魔法の刷新が行われた。難易度も高めになり、終盤ではレベル13程度では太刀打ちできない強敵も登場する。
難易度が上がったためか、迷宮内でのオートセーブは廃止となり、任意のタイミングでクイックセーブができるようになっている。街では従来通りのオートセーブのままとなる。

ランダム要素の強いアイテム集めは旧3作と近いのだが、かなり強力なアイテムがNPCから買えたり、最強レベルのアイテムを落とす敵が固定（ただしめちゃくちゃ強い）だったりと、変化が起きている。そのためアイテムコンプリートにおける運頼りの要素は減っている。この後も本国のシリーズは旧路線で進化することはなかったようだ。

また行く必要のないエリアにラスボスより遥かに強いモンスターがおり、隠しボス的存在もいる。

1990年に日本版が発売され、1992年にはPCエンジン、スーパーファミコンに移植された。
SFC版はファミコン版と同じく開発ゲームスタジオ、BGMを羽田健太郎、モンスターデザインを末弥純が担当している。ターボファイルによるファミコン版キャラクターの転送も可能である。

ダンジョン

地下１階
ブラザーフッド寺院の施設。寺院では司教「グブリ・ゲドック」が冒険者たちを迎え、その使命について教えてくれる。また商人の「アイロノーズ」に遭遇する事があり、次の階層で必要な鍵を販売してくれる。
隠されたエリアには黄金に輝く「笑うヤカン」がおり、ゴールドを与えると金額に応じて情報をくれる。戦闘に持ち込むと極悪な強さを誇るが、莫大な経験値が取得できるため、最強パーティーを目指してレベリングの為に延々と狩るプレイヤーは多い。
地下２階
大きく３つのエリアに分かれており、飲んだくれの魔術師「ルビーウォーロック」が道を塞いでいるが、ラム酒を与えると友好的になって道を開けてくれる。
「拷問部屋」には怪物・ハークルビーストが住んでいる。序盤の強敵だが、ラム酒を手に入れる為にはどうしても戦う必要がある。
「ブッバの健康温泉」には喋るアヒルこと「スパークのアヒル」がおり、霊を祓う薬の作り方を教えてくれる他、はぐれてしまった「かわいい子」を渡すと重要アイテムを渡してくれる。すぐ近くには屈強なドワーフの戦士達が集う酒場があり、酒をおごる事で情報を得られる。
地下３階
「風の王デジン」を祀るカマカジ寺院入口では、守銭奴の司教「ロード・ハインマイティ」が応対する。
足踏みを続ける巨大な怪物「マッドストンパー」に遭遇する事もあるが、よくよく話を聞くと複雑な事情が分かる。彼から購入できる「ゴムのアヒル」は、水泳しても溺れなくなるすぐれもののアイテム。
「時の失われし部屋」には「多次元霊化装置」なるものがあり、後で得られる情報を元にして「懐中時計」を作る事が可能。
地下４階
盗賊のアジト、長い長い回廊、倒産した「ジグソウ信託銀行」、悪魔の部屋と様々なエリアが存在する階。
盗賊のアジトでは手癖の悪い連中が屯しているが、うまくいけば情報を得られる。またここにある墓の前で「懐中時計」を使うと、時の賢者「ルーン」が姿を現し、重要な情報をくれる。
地下５階
フロア全体が娯楽施設「娯楽の殿堂　マンフレッティの店」となっている。登場するモンスターもどこかで見たような......
オーナーのマンフレッティは現在行方不明で、入口では門番の「ビッグマックス」がチケットを販売している。美しいロイヤルレディやコソ泥のスナッチから情報収集が出来るが、回転床の舞踏場、命がけのスリルが楽しめるミステリーシアター、鏡の迷路などの娯楽とモンスターが冒険者を手荒く「歓迎」する。
地下６階
氷に閉ざされたフロア。ここから難易度が一気に跳ね上がる。
邪悪な魔術師「イビルアイズ」からは占いをしてもらえるが、首にかけたロケットを手に入れる為に盗みを仕掛けねばならない。そのイビルアイズによって冷凍されていた「マイティヨグ」はどう見ても白いゴリラだが、マッドストンパー同様イビルアイズによって姿を変えられてしまったらしい。彼が作った「氷のフェリー」を復元して進むと「氷の王ロブナ」との戦闘が待っている。
地下７階
四人の「カードのロード」が三軸の門への道を塞いでおり、それぞれに対して対応したトランプのカードを示さなければ先に進めない。全てのカードを手に入れ、謎を解いて先に進むには地上に戻ることなく４度三軸の門を潜らねばならず、回復効果のある泉を活用しなければならない。水泳のレベルを上げましょう。
地下８階
「災禍の中心」たる最奥の階層。ソーンが召喚したプレイヤーの分身と４度戦う必要があり、忍者や侍を相手にするのは極めて危険。己自身を倒し、全ての謎を解くとゲートキーパーが復活するが、直後にソーンが強力な悪魔を従えて降臨。他の世界へ追放されたゲートキーパーを「召喚」しない限り、勝ち目はない。
地下777階
一面が炎に覆われた「地獄」。シナリオクリアに必須ではない階層だが最強クラスの敵が揃っており、ドロップする武器防具も最強となる。「幽霊のすみか」では開発者の名前を冠した三人の「幽霊」が登場し、貴重なアイテムを販売する。また隠しボス「ララ・ムームー」が潜むエリアへのテレポーターがあり、その極悪な強さとすっとぼけた姿に脱力することは間違いない。

移植

ゲーム機の移植はPCエンジン、SFC、PS（ニューエイジオブリルガミン）の3種。文字入力システムが難しいためか、難易度の低下のためか、ゲーム機ではどの機種もNPCとの会話システムが簡略化されている。

SFC版はアイテム名がファミコン版のノリで独自のものになっている（ロングソード+1がナイトソードへと改名など）。PS版はPC版準拠だが、アスキーの許可を得てSFC版のアイテム名をオプションで採用している。

「ウィザードリィ外伝」シリーズのゲームシステムに一番近いのは本作で、その後の日本展開のベースになっていると考えられる。

余談

「ウィザードリィ小説アンソロジー」において、佐山アキラは短編「酔いどれの墓標」を発表。ルビーウォーロックを主人公として独自の解釈で描いている。ちなみに佐山アキラは「不夜城」シリーズの作者にして「龍が如く」のシナリオ監修を務めた小説家・馳星周の別名義である。
「ウィザードリィ異聞」シリーズでも５を題材とした短編は多い。「水泳」に着目し、誰も底に到達した事にない遥かな深みを目指す冒険者や、かつては悪の魔術師でありながら世界の真実を知り、混沌の封印を見守るゲートキーパーなど、様々な物語がつづられている。