長きに渡って日本競馬界の“レコードホルダー”だったことで有名。
1980年代、現在と違い日本競馬は海外の貴重な血統の種牡馬を輸入してはその子供、あるいは孫の代でサイヤーラインを断絶させ、名馬の墓場と呼ばれていた。
そんなわけで海外の一級線の馬が入ってくることはほとんどなかった1989年、時はオグリキャップブームの真っ只中、日高で行われたセリ市に衝撃が走った。
父トウショウボーイ、母リキサンサン、母の父サーアイヴァーという一頭の牡馬が上場してきたのだ。
父は言わずと知れた天馬・トウショウボーイ。国産種牡馬でも結果が出せることを示した偉大な馬であり、当時すでに名種牡馬としての地位を確たるものとしていた。なにせ、トウショウボーイ産駒の牡馬というだけで3000万以上の落札価格が保証されたと言われたぐらいだったのだ。
だが、この牡馬の母系はさらにすごかった。母の母はヴェルメイユ賞・凱旋門賞を勝った名牝サンサン。母の父は英二冠馬にして後にオセアニアに一大サイヤーラインを築くサーアイヴァー。さらに母の兄弟には快速馬ウインザーノット、関屋記念を勝ったスプライトパッサーがいるという文句のない超良血馬。
なんでこんな庭先取引で買い手がついてそうな血統の馬がセリ市に出てきたのかと言えば、トウショウボーイ産駒は軽種馬農協のセリ市に出すことが義務付けられていたからだ。
血統に加え、良血にふさわしいピカピカの馬体。これで人気が出ないわけがない。
セリが始まると値段は一気に釣り上がり、二年前に同じトウショウボーイ産駒のタニノベンチヤの1986(カツラギエースの半弟。後のモガミショーウン)がマークした2億6500万円を超えても、3億を超えてもなお止まらない。
モガミショーウンの戦績を考えればその後のオチも見えていた気がしないでもない。
結局、牡馬は3億6050万円(税込)で落札され、史上最高落札額をマーク。これは1000万上乗せすれば高額取引で有名なハギノカムイオー(1億8500万円)が2頭買える金額である。
この景気のいい数字には競馬界どころか一般マスコミも反応し、当日のニュースや翌日のニュースでは「3億6000万円の馬」として取り上げられた。
この牡馬は母及び祖母の名とギリシア神話の主神の名を頂き、サンゼウスと名付けられ、美浦の名伯楽・高松邦夫厩舎に入厩。デビューを待つこととなった。
1991年、4歳となったサンゼウスはクラシック戦線に乗るため、名手・柴田政人を背に1月の新馬戦でデビュー。ここを快勝する。
2戦目に選んだのは、GIIIである共同通信杯4歳S。いきなりの重賞参戦に戸惑うところを見せるものの、直線で鋭く追い込んで4着と好走。素質の高さを見せつけた。
続く3戦目、クラシック一冠目の皐月賞を目標にしたサンゼウスは弥生賞を選択。ここには前年の阪神3歳Sを快勝してクラシック有力候補と言われたイブキマイカグラ、朝日杯3歳Sでマルゼンスキーのレコードを塗り替えた外国産馬リンドシェーバーがおり、サンゼウスの力を測るには絶好のメンバー。
3コーナーに入るところでサンゼウスは先頭を走るリンドシェーバーに並びかけると
ここから先の資料はなぜか見つからなかったようです。 でもまあ、世の中知っててても知らないふりをした方がいいってこともあるよね。 |
え?資料ぐらいいくらでも出てくるだろって?
弥生賞でリンドシェーバーに並びかけるところまでは良かったものの、直線に入ると突き放されてズルズル後退。勝ったイブキマイカグラには一瞬で交わされ、8着と惨敗。
半年の休養を挟み、休養明け2戦目の10月にやっと2勝目を挙げるものの、もはやクラシック最終戦の菊花賞には間に合わないことは明白だった。
もっともサンゼウスの場合は、900万以下条件や再降級した500万以下条件ですら負けていたのでそれ以前の問題だったが……
結局、生涯戦績は8戦2勝にとどまり、獲得賞金は2360万円と落札額の1/10すら稼げずに終わった。この戦績もあり、未だに大コケの代名詞と言われている。(でも未勝利に終わったモガミショーウンよりはマシかもしれない。あと、種牡馬としてだけどラムタラよりは……)
引退後、サンゼウスは血統を買われて種牡馬入り。少ない産駒から地方で活躍したシバノコトエやトウショウゼウスを輩出し、意地は見せた。
2023年のセレクトセール終了時点でサンゼウスの落札記録は大きく抜かれており、現在は18位となっている。
なお、そのサンゼウスの記録を抜いたのはエアグルーヴの2004(父ダンスインザダーク)の5億1450万。ザサンデーフサイチと名付けられたその馬の戦績は……お察し下さい。
もっとも、ザサンデーフサイチをも上回る6億円で落札されたトゥザヴィクトリーの2006(父キングカメハメハ)は出走すらしなかったからサンゼウスはマシな方かもしれない[1]。
近年、セレクトセールの存在に加え海外資本の参入や馬質の向上もあって高額取引馬が増えており、3億円以上で取引された馬はサンゼウスを含め少なくとも45頭まで確認できる。
なお、この45頭の成績についてはお察し下さい。といっても近年は母として重賞馬レッドモンレーヴを輩出したラストグルーヴやGⅡ2着の経験があるドーブネ・テンカハルなど、そこそこ見れる成績を上げている馬も出てきているが。
参考までに、歴代のセリ出身GI馬で最高取引額はマンデラの2016ことワールドプレミアの2億5920万円である。今後3億円超の高額取引馬からGIを勝つ馬は現れるのだろうか。
トウショウボーイ 1973 鹿毛 |
*テスコボーイ 1963 黒鹿毛 |
Princely Gift | Nasrullah |
Blue Gem | |||
Suncourt | Hyperion | ||
Inquisition | |||
*ソシアルバターフライ 1957 鹿毛 |
Your Host | Alibhai | |
Boudoir | |||
Wisteria | Easton | ||
Blue Cyprus | |||
リキサンサン 1977 黒鹿毛 FNo.7-c |
Sir Ivor 1965 鹿毛 |
Sir Gaylord | Turn-to |
Somethingroyal | |||
Attica | Mr. Trouble | ||
Athenia | |||
*サンサン 1969 黒鹿毛 |
Bald Eagle | Nasrullah | |
Siama | |||
Sail Navy | Princequillo | ||
Anchors Aweigh | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Nasrullah 4×4(12.50%)、Hyperion 4×5(9.38%)、Princequillo 4×5(9.38%)、Mahmoud 5×5(6.25%)
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最終更新:2024/11/09(土) 00:00
最終更新:2024/11/09(土) 00:00
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