イブキマイカグラは、1988年生まれの競走馬。白いメンコが印象的な、1991年クラシック世代の主役の一頭としてGI含む重賞3勝を挙げた紛れもない名馬である…のだがどうにも同期の帝王の前に霞んだ感がある馬。
主な勝ち鞍
1990年:阪神3歳ステークス(GI)
1991年:弥生賞(GII)、NHK杯(GII)
※以降、当時の年齢表記に合わせて年齢を数え年+1歳で記載します。
イブキマイカグラ Ibuki Maikagura |
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生年月日 | 1988年2月24日 |
没年月日 | 2009年6月24日 |
馬種 | サラブレッド |
性・毛色 | 牡・栗毛 |
生産国 | 日本 |
生産者 | 社台ファーム (北海道千歳市) |
馬主 | (有)伊吹 |
調教師 | 中尾正(栗東) |
主戦騎手 | 南井克巳 |
馬名意味 | 冠名+「舞い」+「神楽」 |
初出走 | 1990年7月15日 |
戦績 | 14戦5勝[5-3-2-4] |
獲得賞金 | 2億7973万円9000円 |
競走馬テンプレート |
父 *リアルシャダイ、母ダイナクラシック、母父 *ノーザンテーストという血統。
父は*ノーザンダンサー系の牝馬につけられる血統として社台が導入し、その目論見通り活躍しリーディングサイアーにも輝いた90年代を代表する種牡馬。本馬はその産駒がデビューし始めた4年目の産駒に当たる。
母自身は条件馬止まりだが、全兄に天皇賞(春)と有馬記念を制したアンバーシャダイ、全妹にサクラバクシンオーの母であるサクラハゴロモを持つ良血。そして母父はその社台を一躍大牧場へと成長させた昭和の大種牡馬。ザ・社台血統である。
そんな恵まれた環境で生まれた本馬は、馬格こそ小さめであったが高い身体能力競走馬向きの激しい気性を備えており牧場関係者からも高く評価がなされていた。
3歳になって馬主も決まり、調教を始めると早い仕上がりを見せたので7月の小倉開催で早くもデビュー。ベテランの樋口弘騎手を鞍上に、1.3倍とグリグリの1番人気を背負う。しかしレースでは出遅れた上に全然違う方向へ走り出すなど気性の幼さを見せて7着惨敗。当時は同じ開催の新馬戦になら何度でも出られる制度があったので、ファイター南井克巳騎手へと乗り替わって連闘。ここでも内に持たれかけたがどうにか勝利。その後野路菊ステークス(OP)を2着、黄菊賞(500万以下)をコーナーで外に膨れながらも差し切って1着、初重賞挑戦となるデイリー杯3歳ステークス(GII)はこの年の最優秀3歳牝馬を受賞するノーザンドライバーの3着、と危なっかしさと地力を見せつつ年末の阪神3歳ステークス(GI)に向かった。現在は牝馬限定戦の阪神ジュベナイルフィリーズとして親しまれる当レースだが、この年までは中山開催の朝日杯3歳ステークス(現・朝日杯フューチュリティステークス)と並ぶ東西の3歳GIという位置づけであった。ちなみにこの年は阪神競馬場の改修工事の影響で京都開催である。
そんな中本馬は2番人気。1番人気は武豊鞍上の牝馬・ミルフォードスルーであった。スタートは五分に出たが、そのまま下げて後方待機を選択。そのまま最終直線に入ると、最内から末脚一閃。逃げ粘っていたミルフォードスルーを捉えると、そのまま2着のニホンピロアンデスに1と1/4馬身差をつけて快勝。調教師・馬主に初のGIを届けて見せたのであった。
さらに驚くべきはそのタイム。1分34秒4はあの「弾丸シュート」サッカーボーイの記録を0秒1上回るレースレコードであった。
これならば最優秀3歳牡馬はもらったも同然…かと思いきや、このレースの数分前に行われた朝日杯3歳ステークスではAlydar産駒の外国産馬*リンドシェーバーがあの「スーパーカー」マルゼンスキーのレコードを14年ぶりに0秒4更新して優勝。結果180票中147票を集めた*リンドシェーバーが最優秀3歳牡馬になり、イブキマイカグラは次点…といえば聞こえはいいが集まったのは23票と大差をつけられてしまった。
4歳はクラシックを目指して王道のGII弥生賞から始動。そしてここでいきなり*リンドシェーバーとぶつかることになる。イブキマイカグラにとってみれば絶好のリベンジの機会、そして外国産馬であるがゆえにクラシックに出られない*リンドシェーバーにとってもその最有力候補相手に実力を見せつける好機である。(なんでもここで勝てば日本ダービーの勝者とマッチレースをする予定もあったとか)
東西3歳王者の激突となった弥生賞。オッズは中山でGIを制した*リンドシェーバーに対し、初関東のイブキマイカグラということで*リンドシェーバー1.6倍、イブキマイカグラが4.3倍と割に開いたオッズとなった。レースは3億6000万円の馬こと3番人気サンゼウスがハナを切り、それを*リンドシェーバーが2番手で追走。本馬は中団から進めたが、サンゼウスが刻んだペースは1000mを61秒7とかなりのスローペース。第3コーナーでサンゼウスを捉えて*リンドシェーバーが先頭に躍り出たころ、まだ本馬は馬群の中。
このまま*リンドシェーバーが強さを見せるのか…と、思いきや。最終コーナーで前が開けると力強い末脚で進出開始。両馬共に外に斜行しながらの叩きあいとなったが、残り50mで並びかけると最後はクビ差抜け出しての勝利。クラシックの権威を守り抜くとともに、クラシック最有力馬としての矜持を見せつけたのであった。ちなみに敗れた*リンドシェーバーはマイル路線への転向を表明するもこの後に骨折。Alydarの後継候補としてシンジケートが組まれていたこともあってそのまま引退した。
かくしてクラシックの最有力候補となったイブキマイカグラ。本番の皐月賞では3.7倍の2番人気となる。…え?前哨戦勝ったのに2番人気?しかも2.1倍の1番人気の馬は重賞未勝利の馬。これはGI馬としての力量を見せつけねばなるまい。
レース本番。相変わらず行き脚がつかない本馬は後方3番手から。まあこれはいつものことである。一方1番人気の馬はうまく先行して5番手につけていた。そして第3コーナー、南井騎手は阪神3歳S・弥生賞同様に内を突いて馬群を突き抜けにかかった。しかし今日は前が開かない。1番人気の馬が堂々先頭で最終直線を迎える中、本馬は馬群の中でもがいていた。それでもなんとか馬群をさばいて前を追いかけたが、重賞初挑戦の1番人気トウカイテイオーが父シンボリルドルフ同様に無敗で皐月賞を制覇する後ろで4着まで。完全にトウカイテイオーの引き立て役と化してしまった。
かくしてクラシックの主役から引きずり降ろされたイブキマイカグラ。次の日本ダービーは是が非でも負けられない戦いになる。さらにいえば府中の長い直線は末脚が持ち味のイブキマイカグラにはもってこいの舞台である。
というわけで予行演習としてNHK杯(当時は2000mのGII。現・NHKマイルカップ)へと出走。東京2000mでは絶望的ともいうべき大外枠に当たったがそれでも1.6倍のグリグリ1番人気。そしてレースでは第4コーナーから仕掛けると、「じゃあ外から行けばいいんだろ」とでも言わんばかりに大外ぶん回して上がり35.4秒という鬼脚で全馬ぶち抜いて1着。これ以上ない勝ち方でトウカイテイオーへの挑戦状を叩きつけた。そして本番の日本ダービー…の3日前の最終追いきりでまさかの骨折。トウカイテイオーが2着レオダーバンに3馬身差つける快勝で無敗での2冠を達成した舞台に立つことなく、春クラシックは終わってしまった。あの舞台にいられたらなあ…。
幸い骨折は軽いもので秋には復帰できる予定、菊花賞でリベンジを!!…と意気込みたかったが、今度はトウカイテイオーが骨折で年内休養、当然菊花賞は回避となる。こうなればGI馬として負けるわけにはいかない…のだがトライアルの京都新聞杯は後のブロンズコレクター4歳にして小倉記念を制した夏の上がり馬ナイスネイチャを捉え損ね、危うくさらに後ろから突っ込んできたシャコーグレイドに差されかけての2着(シャコーグレイドとは同着)、いきなり暗雲がたちこめる。それでも本番菊花賞では1番人気に推されたが、レースは最初の1000mが62秒7、2000mが2分10秒2と超ドスロー。ただでさえ追い込み馬には厳しいペースになったうえに、このスローペースに耐えられずかかってしまう。それでも外から最速の上がりで前を追ったが、好位でレースを進めたレオダーバンに1と1/2馬身及ばず2着。そのタイムも3分9秒5と凡庸(前年覇者のメジロマックイーンは重馬場ながら3分6秒2という好タイムをたたき出してるので猶更である)だったため、「トウカイテイオーがいれば…」という声を払しょくできぬままクラシック戦線は終わってしまった。
この後古馬混合戦に進むことなくこの年は終了。弥生賞で得た評判はどこえやら、不完全燃焼としかいいようのない結果になってしまった。
5歳の始動戦は春天のステップレース産経大阪杯。このレースには日本ダービー以来の復帰戦となるトウカイテイオーも乗り込んできた。そのほかにも前年の有馬記念覇者これはびっくりダイユウサク、前年覇者のホワイトストーン、鉄の女イクノディクタスなど8頭立てながら錚々たるメンバーがそろった。そんな中本馬は安定した実績を買われて3.3倍の2番人気。1番人気のトウカイテイオーには開かれたが(1.3倍)、3番人気のホワイトストーンが10.2倍なので対抗馬として評価はされていた。しかしレースは後方から足を伸ばせず、新馬戦以来に掲示板を外す7着惨敗。トウカイテイオー復活の勝利の添え物にもならなかった。
続くは本番・天皇賞(春)。話題はトウカイテイオーとメジロマックイーンの「TM対決」で持ち切り。そんな中本馬は3番人気。とはいえ1番人気のトウカイテイオーが1.5倍、2番人気のメジロマックイーンが2.2倍のなか18.2倍なので評価されたとも言い難い結果である。
レースは馬鹿コンビ結成前のメジロパーマーが逃げ、マックイーンは中団前目、トウカイテイオーがそれをマークする中で本馬はいつもの後方3番手から。2周目の第3コーナーでメジロマックイーン、トウカイテイオーが動く中、本馬も内から進出を開始する。そして最終直線で末脚一閃、トウカイテイオーを捉えた…がそこまで。連覇を果たしたメジロマックイーンからは1.3秒、2着のカミノクレッセからも5馬身離された3着に終わった。同期の中で初めてトウカイテイオー(5着)に先着し、形の上でへのリベンジは果たせたが、どうみてもトウカイテイオー側が距離不適なのに加えてレース中の骨折も判明した。これでは誇るに誇れない。
だったらもっと短いところで勝負、と思ったのかは分からないが次走は安田記念。阪神3歳Sを勝っているし府中はNHK杯の実績があるとはいえ、いきなりの距離半減である。ついでに鞍上も南井騎手がカミノクレッセの元にいってしまったためテン乗りの岡部幸雄騎手になった。
レースは後方2番手から進め、最終直線で内から末脚を伸ばしにかかった…が荒れた馬場で全く伸びず11着と初の2ケタ着順に終わってしまう。なんでもゲートで頭をぶつけていたとか。おまけにこの後競走馬にとってのガンといわれる屈腱炎を発症。ここで引退となった。
GIこそとったものの、あまりに強く人気があった同期と故障によって機会を逸し続け、その同期がいなければ勝ちきれず、最後は親譲りの脚部不安で早期引退、とどこまでも不完全燃焼感が漂う競走馬生であった。
その後リアルシャダイの後継として北陽ファームで種牡馬になったはいいが、時代はサンデーサイレンス・ブライアンズタイム・トニービンの「御三家」に移行しており、最多でも年間でわずか28頭しか種付けをさせてもらえず、トータルで77頭しか産駒を送り出せなかった。その中から地方重賞馬2頭を出したのはGI馬の意地とでもいうべきだろうか。
ちなみにそのうちの1頭であるイブキライズアップは当時廃止の危機にあった高知競馬において破竹の19連勝を挙げ、「高知の怪物」としてとある馬と一緒に各種メディアへ売り込まれた馬であり、そのとある馬というのが負け組の星にして高知競馬の復活までの時間稼ぎに大いに貢献したハルウララである。
そんなイブキマイカグラは2003年に種牡馬を引退しそのまま北陽ファームで余生を過ごしていたが、2009年に急逝心不全で死亡した。享年21。
*リアルシャダイ Real Shadai 1979 黒鹿毛 |
Roberto 1969 鹿毛 |
Hail to Reason | Turn-to |
Nothirdchance | |||
Bramalea | Nashua | ||
Ralelea | |||
Desert Vixen 1970 黒鹿毛 |
In Reality | Intentionally | |
My Dear Girl | |||
Desert Trial | Moslem Chief | ||
Scotch Verdict | |||
ダイナクラシック 1982 鹿毛 FNo.4-m |
*ノーザンテースト 1971 栗毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | |||
Lady Victoria | Victoria Park | ||
Lady Angela | |||
*クリアアンバー 1967 黒鹿毛 |
Ambiopoise | Ambiorix | |
Bull Poise | |||
One Clear Call | Gallant Man | ||
Europa | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Bull Lea 5×5×5(9.38%)、Lady Angela 5×4(9.38%)
掲示板
1 ななしのよっしん
2023/04/03(月) 09:07:24 ID: rVQydUSHDq
1991年クラシック世代の被害馬代表にして故障頻発馬の代表格
2 ななしのよっしん
2023/08/27(日) 20:05:01 ID: U6+qFdxa3k
関東の大物マル外を倒した関西馬が実はただのテイオーの露払いだったってのは関東の調教師にとっては衝撃的な事実だっただろう
そういう意味では東西で3歳王者を決める意味がなくなった時代における最後の西の3歳王者にふさわしい立ち位置といえなくもないのがなんとも…
しかも東西統一された次の年の3歳王者はミホノブルボンという西高東低の象徴といえる馬だし
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最終更新:2024/11/27(水) 02:00
最終更新:2024/11/27(水) 02:00
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