Cell Broadband Engine(セル・ブロードバンド・エンジン、略称:Cell,Cell/B.E.,CBE)とはSony、SCEI、東芝、IBMが共同開発したマイクロプロセッサである。
据え置き型HD家庭用ゲーム機PlayStation 3のCPUとして広く認知されている。
Microsoftの据え置き型HD家庭用ゲーム機Xbox360の対称型(ホモジニアス)3 Core CPU"PX"と同様、MacintoshのCPU"PowerPC G5"で知られるPowerPC 970技術派生・命令互換性のある、非対称型(テロジニアス)マルチコアCPUである。[1]
IBM,東芝、SCEの文書・text file上では、一貫して「Cell」「Cell/B.E.」「CBE」の表記を用いる。全て大文字の"CELL/B.E."表記はCPUパッケージのヒートスプレッダー表面に記された商標ロゴだけに見られる。[2]
Cellアーキテクチャは特に奇を衒った物ではなく、シンプルなRISC命令セットのCPU PowerPC(PPC)[3]をGPUの様な高速ストリーミングマルチコアCPUとしての並列処理演算アーキテクチャに手堅く改良したものである。
Cell/B.E.は1基の汎用コアPPE(PowerPC Processor Element)と、主にデータ処理を行う7基のコアSPE(Synergistic Processor Element)で構成される8つのコアを持ち、倍精度浮動小数点演算能力を5倍に引き上げた改良型、IBM PowerXCell 8iがあり、「電力1ワット当たりの演算回数」での効率が良い、省エネ高性能CPUの地位を築いている。[4]
PPEはOSの実行、SPEのタスク管理等、制御系の高いシングルスレッド能力を要求される演算処理を担当し、一度の命令で、複数のデータに対し同じ処理を同時に行えるSIMD型プロセッサのSPEはシンプルなストリーム演算処理を担当する。
Intel Atom、Xbox360のCPU Xenonと同様、小型化・省発熱化・省電力化の為キャッシュメモリが無い。アウト・オブ・オーダー(OoO:Out-of-Order)型ではない、インオーダ(In-Order)型である。キャッシュメモリにアクセスする必要はないので、フォン・ノイマン・ボトルネック、メモリアクセスに依る演算速度の低下を極力回避をしている。
コア構成は柔軟に拡張できるよう設計されており、設計を大きく変えることなく様々な用途にカスタマイズが可能である。
Intel ハイパースレッディング・テクノロジー(Hyper-Threading Technology、HT、HTT)同様の仮想化技術であるSMT(Simultaneous Multithreading)機能で見かけ上のコアの数を2倍の16Core CPUとして振る舞う事が可能である。[5]
Cell/B.E.には物理的に8基のSPEコアが存在するが、物理的にコアが4基存在する3 Core CPU、AMD Phenom II X3と同様、SPEの内1基は製造歩留まりを向上させる為に使われない。故にCellで実際に使われるSPEは7基である。[6]
2009年11月にIBMは、2基のPPE、32基のSPEを搭載した次世代Cell/B.E."PowerXCell 32i"の開発を断念、Cell/B.E.の研究開発を中止した事を認めた。IBMのCellはPowerXCell8iが最後となる。Cell/B.E.のSPE技術は開発中の"POWER7"に反映される。PS3向けCell/B.E.の製造は継続し、(SCEIから要望が有れば、)今後もPS3後継機向けCPUの研究開発は継続をするとした。[7]
2009年の時点では東芝は、総画素数が水平1920×垂直1080のFull HDの四倍以上の高密度画面を持つ水平4098×垂直2160ピクセル4K,2K HDのCell TVを発売する予定であった。2011年 CESで発表された2K,4K HD対応裸眼立体視対応テレビはCell/B.E.とRSXを採用しない新アーキテクチャSoCによる画像処理システム『CEVOエンジン』を搭載し、東芝のHDテレビに於けるCell/B.E.搭載テレビの製品化は終了をした。[8]
Cell/B.E.派生プロセッサに東芝のマルチメディアプロセッサSpursEngineがある。PPEとSPEを最低一つずつ備えたものがCell/B.E.故、SPEのみ2基搭載し、PPEを搭載しないSpersEngineはCell/B.E.ではない。[9]
- sonyの1Uラックマウントワークステーション/サーバー。
,IBM BladeCenter QS22
等のブレードサーバー - マーキュリーコンピューターシステムズとの共同開発。マーキュリーコンピュータシステムズブランドの製品もある。[11]
PlayStation 3では高画質を実現する為に、CPUのCell/B.E.が頂点シェーダ(Vertex shader)のポストプロセス・プリレンダリングを受け持ち、GPU RSXの頂点シェーダー演算能力をSPE一基当たり70%程度引き上げる事が可能となった。[14]
メニイコア並列演算型CPUとして期待されているintelが研究開発中のCPU、"Larrabee"もx86命令セットのPentium;P54Cアーキテクチャをベースとして、マルチメディア系命令セットを中心に改良されたCPUであり、Cell/B.E.と設計思想が類似している。
Larrabeeは嘗てCPUから物理的に独立した存在で有った浮動小数点演算をするFPU(Floating Point number processing Unit)をCPUが取り込み、統合した様に、コアの一つ一つにプログラマブルGPUの機能取り込んだ汎用CPUである。
ソニーでは単なる高性能CPUという扱いではなく、ゆるやかな凋落傾向の続いていたソニーグループの社運をかけた、いわゆる「Cellコンピューティング構想」の中心に位置付けられていた。
PS3をはじめとする、Cellプロセッサを搭載したあらゆる機器(=Cellマシン)同士がP2P接続され、互いのリソースを共有したり、ネットワーク上で同一のソフトウェアを走らせたり……ざっくり言えば「生活のすべてがプレイステーション・ワールド(PSW)上で処理される」という極めて壮大な次世代構想であった。ゲーム機としてのPS3のみならず、テレビやオーディオ機器、各種生活家電にいたるまで、ホームユースのあらゆるソニー製品にCellが搭載され、そのすべての端末から他のCellマシンたちが構成するネットワークにアクセスできる。
家電部門が落ち込み、SCEI久夛良木健率いるゲーム機部門が牽引していた時代ならではの、「ソニーグループ全体を引き上げる革命的大構想」だったと言える。
が、PSX、PSP(後にMHP効果で息を吹き返したが)、PS3と立て続けにゲーム事業での挫折が続いたことで、ソニーのCellコンピューティング構想は暗礁に乗り上げる。Cell構想発足時にはソニーの社長候補筆頭だった久夛良木は、ゲーム事業の不振から失脚してSCEIトップの座を追われ、久夛良木の後を継いだ平井一夫の「PS3はゲーム機です」という宣言とともに事実上「Cellコンピューティング構想」は頓挫もしくは軌道修正を余儀なくされたという見方が強い。そもそも完全なCellコンピューティング構想は、技術者出身の久夛良木の頭の中にしかなかったのではないかとも言われる。
久夛良木が退いてのちのPS3は、「次世代家電」という枷から解き放たれ、単に優れたゲーム機としてゲームユーザーに愛され続けている。そしてCellプロセッサは「単なる高性能プロセッサ」として、PS3や東芝製ノートPC上でその能力を地味に発揮し続けている。
なお、あまりによくわからない大風呂敷とその後の尻すぼみぶりから、PS3発売からしばらくの間はゲハ板あたりで煽りの常套句ともなっていた。




















掲示板
74 ななしのよっしん
2023/03/13(月) 19:36:44 ID: rzO3jgjWVH
思想的には今で言うエッジコンピューティングに近いはず
当時のCellが目指したところに一番近いのは、実のところアップルMシリーズプロセッサーかもしれない
75 ななしのよっしん
2023/10/30(月) 20:52:13 ID: 2Hhj/ICg4U
結局技術的主流になることも無かったし、会社に大損害を与えただけの木偶の坊というイメージしか無いんだよな
ゲーム機に拘っていればまだ良かったと思うのだけど、ソニーの社内政治に巻き込まれた為に、SCEだけでなくソニー本体もソフトメーカー各社も散々振り回された最悪のCPUだったとしか思えないわ
76 ななしのよっしん
2024/12/06(金) 19:53:08 ID: gXHfh9/tMs
今の感覚からすると描画処理がGPU内で完結してないのが気持ち悪い
しかも通信がオンダイじゃなくてPCBの配線経由だから効率面でかなり不利なはず
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最終更新:2025/12/24(水) 14:00
最終更新:2025/12/24(水) 13:00
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