K-2またはK2とは、韓国陸軍が2014年より配備・運用中の第3.5世代主力戦車(以下、MBT)である。
愛称は「黒豹(흑표、Black Panther)」。
※山岳や自動小銃との混同を避けるため、本記事ではK-2と表記する。
K-2は、正面要部の複合装甲と、ヒュンダイWIA製CN08 55口径120mm滑腔砲を装備、データリンクシステムを有し、重量は55トン、1500hpパワーパックにより最大速度70㎞/hという標準的な第3.5世代戦車の構成である。
調達数は韓国本国用に第1次量産100両、第2次量産106両、第3次量産54両の合計260両となっており、2022年6月現在では、第2次量産の206両まで戦力化が完了している。
本車の最大の特徴はパワーパックであり、当初はエンジン、トランスミッションともに韓国国産を実現しようと試みていたものの、開発に難航したことがよく知られている。
最終的には第1次量産はドイツ製ユーロパワーパック、第2~第3次量産は「韓国製エンジン+ドイツ製トランスミッション」の混成となった。
本戦車は諸外国への売り込みも行われており、2022年6月現在ではポーランドにK-2および発展型のK2PL(合計で800両程度)の輸出/共同開発が決定している。
また、本戦車用に開発された国産パワーパックは、トルコのアルタイ(戦車)用パワーパックとして選定された。
韓国は朝鮮戦争において、北朝鮮が投入した240両ものT-34/85に対して、当初は有効な装備を持っておらず、非常に苦戦した経緯から機甲戦力を重視しており、80年代には北朝鮮の保有するT-55やT-62に対抗するため、M1エイブラムスを開発したアメリカのクライスラー・ディフェンス社に設計・開発を依頼し、M1エイブラムスの縮小版と言えるK1戦車およびその改造型のK1A1戦車を開発・運用していた。
しかしながら、北朝鮮がT-72を大量導入したという情報があった事[1]、またK1以前の戦車であるM48パットン約900輌の後継調達が急務となった事から、1992年に韓国国防部が「次期戦車事業」を発表、2003年に正式に開発を開始した。
その後、2007年に運用試験車両XK-2が完成し、さらに2012年より量産を実施する予定だったが、国産開発予定のパワーパックの開発が難航した。最終的に、初期生産車両にはドイツ製ユーロパワーパックを搭載して量産し、逐次国産へ置き換える方針で2014年より配備を開始している。
主砲はラインメタルRh120-L55を参考としつつ、ヒュンダイWIAとADD (国防科学研究所)が独自開発したヒュンダイWIA社製CN08 55口径120mm55口径滑腔砲を1門を装備する。
朝鮮半島の地形を考慮した場合、長砲身の55口径は取り回しに支障は発生するものの、北朝鮮が大量に調達した(と当時は考えられていた)T-72を確実に撃破することができ、将来的な砲弾の威力向上も比較的容易である。
K1系列が人力装填であったのに対し、こちらは砲塔バスルにベルト式自動装填装置を搭載している。
このため、K1系で省略されていた砲塔後部の弾薬庫が存在し、乗員は3名となった。
この装填装置、韓国は他国のものを参考に自国開発したと宣伝しているが、その形状からしてルクレールでおなじみのフランスから技術提供があったと考えられている。
使用砲弾として、韓国国産のK279 120㎜APFSDS-Tを採用しており、各国の兵器展示会の展示によれば貫徹力はRHA700㎜とされている。
また、K-2の独特の装備として、ドイツのディール社と開発中のトップアタック誘導砲弾"KSTAM-Ⅰ/Ⅱ"がある。
これは赤外線/ミリ波レーダーを搭載した誘導砲弾を曲射弾道で発射し、敵戦車直上でEFP弾を形成し薄い上面装甲を貫通する事を狙ったものである。
ただし、これについては2022年6月時点では配備されたという情報はない。
K-2の車体前面および砲塔前面には、モジュール化された国産の複合装甲が装備されている。
また、車体・砲塔の側面および上面には爆発反応装甲(ERA)または非爆発反応装甲(NERA)を合計約230個を装備可能となっており、一定程度のトップアタック防護能力を付与することができる。
複合装甲の防護力は、K279 120mmAPFSDS-Tを用いて射撃した際に抗堪していることからRHA換算で700mm以上と推測される。
砲塔正面は、稜線を活用したハルダウン射撃時に正面投影面積を局限するため、正面方向が絞られた台形状をしている。
開発段階では国産のアクティブ防護システムを搭載する計画だったが、2022年6月現在、主に予算面の問題から韓国向け量産車両では搭載されていない。
量産車両においては、整地における最高速度70km/h、不整地においては最高48km/h、静止状態から32km/hへの加速は7秒以内である。
シュノーケルを取り付けることで、深さ4.1mまでの潜水渡河が可能である。
韓国国産パワーパックを搭載した際には静止状態から32km/hへの加速は8.7秒という結果であった。
韓国国産の油気圧サスペンションを使用する事により、前後左右の姿勢制御が可能である。
この機能により、山岳地帯において稜線に隠れつつ、俯角をとり敵を撃破するハルダウン射撃を実施しやすくなっている。
また、姿勢制御で車体前部を持ち上げる事で、主砲仰角を24度まで確保する事による対ヘリコプター射撃や、射程5㎞の間接照準射撃を行うことができる。
という構成となっている。
量産車は韓国国産パワーパック搭載を計画していたものの、SNTダイナミクス製EST15Kトランスミッションの開発が難航し、最終的には上記の要求仕様の「32km/hへの加速7秒以内(のちに8秒以内に緩和)」という要求を満たすことができなかった。[2]
これに対し「ロシア製の対戦車ミサイル(9M14 AT-3サガー系統)は3000mを約25秒で飛翔する事から、25秒で100m移動可能であれば生存できる」という韓国陸軍作戦運用基準と、国産パワーパック装備状態でK-2は25秒で180m以上移動可能である事、この2つを根拠に、加速性能を「32㎞/への加速9~10秒」へ緩和する事が行われた。
しかし、最終試験である9600㎞無整備走行試験において、トランスミッションが使用されているドイツ製ボルトの破断により約7400㎞で故障、試験不合格となった。
(この試験内容については、ドイツ製トランスミッションに課された条件が『整備有りで9600㎞走行』だった事と比較すると、世界的にも類を見ない非常に厳しい条件である。)
このEST15Kトランスミッションについては、その後、ドイツ製部品を韓国製部品に置き換える改良を続け、トルコのアルタイ(戦車)用パワーパックとして、斗山インフラコア社製DV27Kと併せて選定された。
GPSと慣性航法装置を合わせた位置情報システム、敵味方識別装置、そして韓国版データリンクシステムを搭載。これにより味方および敵の位置情報の共有、攻撃対象の割り振りなどが可能となっている。
K-2は日本国内のインターネットメディアを中心に、実用に耐えない欠陥戦車であるという悪評が流れている。
これについては2014年前後の、パワーパック開発難航に関する古い情報が更新されないままであったり、個人の想像に尾鰭がついて真偽不明のまま広まってしまったものなどが存在する。
そのいくつかについて紹介する。
開発にあたり、韓国防衛事業庁はドイツ製パワーパックに求められる基準をベースとし、独自の基準を設けた。国産パワーパックの要求仕様は以下の通りである。
1つ目の「1500馬力相当の出力」については、斗山インフラコア製DV27Kエンジンが達成し、K-2第2次量産車から採用されている。
2つ目の「停止状態から32km/hまでの加速」については、国産パワーパックは8.7秒と、当初予定の7秒は未達成であるが、適切な根拠の下、要求仕様を「9~10秒」に緩和することで達成した。
なお、レオパルト2A4が約6.3秒、M1A2が約7.2秒とK-2より良好な一方、チャレンジャー2が12.2秒、T-90Sが12.3秒とより遅い戦車も存在するため、単純な数値だけで比較するのはナンセンスである。
3つ目の「エンジンも変速機も一度も整備を行うこと無く9600kmを走破」は、7400㎞地点で国産パワーパックのドイツ製ボルトが破断し達成できなかった。
ただし、この条件は国産パワーパックのみに課せられた条件であり、ドイツ製パワーパックですらクリアした実績がない試験である事に留意が必要である。[3]
なお、仮に9600㎞無整備で走ることが出来たならば、朝鮮半島からポーランド辺りまで到達できる。
また、「国産パワーパックはドイツ製部品を使った実質ドイツ製であり、ドイツの許可が無いと第3国に販売できない」という問題については、ある時期までは正しいものの、2021年時点で変速制御装置(TCU)、変速装置(Range Pack)、静油圧ステアリング装置(HSU)、流体減速機、制動装置など、海外輸入に依存した部品を100%完全国産化に成功している。
これについては、ドイツからパワーパック輸出を拒否されたトルコに対して、韓国製パワーパックをドイツの妨害を受ける事なく提供されている事からも確認できる。
「砲塔正面の複合装甲ブロックが小さいのは、技術的に作成が困難である」という噂が流された事があるが、そのような事実を示す根拠はない。
K-2はハルダウン射撃を前提とした砲塔形状をしており、ポーランドに提案した平地戦を前提としたK2PLでは欧州戦車のような、大判の砲塔正面装甲も提案されている。
砲塔の複合装甲ブロックの信頼性が低いため、砲塔前部にERAを装備していると指摘される事もあるが、XK-2等で見られるこの装置はアクティブ防護システムのセンサー部分であり、ERAでは無い。
なお、車体前面右上のERAはトップアタック対策のもので、複合装甲ブロックで防護している範囲ではない。
複合装甲の耐弾試験中に「APFSDSが発射の衝撃に耐えられず折れた」という指摘について、試験車両の車体上面の避弾経始によって跳弾し、転倒したAPFSDSが砲塔正面複合装甲に当たって破砕された事が原因で、発射の衝撃によって折れた訳では無い。
APFSDSは一定程度の避弾経始は無視して侵徹するものの、平行に近い角度で命中した場合には跳弾が発生する。
2022年現在、そのような事実を示す根拠はない。
2021年にポーランドが公開したトライアル動画では、むしろ軽快に機動していることを確認できる。
2022年6月13日、ポーランド国防大臣が韓国・ポーランドで発展型K2PLを開発する協力協定を締結した事を発表した。
K2PLの仕様については、ポーランド国産のセンサーや通信・戦闘システムをインテグレート、合わせて装甲を強化するとともに、重量増加に対応するため転輪を1対追加し10トン以上の重量増大に対応させ、アクティブ防護システムを搭載する事が提案されている。
K2PL完成までの間、K-2×180両を緊急調達し、K2PL完成後その仕様に合わせてアップデートする交渉が2022年6月時点で行われている。
開発にあたって韓国からの技術協力を行っている。
また2022年3月に、ドイツからの制裁によりドイツ製パワーパックが調達不可能となった事を受け、アルタイ(戦車)の初期ロット用パワーパックとして、斗山インフラコア社製DV27KディーゼルエンジンとSNTダイナミクス製EST15Kトランスミッションが選定された。
この提供されたパワーパックは、ドイツの輸出制限回避のために100%韓国国産化した物が提供されている。
次期主力戦車として、レオパルト2A7とK2NOが最終選考に残り、2022年6月時点で実車を用いたトライアル中である。
2021年11月にエジプト・カイロで行われたEDEX2021において、K-2の現地製造に関する交渉が実施中である。
韓国の模型メーカー「アカデミー」による現状唯一の1/35スケールのプラモデル。
国産戦車だからか、かなり気合の入った出来でサードパーティメーカーのDEFモデル製の連結式履帯が標準で同梱されており、値段から考えるとかなりお得。
掲示板
1077 ななしのよっしん
2024/12/25(水) 21:18:07 ID: UZkVAElEKn
ベットもなにも韓国の法律で交戦国に兵器輸出できないので(あと中日ウクライナ大使がやらかして韓国世論が悪い方向に…)
1078 ななしのよっしん
2024/12/25(水) 21:23:50 ID: dbT/mweNmo
1079 ななしのよっしん
2024/12/27(金) 00:59:36 ID: VSuQNknFBm
対外貿易法のことなら、あれは当該国が戦争当事国である場合に大統領令で輸出を制限できるという話で、一律で制限されるわけではない
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/27(金) 04:00
最終更新:2024/12/27(金) 03:00
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