ティターンズとは、『機動戦士Zガンダム』に登場する軍閥組織である。同作における「悪の組織」で、主人公陣営のエゥーゴと敵対する。
名前の由来はギリシャ神話の「ティーターン神族(「大地の子ら」の意)」か、「巨人のティターニア」からか。
概要
初代『機動戦士ガンダム』で描かれた地球連邦政府vsジオン公国の一年戦争は、ジオンの敗北で幕を閉じた。しかしジオン公国軍の一部……とは言えないほど大規模な集団は降伏を受け入れず、地球圏の暗礁宙域や、火星圏の向こうの小惑星基地に立てこもり、再起の時を図っていた。元々連邦政府はその腐敗体質によって様々な方面から恨まれていたこともあり、そうした大残党勢力に合流しなかった(できなかった)部隊も、宇宙移民者(スペースノイド)や地球上の独立勢力の支援を受け、各地でゲリラ化していた。
こうしたジオン残党狩りを目的として、宇宙世紀0083年に連邦軍のエリートを集めて創設された特殊部隊がティターンズである。彼らは優先配備される新型兵器や、一般連邦軍に対する有名無名の優越権を駆使し、着実に成果を上げていった。だが、首魁であるジャミトフ・ハイマン大将や、腹心でナンバー2のバスク・オム大佐らは徹底した地球居留者(アースノイド)第一主義者であり、組織全体にもその気風が漂っていた。やがて彼らの暴力性はジオン残党のみならず、一般のスペースノイド達にまで向けられていくことになる。
……なんと破廉恥な!
ティターンズのやり方だよ。まるでヤクザだ。
一軍の指揮官が思いつくことではない!
……そうだ、ティターンズは「軍隊」ではない。
「私兵」だよ。「私の軍隊」なのだ!
宇宙世紀0085年7月。ティターンズはサイド2・30バンチコロニーで行われていた平和的なデモ活動を、コロニーに猛毒のG3ガスを注入して「鎮圧」する。直ちに情報封鎖が行われ、30バンチの住民は疫病で全滅したことにされたものの、事実を知った反ティターンズ派連邦軍はこれを契機に動き出し、反地球連邦組織エゥーゴを結成。水面下で暗闘を繰り広げるようになる。
宇宙世紀0087年。肥大化し、遂には連邦軍本隊を牛耳るようになったティターンズと、彼らと軍事衝突を起こせる規模に成長したエゥーゴは内戦状態に突入する。約一年にかけて続いたこの「グリプス戦役」の結果、ティターンズは壊滅し、その名は宇宙世紀史上の汚点として語られるようになる。
組織概要
総帥はジャミトフ・ハイマン大将。前線の最高指揮官としてバスク・オム大佐が据えられ、この下にジャマイカン・ダニンガン少佐や、パプテマス・シロッコといった部隊指揮官が続く。
構成員の殆どが地球市民である。制服は一般連邦軍の制服を黒・紺・赤・黄色の「ティターンズ・カラー」で染め、ノーマルスーツはダークブルーを基調とした黒に近い色をしている。
ティターンズ将兵は一般連邦軍の将校から一階級上の扱いを受けるほか、有給が多いなどの特典も与えられている。装備品なども優先的に回されるため、組織内部ではエリート意識が蔓延。一般将校や民間人に対して強権的に接する者が後を絶たず、更なる反感を招くことになった。
作中でややこしいのは、一般連邦軍の軍籍にもかかわらず、指揮系統の都合でティターンズ制服を着用している者がちらほらいる所。例を挙げるとオークランド研究所所属のブラン・ブルターク少佐で、研究所自体がティターンズ傘下となったためにティターンズ制服を着ている。
他にも作画ミスでティターンズ将校が一般連邦軍のコートを着用していたりする(TV版のガディ・キンゼー少佐など)。
規模は大きく、『Ζガンダム』の時点では正規連邦軍とほとんど遜色ない状態になっている。一方でバスク大佐の「連邦軍の半分はエゥーゴだと思え」という発言から、エゥーゴに対して優位なのは間違いないが「圧倒的優位」とまでは行かないレベルであることが伺える。
運用兵器
基本的に母体の連邦軍と同一だが、独自開発した兵器や、下部組織の試作機を節操なく取り入れている。
艦艇は連邦軍お馴染みの「サラミス改級巡洋艦」を主軸としつつ、実質的にティターンズ専用である「アレキサンドリア級重巡洋艦」を混成している。『Ζガンダム』中盤以降は総旗艦として超大型戦艦「ドゴス・ギア」が就航した。また、ティターンズへの協力を(独断で)表明したパプテマス・シロッコが指揮する木星資源採掘艦「ジュピトリス」も戦列に加わっている。
主力モビルスーツはハイザック。ジオン残党狩りの組織がザクⅡそっくりのハイザックを使用しているのは何とも珍妙な光景である。メタな事情を言うと「エゥーゴとティターンズどちらが敵か視聴者にわかりやすくしたため」なのだが、後世では整合性のある設定をひねり出すのに苦労している模様。単純に性能と運用性が良かった、ジオン残党に対する威圧や侮辱が目的、としている。ガンダム開発計画の抹消や後継機開発の失敗で資金難になり、ザク系のMSを流用したとも。
ハイザック以外ではジムⅡやガルバルディβを運用しているが、『Ζガンダム』序盤でアナハイム・エレクトロニクスからマラサイを獲得し、実質的にティターンズ専用の主力機として多数配備している。終盤では更なる専用主力機としてニューギニア基地開発のバーザムが導入されたが、特に目立った活躍はなかった。
そしてティターンズの特徴は、とにかく少数生産機を大量に(?)運用していること。ガンダムMK-Ⅱ(完成直後にエゥーゴに強奪されたが)、ギャプラン、アッシマー、ガブスレイ、ハンブラビ、バイアラン、サイコガンダム、バウンド・ドック……等々、テレビ版だけでもこれだけいる。
ティターンズ結成秘話が描かれた『機動戦士ガンダム0083』では、ジム・カスタムをベースにした専用機ジム・クゥエルが配備されているシーンが描かれている。
沿革
結成からグリプス戦役まで
宇宙世紀0083年、ジオン残党のデラーズフリートが起こした未曾有のテロ行為を利用し、軍内部での影響力を拡大させたジャミトフは、同年12月4日にティターンズを結成する。
ジャミトフはデラーズフリートを例に挙げて、第二のジオン公国を生むスペースノイドの脅威を説いた。連邦軍と政府は恐怖感を覚え、ティターンズの必要性を認めて予算を与えた。正規軍から独立した柔軟な動きを以って、各地で破壊活動を行うジオン軍残党の鎮圧に奔走。着実に戦果を挙げ、連邦軍内でのティターンズの地位は徐々に強固なものへとなっていく。その後もティターンズはジャミトフの手によって肥大化し続け、ついに連邦軍を掌握するレベルにまで達していった。ティターンズに優秀な人材を引き抜かれた連邦軍は弱体化し、よりティターンズ優位となる。
一方、コロニーでは反政府運動が活発化し始めており、次第にティターンズはスペースノイドに弾圧の矛先を向ける。0085年7月31日、サイド1の30バンチに毒ガスを注入し、住民1500万人を虐殺する非人道的な「30バンチ事件」を引き起こした。これによりスペースノイドは反連邦政府・反ティターンズに傾き、エゥーゴが結成される事になる。しかし30バンチ事件はバスクの独断であり、事後報告を受けたジャミトフは不快感を露わにした。
グリプス戦役
宇宙世紀0087年3月2日、グリーンノアにて開発が進められていたティターンズのガンダムMk-2をエゥーゴが強奪した事からグリプス戦役が勃発。最初は小競り合い程度であったが、やがて戦闘は大規模なものになっていく。エゥーゴは連邦軍内の反乱分子という立ち位置だったが、連邦軍内には新スペースノイド派や反ティターンズ派の将兵もそれなりにおり、そもそも戦力面で既にティターンズが上回っていたこともあり、対エゥーゴ戦はティターンズが対応する事になった。一応、連邦軍もティターンズの要請に応じて部隊や人員を派遣しているが、実質的にはエゥーゴ対ティターンズの内乱状態である。
また5月初旬には、木星圏から帰還した木星往還船「ジュピトリス」の指揮官パプテマス・シロッコがティターンズへの協力を表明し、ジュピトリスとその艦載機ごと戦列に加わっている。
5月11日、エゥーゴは連邦軍本部ジャブローを宇宙から強襲するため、衛星軌道上に戦力を集結。すかさずティターンズの部隊やシロッコが妨害に入ったが、ガンダムMk-Ⅱを含む多数の機体を逃してしまう。またこの戦闘でカクリコン・カクーラーが戦死している。ジャブローでは連邦軍とエゥーゴが交戦。しかしエゥーゴの殲滅を優先したティターンズは、味方の兵が残っているにも関わらずジャブローを核爆弾で爆破。逃げ遅れた兵が犠牲となった。その後、ガルダ級輸送機アウドムラを強奪したエゥーゴを追ってブラン・ブルタークやロザミア・バダムが派遣される。6月29日にはアウドムラを狙ってサイコガンダムを投入し、ホンコンシティごと襲撃している。
ティターンズの猛攻は続き、フォン・ブラウン市襲撃、エゥーゴの指導者ブレックス・フォーラ准将暗殺、エゥーゴ本拠地グラナダへのコロニー落とし(失敗)、サイド2の25バンチへの毒ガス攻撃(失敗)と苛烈かつ過激な攻撃を繰り返した。エゥーゴの戦力を削り取っていったが、ティターンズの戦力も低下の一途を辿った。
10月12日、第三勢力のアクシズが地球圏に帰還。戦力が疲弊していた両陣営は味方につけようと動き出し、結果ティターンズとの同盟が成立する。ジオン残党狩りの組織が、ジオン残党と手を組むというよく分からない状況である。11月2日、エゥーゴとカラバの部隊が連邦軍キリマンジャロ基地を襲撃。連邦及びティターンズ側は迎撃部隊を配置し、サイコガンダムも投入された。この戦闘で双方ともに甚大な被害を出し、キリマンジャロ基地は陥落。寝返りそうになったサイコガンダムはジェリド駆るバイアランによって撃破された。
過激な軍事作戦からくる不満が噴出しないよう巧みに情報操作を行っていたが、11月6日にティターンズの運命を決める重要な事件が発生する。エゥーゴは武力によってダカールの議場を占拠し、クワトロ・バジーナによる演説でティターンズの非人道的行為が全世界に暴露されてしまう。この時、ジェリドのバイアランが放ったビームが議場付近に着弾し、より説得力を持たせてしまった。この影響で世論は一気にエゥーゴへと傾き、ティターンズは連邦軍内部での求心力を喪失。母体の連邦軍から疎まれるようにさえなってしまった。地上の戦況もエゥーゴ・カラバ有利となり、ついに地球での戦局は挽回不能にまで追い詰められてしまった。
一方、宇宙での決着はまだ付いておらず、互いを倒すだけの力に欠く状況が続いた。勢いに乗るエゥーゴは11月30日、ティターンズの拠点であるゼダンの門を偵察する。ここは宇宙最後の拠点であり、ティターンズは是が非でも守られなければならなかった。そして12月7日、最終兵器コロニーレーザーを持ち出してサイド2・18バンチを破壊。14日には21バンチに毒ガス攻撃を行い、住民全員を殺害する暴挙に出る。
ところがアクシズは裏でエゥーゴと交渉を再開しており、サイド3の割譲を条件としてティターンズを裏切る。宇宙世紀0088年1月18日に小惑星アクシズがゼダンの門にぶつけられる。ゼダンの門は機能を喪失し、撤退中の艦隊は残骸や破片によって次々に沈められた(この時、どさくさに紛れてエゥーゴが補給艦を拿捕して回っている)。1月25日、シロッコの裏切りによりジャミトフ暗殺。以降、シロッコに全権が掌握される。
2月20日、エゥーゴ・ティターンズ・アクシズによる三つ巴の艦隊決戦が生起。最終兵器コロニーレーザーはエゥーゴに奪取され、ティターンズ艦隊に照射された事でほぼ全ての戦力を喪失。シロッコも戦死し、ティターンズは瓦解・滅亡していった。だがエゥーゴも無傷では済まず、ラーディッシュのヘンケン艦長、エマ中尉など名だたる勇士が次々に死亡。のちの第一次ネオ・ジオン抗争では殆ど何も出来ないくらいに戦力を減らした。
戦後、元ティターンズ兵は疎まれた。素直に連邦正規軍に復帰すれば不公平な軍事裁判にかけられ、良くて僻地送りや閑職への左遷、悪くて実刑(最悪死刑)という理不尽な目に合わされた。このため元ティターンズ兵は姿を隠し、中にはあろうことか、後にアクシズやジオン残党に合流した者もいる。
近年の展開
上記の通り、Zガンダム劇中及び宇宙世紀において嫌われ者・連邦から見放された敗軍という負のイメージが大きかったティターンズだが、近年は連邦の官僚体制と強硬すぎるトップ(主にバスク・オム)や一部の傲慢な士官に翻弄されながらも連邦軍人としての矜持を貫いた『ADVANCE OF Ζ~ティターンズの旗のもとに~』や後発のゲーム・宇宙世紀作品でもティターンズ軍人の苦悩やアニメ本編で語られなかった「プロジェクトX」的ストーリーも展開されており、ジオン公国サイドと比較すると控えめではあるが、再評価されている。
ティターンズのMSも後年の「機動戦士ガンダムUC」で後継機や改修機といえる機体が各種登場したり、ティターンズ製MSが現在のガンプラのフォーマットであるHGUCシリーズで多数リリースされており放送当時と比較すると隔世の感がある。
ギレンの野望にも選択可能な勢力として登場。何故かティターンズ、連邦軍、デラーズフリートの三つ巴戦争になっており、ティターンズとデラーズフリートが一緒の時代に存在する謎の光景が見られる。またティターンズの専用曲は、実に悪役っぽいテイスト。
またアクシズとティターンズの登場時期が反対になっており、未だに修正されていない。先にアクシズが出現、アクシズ滅亡後にティターンズが出現するため、強い敵の後に弱い敵が出現するという歪な難易度となってしまっている。
ティターンズ編ではプレイヤーがジャミトフになるため、作中とは正反対のきれいなティターンズになる事も可能。独断専行でティターンズの評価を地に墜としたバスクの処刑も可能。ウレシイ…ウレシイ…。
関連項目
親記事
子記事
兄弟記事
- アクシズ軍
- ADVANCE OF Ζ
- エゥーゴ
- エマ・シーン
- カツ・コバヤシ
- カクリコン・カクーラー
- カミーユ・ビダン
- カラバ
- グリプス戦役
- ゲーツ・キャパ
- サラ・ザビアロフ
- ジェリド・メサ
- ジャマイカン・ダニンガン
- ジャミトフ・ハイマン
- Ζ計画
- ダカールの日
- バスク・オム
- パプテマス・シロッコ
- ファ・ユイリィ
- フォウ・ムラサメ
- フランクリン・ビダン
- ブラン・ブルターク
- ヘンケン・ベッケナー
- ヤザン・ゲーブル
- レコア・ロンド
- ロザミア・バダム
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