くるみ割り人形とは、
- 口の部分にくるみの殻を噛ませて砕く兵隊や王様の人形。ドイツの伝統工芸品。
- ドイツの作家・E.T.A.ホフマンの童話。詳細は「くるみ割り人形とねずみの王様」の記事を参照。
- 2.を原作にした、ピョートル・チャイコフスキーのバレエ音楽。本項で3.について解説する。
- 2. を原作にした2018年のディズニー映画。詳細は「くるみ割り人形と秘密の王国」の記事参照。
概要
「白鳥の湖」「眠れる森の美女」と並ぶチャイコフスキー三大バレエのひとつ。作曲されたのは1892年と三大バレエの中では一番遅く、交響曲第6番「悲愴」と共にチャイコフスキーの晩年の代表作とされている。クリスマスのお話であるためか、バレエの初演はこの年の12月であったが、その半年前にはチャイコフスキー自らアレンジした本作の組曲がバレエに先だって初演されている。
物語は、クリスマスプレゼントにくるみ割り人形をもらった少女クララが、その晩巨大なネズミの王様に襲われたところをくるみ割り人形に助けられ、ネズミの王様を退治すると人形は正体である王子の姿に戻り、クララをお菓子の国へ招待するというもの。バレエは二幕構成で、後述する組曲の行進曲は人形が王子に変身するまでの第一幕、妖精たちの踊りや花のワルツは、お菓子の国が舞台の第二幕で演奏される(但し、組曲とバレエでは演奏順が異なる)。
後述の組曲版はどれも有名な曲ばかり揃っているため、様々な場面で使われている。中でも、ディズニー映画「ファンタジア」では、バレエとは異なる解釈で曲に合わせたアニメーションが描かれており、この曲を聴くとファンタジアを連想する人も多いと思われる。
また、舞台がクリスマスであるため、クリスマスになると耳にする機会も多い。例えば、ファンタジア繋がりで東京ディズニーランドは、クリスマスシーズンになると、クリスマスのショーやパレードに使われる他、エリアミュージックでは各エリアに沿ったアレンジで本曲が流れているといった具合である。
楽曲一覧
- 序曲
- バレエの幕が上がる前に演奏される。「小序曲」「小さな序曲」と表記されることもあるように、こぢんまりとした可愛らしい作品で、おとぎ話を原作にした本作の導入部に相応しい曲に仕上がっている。
- 行進曲
- 子供達がプレゼントをもらう場面に使われる。トランペットのファンファーレに続いて、弦楽器がプレゼントを手に入れて浮きだつ子供達の心境を表している。日本では、音楽ファンタジーゆめの影響もあって、おもちゃの兵隊が行進する場面を連想する人も多いと思われる。
- 金平糖の精の踊り
- お菓子の国の女王であるドラジェ(茶菓子の落雁に似た洋菓子の一種)の精霊が踊る。日本ではドラジェが一般に知られていないため、金平糖と訳された。バレエでは、花のワルツより後に演奏される。
この曲が初演された頃に発明された鍵盤楽器のチェレスタが主旋律を演奏し、美しくもミステリアスな雰囲気を醸し出している。そのメロディーから、怪しげな場面にこの曲が使われることも多く、「のだめカンタービレ」や「ガールズ&パンツァー」の挿入曲に使われた。ちなみに、ゲーム「ヨッシーストーリー」の最終面では、この曲によく似たBGMが流れているが、アレンジではなく全くの別物である。 - トレパーク
- トレパークとは、地方に伝わるロシアの農民の踊りとも、大麦糖で作られたキャンディに似た菓子の一種とも言われている。曲名はこの他にも、「トレパック」や「ロシアの踊り」と表記されることも多い(但し、ニコニコではバレエ「ペトルーシュカ」にもロシアの踊りという曲が使われるため、タグはトレパークと使い分けされる傾向にある)。
テンポが速くスピード感のある曲で人気も高く、運動会の定番曲となっている他、「テトリス」や「パロディウス」などのゲームBGMにも使われている。音楽系のゲームでも「太鼓の達人」や「ドンキーコンガ」に収録されているが、難易度はトップクラスの難しさを誇る。ニコニコでは「ドンキーコンガ」の音源を使った音MADも作られている。 - アラビアの踊り
- コーヒーの精がベリーダンスをなまめかしく踊り、明るく軽快な曲が多いくるみ割り人形の中では異質の作品。「ファンタジア」ではやけにエロい金魚が印象的。
- 中国の踊り
- お茶の精がフルートとピッコロの旋律と弦楽器のピチカートに乗せて軽やかに踊る。こちらも、キノコがコミカルな動きを見せる「ファンタジア」のイメージが強い一曲。
- 葦笛の踊り
- フルートの三重奏が活躍するこの曲は、ソフトバンクのCMに使われたことで一躍有名になった。劇中ではフランスの女羊飼いが踊るという設定だが、フランスのヴァール地方では、木管楽器に使うリードの素材として質の良い葦が取れたと言われている。
- 花のワルツ
- 組曲のフィナーレを飾るに相応しい、バレエ音楽の名曲中の名曲。ウィンナ・ワルツを思わせるような優雅な雰囲気に加え、チャイコフスキーらしくロシア音楽の中にもロマン派的な作風を織り込んだ作品。主旋律は、オーケストラでは脇役になることの多いホルンが担当するが、ホルン奏者にとってはかなりの難曲となる。
「ファンタジア」では原曲のイメージと大きく異なり、秋の落葉から氷や雪に包まれる冬への季節の変化が美しく描かれている。また、全編にわたって「くるみ割り人形」の楽曲が使われているアニメ「プリンセスチュチュ」では、この曲がクライマックスで効果的に使われ、シーンも相まって視聴者に大きな感動を与えた。アニメ「カウボーイビバップ」では第11話の挿入曲に使われた。映画「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」では劇伴に使われた。
関連動画
関連項目
- チャイコフスキー
- 白鳥の湖
- 眠れる森の美女
- クラシック
- バレエ
- ファンタジア
- プリンセスチュチュ
- カウボーイビバップ
- ワイルド・スピード/ジェットブレイク
- クラシック音楽の楽曲の一覧
- くるみ割り人形とねずみの王様
- 顎の巨人
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