アボカド(avocado)とは、独特の風味と食感のある果実をつけるクスノキ科の植物である。中央アメリカ原産。
概要
ニコニコ大百科:植物 アボカド |
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分類? | クスノキ目クスノキ科ワニナシ属 |
学名? | Persea americana Persea→ペルシャ americana→アメリカの |
クスノキ科 Lauraceae? | |
アボカド - シナモン |
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このテンプレートについて |
木に生るので果物だが、一般的には野菜として扱われることが多い。脂肪分が豊富なので「森のバター」の俗名もよく知られているが、含まれる脂肪分のほとんどは、健康に良いとされている一価不飽和脂肪酸である。
ワニの皮のような果皮の様子からかつてはワニナシの別名もあり、中国語では現在でも「鰐梨」という。
アボカド? アボガド?
もともと、原産地の先住民語のひとつであるナワトル語で「アーワカトル」 (ahuacatl、またはauacatl)の名で呼ばれていた。スペイン語では、これが訛って「アグアカテ」(aguacate) または「アワカテ」 (ahuacate) と呼ばれている。
日本語の「アボカド」という呼び名は英語由来。英語・フランス語・イタリア語などでは、「アワカテ」が発音しにくかったためか、スペイン語の「弁護士」を意味する単語に置き換えられた(現在では「弁護士」は "abogado")。特にフランス語では、「アボカド」と「弁護士」は綴りも発音も同一である。
ちなみに、よく知られた俗説として、「『アーワカトル』はナワトル語で『睾丸』『きんたま』の意味で、形が睾丸に似ていることからこの果実もその名で呼ばれることになった」というものがあり、雑学知識として披露されることが多い。しかし、これはどうやら実際には逆であるらしく、「アーワカトル」はもともと果実名であり、むしろ睾丸のほうを、アボカドに形が似ているからこう呼んだというのが真相らしい。さらに、「睾丸」を指す単語として「アーワカトル」はあまり一般的ではなく、ほかの語のほうがよく使われるという。
日本では「アボガド」と読まれたり書かれたりすることも多いが、英語名に従うかぎり、これは誤りである。誤って覚えてしまう理由としては、「アボガド」が発音しやすいということや、スペイン語で「弁護士」が "abogado" であることもあるが、何より高校化学でおなじみのあの男が、没後150年以上の時を越えて我々を惑わせているのである…そう、気体の研究を行ったイタリアの化学者・アボガドロである。
ちなみにイタリア語の苗字"Avogadro"はおそらく「弁護士」が語源だといわれており [1]、そうするとアボカドと語源的なつながりがあることになる。
果実と食用
果実は表面に光沢があり、初め緑色で、熟すと黒色になる品種が一般的。果肉は黄色~黄緑色で、空気に触れると酵素により酸化して褐色になるが、レモンやライムの汁などの酸で変色を防ぐことができる。熟しすぎると味が苦くなったりえぐくなったりする。
一般的に生で食べられ、サラダ・サンドイッチ・ハンバーガーなどの具になる。メキシコ料理のサルサの一種であるワカモレの材料で、ワカモレはトルティーヤやタコスの具になる。東南アジア・台湾・中米などではジュースにして飲まれている。また、海外では寿司のネタとして好まれる(カリフォルニアロールなど)。わさび醤油をつけるとトロの味になるといい、「アボカドの刺身」として知られているが、本当にトロの味がするのかについては異論もある。しかし、お寿司にはよく合い日本の回転寿司屋でもアボカドの寿司は出まわるようになっている。熟した実はそのまま醤油をかけて食べても美味しい。
化学
果実・葉・種などに含まれるペルシンはヒトに対しては無害だが、猫・犬・家畜・鳥類など、ヒト以外の動物にとっては危険で、大量に摂取すると痙攣・呼吸困難などに陥って死に至ることすらある。
生産
中米・南米では古くから栽培されており、現在も熱帯~亜熱帯で広く生産されている。メキシコが最大の生産国で(特にミチョアカン州で最も生産が盛ん)、日本国内で販売されているアボカドのほとんど(98%以上)はメキシコからの輸入品である。アメリカ合衆国では生産量の約9割をカリフォルニア州で生産している。日本でも栽培されているが、生産量はごく少ない。
「進化の亡霊」アボカド
アボカドの種は、大型動物によって飲み込まれ、消化されずに糞とともに排泄されることで遠くに散布されるといわれている。しかし、アボカドの種は非常に大きくて5cm以上にもなるので、これを飲み込めるほどの大きさの動物というのは限られている。実際に、アボカドの原産地に生息する現生の動物で、アボカドの種を飲み込めるほど大型の動物は、稀にしか見られないジャガーを除いて存在しないという。
では、アボカドの種子散布はどのように行われているのだろうか? ある研究者たちの仮説によると、アボカドの種は既に絶滅してしまった更新世の大型動物によって飲み込まれ散布されていて、種の大きさなどはその大型動物に適した進化の結果なのだという。遥か昔にパートナーを失ったアボカドは、人間による栽培なしにはやがて絶滅してしまっていたか、あるいは別の形の果実を進化させたのではないかといわれている。[2]
その他・豆知識
- 食べた後の種を土に埋めるか水につけておくと容易に発芽するので、観葉植物としてこれを育てる人もいる。しかし、クスノキの仲間なので、庭木にするとそのうちとんでもない大きさになる。実をつけることはめったにない。
- オランダ生まれのリキュール「アドヴォカート」の名前はアボカドに由来するが、現在ではアボカドではなく卵黄が材料になっている。また、「弁護士」の意味とも結びついて、飲むと弁護士のように弁舌がさわやかになるともいわれている。
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関連項目
脚注
- *Origin and Etymology of Italian Surnames http://www.italyworldclub.com/genealogy/surnames/a.htm
- *Margaret Lowman,H. Bruce Rinker (2004) "Forest canopies" Academic Press
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