クリスティアン・エリクセン単語

クリスティアンエリクセン

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クリスティアン・エリクセン（Christian Da nn ema nn Eriksen, 1992年 2月14日 - ）とは、デンマーク出身のサッカー選手である。
イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド所属。サッカーデンマーク代表。

182 cm76kg。ポジションはMF。182 cm76kg。

経歴

生い立ち

南デンマーク地域のメデルファートというのどかな町で生まれる。両親は共にサッカー経験者であり、特に自動車会社のセールスマンである父親はプロサッカー選手になる一歩手前まで上り詰めるほどの選手だった。そういった家庭環境もあって物心ついた頃にはボールが友達となり、10歳くらいまではボールを抱いて寝ていたほどだった。

幼少の頃は、父親が監督を務めるメデルファートのアカデミーチームでサッカーを学び、練習の帰りは父親と帰りの車の中で議論を重ねていた。当時、アイドルだったラウドルップ兄弟やフランチェスコ・トッティのドリブルを真似てテクニックを磨き、地元では特別な存在のプレイヤーと見られていた。

13歳となった2005年にオーデンセBKのユースチームへ移籍。物静かで謙虚な少年だったが、サッカーの才能はずば抜けており、ピッチの上では自然とチームのリーダーになっていた。自分が特別な才能を持っていることも冷静に理解しており、かといって浮かれるわけでなく地に足を付けた少年だった。2006年にはオーデンセをU-16のチャンピオンに導いており、国外のビッグクラブからスカウトが視察に来るようにもなる。アンダー代表でもプレーするようになり、2008年にはデンマーク U-17ヤングプレイヤーオブザイヤーに選ばれている。

アヤックス

2008年、オランダの名門アヤックス・アムステルダムへ移籍。16歳で故郷を離れることとなったエリクセンは、最初はユースチームに所属。アヤックスのユースといえば過去数々の名プレイヤーを輩出している世界的にも有名な育成機関だが、ここでもまるで25歳の選手のようと言われるほど冷静かつクレバーな才能を見せ、1年前に移籍したヴェスレイ・スナイデルの後継者として期待される。

18歳となった2010年にトップチームへと昇格。1月17日のNAブレダ戦でスタメンに抜擢され、エールディヴィジでのデビューを飾る。チームに足りなかった10番タイプの選手として出場機会を得ると、攻撃のタクトを振るう。シーズン後半戦にアヤックスは23試合連続無敗を記録するが、そのうちの18試合に出場。シーズン 106 ゴールという爆発的な攻撃力を見せたチームの中でも存在感を示した。

2010-11シーズンからは背番号8を与えられ、チームの主力として成長していく。シーズン途中で監督のマルティン・ヨルが辞任することになったが、後任のフランク・デ・ブールはポゼッションを重視したスタイルを導入し、プレーメーカーとしての才能が発揮しやすい環境となった。UEFAチャンピオンズリーグのピッチにも初めて立ち、2010年 12月8日のACミラン戦では93％のパス成功率を披露し大きなインパクトを残す。すっかりチームに欠かせない選手となったエリクセンは、6ゴール9アシストという成績を残し、7シーズン優勝から遠ざかっていたアヤックスのリーグ優勝に貢献。

2011-12シーズンも絶対無二の存在として君臨し、もはや攻撃の核といっていいほどの存在感を見せていた。CLでも2011年 10月18日のディナモ・ザグレブ戦で初ゴールを決める。このシーズンのエールディヴィジでのアシスト数は15となり、アヤックスのリーグ連覇達成に大きく貢献する。

2012-13シーズンはアシストのみならずゴールでも貢献するようになり、もはやエールディヴィジでは規格外のプレイヤーとなっていた。また、このシーズンのCLで戦ったボルシア・ドルトムントのユルゲン・クロップ監督から才能を高く買われ、移籍話が浮上するほどだった。結局、ドルトムントへの移籍は実現しなかったが、10ゴール13アシストとトップ下の選手としては文句の付けようがない成績を残し、エールディヴィジ3連覇を成し遂げる。いよいよ次のステップアップに向け、移籍の噂が絶えなくなっていた。

2013-14シーズン開幕4試合で2ゴール3アシストと好調なスタートを切るが、これを最後にオランダを跡にするのだった。

トッテナム

2013年 8月30日、夏の移籍マーケットが閉まる直前にイングランド・プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーに移籍することが発表される。移籍金は1150万ポンドと言われている。9月14日のウェストハム戦でプレミアリーグでのデビューを飾ると、その試合で早速アシストを記録し、上々のスタートを切る。だが、フィジカルコンタクトの強いイングランドのスタイルに当初は馴染むことができずにいた。それでも、12月26日のウェスト・ブロムウィッチ戦で直接FKを決め、プレミアリーグ初ゴールを決めると、年明けからはプレミアリーグのリズムにもフィットするようになり本領を発揮。怪我で欠場した時期もあったが、7ゴール8アシストと1年目としては合格点の成績を残す。

2014-15シーズンから監督に就任したマウリシオ・ポチェッティーノからはこれまでやってこなかったサイドで起用されるようになり、サイドからライン間に移動してボールを捌くスタイルを確立するようになる。縦にスピーディーに仕掛けるポチェッティーノのスタイルの中で、攻撃に違いを生み出せるエリクセンは「チームの心臓」であり、前線とポジションチェンジを繰り返しながらゴールに近い位置で顔を出すようにもなる。2015年 10月4日のスウォンジー戦ではFKから2ゴールを決めるなど、キャリア初の二桁ゴールを記録。

2015-16シーズンは、ハリー・ケイン、ソン・フンミン、デレ・アリと共に強力なカルテットを構成。縦に仕掛けるタイプの選手が多いスパーズにとって攻撃に緩急をもたらせるエリクセンの存在は欠かせないものとなっていた。ポチェッティーノのスタイルが浸透したスパーズはこの年快進撃を見せ、マンチェスター・シティと首位争いを演じるようになる。2016年 2月14日のシティとの重要な首位攻防戦では決勝ゴールを決めている。また、このシーズンにゴールを量産し得点王となったケインにキーパスを送り続けたのもエリクセンだった。チームは終盤に失速し、優勝は逃したが、3位でシーズンを終えたことでCL出場権を獲得。アシスト数は13を記録し、リーグ 2位の成績だった。

2016ｰ17シーズンもスパーズはスピーディーな攻撃でファンを魅了し、プレミアリーグで優勝争いを演じてみせる。12月にはスウォンジー戦とハル・シティ戦で1試合2ゴールを決め、1月4日には首位チェルシーとの直接対決でデレ・アリの2ゴールをアシストする活躍。プレスキックから貴重なゴールもアシストしており、2シーズン連続でのCL出場権獲得に貢献。シーズンのアシスト数はキャリアハイの15を記録。

2017-18シーズンはプレミアリーグ開幕戦のニューカッスル戦で2アシストの活躍を見せ、9月9日のエヴァートン戦ではシーズン初ゴールをマーク。11月1日には、CL グループステージのレアル・マドリード戦でチームの3点目を決め、グループステージ首位通過に貢献。2018年 1月31日のマンチェスター・ユナイテッド戦では開始わずか11秒での先制ゴールを決め、2-0での勝利をもたらしている。さらに、2月13日のCLラウンド16ユヴェントスとの1st legでは名GK ジャンルイジ・ブッフォンを相手に低い弾道の直接FKを決め引き分けに持ち込む活躍を見せる。もっともチームは2nd legで敗れ、CLはラウンド16で敗退。もっともプレミアリーグでは勢いは衰えず、4月1日のチェルシー戦ではドライブ回転をかけたミドルシュートを決めており、試合後ティエリ・アンリから称賛されている。この月の活躍は凄まじいものがあり、3試合連続ゴールに加え、2試合でMOMに選出されている。スパーズはまたしてもタイトル獲得を逃したが、1シーズンフル稼働しながら10ゴール10アシストの偉業を成し遂げ、初のPFA年間ベストイレブンに選出されている。

2018-19シーズンもスパーズの心臓として躍動。シーズン後半戦に入り、エースのケインが負傷離脱するアクシデントに見舞われたが、2019年 3月31日のリヴァプール戦でこれまでデイヴィッド・ベッカムのみしか達成したことがなかったプレミアリーグ4シーズン連続二桁アシストを成し遂げる。新スタジアムのこけら落としとなった4月3日のクリスタル・パレス戦ではソン・フンミンの第1号となるゴールをアシスト。その後には今度はソンのアシストから新スタジアム2号となるゴールを決め、話題となった。CLでスパーズは快進撃を見せ、準決勝2nd legでは古巣アヤックスとの対戦が激闘となり、試合途中でCHの位置に下がったことでチームにリズムが生まれ、クラブ史上初の決勝進出を果たす。しかし、決勝ではリヴァプールに敗れ、準優勝に終わっている。

2019-20シーズンは契約最終年となったことで移籍が確実視され、レアル・マドリードやマンチェスター・ユナイテッドが獲得に乗り出したが合意に至らず、結局スパーズに残留することとなった。しかし、移籍に気持ちが傾いていたこともあって本調子ではなく、加えてシーズン途中にポチェッティーノが解任となりジョゼ・モウリーニョが監督に就任すると、ベンチ要因に降格させられてしまう。チームでの居場所を失う形となったことで、冬の移籍マーケットでチームを去ることを決断する。

インテル

2020年 1月28日、イタリア・セリエAのインテル・ミラノへ移籍することが発表。背番号は24。2月20日のUEFAヨーロッパリーグラウンド32のルドゴレツ戦で移籍後初ゴールを決め、セリエA第29節のブレシア戦でセリエA初ゴールを決める。しかし、セリエAのスタイルに馴染めなかったことに加え、アントニオ・コンテ監督の戦術で生きる場所が見つからず、リーグ戦のフル出場はわずか2試合となる。

2020-21シーズンになってもチームにフィットすることができず、コンテ監督の構想外となり、ベンチに座っている時間が大半となる。ピッチにすら立てない状況に冬で移籍することが既定路線として報道されるようになる。しかし、2021年 1月29日のコッパ・イタリア準々決勝ミラン戦で途中出場してチームのリズムを変え、延長戦に決勝ゴールを決める活躍を見せたことで状況が一変。コンテからの信頼を得られるようになりスタメン奪取に成功。中盤で違いを生み出すプレーがチームのレベルを一段階上へ引き上げ、インテルに足りなかった最後のピースとなる。エリクセンがフィットしてからのインテルはリーグ戦11連勝という快進撃を見せ、11年ぶりのスクデット獲得。

ようやくインテルで居場所を見つけたかと思われたが、EURO2020で試合中に心停止となって倒れ、イタリアでは規定によりICDを付けてのプレーが認められないため、2021年 12月17日に双方合意のうえで契約解除となり、退団する。

ブレントフォード

2022年 1月31日、イングランド・プレミアリーグのブレントフォード FCとシーズン終了までの契約を交わしたことが発表される。一時は現役続行は不可能とまで言われていたが、2月26日のプレミアリーグ第27節ニューカッスル戦で半年ぶりに実戦復帰。3月5日の第28節ノリッジ戦では復帰後初のフル出場を果たしただけではなく、決勝ゴールをアシストし、チームに2か月ぶりの白星をもたらしている。4月2日、第31節敵地でのチェルシー戦では、加入後初ゴールとなる逆転ゴールを決め、4点を奪っての大金星に貢献。プレー期間は３か月ほどだったが、11試合1ゴール4アシストという成績でプレミアリーグ残留に貢献し、世界中に復活を印象付ける。

マンチェスター・ユナイテッド

2022年 7月15日、プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドに3年契約で加入したことが発表される。加入当初からエリック・テン・ハグ監督の信頼を得、中盤の底でのプレーメーカーとして重宝される。11月14日のプレミアリーグ第14節フラム戦では移籍後初ゴールを決めただけでなく、アレハンドロ・ガルナチョのゴールもアシストするなど1ゴール1アシストの活躍を見せる。ワールドカップ後もカゼミーロと中盤で高い連携を見せ、ボールの収まり所となる。2023年 1月28日 FA カップ4回戦のレディング戦でアンディ・キャロルから悪質なカニばさみタックルを受けて負傷。2か月以上の長期離脱を強いられるが、4月8日のエヴァートン戦で復帰し、ユナイテッドのCL出場権獲得に貢献。

2023-24シーズンは第2節ノッティンガム・フォレスト戦でシーズン初ゴールをマーク。しかし、低調なチームの中で自身も思ったようなパフォーマンスを発揮できず、スタメンを外れることが多くなる。さらには2023年 11月11日のルートン・タウン戦で負った膝の負傷によって1か月戦線離脱。怪我から復帰後の後半戦は18歳のコビー・メイヌーが台頭したこともあって出場時間が激減。

放出の噂も出たが、2024-25シーズンもユナイテッドに残留。

デンマーク代表

2007年にU-17デンマーク代表に選出され、主力として2度のU-17欧州選手権予選を戦っているが、いずれも予選で敗退している。

2010年 2月、まだアヤックスでプロデビューしたばかりにも関わらずフル代表に選出。3月におこなわれたオーストリアとの親善試合で18歳になったばかりの若さでデンマーク代表デビューを果たす。将来を嘱望されたこともあり代表に定着すると、6月に南アフリカで開催された2010 FIFAワールドカップのメンバーにも選出。グループリーグ第1戦のオランダ戦と第3戦の日本戦に途中出場している。

2011年頃にはチームの主力として定着するようになり、6月4日のEURO2012予選アイスランド戦で代表初ゴールをあげている。2012年、ポーランドとウクライナの共同開催となったUEFA EURO 2012に出場。グループリーグの3試合全てにスタメンとして出場するが、チームは1勝2敗でグループリーグ敗退に終わる。

その後、デンマーク代表はしばらくの間低迷期に入り、2014 FIFAワールドカップとEU EO 2016は共に予選で敗退となり、本大会に出場することはできなかった。なお、2014年 9月のEURO16予選から背番号10を背負うようになる。2016年には初めて日本に来日してプレーをしており、6月7日のキリンカップ 2016 ブルガリア戦でプロになってからは初となるハットトリックを達成している。

2016年から2017年にかけての2018 FIFAワールドカップ欧州予選では、エースとして獅子奮迅の活躍を見せ、チームトップとなる8得点をマーク。それでも、ポーランドの勝ち点に及ばずグループ 2位となり、プレーオフに回ることに。アイルランドと戦ったプレーオフではホームの初戦で引き分け、背水の陣で挑んだアウェイでの第2戦でハットトリックの大活躍。デンマークの2大会ぶりのワールドカップ出場の立役者となる。

2018年にロシアで開催された2018 FIFAワールドカップで2度目のワールドカップ出場を果たす。8年前と違い、チームの絶対的エースとなったが、グループリーグ初戦のペルー戦でユスフ・ポウルセンのゴールをアシスト。第2戦のオーストラリア戦では、ワールドカップ初ゴールとなる先制ゴールを決めこの試合のMOMに選出。チームを4大会ぶりの決勝トーナメント進出に導いている。ラウンド16のクロアチア戦では0-0のままPK戦で敗れている。

2019年 3月からのEURO2020予選でもチーム最多となる5ゴールを記録し、2大会ぶりのEURO本大会出場に貢献する。また、2020年 10月14日に開催されたイングランドとの親善試合では、デンマーク代表通算100試合出場を達成する。

2021年 6月のUEFA EURO2020はその後のサッカー人生を大きく左右する出来事が起こる。母国でのフィンランドとのグループリーグ第1戦の前半途中に突如倒れて心肺停止状態に陥ってしまう。その後意識を取り戻し、一命を取り留めたが、当然以降の試合出場は不可能となった。

2022年 3月、EURO2020で倒れて以来およそ9か月ぶりに代表に復帰。3月26日のオランダとの親善試合で後半から途中出場すると、わずか2分後にファーストタッチでEUROでのアクシデントから復帰後初ゴールを決めてみせる。

2022 FIFAワールドカップ・カタール大会にも出場し、チームトップのチャンスクリエイト数を記録するものの、チームは得点力不足に陥ってしまい、1勝もできないままグループリーグ敗退となる。

2024年 6月、前回大会での不慮の事故から3年が経過し、EURO2024に出場。初戦のスロベニア戦では名GKヤン・オブラクを相手に決勝ゴールを決め、この試合のMOMにも選出。全世界に復活をアピールする。その後もラウンド16までの全4試合をスタメンとして出場。

個人成績

シーズン	クラブ	リーグ	試合	得点
2009-10	アヤックス	エールディヴィジ	15	0
2010-11	アヤックス	エールディヴィジ	28	6
2011-12	アヤックス	エールディヴィジ	33	7
2012-13	アヤックス	エールディヴィジ	33	10
2013-14	アヤックス	エールディヴィジ	4	2
2013-14	トッテナム	プレミアリーグ	25	7
2014-15	トッテナム	プレミアリーグ	38	10
2015-16	トッテナム	プレミアリーグ	35	6
2016-17	トッテナム	プレミアリーグ	32	8
2017-18	トッテナム	プレミアリーグ	36	10
2018-19	トッテナム	プレミアリーグ	35	8
2019-20	トッテナム	プレミアリーグ	20	2
2019-20	インテル	セリエA	17	1
2020-21	インテル	セリエA	26	3
2021-22	ブレントフォード	プレミアリーグ	11	1
2022-23	マンチェスター・ユナイテッド	プレミアリーグ	32	1
2023-24	マンチェスター・ユナイテッド	プレミアリーグ	22	1
2024-25	マンチェスター・ユナイテッド	プレミアリーグ

個人タイトル

デンマーク年間最優秀サッカー選手賞 : 4回（2013, 2014, 2015, 2017）
デンマーク選手協会賞（2013, 2014）
PFA年間ベストイレブン（2017-2018）

EURO2020での心肺停止

2021年 6月21日、UEFA EURO2020グループリーグ初戦フィンランド戦において、前半43分左サイドでスローインのボールを受けた際に突然ピッチに倒れ込んでしまう。異常事態を察したフィンランドの選手がすぐに主審に呼びかけ、試合は中断。エリクセンは心肺停止の状態のまま意識を失っており、近くにいた選手たちによって気道確保がおこなわれ、すぐに駆け付けたチームドクターの判断によりピッチ上でAEDによる蘇生処置がおこなわれる。

突然の事態に観客は静まり返り、母国の英雄の生命の危機を察知して泣き出すファンの姿も見られた。チームメイトは治療している姿を公に晒さないためににエリクセンの周りに人の壁を作り、ショックのあまり泣きながらエリクセンが無事であることを祈る選手もいた。夫の危機にピッチに飛び出し、ショックを受けていたエリクセンの妻をキャプテンのシモン・ケアとカスパー・シュマイケルが慰める一幕もあった。このときばかりは敵であるフィンランドのサポーター、いや世界中のサッカーファンがエリクセンが無事であることをただ祈っていた。

その後、一度目の除細動によって心拍が復帰。担架で運ばれピッチを出る際にはうっすら意識を取り戻しつつあるエリクセンの姿が確認され、病院に緊急搬送された際には意識を取り戻していた。その後、UEFAとデンマークサッカー協会からエリクセンの容体が安定したことを発表。最悪の事態は避けられることとなった。後日、本人から世界中へ感謝のメッセージが届けられた。

絶対的エースを失ったデンマーク代表だったが、エリクセンのためにとチームは団結。グループリーグを敗退寸前のところで逆転突破すると、決勝トーナメントに入って気持ちのこもったプレーで優勝した1992年大会以来となる準決勝進出を果たし、大会をおおいに盛り上げた。また、一時は現役続行は厳しいと見られたエリクセンだったが、本人は現役続行を強く希望。手術で心臓の働きを助ける補助型の人工臓器であるICDを装着する。ただ、イタリアでは規定によってICDを付けてのプレーが認められていないため、所属するインテルとの契約を解除した。

プレースタイル

本職のポジションはトップ下だが、左右のウイングやサイドハーフ、セントラルハーフでもプレーすることができる。ライン間でボールを受けて周りにパスを通すプレーメーカータイプだが、ポジションを移動しながら相手のマークを引き付けて味方にスペースを作る。また、ボールを引き出すために最適なポジションを見つけて簡単に捌き、また最適なポジションを見つけてボールを受けるという動作を繰り返している。

最大の武器は、左右両脚で蹴れる正確なキックであり、味方にピンポイントで合わせるパスを得意としている。ゴールを奪うための最適なルートを誰よりも素早く見つけることができるため、ゴールに直結するようなキーパスを送ることが多い。プレスキックの精度も高く、味方にピンポイントで合わせるインスウィングのクロスや直接ゴールを奪うこともある。ミドルシュートも得意としており、コースを狙ったシュートよりも威力のある弾丸シュートのほうが決定率が高い。

よくメスト・エジルと比較されることがあるが、大きな違いは運動量の豊富さだろう。低い位置まで下がって最終ラインのビルドアップをサポートすることもあり、ピッチ上の必要なところに顔を出してくるため、味方としては心強いし、相手からすれば捕まえづらい。守備でもハードワークを駆使するため、プレッシングの場面で貢献もできる。ただ、フィジカルコンタクトはそこまで強くないため、肉弾戦のような試合展開になると試合から消えてしまう。