ノーベル平和賞(ノルウェー語:Nobels fredspris)とは、最も世界平和に貢献した人物及び団体に授与される賞である。
概要
ノーベル賞は、スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルの遺志によって設立された、国際的な賞である。今日では、世界最高の権威性を備えた賞と見做されている。年に一度、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、そして経済学の6つの部門において、最も人類に貢献した人物・団体に贈られる。
このうち、ノーベル平和賞は、国家間の友好関係、軍備の削減・廃止、及び平和会議の開催・推進のために最大・最善の貢献をした人物・団体に授与される。唯一団体も受賞資格がある賞であり、他の賞の選考がスウェーデンで行われる中、唯一ノルウェーのノーベル委員会で選考が行われる。受賞者の発表は10月上旬、授賞式はアルフレッド・ノーベルの命日である12月10日。
ノーベル賞のメダルの表側には、各賞共通でアルフレッド・ノーベルの横顔、名前、生没年が彫刻されている。ノーベル平和賞のメダルの裏側には、三位一体を表現した図案「Pro pace et fraternitate gentium」がデザインされている。メダルは重さ約200g、直径66mm。1980年以前は純金製のメダルだったが、現在は傷つきにくい18金を基材として24金でメッキが施されたメダルが授与されている。
これまでにレ・ドゥク・ト(1973年)が受賞を辞退している。
平和賞はその性質上政治色が強くなりがちであり、受賞後にその業績を覆す事象があったことが判明するなど、度々議論になることが多く、廃止すべきであるという声も多い。
例えば、非核三原則で日本人初の受賞者となった佐藤栄作(1974年)は、没後の2009年にアメリカと沖縄への核持ち込みに関する密約を交わしていたことが判明している。また、核なき世界の演説で受賞したバラク・オバマ(2009年)はその当初から「演説だけで受賞」「時期尚早すぎる」などと批判が上がり、翌2010年には臨界前核実験を実施している。
一覧
歴代のノーベル平和賞受賞者の一覧。
日本のノーベル平和賞受賞者は太字、団体での受賞者は斜文字で記載する。
- 1901年:アンリ・デュナン、フレデリック・パシー
- 1902年:エリー・デュコマン、シャルル・ゴバ
- 1903年:ウィリアム・ランダル・クリーマー
- 1904年:万国国際法学会
- 1905年:ベルタ・フォン・ズットナー
- 1906年:セオドア・ルーズベルト
- 1907年:エルネスト・テオドロ・モネータ、ルイ・ルノー
- 1908年:ポントゥス・アルノルドソン、フレデリック・バイエル
- 1909年:オーギュスト・ベールナールト、エストゥールネル・ド・コンスタン
- 1910年:国際平和ビューロー
- 1911年:トビアス・アッセル、アルフレート・フリート
- 1912年:エリフ・ルート
- 1913年:アンリ・ラ・フォンテーヌ
- 1914年:受賞者なし
- 1915年:受賞者なし
- 1916年:受賞者なし
- 1917年:赤十字国際委員会
- 1918年:受賞者なし
- 1919年:ウッドロウ・ウィルソン
- 1920年:レオン・ブルジョワ
- 1921年:カール・ヤルマール・ブランティング、クリスティアン・ランゲ
- 1922年:フリチョフ・ナンセン
- 1923年:受賞者なし
- 1924年:受賞者なし
- 1925年:オースティン・チェンバレン、チャールズ・ドーズ
- 1926年:アリスティード・ブリアン、グスタフ・シュトレーゼマン
- 1927年:フェルディナン・ビュイソン、ルートヴィッヒ・クヴィデ
- 1928年:受賞者なし
- 1929年:フランク・ケロッグ
- 1930年:ナータン・セーデルブロム
- 1931年:ジェーン・アダムズ、ニコラス・バトラー
- 1932年:受賞者なし
- 1933年:ラルフ・ノーマン・エンジェル
- 1934年:アーサー・ヘンダーソン
- 1935年:カール・フォン・オシエツキー
- 1936年:カルロス・サアベドラ・ラマス
- 1937年:ロバート・セシル
- 1938年:ナンセン国際難民事務所
- 1939年:受賞者なし
- 1940年:受賞者なし
- 1941年:受賞者なし
- 1942年:受賞者なし
- 1943年:受賞者なし
- 1944年:赤十字国際委員会
- 1945年:コーデル・ハル
- 1946年:エミリー・グリーン・ボルチ、ジョン・モット
- 1947年:イギリス・フレンズ協議会、アメリカ・フレンズ奉仕団
- 1948年:受賞者なし
- 1949年:ジョン・ボイド・オア
- 1950年:ラルフ・バンチ
- 1951年:レオン・ジュオー
- 1952年:アルベルト・シュヴァイツァー
- 1953年:ジョージ・マーシャル
- 1954年:国際連合難民高等弁務官事務所
- 1955年:受賞者なし
- 1956年:ヴィリー・ブラント
- 1957年:レスター・B・ピアソン
- 1958年:ドミニク・ピール
- 1959年:フィリップ・ノエル=ベーカー
- 1960年:アルバート・ルツーリ
- 1961年:ダグ・ハマーショルド
- 1962年:ライナス・ポーリング
- 1963年:赤十字国際委員会、国際赤十字赤新月社連盟
- 1964年:マーティン・ルーサー・キング・ジュニア
- 1965年:国際連合児童基金
- 1966年:受賞者なし
- 1967年:受賞者なし
- 1968年:ルネ・カサン
- 1969年:国際労働機関
- 1970年:ノーマン・ボーローグ
- 1971年:ヴィリー・ブラント
- 1972年:受賞者なし
- 1973年:ヘンリー・キッシンジャー、レ・ドゥク・ト(辞退)
- 1974年:ショーン・マクブライド、佐藤栄作
- 1975年:アンドレイ・サハロフ
- 1976年:ベティ・ウィリアムズ、マイレッド・コリガン・マグワイア
- 1977年:アムネスティ・インターナショナル
- 1978年:アンワル・アッ=サーダート、メナヘム・ベギン
- 1979年:マザー・テレサ
- 1980年:アドルフォ・ペレス・エスキベル
- 1981年:国際連合難民高等弁務官事務所
- 1982年:アルバ・ライマル・ミュルダール、アルフォンソ・ガルシア・ロブレス
- 1983年:レフ・ヴァウェンサ
- 1984年:デズモンド・ムピロ・ツツ
- 1985年:核戦争防止国際医師会議
- 1986年:エリ・ヴィーゼル
- 1987年:オスカル・アリアス・サンチェス
- 1988年:国際連合平和維持活動
- 1989年:ダライ・ラマ14世
- 1990年:ミハイル・ゴルバチョフ
- 1991年:アウンサンスーチー
- 1992年:リゴベルタ・メンチュウ
- 1993年:ネルソン・マンデラ、フレデリック・ウィレム・デクラーク
- 1994年:ヤーセル・アラファート、イツハク・ラビン、シモン・ペレス
- 1995年:ジョセフ・ロートブラット、パグウォッシュ会議
- 1996年:カルロス・フィリペ・シメネス・ベロ、ジョゼ・ラモス=ホルタ
- 1997年:地雷禁止国際キャンペーン、ジョディ・ウィリアムズ
- 1998年:ジョン・ヒューム、デヴィッド・トリンブル
- 1999年:国境なき医師団
- 2000年:金大中
- 2001年:国際連合、コフィー・アナン
- 2002年:ジミー・カーター
- 2003年:シーリーン・エバーディー
- 2004年:ワンガリ・マータイ
- 2005年:国際原子力機関、モハメド・エルバラダイ
- 2006年:ムハマド・ユヌス、グラミン銀行
- 2007年:気候変動に関する政府間パネル、アル・ゴア
- 2008年:マルッティ・アハティサーリ
- 2009年:バラク・オバマ
- 2010年:劉暁波
- 2011年:エレン・ジョンソン・サーリーフ、レイマ・ボウィ、タワックル・カルマン
- 2012年:欧州連合
- 2013年:化学兵器禁止機関
- 2014年:マララ・ユスフザイ、カイラシュ・サティーアーティ
- 2015年:チュニジア国民対話カルテット
- 2016年:フアン・マヌエル・サントス
- 2017年:核兵器廃絶国際キャンペーン
- 2018年:デニス・ムクウェゲ、ナーディーヤ・ムラード
- 2019年:アビィ・アハメド
- 2020年:国際連合世界食糧計画
- 2021年:マリア・レッサ、ドミトリー・ムラトフ
- 2022年:アレシ・ビャリャツキ、メモリアル、市民自由センター
- 2023年:ナルゲス・モハンマディ
- 2024年:日本原水爆被害者団体協議会
記録
- 平和賞を複数回受賞した人物は現在までいないが、1962年に受賞したライナス・ポーリングは1954年にノーベル化学賞を受賞している。団体では国際連合難民高等弁務官事務所が2度、赤十字国際委員会が3度受賞しており、特に後者はノーベル賞を3度受賞した唯一の事例である。
関連項目
- ノーベル賞
- ノーベル物理学賞
- ノーベル化学賞
- ノーベル生理学・医学賞
- ノーベル文学賞
- ノーベル平和賞
- ノーベル経済学賞
- アルフレッド・ノーベル
- 平和
- 平和賞
- ノーベル平和賞のために君は戦争の準備をしなければならない
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