ベヒーモス(英: Behemoth)とは、『旧約聖書』に登場する伝説の巨大な不死の生物である。
現代ヘブライ語に基づきベヘモット、ベヘモト等と呼ばれることもある。ベヒーモスという表記は英語での発音の一つに基づくものであり、英語ではベヒモス、ビーエモス、ベイエモース等とも読まれる。転じて怪物めいた強大な存在を指すこともある。
日本では「FFシリーズ」などのコンピュータRPGや漫画、ラノベに登場する強大な怪物等としてもよく知られている。
概要
見よ、ベヘモットを。お前を造ったわたしはこの獣をも造った。これは牛のように草を食べる。
見よ、腰の力と腹筋の勢いを。
尾は杉の枝のようにたわみ/腿の筋は固く絡み合っている。
骨は青銅の管/骨組みは鋼鉄の棒を組み合わせたようだ。
これこそ神の傑作/造り主をおいて剣をそれに突きつける者はない。
山々は彼に食べ物を与える。野のすべての獣は彼に戯れる。
彼がそてつの木の下や/浅瀬の葦の茂みに伏せると
そてつの影は彼を覆い/川辺の柳は彼を包む。
川が押し流そうとしても、彼は動じない。ヨルダンが口に流れ込んでも、ひるまない。
まともに捕えたり/罠にかけてその鼻を貫きうるものがあろうか。「ヨブ記」40章15~24節(新共同訳)
五日目にあなたは、水が集まっている第七の部分に、生き物や鳥や魚を生み出すように命じられました。すると、そのとおりになりました。
声もなく、生命もない水が、お命じになった生き物を造ったのです。それは、諸国の民にあなたの不思議な業をたたえさせるためでした。
それからあなたは、二つの生き物をえり分けられ、その一つをベヘモット、もう一つをレビヤタンと名付けられました。
そしてあなたは、両者を互いに引き離されました。水が集まっている第七の部分に両者を置くことができなかったからです。
そしてベヘモットには三日目に乾いた土地の一部を与え、そこに住むようにされました。そこは一千の山のある土地でした。
レビヤタンには水のある第七の部分をお与えになりました。あなたはこの二つを保存し、あなたのお望みのとき、お望みの人々に食べさせるようにされました。
ユダヤ教およびキリスト教の『旧約聖書』の「ヨブ記」と、外典のラテン語版「エズラ記」に記述がある想像上の陸棲草食動物。海棲生物のリヴァイアサン(レビヤタン)と対となる陸の獣たちの王であり、いずれも創造主である神(ヤハウェー)にしか殺すことができない不死の生物とされている。イスラム教のバハムートのルーツとされているが、こちらはカバかゾウの頭をした巨大な魚で、世界を支える存在の一つである。
「ヨブ記」では神がヨブに自らの権威を示す一例としてベヒーモスとリヴァイアサンを挙げてその素晴らしさを讃えているのだが、どうしたわけか中世ヨーロッパでは双方とも悪魔にされてしまい、ベヒーモスは貪欲な象頭の魔神として描かれた。また、トマス・ホッブズは理想的な国家をリヴァイアサン、現実の退廃した国家をベヒーモスに例えて『リヴァイアサン』『ベヒーモス』を著した。
名前はヘブライ語原典ではベヘーモート(בְּהֵמוֹת, behēmōth, 現代ヘブライ語ではベヘモットと発音)。語源については有力な説が2つあり、
- 「(角の生えた)四脚の家畜」を意味するベヘマー(בְּהֵמָה, behemah, 現代ヘブライ語ではベヘマと発音し、専ら「動きの鈍い獣、低文明の田舎者」を指す)の複数形で、複数により「神の強大な家畜」を表す。なおベヒーモスを主語とする動詞は全て単数形である
- 古代エジプト語でカバを指した p-eḥe-mau (文字通りの意味は「水場のウシ」)がヘブライ語化したもの
モデルとなった動物の候補にはカバ・水牛・ナイルウマ・サイ・ゾウなどがいる(ちなみに明解さを優先した口語訳聖書ではズバリ「河馬」と翻訳されている)。大きさについては「そてつの影は彼を覆い/川辺の柳は彼を包む」としながらも、「川が押し流そうとしても、彼は動じない。ヨルダン(川)が口に流れ込んでも、ひるまない」「水が集まっている第七の部分(=海)に両者を置くことができなかったからです」等とあるように巨大なイメージを喚起させる表現もあり、現代では専ら恐竜のような巨大陸棲生物のイメージで語られることが多く、ゲーム等の創作でも軒並みそれらを踏襲している。
関連動画
関連商品
関連項目
- 4
- 0pt