「どんな苦しみにも黙って耐えろ」
「お前が男なら」
「男に生まれたなら」
「死ぬほど鍛える」
「結局それ以外にできることないと思うよ」
錆兎と真菰とは、「鬼滅の刃」に登場する二人の人物である。
なお、本記事ではこの両者を二人一組として扱うものとする。
概要
狭霧山にて鱗滝左近次から課された“岩を斬る“という最後の試練を乗り越えられずにいる炭治郎の前に突如として姿を現した狐面の少年少女の二人組。炭治郎の鼻を以ってしても、匂いを感じ取ることはできなかった。両者ともに孤児ではあったが(少なくとも錆兎は鬼に身内を殺されたらしい)、育ての親でもある鱗滝に師事すると共に敬愛と思慕の念を向ける剣士。つまりは炭治郎の兄弟子に当たる。
宍色の髪に口元の傷が特徴的な少年が錆兎。正義感が強く実直な性格の持ち主で、鱗滝の教え子たちの中では一番の使い手の模様。花柄の着物を纏った小柄の可愛らしい少女が真菰。穏やかな性格で、炭治郎曰く「言うことがふわふわしている」という不思議な雰囲気の持ち主。「私たち鱗滝さんが大好きなんだ」というのが口癖。その体格ゆえか非力ではあるものの、素早さを信条としているようだ。おそらくは禰豆子と同年代と思われるため「キメツ学園」などでは一緒に描かれることが多い。
炭治郎が体得していない「全集中の呼吸」を叩き込むべく、彼に稽古をつける。役割としては、錆兎が実戦形式でひたすらに鍛え上げる。反対に真菰は、炭治郎の動きの悪いところを指摘し、助言を与えることで修正を図ってくれる。この特訓は半年間続き、最後の挑戦にて互いに真剣を持った上での勝負となった。二人のおかげで、炭治郎は錆兎の面に一撃を与えたわけだが、どういうわけかいつの間にか課題であった岩を斬っていた。
このようにして、炭治郎は晴れて鱗滝から最終選別を受ける許しを得たわけだが、去り際に炭治郎が二人の名を口にしたことで鱗滝が驚愕に包まれる。それもそのはず。二人はすでに最終選別で命を落としていたからだ(炭治郎が二人の匂いを嗅ぎ取れなかったのもこのため)。炭治郎自身がこのことを知るのは二人の命を奪った下手人である手鬼の口から。それも、わざわざ惨たらしく殺した様まで伝えて。ともあれ、激戦の果てに炭治郎はその仇討ちを果たすが、それはまた別の話。いずれにしても、これによって二人をはじめとする鱗滝の弟子たちの魂は故郷の狭霧山へと帰っていった。
頼もしい兄弟子に可愛らしいサブヒロイン的存在の登場と思いきや、すでに亡き者という衝撃は連載当時及び初見の読者ないしは視聴者にとっては計り知れないものだっただろう。実際、この二人は手鬼の印象に残るほどの実力者であった。それにも関わらず命を落としてしまった事実は、翻すならば「鬼滅の刃」という作品の世界観が如何に非情なものであるかを印象付ける形となったことだろう。
ところで、錆兎が身に纏っている亀甲紋の着物。どこかで見覚えがあるような・・・・・・。
実は、錆兎には鱗滝の下で兄弟同然に育った仲の良い同年代の少年がおり、しかも彼もまた錆兎同様に身内、それも姉を鬼に殺されたという。その少年の名は冨岡義勇。後に水柱となる男である。つまりは村田さんとも同期。
そもそも、錆兎が最終選別にて手鬼に敗れてしまったのも、手鬼の頸が頑丈だったというのもあるが、それまでに他の同期を助けるべく山にいる鬼たちの多くを討ち取っており、それによって同期たちの命を救った。その中には当然、義勇も含まれており、彼は鬼の襲撃により深手を負っていた。しかし、そのせいで自身の日輪刀が著しく摩耗してしまい、手鬼との戦いにてその頸を落とすことなく、逆に折れてしまった。
その年の選別で命を落としたのは錆兎一人。反対に、冨岡も含めたそれ以外の全員は選別に受かった。特に冨岡は柱となるまでの剣士に成長したものの、錆兎の死によって彼の心には深い傷が残ってしまっている。これが癒えるのは、柱稽古直前に炭治郎と言葉を交わすまで待たねばならない。
なお、錆兎の着物は形見として義勇の羽織に用いられることになる。姉の蔦子の着物と合わせて半々羽織、すなわち形見ならぬ片身代わりとなった。
余談、というか完全に私見で恐縮だが、かつて手鬼は炭治郎の前でこう嘯いた。
「アイツの弟子はみんな殺してやるって決めてるんだ」
だが、実際はそのうちの一人である冨岡は生き延びている。結果として、手鬼の知らぬ形で鱗滝の弟子の皆殺しという目的は水泡に帰したことになる。それを踏まえて、炭治郎のとあるセリフをパクるならば、こう言ってもいいだろう。
「錆兎の方がずっと凄いんだ!!強いんだ!!」「錆兎は負けてない!!」
「誰も死なせなかった!!」
「戦い抜いた!!」
「守り抜いた!!」
「お前の負けだ!!」「錆兎の」
「勝ちだ!!」
詭弁と言われてしまえばそれまでだ。しかし、錆兎が冨岡を生かしたことによって、残酷な運命の只中に投げ出されてしまった竈門兄妹との出会いをもたらし、二人を鬼殺隊へと導いた。そして、それが巡り巡って鬼舞辻討伐の宿願を果たすこととなった。
錆兎は間違いなく、未来へと繋げたのだ。
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