の意味を持つ英単語である
ここでは、イギリスのSerif社が開発したグラフィックソフトウェアを解説する。
マジック:ザ・ギャザリングの能力については「親和」を参照せよ。
「Affinity」とは、イギリスの会社である〈Serif Europe.Ltd〉が開発し販売を行っているグラフィックソフトウェアシリーズの総称、またはそのソフト名である。
概要
「Affinity」って、なに?
「いろんなことができる画像編集ソフトを探しています!」
「ベクターといっしょにラスターも扱えると聞いて」
「チラシ作れるんですか?」
「なんか無料になったらしいじゃん」
……など、知っている人知らない人いろいろ含めてすんごく単純明快に説明すると、「画像編集とお絵かきとチラシとか雑誌制作をするためのソフトウェア」のこと。
このソフトを制作している【Serif】という会社は、見ている人の大体が世辞抜きに耳にしたことがないだろう。しかし、起業は1987年。グラフィックソフトウェア業界でかなりの古参だ。[1]最初に販売したのは、Windows用の〈デスクトップパブリッシングソフトウェア〉いわゆる〈DTP〉ソフトの「PageStar」。
その後もいくつかのソフトウェアを開発し販売するのだが、近年になって既存ソフトウェアのコード(つまり設計図)を捨てて、全てをゼロから作り直すことにした。[2]
決断を下した理由は大まかに二つ。
①ソフトウェアが全てWindows限定であったこと。
②度重なるアップデートにより、メンテナンスが困難になっていたこと。
このことから、全てを一新したソフトウェアシリーズ「Affinity」の開発がスタートする。
2014年に配信を開始した「Affinity Designer」を皮切りに、Affinityを冠した二つのソフトウェア「Affinity Photo」が2015年、「Affinity Publisher」が2019年に順次配信される。定期的な機能アップデートも2014年から行われた。
2022年11月9日には、アップグレード版となるV2(Version2)が配信開始。
2024年4月に、serif社がオーストラリアのオンライングラフィックソフトウェアを配信する会社の『Canva』に買収される。
2025年10月31日に「Affinity by Canva」が無料で配信開始。バージョンナンバーが3.0.0で、これが事実上のV3。
Affinityソフトウェア
Affinity Designer
2014年に配信を開始したベクター形式のドローイングソフトウェア。
同様のソフトとして、Adobe Illustratorが上げられる。
Illustratorと違う点は、ベクター形式だけではなくラスター形式も標準でサポートしている点。そして多少なりの画像編集機能を備えている。
画像の単色背景の切り抜きなどでPhotoshopなど別ソフトで出力・編集してから追加していたことからすれば、それが単一ソフトで済む点は余りある利点と言える。
画像の3D化が弱いということだが、一般ユーザーからすればまず困らないだろう。
Affinity Photo
2015年に配信を開始したラスター形式のグラフィックソフトウェア。
同様のソフトとして、Adobe PhotoshopやGIMPが上げられる。
いわゆる、写真を編集加工したりするソフトウェア。大体の人が思っている、また探しているソフトウェアはコレだろう。
業界標準の機能は基本的に搭載済み。慣れれば他のグラフィックソフトウェアと遜色無いモノが作れる。
Affinity Publisher
2019年に配信を開始したパブリッシングソフトウェア。
同様のソフトとして、AdobeInDesign、AdobeFreamMakerなどが上げられる。
(パブリッシング:編集に対し割り付けを行うソフトウェア。デスクトップパブリッシングソフトウェア、DTP)
MicrosoftOfficeWordなどでチラシのデザインをやったりする人もごく少数いると思うが、それ専用のソフトウェア。縦書きなどの日本独自とも言える機能の数々はサポートされていない。
iPad版は2022年11月9日に、V2とともに配信が開始された。
Affinity by Canva
2025年10月31日に配信を開始をしたソフト。バージョンナンバーが3.0.0で、これが事実上のV3。
2024年にCanvaに買収されてからAffinityが初めて見せた大きな動きが、まさかの無料化。しかもDesigner、Photo、Publisherが、すべてまとまって一つのソフトして新生。これだけで画像系のもののほとんどを賄えることになってしまった
「無料化、ということはこれは機能制限版か?」と思う人もいるだろうが、なんと!減った機能は一切無し!むしろ増えた!どういうことなの……。
じゃあどこで収益をあげるのかというと、月額のサブスクリプションが任意で乗っかることに。創作系ソフトで色んな意味で話題にあがるAI機能の『Canva AI』が主なもの。これはCanvaのサブスクなので、契約済みなアカウントがあればAffinityでもそのまま扱えるようになる。
2.6で実装されていた機械学習による機能はAIに関係ないからか、サブスク関係なしに引き続き利用可能。
これも正式名称なのだろうが、上記の名称の他にソフトをダウンロードするところにいくと、このソフトのこと『Affinity Studio』と書いてあったりする。ちょっと詳しい人はこの名称で呼んだりもしている。
まあ、このソフトはとりあえず『V3』『Affinity by Canva』『Affinity Studio』のどれかとかで呼んであげよう。
Affinityのつよみ
スタジオ(~V2:ペルソナ)
プロ仕様のこういったソフトウェアは「一つの画面からすべての機能にアクセスできます」という構造になっているのが一般的。
慣れてしまえば便利ではある構造なのだが、初心者からすれば機能という濁流が波となって襲いかかるわけで……
一方でAffinityは、それら機能を区分するために
と言った具合に、各機能に明確なテーマをつけ「スタジオ」として分けられている。お触りしてみればわかるが、いわばAffinityの「仮想デスクトップ」機能だ。
Affinityに搭載されている機能を「スタジオ」として役割別にすることで、1画面に擬似的なマルチスクリーン環境のワークスペースを構築できるのだ。
上部メニューバー(コンテキストメニュー)のみにある機能は、スタジオとして分ける必要がない機能たちでとっても重要なものだというのも単純でわかりやすい。
初心者にとっては『情報過多による混乱をちょっと調べれば理解できる画面』であり、デスクトップ版では『扱いたい機能において、自分にとって必要なインターフェイスだけを表示させる』という上級者な使い方もできる。
V3からは好きにツールバーをいじって、自分だけのスタジオを作ることができるようになったのも特筆すべき点だ。
どうしても画面が小さかったりで情報が制限されてしまうタブレットにおいては特に有用。
iOS版は右下に機能名を表示してくれる?マークもあり、いちいちこれはなんなのかと調べる必要が無いのも追記しておこう。
V2までは「ペルソナ」という名称だった。ツールバーの編集、追加ができない。
Affinity間の“バツグン”の互換性
Affinityには、ちょっとしたトンデモからくりがある。それは、全てのAffinityが同じエンジンで動いていることだ。
知らない人からすれば「どういうこと?」と思うかもしれない。すんごく簡単に説明すると「見た目同じ、中身同じ」だ。
グラフィックソフトとして代表的なPhotoshopとIllustratorを例にしよう。
ここは各自調べてもらうしかないのだが、Photoshopとillustratorの見た目は似通っている。しかし、そのソフトを動かしているエンジンは全く違う。両方がそのソフト用に開発されている別のエンジンなのだ。「見た目同じ、中身違う」だ。
これがAdobeに限らず、ソフトウェアにゲームに車に機械にもろもろ「見た目同じ、中身違う」が当てはまる。それ用に作っているから、他に使うことを考えなくて済むという利点がある。これが普通だ。
なのに、Affinityは同じエンジンで動いている。それによって起こされる凄まじいことがある。
StudioLink
簡潔に説明すれば、「PublisherでDesignerとPhotoの機能が、そのふたつが動いてなくても使えるようになるよ」というものだ。
DesignerとPhotoがインストールされていなければ使うことができないが、そのふたつがペルソナとしてPublisher内で扱えるようになる。
『ロゴをちょっと変えたいからDesignerを開く』『画像の明るさを変えたいからPhotoを開く』
というごく普通のことが、
『ここ変えたいからペルソナ(スタジオ)を切り替えて編集しよう』
と、そのソフトを開かずともPublisher内で完結させられてしまうようになる。
Publisherのみでベクターデザインとラスターデザインの十二分な編集機能を備えてしまうのだ。
もっと恩恵を
同じエンジンということによる恩恵はもうちょっとある。
Photoで保存した作業データをDesignerに放り込むと、レイヤーやら効果やら全部保持して読み込めてしまう。そのソフトでしか付け加えられない調整用だったりのレイヤーやオブジェクトもいじれる。
その作業データも、作業したソフトを拡張子で区別しているだけ。データの作りとしての中身はいっしょ。同じエンジンという威力は、なにげにすごいのだ。
Affinity by Canvaはこれらがさらに進化して統合を果たしたのだろう……。
非破壊編集
Affinityの画像に何かしら変化を加えるような効果は、非破壊編集が前提として作られている。
思いっきり画像を変形させたり、彩度光度明暗etcを調整したり、ちょっと影をつけてみたり。それらが非破壊編集として元データを維持したままでイジイジできてしまう。
それらの効果が“調整レイヤー”となるので、テキトーに効果を適応したところで、中身をとりだしてレイヤーを削除すれば元どおり。とってもお手軽に管理できる。
他のソフトと比べるとどうなの?
『グラフィックソフトウェア』という時点で、特にコンピューターグラフィックスソフトウェア最大手Adobe社製ソフトなどと比較対象にされてしまうのは、どうしても避けられない部分である。
実際の評価は?
グラフィックソフトウェアとして、脱Adobe筆頭ソフトとして代表されているぐらいにかなりの注目を集めている。
特筆すべきなのは、やはりソフトウェア自体が買い切り、Affinity by Canva(V3)からは無料である点だ。
無料となってしまったことで『テキトーにおすすめして、テキトーにインストールしてお触りする』なんてことが楽にできるようになってしまった。
仕事としてPhotoshopやillustratorを使うならまだいいとして、個人利用目的としては月額のサブスプリクションがかなりの負担となる。『趣味で扱ってみたい』という人達に安価で触ることのできるソフトウェアというのは、それだけでかなりの利点となる。
「PhotoshopやIllustratorのようなソフトが欲しいけど月額なのが……」と思っている人がいるのなら、それらに付随するファイルの互換性もある程度あるので、個人用途としてかなりオススメできるソフトウェアだ。
肝心の機能面に関してだが、ほぼほぼ遜色ない。仕事用途として扱っても問題ないレベルの完成度を誇っている。一部はAdobeと比べて扱いやすい点もあり、こちらに完全移行したユーザーも存在する。
そして、デスクトップ版とiPad版の基本機能の差異はない。各機種間の互換性も完璧で、iPadで軽くラフスケッチして、デスクトップで本格的に仕上げるということもできてしまう。
Appleと仲のいい関係らしく、Metal、AppleSiliconへの対応が製品のローンチで行われたり、Macの製品紹介ページで使われていたりと、Appleからも製品のお供にどうですかと看板製品としておすすめされている。伊達に数々の賞を受賞していない。
それでも迷う人に
Affinityは、Adobeと比べたらSerif自体が従業員100人以下の小規模な会社によるソフトウェアであることは否めない。しかし、ソフトウェア自体の品質はとても高い。日本語のサポートはある程度対応し、ソフトウェア内に各機能のヘルプ、ウェブサイト上でチュートリアルの動画も完備している。
対するAdobeは、買い切りであるAffinityと違ってサブスプリクション形態ではあるのだが、サブスクならではの機能を多々提供している。フォントの提供だったり、クラウドストレージだったり、画像だったりだ。一線級の仕事をしているからこそ、やはりAdobeのサービスが最良というのも当然のこと。
仕事として大規模なチームに携わっていて、ほか全てのメンバーがAdobeを使っているのなら、Affinityを持ち出す必要はない。むしろAdobeソフトを放り出すことで他の人の業務までをも停滞させる危険性まである。絶対にやめよう。
Adobeソフトと比較して、この機能が存在していないというのもある。しかし、普通に扱う分には困ることはない程度には機能が盛りだくさんだ。もしかしたらアップデートで追加されるかもしれないので、その場合は大型アップデートが来るまで気長に待とう。
もし購入しようとする場合は、所持または使用する端末が対応しているかどうかの確認を忘れずに。特にiOS版に関してはiPad専用として出しているため、iPhoneでは使用することができないことに注意が必要だ。
どんなことができないの?
日本語を扱う日本人として、Affinityを扱う以上最低でもこれだけは理解してもらわないといけない。
日本語組版には非対応だ。
つまり「縦書き」「句読点やらの調整」もろもろ、そのすべてが非対応だ。
公式も要望があることはわかっているらしく、日本のインタビューのときに話題に上がったことでもあった。どうしても開発の優先度が低いのだろう。テキストエンジンを新たに作るのが必要なのだとか。データで見ると、日本ユーザーはiPadのみで完結させている人が多いとも語っていた。
英語に関しては問題ない。イギリスの会社なのだからそりゃそうなのだが。
(そもそも日本語組版への対応はかなり大変なのだとか。InDesignに至っては「いちから作り直した」と公言されているほど。日本ユーザーが増えたら市場が大きくなって対応される可能性わんちゃん……と、ユーザー間で話題にしたりする。ここ
でも見ればいやでも理解するかも)
PSDの互換性はほぼ大丈夫。AIの互換性はまあまあ。過信しないように。
編集データに関しては、上位互換があって下位互換がない。V2のデータをV3で閲覧・編集・保存もろもろできるが、V3のデータをV2で開くことはできない。注意してほしい。
写真をRAWデータを管理して一括現像できるような機能、つまりはAdobeLightroomのようなことはできない。というかそういうソフトじゃないので、そこは諦めて別のソフトを使ってほしい。
販売形態
現在は、WindowsStore、macOS AppStore、iOS AppStore(iPadOS専用アプリ)、AffinityStore(ライセンスコード形式、各OS対応のインストーラー配布)で下記のソフトが配信されている。
- Affinity by Canva
(これがV3。Windows版、Mac版登場済み。iPad版は2026年初頭の予定だとか。無料) - Affinity V2 iPad版
(有料だったのが、なんと無料化。iPad版V3が出るまでのつなぎなのだと思われる)
AIを使う機能だけは端末だけで完結させられないサービスの側面があるからか、別途サブスクリプションとして用意されている。
新バージョンが登場すると、旧バージョン(V1、V2)の新規購入が不可能になる。
購入済みのアカウントを持っていれば、引き続きダウンロードと利用することが可能だ。
V2時に使用していたアカウント(Affinityアカウント)は、V3登場とともにCanvaアカウントと連携できるようになった。
アドオン
追加のブラシ、グラフィックを、〈アドオン〉という形で購入することができる。こちらも任意の買い切り。ほしいと思ったら別途購入しよう。
Photoshopのブラシアドオンだったり、スウォッチも対応している。
動作条件
少なくともこのスペックを満たしていれば、Affinityシリーズは全て動作する。デスクトップ版は、1280x768以上のディスプレイ解像度が必要になることにも留意しよう。
2010年代前半のオンボードPCでも普通に動くくらいには、凄まじく軽いのだ。
Affinity by CanvaからはCanvaアカウントへの登録が必須になった。これも動作条件かもしれない。
- Windows
- 64ビットWindows10、11搭載
RAM4GB必須、8GB以上推奨
Direct3Dレベル12.0対応カード
DirectX10互換のグラフィックカード - Surface Dual、Surface Pen対応
- Mac
- Intel 64ビット Core 2 Duo以上(2007年モデル以降)
Appleシリコン(Mシリーズ)搭載Mac対応
RAM4GB必須、8GB以上推奨
macOS Catalina 10.15以降 - 標準、Retina、拡張色域DCI-P3ディスプレイのサポート
- iPadOS
- iPad 2017年モデル以降のシリーズ(A9プロセッサ以降を搭載しているiPad)
iPad Air 2以降のシリーズ(A8Xプロセッサ以降を搭載している)
iPad Pro全シリーズ
iPad mini 5以降 - ApplePencil対応
関連リンク
関連項目
借りる時代は、もう終わり
ここからは、あなたのものだ
脚注
- *ちなみにAdobeの創業が1982年。そこまで離れていない。
- *プロ向けのクリエイティブソフト「Affinity」が解決した“無駄な往復”とは?開発元CEOに聞く「買い切り制」を採用する理由/https://realsound.jp/tech/2023/09/post-1446012_2.html
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