F89とは、漫画「機動戦士ガンダムF90FF」「機動戦士クロスボーン・ガンダムDUST」に登場するMSである。改造機であるアンカーについても記述する。
概要
サナリィ(S.N.R.I.:Strategic Naval Reseach Institute・海軍戦略研究所)がガンダムF90を作る前に開発した18m級MS。
小型MS計画「フォーミュラ計画」に本格的に着手する前に、18m級MSに自分たちの技術を集結させた、いわば大型MSの集大成とも呼べる機体。本機をダウンサイジングする事でF90を完成させた。本来のフォーミュラ計画からその存在は枠外の位置にあり、完成系がF90とされその前に開発されたとして社内コードF89が振られた。その為、F90完成後に割り振られた本来のF8ナンバーとは関係性を持たない。
試験用に2機が建造され、1機は角が直線状で機体色が赤、もう1機は角が曲線状で機体色が青となっていた。これは遠くからの視認でもそれぞれが判別出来るように施された仕様である。実験機ながらサイズ差による技術的な未成熟・搭載出来なかった機能等もあり、その性能は総合的に後継機であるF90を上回っている(F91には劣る)。また、フレームこそ新造だがそのサイズ故に、消耗パーツはアナハイムや連邦で広く流通されている物を転用可能で、整備性が非常に高いのが特徴。
F90の目玉であるミッションパック構想もこの段階で予定されていたか、F89にも高機動型パック・遠距離射撃型パック等が試験的に用意されており、付け替えるだけで用途に分けた運用を可能としている。
フレームに刻まれた数字からUC.0110頃に完成したとされており、F90がロールアウトしたUC.0112に於いてもテスト機として運用されている。UC.0115には「ファステスト・フォーミュラ」と呼ばれる部隊で実戦投入。F90と共に戦い抜き、部隊で唯一の18m級であった為かそのサイズ差から「巨大な後見人」と呼ばれた。
その後2機とも、パーツは失われながらもフレームは現存していたらしく、片方はミキシングビルドと呼ばれる技法によってとある大富豪の所有する改造機となり、もう一方は長い時を経て10機分程用意されていた予備パーツから再び組み立てられ、UC.0169にて再稼働した。
またF90FFでは作中人物のセリフで第5世代MSと示唆する物があるが、その条件であるミノフスキーフライト(クラフト)の搭載が設定面で一切触れられておらず詳細は不明である。
武装
- ビームライフル
ジェガンR型と同型のライフル。また初期のテスト時代にはジェムズガンの物を使用していたらしい。前者は「F90FF」で、後者は「DUST」に登場。 - ビームサーベル
高機動パックに取り付けられたオーソドックスなビームサーベル。「F90FF」時代には普通に使用されているが、「DUST」時代では消費電力の問題もありほぼ使用されない。 - シールド
グスタフ・カールのシールドアームを手持ちにした物。「F90FF」に登場。「DUST」時代にはF89・カスタムが装備したとある機体のシールドを改造した物が存在する。 - アックス・ライフル
実体の斧とライフルが合体した複合兵器。「DUST」で標準装備している物で、後に開発者フランク・オズが私的に開発し装備させた物の可能性が高い。 - ビーム・キャノン
遠距離射撃型パックに装備された試験装備。後のヴェスバーを彷彿とさせる配置になっているが、まだ未完成で3発撃つと機体ごと停止する欠陥を持つ。本装備をベースにF90L装備・O装備・V装備に繋がったと思われる。後に下記のアンカーも同じ接続部を持っていた為使用した。
アンカー
F89開発時に新人であり、後にF97クロスボーンガンダムを開発したフランク・オズは、本機体に愛着を持ち、宇宙戦国時代に独自にフレームやパーツを集めていた。その後発電王アンクル・キングの発注で一機を改造。ミキシングビルドと呼ばれる、様々なMSやMWのパーツを用いた改造が施された。それがアンカーである。
全身は赤色に塗装され、特徴的な曲線アンテナは縦方向に顎と繋がるように固定されており、一見ガンダム顔のようには見えない見た目をしている。胸のラインや背中のプロペラント等、所々にF89の名残が散見される。
全身に施された武装の数々は、作業用のパーツ等安価な物で補えるようになっており、その整備性はMS生産力が低下した宇宙戦国時代においても良好である。またF97系が得意としていたフェイス解放による放熱機能を所持している。
全天周囲モニターやビーム機能等、本来F89から備わっていた高価な仕様は封印されながらも多数残されており、いざという時はそれらを使用可能にする。電力や物資の問題さえ解決すればフランク・オズが謳った18m級MS最強の名に恥じぬ性能を持つ。
アンクル・キングの息子アッシュ・キングにより運用され、数多の改造を施しながらも宇宙戦国時代UC.0169を駆け抜けた。
武装
- アックス・ガン
アックス・ライフルより小ぶりの実体斧・実銃兼用の複合武装。ビームサーベルの機能を内蔵しており、起動させると無類の威力を発揮するも時間制限がある。後にF89・カスタムが装備。 - ヒート・カッター
頭部排熱時に回転するアンテナを使った武装。排熱固定時には通常のガンダムと同じくV字になる。 - ケーブル
右腕部に装備されたフック付きワイヤー。F97のシザー・アンカーと似たような、トリッキーな運用を可能としている。 - パイルバンカ―
足裏に装備される炸薬式打突杭。F97のヒートダガーと違い攻撃専用の機構を取り入れている。 - ヒート・セラミック弾
右胸部に装備されている排熱機構で熱された貫通弾。「焼け火箸」と称される。2発しかない物の強力な攻撃を与えられる。 - 回転シールド
腕部に装備している実体シールド。攻撃を防ぐのに使用したり、閉じて回転ドリルとして使ったり、撃ち飛ばして不意を突いたり様々な用途に用いられる。削岩機のパーツを流用した物で補充が容易。 - イカリマル
リュグージョで手に入れた大型兵器。
元々はムーン・ムーンの民がサイコガンダムを改造した機体ムラサメが使用する予定だったビームサーベルで、その刃渡りは30mにも及ぶ。アンカーが使用するに当たっては表面をなぞる程度のビームしか形成出来ないがそれでも強力。また節約でヒートサーベルとしても使用できる。
サイコミュによる遠隔操作も可能とする予定だったためか、推進器が取り付けられており、アンカーの高速移動手段にも用いられる。
バリエーション
- アンカーV2
連邦軍キュプロークスの協力の元フォント・ボー、フランク・オズにより戦闘用に更に強化されたアンカー。最大の特徴としてイカリマルを背中に取り付け、普段武器として使わない時もスラスターとしての機能が使用可能となった。これを「アウトレンジモード」と呼び、武器としてイカリマルを使用する際は「インファイトモード」と呼ばれる。
脚部を中心に大幅な改造がされ、キャタピラによる地上の高速移動が可能となった反面、パイルバンカ―が使用不可となった。 - アンカーV3
フォントからもたらされたミノフスキードライブの技術を組み込んだアンカー。ミノフスキードライブ推進システム「V3スラスター」を装備した事により、同時代のミノフスキードライブ装備機と互角に渡り合える機動性を獲得した。
武器として対MA用兵装「モビーディック・バスター」を装備し、更にジェネレーターの改善によりイカリマルの大型ビームサーベルを運用可能としている。アンカー系列で最高の性能を誇る。 - アンカーV4
上記のV3で、ミノフスキードライブ機「バロック」を更に超える為に、専用のスラスター「DUSTスラスター」に換装した最後のアンカー(開発自体はV3の保険用として同時期に行われている)。
推進部に爆発物を摘め炸裂させ、その衝撃で文字通り爆発的な加速力を手に入れ、一瞬だがミノフスキードライブの戦闘スピードを上回る事が可能となった。その加速力は人間が耐えられる8Gを有に超えており、機体もろとも搭乗者の体をバラバラにしかねない特攻装備。
装備は両手に回転シールドを装備して、胸部ヒート・セラミック弾を取り除き脱出用のパラシュートを搭載していたという。
そのスラスターは奇しくもF97と同じ「クロスボーン」の形状をしていた。後の研究者が本機のシルエットから「クロスボーン・ガンダムDUST」と呼ぶ事もあったらしいが定かではない。
余談
デザイナーは大河原邦男。アンカーは漫画家の長谷川裕一が独自に描いた。
先にアンカーのデザインがあり、それを逆算する形でF89が描かれている。その為、各部パーツにはそれっぽい要素が散りばめられている。
頭部の錨のような曲線アンテナだが「アンカー用にデザインしたとは言え、元のガンダムにまで似た形のアンテナがあるのはマズいかな?」と思い長谷川氏は意見はしたようだが、大河原氏がこのアンテナをとても気に入ったためそのまま採用された。(大河原氏の描くロボはガンダムでは滅多に無いが、スーパーロボットでは似たアンテナを多数描いた事がある)
その為、設定上は直線の物があると後付けされた。
また、先にクロスボーンシリーズに登場し、後でF90の漫画に登場するという誌面上のコラボレーションが発生。実はクロスボーンシリーズは、作品内でオリジナルMSの系譜が完結する事が多く、時代を超えて他者の作家が描く事はほぼ無かった為大変珍しい機体となった。「DUST」ではオリジナルのF89はサブキャラに近い活躍しかしてないが、「F90FF」ではメインに等しいポジションを獲得しているのも珍しい。また、大河原氏の設定画も「F90FF」の方に記載されており、「DUST」には長谷川氏の設定画が記載されている。その代わり、「DUST」には長谷川氏が本機に関して細かく設定した文章が記載されており、長谷川・大河原両名のコラボインタビューも同時に記載されている。
関連項目
- 機動戦士ガンダムF90
- 機動戦士クロスボーン・ガンダム
- F90…後継機
- F91…F9シリーズの完成機
- F97(クロスボーンガンダム)…同設計者が携わった次世代機
- F99(レコードブレイカー)…後にミノフスキードライブ技術を先祖返りして搭載した末機
- ファントムガンダム…アンカーとは遠い親戚のような関係
- ガンダムAN-01…サナリィがF89着手前にガンダムNT-1を解析し改造を施したMS。
- 海賊
- 4
- 0pt