RGM-89 ジェガンとは、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」などの宇宙世紀ガンダムシリーズに登場するモビルスーツ(MS)である。
概要
逆シャア以降におけるジム役のMS。設計開発・製造はアナハイム・エレクトロニクス社(以下AE)。
それまで連邦系の量産機であったGM(ジム)系列と、連邦主流派に合流したエゥーゴの量産機ネモ、ネロの長所をミックスして開発された。
一方でティターンズ系MSの設計も反映されているようで、下半身はバーザムやガンダムTR-6といったTR計画ライン、バックパックや武装にはガンダムMk-Ⅱからの影響が見られる。カラーリングはそれまでのジム系とは異なり緑系である。
それまで連邦軍は「GMは外注しないで自分とこで生産するんだい」とこだわっていた上に、GMを改装してジムⅡにして、そのジムⅡをさらに改装してジムⅢに、と言う、非常に涙ぐましいケチな予算のやりくりをしていた(パーツ交換・改装で済ませた機体と、新設計で生産した機体が混ざっているという設定)。
一応それまでのAE製の連邦軍量産機としては、ティターンズに供与されたマラサイ等があったが、ジェガンはジム系の量産機としては初めて近代化改修から脱却し、完全新規に設計された上で連邦に供給された機体となったのである。
このジェガンがロールアウトした宇宙世紀0089という年代は、一年戦争から丁度10年の歳月が流れた時代、即ちGMそのものの歴史でもあった。故にMS開発のノウハウもまた豊富な年代であったとも言える。様々な機体の運用データを結集して作られたジェガンはオーソドックスかつ信頼性の高い傑作機となった。
こうした事に加え、第二次ネオジオン抗争後の軍縮などの動きもあり、採用から30年以上経った「機動戦士ガンダムF91」の宇宙世紀0123においても近代化改修型が現役である(GM系列がⅡ⇒Ⅲと現役だった頃すら10年)など、宇宙世紀の中でも記録的な長寿MSである。
基本設計が優秀であるため、重装型のスタークジェガンや偵察用のSTガンなど様々なバリエーションが存在する。またジェガンを再設計し発展させた上位機種として特殊部隊用のジェスタ、治安部隊用のグスタフ・カール、更に第2期MS(小型MS)用にスケールダウンしたヘビーガンが存在する。
性能
武装はオーソドックスにビームライフル、ビームサーベル、頭部バルカンの他、シールド内蔵式のミサイル、ハンドグレネード等を装備している。ビームライフルは銃身が短めで取り回しが良い。これは基本的に小隊(2~3機単位)での戦闘が前提であり、大火力や大型の装備によるフレンドリーファイアを避ける思想がある(後の派生機では長砲身のビームライフルを用いたり、特殊な装備で固めた機体も存在する)
機体の基本設計はGMⅢ同様ガンダムMk-IIを参考にしたもの。頭部バルカンもガンダムMk-II同様バルカンポッド方式になっている。
装甲は高級なガンダリウム系ではなく量産機の定番「チタン合金セラミック複合材」だが、技術が発展した為一年戦争のガンダリウムα(=ルナ・チタニウム合金=ファーストガンダム)並かそれ以上に"材質としては"堅牢であるとされる。実際は機体を軽量化したせいで「装甲が貧弱」と指摘される事もあったとか。
機体の軽量化に加え、ガンダムMk-II由来の技術であるバックパックのスラスター、バーニアスラスター等のおかげで量産機としては非常に運動性が高い。
頭部メインカメラはGM系のバイザー式だが、ツリ目のような独特なひし形のデザインで、顎部に集合センサーとしてガンダムと同じ赤いオプチカルシーカー(口っぽい出っ張り)が付いている等、結構なイケメンである。また上記の画像を見てもらえば解るが、バイザーの下にあるメインカメラはGM系統のツインアイではなく、モノアイ式である。これはAE社がジオンのグラナダ工廠を始めとしたジオン系企業を吸収していたため、ノウハウが豊富かつ低コストで製造できるモノアイ方式を採用したためと思われる。
操縦系も一新され、それまでの連邦製MSの操縦桿が上から握りこむレバー方式だったのに対し、ジェガンのコクピットでは「アームレイカー」方式の"指をはめる"タイプの操縦桿を採用。運用性の更なる向上・多機能化を図った。しかし戦闘中衝撃で手が離れやすいなど現場からの不満もあったようで、宇宙世紀0096以降におけるジェガン(D型)はスティック式のシンプルな操縦桿に再び戻っている。
活躍
宇宙世紀での活躍
宇宙世紀0093が舞台の機動戦士ガンダム 逆襲のシャア劇中では、優先的にロンド・ベル隊に配置され、ケーラ・スゥが搭乗しネオ・ジオン軍のギラ・ドーガと激しい戦闘を繰り広げた。ハサウェイ・ノア搭乗時は、無断発進してクェスを救出しようとするもあえなく失敗。その内、α・アジールを撃墜した味方であるはずのリ・ガズィをビームライフルで撃墜し、ハサウェイはチェーン・アギを殺害してしまうが、連邦軍はそれに気付いていない。
終盤、複数のジェガンとジムIIIがアムロのνガンダムや、ネオ・ジオンのギラ・ドーガなどとともにアクシズに取り付き、共にアクシズをMSで押すという行動に出るも、自身とシャア以外の犠牲を嫌ったアムロのνガンダムが発生させたサイコフレームの共振で発生した光によりアクシズから弾き飛ばされた。ハサウェイの搭乗機は戦闘終了後に連邦軍へ収容された(その内、ハサウェイはクェスの死とチェーンの殺害によるショックで立ち直れない状態となっていた〔漫画「機動戦士ガンダムUC 虹に乗れなかった男」のブライト・ノアの回想シーンにて〕)。
また、小説版の機動戦士ガンダム外伝」おいては、主人公のユウ・カジマ(当時大佐)が搭乗してアクシズ阻止に参加しており、逆襲のシャア劇中でギラ・ドーガに手を差し伸べたジェガンに搭乗していたという描写がされている。後のコミック作品ではギラ・ドーガに手を差し伸べる場面はカットされているが、ユウがジェガンに搭乗して戦闘し、アクシズに取り付く場面が描かれている。
その後、機動戦士ガンダムF90・機動戦士ガンダムF91の舞台である宇宙世紀120年以降も現役だった。この頃も何とか近代化改修でやり繰りしてきたようだったが、この頃既に30年以上稼働し続けていた旧式の機体であった為、クロスボーン・バンガードの次世代型MS(第2期/小型MS)が登場すると全く歯が立たなかった。
近年ではジェガンの全盛期といえる時代を描いた機動戦士ガンダムUCではロンド・ベル並びに連邦軍の中核として運用されており、一部の機体には特殊装備などの採用で戦闘力が向上している等、ジェガンの活躍を目にする場面が増加している。
宇宙世紀外での活躍
2013年秋から放送されたガンダムビルドファイターズでは11月25日放送の第8話にて登場、謎の少女アイラの操縦によってなんと地上波デビューにしてデビルガンダムを倒す大金星!
これにはジェガンファンも大歓喜。ガンプラなのでDG三大理論はないだろうがそれでも鮮烈な光景で視聴者の度肝を抜いたのであった。
各系列機
生産されて実に数十年という長いスパンがあるため、多数のバリエーションがある。本項では映像作品に登場した機体を中心に時系列順に紹介する。
- RGM-89
- 初登場のジェガン。後述の派生機登場後はA型とも。上記にもある通り宇宙世紀0093当時はロールアウトから3年ほど経過しているものの第一次ネオジオン抗争以降戦乱が無かった為事実上の最新鋭機であり、ロンド・ベル隊以外にはまだ殆ど配備されていなかった。主要な搭乗者としてケーラ・スゥ、ハサウェイ・ノア、その他ロンド・ベル兵。
- また劇中では搭乗してないが、アムロ・レイもリ・ガズィ受領前のコロニー調査の際は同機に搭乗していたとされる。
- RGM-89B
- 漫画「ダブルフェイク アンダー・ザ・ガンダム」に登場。ジェガン改。
巡洋艦アラハスに配備されていた機体で百式の技術を流用して再設計された機体。ジェネレータ出力が高く装甲材にガンダリウム合金が用いられるなど強化されている部分もあるが、全天周囲モニターやリニアシートを搭載していないなど当時のモビルスーツとしては特異な部分も見られ、ジェガンのフレームを転用した別機体と云える。 - RGM-89D
- 「機動戦士ガンダムUC」ep1より登場。便宜上「D型ジェガン」とも。
基本的スペックにはほとんど変化は無いが、後述のスタークジェガンに換装するための各部装甲の変更、操縦系統が「アームレイカー」からスティック式への移行、FCS周りの相違など、実質的なマイナーチェンジ機と言える。またリゼルのビームライフル等の他機種の装備も使用している。 - RGM-89S スタークジェガン
- 冒頭の画像がこの機体。D型ジェガンに増加装甲・追加装備を施した特務仕様。
推力強化や追加装備の扱いに熟練を要するため、小隊長やエースパイロット向けに優先配備されている。『ガンダムUC』ep1の対クシャトリヤ戦は白眉。 - RGM-89S プロト・スタークジェガン
- 「ガンダムUC」ep3にて登場。名前の通り、上記のスタークジェガンのプロトタイプであり、運用試験機。ガンダムUC以前の初出媒体「CCAMSV」で設定された機体で元デザインは明貴美加。初期型ジェガンがベースになっていて上記スタークと比較して明るいカラーリングと大型の対艦ミサイルが特徴。火器管制が複雑なため副座式。
- RGM-89De
- 「ガンダムUC」ep3にて登場。連邦軍特殊作戦群「エコーズ」専用に配備されているD型ジェガン。D型ジェガンをベースに装甲の追加やセンサー系統の強化がされている。マッドブラウンのスタイルが緑系統のジェガンシリーズとしては異色の姿で特殊部隊然としている。
- RGM-96X ジェスタ
- 「ガンダムUC」ep4より登場。ジェガンの上位機種であり、「UC計画」におけるユニコーンガンダムの護衛・直掩機として開発された。
- 細身のジェガンと比較して全身に装甲が施されたマッシブな体型で米軍のコマンド兵士を彷彿とさせる。評価試験のためロンド・ベル隊旗艦ラー・カイラムに12機配備され、うち3機のパイロット ナイジェル・ギャレット、ダリル・マッギネス、ワッツ・ステップニーが優秀で「トライスター(三連星)」と称される。続編の「NT」(ナラティブ)にも『不死鳥狩り』ことユニコーンガンダム3号機フェネクスの捕獲作戦に特殊部隊シェザール隊仕様として6機が登場。様々なオプションを装備している。
- RGM-96X ジェスタ・キャノン
- ジェスタの火力強化仕様。追加されたキャノンユニットと増加装甲でより重厚になっている。
- RGM-89DEW EWACジェガン
- 「ガンダムUC」ep6より登場。換装により様々な運用が可能なジェガンD型を偵察に特化させセンサー性能を向上した機体。センサーユニットを搭載した巨大な頭部が特徴。
- RGM-89A2
- 「ガンダムUC」ep6より登場。連邦宇宙軍戦艦ゼネラル・レビルに配備されている。初期型ジェガンをベースに推力強化や装備の更新を行っており後述のR型のベースになっていると思われる。
- RGM-89D-ESC
- 「ガンダムNT」で登場。D型をベースに増加装甲を装着、非誘導やビーム兵器を排した要人警護用の装備を選択している。
- FD-03 グスタフ・カール
- 「ガンダムUC」ep7及び「NT」、「閃光のハサウェイ」に登場。ジェスタとは別ラインでアナハイム社が開発した汎用量産型MSで、ジェガンの再設計機。
- 元々は小説版「閃光のハサウェイ」に登場した機体で、マフティー動乱でのキルケー部隊が運用している。小説版のデザインではV字アンテナのついたスリムなジェガンといった容姿だったが、「SDガンダムGジェネレーションF」にて重MSのようなデザインになり、「UC」「NT」及びアニメ版「閃光のハサウェイ」でもこちらを採用している。
- RGM-89(バーナム所属機)
- 「機動戦士ガンダムTwilight AXIS」に登場。劇中組織「バーナムの森」が運用するジェガンで、上記のジェガン群が戦後管理が杜撰になったのを裏取引で入手したバーナムの上位組織が修復・改修した機体。機体色が薄い紫を基調にしており、更にゴーグルに追加された特殊センサーが特徴的。武装も大型ビームを発振出来るマシンガン装備のランサーを装備。
- STガン
- コミック版「機動戦士ガンダムF90」に登場。ジェガンのEWCS機であり、上記のEWACジェガンの発展型と思われる(登場はこちらが早いが)ガンダムF90の性能テストのモニタリングを担当していたが、F90二号機の強奪により、急遽戦闘配備される。
- RGM-89J
- 「機動戦士ガンダムF91」に登場。D型と比較して出力・推力共に強化されているが、既に時代遅れになっており、劇中ではクロスボーン・バンガードの小型MSに全く歯が立たなくなっている。
- なお、「F91」の1年前であるSFC「フォーミュラー戦記0122」では、ベルフ・スクレットの最初の搭乗機として活躍していたが、ジオン残党組織オールズモビルとの戦闘で損傷してしまっている。
- RGM-89R
- 「ガンダムF91」に登場。コロニー内戦闘を主眼にした近接戦闘主体の高機動型。前述のA2ジェガンのアップグレード版と思われ推力は同時代のMSでもトップクラスであるが、やはり小型MSには分が悪く良い扱いではない。
- RGM-89M
- 「ガンダムF91」に登場。J型にミサイルランチャー・ビームサーベルを追加したスタークジェガンの思想を引き継いだ機体。
- RGM-109 ヘビーガン
- 「ガンダムF91」に登場するジェガンの後継機。ジェガンをほぼそのままスケールダウンした機体で、シールドのミサイルが廃されたのと頭部バルカンが再び内臓2門式になった以外ほぼジェガンと同じ設計である。
- 詳しくは当該項目を参照。
- ジェガンブラストマスター
- 「ガンダムビルドダイバーズ」に登場するHGUCジェガンの改造ガンプラ。制作者はヒダカ・ユキオ(ユッキー)。
- ジェガンの名は冠しているものの、その装備はZZガンダムのハイメガ・キャノンにストライクフリーダムのカリドゥス複相ビーム砲、ガンダムAGE-3のシグマシスキャノン、極めつけはガンダムダブルエックスのツインサテライトキャノンという超重火力の塊である。それ故にコントロールが極めて難しい。
関連動画
関連商品
関連静画
関連項目
- 11
- 0pt