オリバー・ハザード・ペリー級フリゲートとは、アメリカ海軍などが運用しているフリゲート(軍艦)である。
1975年から1988年にかけて51隻が建造され2015年にアメリカ海軍での運用を終了したが、18隻がアメリカの同盟国に輸出・供与される形で現役についており、更に海外でライセンス生産された17隻が活躍している。
ちなみに51隻という建造数はアーレイ・バーク級に次ぐ第2次世界大戦後にアメリカが建造した軍艦クラスの第2位となる。
本級の大まかな特徴として以下の3点を挙げる。詳細は後述。
このような特徴になったのは本級が第2次世界大戦中から建造されてきた船団護衛=対潜水艦用の『護衛駆逐艦』の延長線上で建造されたこと以上に建造と運用にあたって低コストを位置づけられた事が大きい。
米艦船は基本的に艦橋とヘリ格納庫を前後で独立させているが本級では居住性も考慮して各種スペースを多めにとれるよう上部構造物を一纏めにしている。
更に後述するミサイル発射機を波浪から防護するため艦首を高くしている=ブルワークにしている。また、メインエンジン(ガスタービン×2+1軸推進)とは別にアジマススラスター(補助推進ポッド)×2を装備する。
なお、当初は全長135mだが艦載ヘリ変更[1]のため138mに延長されたタイプになっている艦も存在する。
本級で最も重視されていたのが対空兵装である。それまでの米軍フリゲートは対潜戦を重視して対潜兵器(対潜ロケット、アスロック、無人機を含む対潜ヘリ)を備えていたが対空兵装は艦載砲程度で本級の前にあるノックス級フリゲートでようやくシースパロー(射程26㎞)を搭載したが自艦はともかく護衛対象(友軍艦船、民間船)をカバーできないため本級ではSM-1(スタンダードミサイルの初代、射程40㎞)を搭載したことから正式には対空ミサイルフリゲートに分類されている。ただしコスト削減のため3次元レーダー[2]は装備していない。
このSM-1は艦首のMk.13単装発射機で運用されるがこの発射機はハープーン対艦ミサイルも発射できる。
その一方、近接防衛を担う一端である76㎜砲(イタリア製3インチ砲のライセンス版)がスペースの都合で上部構造物の屋根に配置されているのだがメインマストと煙突の間に挟まれる形で置かれているため射界が制限されている[3]。
なお、対潜水艦戦は艦載ヘリと短魚雷発射管の2段構えで対応する=アスロックは運用できない。
なお、冷戦終結後はテロリストや密輸船を相手にした海上警備に使われることが多くなったことやイージス艦の増備が進んだことでMk.13を撤去し[4]代わりに25㎜機関砲とM2機関銃を増備した。
本級の艦名はアメリカ海軍関係の人名を使用している。一例として『オリバー・ハザード・ペリー』は米英戦争で武勲を挙げた提督の名である。そして彼は黒船の『マシュー・ペリー』の兄である。
実は兄のほうがアメリカで知名度が高く『マシュー・ペリー』の名は2010年に就役したルイス・アンド・クラーク級補給艦9番艦まで採用されていなかった。
なお、後述する派生型の艦名の由来は以下の通り。
| サンタ・マリア級 | スペインにゆかりのある名前(地名、人名、船名) |
| アデレード級 | オーストラリアの地名 |
| 成功級 | 中国の武将名 |
1987年5月17日に起きたイラク軍戦闘機から発射された対艦ミサイルによって23番艦FFG-31『スターク』が37名の死者を出した事件である。当時はイラン・イラク戦争の真っ最中で双方ともに敵国のタンカーを攻撃していたのだがクウェートのタンカーが巻き添えを喰らっていてアメリカ軍が護衛・警戒をしている中で起きた事件であった。但し当時はアメリカはイラクを支援していてイラク軍が米軍を攻撃することは想定していなかった。尤もイラク軍機の接近は米軍も把握していて警告を発しているがイラク機が発射した2発のエグソゼ対艦ミサイルは『スターク』自身の艦防衛システムが働かないという不運もあり20秒の時間差をつけて艦橋直下に命中する。
幸運にも最初のミサイルは爆発しなかったもののミサイルそのものの推進剤により炎上が発生。その後、不運にも応急対策のため乗組員が最初のミサイル命中箇所へと集まろうとしていたところに第二弾が命中・爆発したため艦乗組員の1/5が死傷するという大ダメージを受ける。火災はCIC(戦闘指揮所)や弾薬庫にも届きかける勢いだったが乗組員の献身的な復旧作業・僚艦の支援のもと、20時間がかりのダメージコントロールの結果、沈没を免れた。
(フォークランド紛争時、英国海軍駆逐艦『シェフィールド』も同様にエグゾゼ対艦ミサイル1発の命中を受け、艦内発電が出来ず有効なダメージコントロールが行えないまま艦を喪失した事例もあったため、『スターク』乗組員の練度と艦のダメージコントロールが賞賛されることになる)
この事件を受けてアメリカ海軍ではペルシャ湾での交戦規定を改定したがこれが翌1988年7月に発生したイラン航空655便撃墜事件の一因になったと云われる。
1988年4月14日、イラン・イラク戦争に伴うタンカー護衛任務のためペルシャ湾に展開していたFFG-58『サミュエル・B・ロバーツ』(愛称サミー・B)は、船底直下に機雷接触。
5mの破孔が開き、機関室に火災と浸水、そしてガスタービンエンジン2機のマウントがはずれるという損害を受ける。なにより問題なのは船体船底直下ということもあり竜骨に損傷を受けたことだったが乗組員達は機雷原からの脱出のため補助推進ポッドを動かしつつ、慎重に5時間に渡ってダメージコントロールを続行。無事機雷原より脱出すると共に艦を回復。沈没を免れた。損傷を受けた船体機関部の修理に当たっては船体を輪切りにして交換ユニットごと入れ替えるという手法で修理され、湾岸戦争にも参加している。
1980年代から90年代初頭にかけて建造・就役したスペイン海軍のライセンス版。オリジナルより幅が広く(14.3m)、ヘリ格納庫上にスペイン製CIWS『メロカ』[5]を搭載している。5隻が就役中。
サンタ・マリア級フリゲートと同時期に整備されたオーストラリア海軍のライセンス版だが6隻中4隻はアメリカで建造された。また4隻はホバート級イージス艦就役までの繋ぎとして以下の改装を施された。
2019年をもってオーストラリア海軍においての運用を終了したが2隻がチリ海軍へ売却された。
中華民国国軍(台湾軍)のライセンス版。1990年代初頭から2000年代初頭にかけ8隻が配備。台湾海軍をとりまく諸事情を反映して以下の様になっている。
1と2の理由は米中関係のため本来装備するハープーンの供給が不安定な立場に置かれているので自前で開発した雄風2を使うことにしたが艦首発射機が対応しておらず別に装備したのだがトップヘビーになってしまった。
しかも2011年からは差し替える形で新型の『雄風3』(射程200㎞または300㎞とも)を4基装備している。
3の理由は中国の高速艇対策で装備したが76㎜砲の下に置く形で配備しているがこの40㎜砲は防盾付だが有人砲塔なので76㎜砲と同時に使えない=40㎜砲の給弾員[8]が上からの衝撃で死にかねないという欠陥を持つ。
4の理由は米中関係を考慮した米側の忖度である。
それでも総合的に見れば有力な艦であり、特に対空火力は基隆級駆逐艦=キッド級駆逐艦に次ぐ能力を有している。ちなみに台湾海軍は現在運用している済陽級フリゲート=ノックス級フリゲートの更新のため6隻のオリバー・ハザード・ペリー級をアメリカから購入する計画を進め、先立って2014年末に4隻を購入することが米台間で決定し、2018年に2隻が再就役した[9]。
そして中国から抗議された。尤も台湾にしてみれば欲しいのはイージス艦と潜水艦なのだが。
アメリカで運用を終了したオリバー・ハザード・ペリー級の内、トルコに売却された135mタイプ8隻の総称。
その内4隻は現代戦にもある程度対応できるよう『GENESIS』と称される以下の改修を施されている 。
掲示板
9 ななしのよっしん
2020/07/15(水) 00:40:14 ID: 7j7fYfcqZ7
何と言っても映画レッド・オクトーバーを追えでの活躍が好き
艦の中央付近に主砲があるなんて知らず、突然真ん中から煙を吹いて何だコレ?と思ったな
10 ななしのよっしん
2022/06/26(日) 10:52:43 ID: Pv+7iQhPih
台湾の公式pv
https://
11 ななしのよっしん
2023/03/02(木) 14:38:32 ID: ErM5NXyBc6
今更だし重箱の隅突くようでアレだけど、米海軍のフリゲートで最初にSAM装備したのはノックス級じゃなくてブルック級なんじゃ…
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最終更新:2025/12/10(水) 10:00
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