チェーンメール単語

チェーンメール

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チェーンメール(英:chain letter)とは、「他の人に知らせてください」「拡散シェア希望」等と書き添えて、受け取った人に対して同じ内容のものを他者に送るよう促す手紙メッセージである。

狭い意味では電子メールによるものや、それにSNSメッセージを加えたものをすが、ここでは最も広い意味である、媒体まで含めるものとして解説する。

曖昧さ回避

概要

以下の要素があれば「チェーンメール」と呼ばれることが多い。

  • 周りの人に知らせる、または同様の文章を複数人に送る旨の文が書かれている
  • 情報の出所(一次ソース)が不明である

かつては19902000年代電子メールで流行していた。

2010年代に入ると、電子メールのチェーンメールはあまり見られなくなったが、LINEなどのSNSで同様のものが流行するようになった。もはやメールではないが、写メ写メール)と同じように、メールではないものにもこの言葉を使うようになっている。

初期の内容は

  • 「○人に送らないと幸運や不幸が起こる」
  • 「○人に送らないと幽霊に襲われる」

といった都市伝説的で広める人数を限定したものが多かった。しかし、時代が下るにつれ、

など、具体的な文面を伴って不安や良心に訴え、人数を限定せず拡散を促す内容も増えつつある。

拡散との違い

いわゆる「拡散」はチェーンメールより広い概念で、Twitterリツイートなどを含む。

リツイートは、情報を出した人物のツイート引用して表示する機である。そのため、もしその内容がデマであれば途中で摘が入ることもある。

一方で電子メールLINEのチェーンメールの場合、にはなっていないうえに、最初の発信者が不明なため情報を遡って検証することが難しく、デマであるという摘が入りにくい。

チェーンメールを回してはいけない理由

「幸運が訪れるなどのポジティブなものや、確かな事実をもとにして他の人に危険を知らせるものであればチェーンメールを回してもよいのでは」と思う人もいるかもしれないが、チェーンメールは他の人に回されていくうちに、伝言ゲームのように徐々に文面が変化する傾向があり、もう不要になった情報であっても勝手に広まっていってしまう性質がある[1]。そのため、回されていくうちに最初の内容とは違う、不正確・誇された表現になってしまうこともある。

デマ混乱に加担しないよう、どのような内容であっても(仮に善意によるものであっても)、「拡散」「シェア「知らせて」という言葉を見た時点で、必ず情報の出所を公式ホームページアカウントなどを見て確認し、事実と判断できないならメッセージ拡散しないことが必要である。また、益的で確かな情報だと確認したうえで拡散する場合は、LINEではなくTwitterのような開かれた場所で、情報の出所へのリンクを付け投稿するなどして、他の人から見ても必ず出所が確認できるようにすることが重要である。

 

なお、「○人に回してください」という文面がメールに付いている場合、それを示通りに全員が実行すると、ねずみ算的にどんどんメールの数が増え、回線等に負荷がかかる危険があると摘されている[2]。ただしこれについては、スパムメールの方が回線への負荷が大きいし回線もそこまで貧弱ではない[3]、そもそも見た全員が実行するはずがない等の反論もある。

ただし、情報が必要以上に拡散されてしまうため、過去にはチェーンメールにより応援メッセージや関係ない人からの電話が殺到し、SNSメッセージ開をやめてしまった例もある[4]。チェーンメールの回線速度的な問題は現在は少ないものの、拡散する人が「情報がどこまで広まっているか」を把握できないため、情報氾濫を招きやすいという問題は残っている。

歴史

近代欧米での流行

チェーンメールのようなものは昔からある。18~19世紀ごろ、アメリカヨーロッパではから贈られたとされる「天使手紙(独:Himmelsbrief)」が存在していた。所持していると悪魔除けになるとされ、これを写した者も幸せになると書かれていた[5]。20世紀になるとこの内容が徐々に、「○人に送ると幸せになります」という「幸運の手紙」に変化していったと推測されている[6]

時代が下ると文面に「chain(連鎖)」という言葉が入り始める。これがchain letter(チェーンメール)のとなったと思われる。

大正~戦前の日本での流行

日本では大正時代の1922年、ならび1926年ごろに「幸運の手紙」が流行した[7]1926年手紙の文面は以下のようなものであった[8]

この幸運の手紙は、○○通として有名な○○○○○氏よりも送り越されしものにして、小生は幸運の連鎖を破らざらんが為之を下及び其他八名の友人回送いたし下も手紙を写して十四時間以内に九名の友人に御贈被下度幸運なる連鎖は、米国の一士官より発せられ、三度世界を周るべく連鎖を御破なき様願上一之を破らるる時は、悪運ち其身に到るべく

(筆者要約:あなたと8人の友達にこの幸運の手紙を送りました。これを写して14時間のうちに9人の友達に送ってください。もしこの幸運の連鎖を破ると不幸が訪れます。)

当時外で流行していた「幸運の手紙」が日本に輸入され、上層階級の間から広まったと推測されている[9]。このとき民本義で知られる吉野作造のもとにも手紙が届いており、「馬鹿馬鹿しい」と言いながらも「罪のない余」として面がり、他の人には送らないまま日記手紙を貼り付けている[10]

このときは警察が発信者に罰刑を課したため鎮静化した[11]が、その後も面下では「南大悲遍照金剛と二十一回唱へ、又葉書を受取つた後二十四時以内に…」と仏教の要素を取り入れたり、戦時中には「もう戦争はあきあきしました。(略)葉書を受取った方はの通り書いてあなたの知人二人にお出し下さい。平和の日がきます。」といったものまで現れ[12]、かなり多くのバリエーションが生まれていた。

戦後の紙媒体での流行

戦後になると、上記の「幸運」の部分を除いたような内容である「不幸の手紙」が子供たちの間で送られるようになり、1970年代になると新聞等でも取り上げられるようになる[13]。このころのブーム漫画等でも取り上げられることがあり、『ドラえもん』ではスネ夫が不幸の手紙を送る話[14]や、『ちびまる子ちゃん』では藤木くんが届いた不幸の手紙をクラスメイト拡散してしまう話がある[15]

1980年代になると、一般人が文書を短時間で作成し、大量印刷できる機器である「ワープロ」が登場した。それに伴い、「この地域に以下のナンバープレート当たり屋が多数出現するので、気を付けるとともに他の人にこの情報を広めてほしい」など、虚偽情報が載ったチラシも見られるようになった。このデマは「当たり屋グループ」と呼ばれ、インターネット時代でもチェーンメールとして出回っている[16]

「チェーンメール」へ

特にインターネットによる電子メールが登場して以降、複数人に拡散を促すメールが流行し、日本で「チェーンメール」と呼ばれるようになった。その後、LINEなどのSNSメッセージで同様のものが流行るようになってからも「チェーンメール」と呼ばれている。

1990年代インターネット明期のチェーンメールの代表例は

等がある。もちろんデマである。

2000年代ごろになるとパソコン携帯電話の普及とともにバリエーションが増え、

等が現れている。繰り返すがもちろんこれらの文面はデマである。銀行がつぶれる」というチェーンメールにより、取り付け騒ぎが起き、発信者が信用毀損容疑で書類送検された例もあった[23]

2010年代にはスマートフォンが普及したで、電子メールからLINETwitterなどのSNSへとネットでのコミュニケーションの場が移っていき、電子メールを使ったチェーンメールは減少した。しかし、LINE等で同様のものが流行ることは多く、2017年2018年には「エチルエーテルを嗅がされて臓器を売買される(エチルエーテル犯罪)」等のチェーンメールが出現している[24]

2020年2月には、「『震度10』の地震が発生するという動画ウイルスだから開かないように、という情報拡散してほしい」という内容のチェーンメールが出現した[25]。つまり、「震度10について述べた地震動画がある」ということ自体が情報である。

関連動画

関連項目

チェーンメールの事例がある記事

脚注

  1. *総務省「チェーンメールを受け取った際は、転送は止めてください!」exit
  2. *イーハイブ平井「チェーンメールってなぜいけないの?」, 2011年3月15日exit
  3. *小寺信良「ケータイの力学」: 「チェーンメールの何が「悪」なのか」(ITMedia Mobile)、 2010年6月28日exit
  4. *岡田有花「mixiでまたチェーン日記 善意が混乱招く」(ITMedia News)、2006年9月28日exit
  5. *C. R. Bilardi "The Red Church Or the Art of Pennsylvania German Braucherei", p.419-420, 2009.exit
  6. *Daniel W. VanArsdale "CHAIN LETTER EVOLUTION", "2. LUCK CHAIN LETTERS, 2-1 PREDECESSORS, Transition to chain letters.", 1998, 2002, 2007, 2014, 2016.exit
  7. *丸山泰明「『幸運の手紙』についての一考察」, 国立歴史民俗博物館研究報告174, p.311, 2012.exit
  8. *同上、p.313.exit
  9. *同上、p.313-314.exit
  10. *同上、p.312.exit
  11. *同上、p.311.exit
  12. *同上、p.315.exit
  13. *同上、p.314.exit
  14. *藤子・F・不二雄「不幸の手紙同好会」(『ドラえもん 15』(小学館)exit収録)
  15. *さくらももこまる子 不幸の手紙をもらうの巻」(『ちびまる子ちゃん 5』(集英社文庫)exit収録)
  16. *山本尚美「現代版“不幸の手紙”か…「広島に当たり屋グループが来てる」駆け巡るネット情報で混乱」(産経WEST)、2018年12月20日exit
  17. *ネットロア考6「ドラえもんの最終回」, 2003年5月10日exit
  18. *Geekなぺーじ「痛みの単位はhanage」, 2009年4月9日exit
  19. *Fascination N‐D‐File 恐怖の館「橘あゆみ」exit
  20. *新藤義孝「第32号 新潟県中越地震~対岸の火事としないために~」, 2004年11月15日exit
  21. *出口弘「チェーンメール」, 2006年4月14日exit
  22. *伊藤咲子「人気番組“ザ!鉄腕!DASH!!”の企画を騙ったチェーンメールが流布」(ASCII.jp×デジタル)、1999年5月19日exit
  23. *「<平成 この日、>佐賀銀行取り付け騒ぎ=平成15年12月25日(15年前)」(佐賀新聞LiVE)、2018年12月25日exit
  24. *J-CASTニュース「「乾燥海産物の販売装い...臓器売買」はデマ 長崎県内で拡散中、過去には沖縄でも」、2018年5月26日exit
  25. *ねとらぼ「「『日本に震度10級の地震』動画に注意」チェーンメールが拡散」、2020年2月6日exit
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