名門!第三野球部とは、むつ利之による漫画作品。『週刊少年マガジン』で1987年から1993年まで連載していた。
概要
これまでの高校野球漫画は弱小校を甲子園へ連れて行く作品が多かったが、本作では強豪校の三軍チームをテーマとし、一軍を倒して甲子園を目指す設定となっている。また、22巻以降は『飛翔編』として弱小プロ野球チームに入団して優勝を目指す内容となっている。
当時の週刊少年マガジン編集部の方針の影響が強い作品とされており、一説にはライバル紙で連載していた野球漫画に影響されて本作の連載が開始されたとされているが、今までにない設定から人気を博し、テレビアニメ化やファミコンによるゲーム化(発売元はバンダイ)もされ、連載期間も影響元より長くなっている。
登場人物
桜高校第三野球部
甲子園常連の強豪校にある三軍チーム。落ちこぼれの集まりで、草むしりなど練習すらさせてもらえなかった。ユニフォームは胸に「第三」と書かれたもの(漫画は横書き、アニメは左側のみ縦書き)で、一軍に勝利後も変更することなく(帽子に「桜」と刺繍したのみ)県大会や甲子園に出場している。
- 檜あすなろ(ひのき あすなろ)CV:菊池英博
- 第三野球部のエースで主人公。コントロールがよいことから投手に抜擢された。打順は5番。
- 当初は小柄で虚弱だったが、話が進むにつれて球の速度が速くなり、また打撃も一本足打法を習得してからは中長距離打者になっている。変化球がほとんどないが、当時名前すらきまっていなかった「ジャイロボール」(作中では「弾丸ボール」と表記)を駆使して甲子園決勝まで進んでいる。
- 高校卒業後は教師を目指そうとするが、地元プロ野球球団「千葉マリンズ」(千葉ロッテマリーンズとは別球団)に指名されて入団。一年目から活躍するも投手事情から中二日を志願し、その結果肩を壊してしまい、チームの日本一を見届けて引退。改めて教師を目指し、続編では母校・桜高校の監督になっている。
- 海堂タケシ(かいどう たけし)CV:玄田哲章
- 第三野球部の主将でポジションはキャッチャー、打順は4番。元々は一軍の正捕手であったが、監督を殴り三軍に落とされた(一軍に勝利後監督と和解)。神主打法の持ち主で「千葉の落合博満」と評されている。
- 野球を知らない第三野球部を一から鍛え、一軍に勝利。その後は実質的なヘッドコーチ兼選手の役割を担っていた。卒業後は早稲田大学を経て千葉マリンズに入団した。
- 村下夕子(むらした ゆうこ)CV:鶴ひろみ
- あすなろの幼馴染。女性であるが、ソフトボールの経験があることから最初の一軍戦に出場。その後はマネージャーに転身している。学校一の美人と評されているが、落ちこぼれのあすなろと一緒にいる光景は「桜高校の不思議」と言われていた。卒業後は進学し、のちに桜高校の校医になっている。
- 小西カズオ(こにし かずお)CV:塩屋浩三
- ポジションは右翼手で打順は6番。肥満体系のため足が遅く、大振り三振することが多いが、バットに当たればホームラン性の当たりを連発し、また俊足選手をライトゴロにしてしまうほどの強肩である。その強肩から県大会準決勝では登板したこともある。卒業後は進学し高校教師となる。
- 白石兄弟(しらいしきょうだい)CV:(兄)鈴木みえ(弟)小粥ようこ
- 坊主頭の双子の兄弟。兄が遊撃手で一番、弟が二塁手で二番。どちらも下の名前は不明。
- 小西とよくケンカをしているが所謂「ケンカするほど仲がいい」で、互いに嫌っているわけではなくむしろ意気投合することが多い。卒業後は互いに社会人野球選手になった模様。
- 石井幸司(いしい こうじ)CV:金丸淳一
- ポジションは三塁手で、打順は8番。守備の名手で、ヒット性のあたりをことごとく捌いている。一方で打撃が苦手であったが(2度目の1軍戦までヒットを打ったことがなく、県大会でもわずか1安打)、甲子園へ行く前に天秤打法を習得し安打製造機に変貌。1回戦では猛打賞、2回戦ではサヨナラヒットまで打っている。卒業後は大学へ進学。
- 高橋ひろし(たかはし ひろし)CV:龍田直樹
- ポジションは中堅手で打順は7番。ガッツプレイヤーで根性によるファインプレーを連発していた。卒業後は地元の信用組合に就職。
- 斉藤輪大(さいとう りんだい)CV:二又一成
- ポジションは一塁手で、打順は9番。「~だな」が口癖。普段はのほほんとしているが、怒らせると手が付けられなくなる。実家が寺院で卒業後は住職になるも、続編の続編で廃部寸前に陥っていた母校・桜高校の監督に就任している。
- 田村達郎(たむら たつろう)CV:井上和彦
- ポジションは左翼手で、打順は3番、スイッチヒッター。元々はテニスプレイヤーで従兄弟であった夕子の頼みで助っ人と参加。長髪でスライディングも嫌っていたが、影響を受けてスライディングをするようになり髪も切っている。
- 京本直哉(きょうもと なおや)CV:山寺宏一
- 元々は一軍のエースで、スライダーを武器に抜群のコントロールを誇っていた。第三野球部に負けた後は引退を考えるも自身が元々三軍だったことをあすなろたちに知られて翻意され、第三野球部の控え投手となる。甲子園の準決勝に先発出場し、完投勝利を挙げている。卒業後は早稲田大学へ進学。
- 桜井哲也(さくらい てつや)CV:龍田直樹
- 元々は一軍の正捕手。第三野球部に負けた後は京本と一緒に第三野球部に入団。選手層の薄さを感じ、どのポジションでも守れるよう特訓を重ね、県大会決勝と甲子園準々決勝で高橋に代わり中堅手として出場。甲子園の準決勝では捕手としてマスクも被っている。卒業後は早稲田大学へ進学。
その他主要人物
- 桑本聡(くわもと さとし)CV:千葉繁
- 銚子工業のエース。練習試合時は190cmの高身長から繰り出す三段カーブと得意としていたが、あすなろに強打されたことで体を鍛え、県大会の時は150km/h越えの強靭な剛速球投手へ変貌した。二年時は準決勝でノーヒットピッチングを披露するも敗れたが、三年時に第三野球部に勝利し悲願の甲子園出場を果たし、そのまま全国制覇を果たしている。
- 卒業後は千葉マリンズに入団。八百長疑惑で一時追放されるも無実と判明し復帰。日本シリーズでは4連投の活躍で日本一に貢献している。
- 五十嵐幸生(いがらし ゆきお)CV:戸谷公次
- 黒潮商業のエースでシュートを得意とする。姉がいるがキャバクラ勤務を知り忌み嫌っていた(アニメでは放送規制がかかることから父親の暴力に差し変わっている)。決勝で第三野球部に敗れた後は就職した。
- 小比類巻一郎(こひるいまき いちろう)
- 陸奥高校のエース。第三野球部と同じ宿舎となり、互いに切磋琢磨し決勝で対決することになり、再試合のすえ東北勢初の甲子園優勝を果たしている(現実では2021年時点で東北勢の優勝は未達成)。球は遅いが、わずかに球種の違うカーブで相手をことごとく打ち取っている。
テレビアニメ
1988年10月22日から1989年9月29日にかけてフジテレビ系列で放送されていた。
第17話までは全国ネットで土曜夜19:30 - 19:58の放送であったがあったが、第18話以降は金曜16:30 - 16:58のローカル放送となり、愛知や広島、北陸では打ち切りになる放送局もあった(愛知と広島は別枠で放送)。理由は様々あり、元々ギャグアニメ枠だったところにシリアス路線の本作を入れてしまったこと、放送開始時に昭和天皇の容態が悪化し番組が差し替えられて第8話から9話の間が1ヶ月半も空いたこと、そして1989年1月より同時間帯のテレビ朝日系列で『おぼっちゃまくん』の放送が開始され、視聴率が低迷してしまったことが要因とされている。全40話で、9巻の千葉県大会決勝までとなっている。
2019年にコレクターボックスが発売され、dアニメストアでも配信が行われている。
評価
1980年代後半から相次いで連載が開始された『はじめの一歩』や『風のシルフィード』と並ぶ三大スポ根の一角で、週刊少年マガジンの野球漫画としての『ダイヤのA』『Dreams』と一緒に名前が挙がるほど評価が高い作品である。特に「ジャイロボール」をいち早く取り上げた点(『MAJOR』の茂野吾郎よりだいぶ前)をはじめ、一本足打法や神主打法、天秤打法など往年の名選手の打法を多く登場させ、また1試合につき10話ぐらいで終わらせる(最長である甲子園決勝戦も再試合含めて20話)というテンポの良さも長期連載の要因となった。
一方で編集部の方針が強く、強豪校の格差やいじめ問題を過大に取り上げるのはともかく「刃を立てた日本刀の上を歩く練習」や「他校の選手を集団暴行」など明らかな犯罪行為の描写があり、第三野球部に負けた一軍主力選手の動向(プロ注目選手級もいたが行方不明)や高校日本選抜も桜高校と陸奥高校に桑本を入れたただけで他の強豪校の選手は未選出という編集の都合が多く散見されている。『飛翔編』にいたっては黒い霧事件(プロ野球)や当時の政治汚職事件まで絡めるなど方向性が見えなくなっていった部分もあるが、当時の週刊少年マガジンではよくあった話で、細かいこと(?)は気にせず読んでほしい作品と言える。
続編として『上を向いて歩こう』や『復活!第三野球部』が連載され、本作の登場人物も登場している。
2020年に現代風にアレンジした『名門!第三野球部~リスタート~』の連載が行われていた(作画・金木令)。
関連動画
関連項目