あさひ型護衛艦とは、海上自衛隊が保有する護衛艦の艦級の一つである。
1955年にアメリカ海軍から供与されたキャノン級護衛駆逐艦を改名した戦後初の護衛艦(DE)である初代と、2018年に就役の汎用護衛艦(DD)である2代目がある。本項では主に2代目について扱う。
概要
前級のあきづき型護衛艦の準同型艦に相当する汎用護衛艦で、DD-119「あさひ」とDD-120「しらぬい」の2隻が運用されている。
建造・開発コストを抑えるためあきづき型護衛艦をもとに設計されている。
しかし、防空性能を重視したあきづき型に対し、本級は周辺情勢を鑑みて対潜性能を重視した設計となっているほか、護衛艦としては初のCOGLAGと呼ばれる推進方式を採用している。
性能諸元
全長 | 151.0m |
全幅 | 18.3m |
排水量 | 基準5100t |
武装 | 62口径5インチ単装速射砲1門 高性能20mm機関砲(CIWS)2基 Mk41VLS(垂直発射装置)32セル (装填弾)シースパロー系列短SAM、垂直発射アスロック 90式艦対艦誘導弾発射筒4連装2基 3連装短魚雷発射管2基など |
レーダー | OPY-1多機能レーダー 潜望鏡探知レーダー |
ソーナー | OQQ-24バウソーナー OQR-4曳航ソーナー(TASS) |
ESM/ECM | 各種電子装備 |
速力 | 最大30kt |
主機 | COGLAG方式 2軸 「LM2500」ガスタービン 2基 推進電動機 2基 |
搭載機 | SH-60JないしSH-60k哨戒ヘリ1機(最大2機) |
あきづき型との相違点
- 多機能レーダーをコンパクトに
- あきづき型護衛艦では弾道ミサイル迎撃中のイージス艦を守るために僚艦防空が可能なFCS-3Aを搭載してたが、レーダーのサイズの関係か艦橋とヘリ格納庫上部に分かれていた。しかし、あさひ型は対潜重視ということから僚艦防空機能を削除(これによりタレス社のICWI機能も削除することとなり経費削減にもつながった)し従来の汎用護衛艦同様、個艦防空機能のみとすることで小型化し艦橋上部のみの配置としヘリ格納庫上部がすっきりしている。また、イージスシステムのアップデートにより弾道ミサイルに対応中のイージス艦も防空が可能になること見越していたとも言われている。
- 新たなガスタービン推進方式、COGLAGの採用
- ガスタービン機関は小型・軽量で大出力が出せるため高速運用をする現代の軍艦には欠かせないものとなっている。しかし、欠点として高速域以外の燃費の悪さがよく問題として言われており、近年の各国海軍は燃費性能の向上力を注いでいる。一方で海上自衛隊は推進機関をはつゆき型護衛艦でオールガスタービンとしてCOGOGを採用、その後たちかぜ型護衛艦以降の護衛艦はCOGAGと呼ばれる方式を採用していた。COGOGは巡航用と高速用のエンジンを積んで用途に合わせて使い分ける、COGAGは巡航用と高速用を積み普段は巡航用のみで高速時にはすべてのエンジンを使うというものである。しかし、前者は使わない時のガスタービンがスペースの無駄になる、後者は操作・保守が難しいといった欠点を持っており双方共通の問題として巡航用でもガスタービンは高速向けの機関であるため最大出力以外では燃費が悪くなるという欠点があった。
そして、ライフサイクルコストの効率化を図るため採用されたのがCOGLAGという方式である。これは普段は一つのガスタービンエンジンを発電機として扱い電気推進をする方式である。発電時のガスタービンを最大出力近くにしておくことでガスタービンの燃費を抑えつつ電気推進で速度の調整を行うもので、低速域は電気推進のみの航行も可能で航続距離を伸ばせることにもなる。また、高速時はすべてのガスタービンを利用し発電し高速航行をする。欠点としてシステムが複雑化することになるが試験艦「あすか」での運用ののち本級に導入され、27DDGにも同システムが採用されることから今後の護衛艦の基本推進システムになると思われる。
同型艦
艦名 | 艦番号 | 所属 | 進水 | 建造 | 艦名の由来 | |
---|---|---|---|---|---|---|
就役 | ||||||
1番艦 (25DD) |
あさひ | DD-119 | 第2護衛隊群第2護衛隊(佐世保) | 2016年10月19日 | 三菱重工 長崎造船所 |
天象である「朝日」より |
2018年3月7日 | ||||||
2番艦 (26DD) |
しらぬい | DD-120 | 第3護衛隊群第7護衛隊(大湊) | 2017年10月12日 | 三菱重工 長崎造船所 |
天象である「不知火」より |
2019年2月27日 |
余談
ネームシップである「あさひ」という名は海上自衛隊では2代目になるが、帝国海軍時代にも敷島型戦艦の2番艦「朝日」がおりそれも含めれば3代目と言うことになる。「朝日」は1900年イギリスで建造・就役し日本に回航された後は日露戦争、第一次大戦に戦艦として参加。その後、海防艦、練習特務艦、潜水救難艦、工作艦と変わり1942年カラン湾南東にて米潜水艦「サーモン」の雷撃により沈没した。
なお、敷島型戦艦の4番艦は日本海海戦の連合艦隊旗艦で有名な「三笠」で煙突の数が「朝日」と一緒の二本である(他の二隻は3本)
「あさひ型」の初代となる先代は冒頭で述べたキャノン級護衛駆逐艦で「アミック」と「アサートン」がそれぞれ「あさひ」と「はつひ」となった。(奇しくもあさひ型は二代続けて同型艦が二隻である)
なお、先代の二隻は1975年に米軍に返還されたが、1978年にフィリピン海軍にて「ダトゥ・シカトゥナ」と「ラジャフ・マボン」として再々就役。1988年に「ダトゥ・シカトゥナ」は除籍されたものの「ラジャフ・マボン」は一時退役ののち復帰し艦齢が74歳を迎えた2017年現在も現役である。
先代の同型艦が二隻だったということもあり、二番艦に「はつひ」を望む声もあったが、二番艦の艦名は同じく気象現象を語源に持つ駆逐艦名を襲名した「しらぬい」と決定した。こちらは東雲型駆逐艦、陽炎型駆逐艦に続き海上自衛隊としては初、日本海軍から数えて3代目となる。
本級は「予算削減のためVLSは16セル」という情報もあったが、艤装工事の段階で32セルとなっていることが確認されている。
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関連項目
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