ワルキューレ(楽劇)(Die Walküre)とは、
リヒャルト・ワーグナーが書いた4部作の楽劇作品である、ニーベルングの指環(Der Ring des Nibelungen)の第2部にあたる。
概要
「ニーベルングの指環」の以下の4部作。
- 序夜 『ラインの黄金』(Das Rheingold)
- 第1日 『ワルキューレ』(Die Walküre)
- 第2日 『ジークフリート』(Siegfried)
- 第3日 『神々の黄昏』(Götterdämmerung)
この第2部(上演時には第1日と表記されることが多い)、「ワルキューレ」は単独での上演機会も多く、4部作の中でもとりわけ知名度が高い。特にヒロインのブリュンヒルデとワルキューレ姉妹は、近現代におけるワルキューレのイメージを固める要因となっている上、第2部第3幕の前奏曲「ワルキューレの騎行」は、戦争映画などでのBGMへの起用で戦いの音楽というイメージが非常に強い。
劇内容
序夜「ラインの黄金」で小人族のアルベリヒによって「指環」というトンデモなチートアイテム兼呪いアイテムが生まれてしまったがために、それの処置に困った主神ヴォータンは自分と人間の女の間で産ませた一族「ヴェルズング」の勇者にそれを奪わせ、委ねようとする。さらに彼は別の女神との間にワルキューレ9人姉妹を産ませて、ヴァルハラに英霊を集めさせ、アルベリヒが指環を取り戻すという最悪のシナリオに備える。いよいよ、ヴェルズングの勇者候補ジークムントに勇者の証の剣ノートゥングを授けるところまできた。だが、そこで奥さんのフリッカに全力のツッコミを受け、「あなた自分の産ませた一族に自由意志で指環を取らせようって、結局けしかけてるのはあなたでしょ。(超意訳)」と論破されてしまう。
やけになったヴォータンは娘であるワルキューレ、ブリュンヒルデにヴェルズングの勇者候補、ジークムントに死を与えるように命ずる。ブリュンヒルデはジークムントにこれからの決闘で彼が死ぬことを告げに行くが、ジークムントは彼の恋人ジークリンデ(実の妹です)と一緒に死ぬと覚悟を示し、それに打たれたブリュンヒルデは父の命に逆らうことを決意。
ジークムントとフンディング(ジークリンデの現夫)との決闘が行われ、ブリュンヒルデはなんとかジークムントを助けようとするが、娘の反逆を知ったヴォータンの武力介入で結局ジークムントは死亡。ブリュンヒルデはジークリンデを匿おうとする。
ブリュンヒルデは妹のワルキューレたち8人が集合しているところに駆け込み、絶望して死を選ぼうとしているジークリンデにジークムントとの子供が宿されていることを告げる。その子はジークフリートと名付けられ、ジークリンデは森へと身を隠す。
そこへ怒りに燃えるヴォータンが登場。妹たちはなんとか場を収めようとするがどうにもならない。結局、二人きりの会話となったところで、ブリュンヒルデは敢えて父の意を汲んでヴェルズングの勇者の血を残したことを告げる。娘の真意を知り、怒りを収めたヴォータンではあったが、罰は罰、ブリュンヒルデは神格を剥奪され、岩山に眠らされた。そこは炎の神ローゲの作った結界で覆われ、「神よりも自由で勇敢な男」だけがそれを超えることが出来るとされた。
こうして、新たな勇者の出現に希望を託して物語は一旦幕を閉じる。
→続きは第3部「ジークフリート」へ。
ワルキューレの9人姉妹
このタイトル通り、本作の主役はワルキューレのブリュンヒルデである。彼女のみは本作のベースとなった北欧神話やゲルマン神話に登場するブリュンヒルデ(ブリュンヒルト)を元にしたヒロインである。
残る姉妹、ゲルヒルデ、オルトリンデ、ヴァルトラウテ、シュヴェルトライテ、ヘルムヴィーゲ、ジークルーネ、グリムゲルデ、ロスヴァイセ、以上はいわば脇役である。ヴァルトラウテだけは後の「神々の黄昏」で出番があるが。いずれの名前も神話には登場せず、リヒャルト・ワーグナーがブリュンヒルデのネーミングを参考に造語として創作した名前である。ワーグナーの厨二病が形になったようなもんだ。
しかし、これらのワルキューレ姉妹の名前は近現代以降のワルキューレに関わる創作に大きく影響を与えている。北欧神話系のワルキューレ名があまりにも癖がありすぎる(スコグルとかヘリヤとか)ためか、創作上でワルキューレから名前を引っ張られたキャラクターはこの姉妹をベースにしたものが多い。
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