親米保守とは、アメリカ合衆国に好意的で政治的には保守派に属する勢力、思想のこと。日本における右派・保守派の一種である。対義語は反米保守。
概要
一般的に、日米同盟の維持・堅持・深化・発展を肯定する保守派のことを指す。戦後の冷戦時に共産主義陣営に対抗し、自由主義経済を守ろうと「反共」を掲げた人々を起源する。そのため、自由主義・資本主義を護持するために強烈な反共主義を主張する傾向にあり、アメリカのグローバリズム経済に対して肯定的であることが多い。基本的に「民族の誇り」などの精神的価値よりも、「国民の生命・財産」や「日本の生存と繁栄」などの物質的価値を重視する。
思想
歴史認識に関しては、太平洋戦争や日中戦争を「やむを得なかったことである」とする見解から全否定的な見解まであり、南京大虐殺に対する認識でも大虐殺があったとする見解から小規模な虐殺があったとする見解、正当な戦闘行為の範囲内だったとする否定論まであるなど、親米保守内でも見解は一定しないが、全体としては「従軍慰安婦問題や南京大虐殺などは否定するが、『大東亜戦争(太平洋戦争)はアジア解放および自存自衛のための戦いだった』というような反米保守の見解にも賛成しない」などといった、左派陣営と反米保守陣営の間をとったような見解を示すことが多い。また、中国共産党などが公表する日中戦争の被害については、「科学的根拠がなく、時代が下るにつれて死者数が膨張している」と否定的である。日本を事実上単独占領したアメリカの持つ世界最大の経済力・軍事力に対抗できないこと、冷戦終結後の今も中国とロシアは戦略核兵器や戦術核兵器などを保有する軍事大国であり、日本の国防が日米同盟に大きく依存していることなどの理由から、当面は米国の戦略に協力することにより国益の追求が達成されるというのが親米保守の基本的な思想である。そして、日本が他国に攻撃された場合、アメリカの援軍を期待する以上、アメリカが起こす戦争に兵力を参加させるのは同盟関係維持のために必要不可欠であると主張する。イラク戦争に対しても、「アメリカによって独裁制が打ち倒され、自由と民主主義がもたらされた」と肯定することが多い。
隣国に対してタカ派的発言(核武装論を提唱・容認する者や北朝鮮による日本人拉致問題の被害者救出・解決のために対北朝鮮開戦も視野に入れると主張する者など)をすることもあるが、基本的に反米保守派ほど強硬な意見ではないことが多く、とりあえずしばらくは現在の状態を維持することを望む傾向にある。
中国とは政治・外交的に歴史認識・反日政策・領土問題・反共主義などで対立することが多く、基本的に反中。
韓国に対しては政治的な関りが深く、韓国の軍事政権が伝統的に親米反共政策を取っていたため、その流れをくむ韓国保守派と歩調を合わせる傾向がある。韓国が左派政権に移ってからは親北・反米・反日傾向を強めるようになったため摩擦が生じていたが、保守派・対北強硬派の李明博政権発足後は日韓の親米保守層が再び接近を強めている。親米保守派が親韓的である理由としては、親米保守派には冷戦時に日本の共産化を防ぐために「反共」という一点さえ合えば反日国家である韓国や、韓民族至上主義のカルト宗教である統一協会とも相手を選ばず手を組んだ歴史があり、その影響が冷戦が終結した現在でも残っているという事情がある。
また、基本的に親台であり、それを理由に反中を唱えている者も多い。
国防に関しては、中国・北朝鮮と渡り合うためには日米同盟の強化が有効であるという見解を持ち、集団的自衛権行使が可能になるよう日本国憲法第9条の改憲を主張する。
また、基本的に新自由主義に肯定的であり、小泉・竹中内閣の構造改革やTPPといった、グローバリズム政策に積極的である。
反米保守派や左派からは、そのアメリカに従属する姿を飼い主に盲目的に従う飼い犬に例えて、「親米ポチ」という蔑称で呼ばれることもある。
現在の勢力
親米保守派は保守系雑誌やメディアへの出演も多く、自由民主党の大半の議員が親米保守であり、政界や財界で最も強い力を持った勢力である。また、戦後の官僚(外務省)の外交方針も、一貫して親米保守的である。
関連項目
- 親米
- 保守
- 反米保守
- アメポチ
- 自民党
- みんなの党
- 幸福実現党
- 新党改革
- 日本維新の会
- 安倍晋三
- 麻生太郎
- 吉田茂
- 岸信介
- 石破茂
- 松原仁
- 小泉進次郎
- 高市早苗
- 野田佳彦
- 前原誠司
- 町村信孝
- 橋下徹
- 竹中平蔵
- 櫻井よしこ
- 青山繁晴
- 産経新聞
- 読売新聞
- 日経新聞
- 新自由主義
- TPP
- 2
- 0pt