2001年宇宙の旅とはスタンリー・キューブリック監督の映画、または脚本のアーサー・C・クラーク著の小説の題名である。
概要
キューブリックとクラークが協力して製作を進めたため、映画と小説は並行して作られた。そのため、どちらが原作という関係ではなく、異なる2つの形で製作されたといえる作品である。
映画は1968年公開。
キューブリック監督は「何十年か後まで語り草になるようなSFを作る」と意気込み、SF的考察を反映したリアリティの強い映像に仕上げた。オープニングで使われる「ツァラトゥストラはかく語りき」をはじめとするクラシック音楽の多用、太陽から手前に向かって星が並ぶ映像、モノリス、印象的なHAL9000とのやり取り……等など後の多くの創作物に影響を与えることになった。
が、反面説明がされない事象が多いため「難解な」映画の印象を与えることも多い。特に序盤の人類の覚醒までのシーンは当時不評を買い、物好きが見る難解な映画というレッテルを長い間貼られる事となった。筒井康隆や星新一も今作に対しては非常に否定的であった。
現在では小説と共に、SF界の金字塔と称されるまでに至っている。
また、1984年には後述する『2010年宇宙の旅』を元に続編映画の『2010年』も作られているが、こちらにはキューブリック監督はかかわっていないので全く趣の違う映画になっている。
アーサー・C・クラークの小説版では映画では省かれた説明が多くなされている。
登場人物が起きている事象に対しての考察をしている場面も多く、ボーマン船長の心情が事細かに描かれるため、映画に比べると非常にわかりやすい。映画と併せて読むことを強くお勧めする。
邦訳は1968年に『宇宙のオデッセイ2001』という邦題で早川書房のハヤカワ・ノヴェルズから刊行された後、1977年に映画同様の『2001年宇宙の旅』に改題されてハヤカワ文庫SFに収められた。
また、クラークによる製作・執筆中の没原稿が収められた『失われた宇宙の旅2001』という書籍も刊行されており(邦訳はハヤカワ文庫SFから刊行)、必ずしも完成時の公式設定でないとはいえ、映画では説明が省略された描写に触れることだできる。
小説版は続編として『2010年宇宙の旅』『2061年宇宙の旅』『3001年終局への旅』の3作が執筆された。いずれも邦訳はハヤカワ文庫SFなどに収められている。
なお、小説版『2001年宇宙の旅』では宇宙船ディスカバリー号の最終目的地は土星となっていたが、『2010年宇宙の旅』以降では木星に変更されているなど、映画版との設定の擦り合わせもなされている。
また、『3001年終局への旅』で一度完結した後に、別世界線を舞台とした外伝と言える『タイム・オデッセイ』シリーズ全3巻がスティーヴン・バクスターとの共著として執筆された。
共通しているのは、小説版『宇宙の旅』シリーズではモノリスの製造者とされる「魁種族」の存在のみで、世界観やキャラクターなどは一新されている。
こちらの邦訳はいずれも早川書房海外SFノヴェルズに所収。
あらすじ(ネタバレ有)
かつて、人類の祖先――ヒトザルが、まだ猿として生きていた頃。
どこからともなく、全く幾何学的な形をした石柱『モノリス』が姿を現し、ヒトザル達の脳に影響を与え始める。
ヒトザルはそれを意識することは無かったが、やがて骨を道具にして使うことを覚えた。彼らは次第に集団での狩りを覚え、獣さえも打ち倒すまでに至った。
『モノリス』の教育によってヒトザルが人類への道を歩みだし、地上の覇権を握った瞬間だった。
知恵をつけたヒトザルは、いつも水場争いをしていた他のヒトザルの群れと道具を持って戦う。骨で殴られた相手方のヒトザルは動かなくなった。ヒトザルたちは同じ種同士の殺し合いを覚えたのである。
400(小説では300)万年後。人類文明は、無数の核ミサイル衛星を打ち上げ、自らを月へ移住させるまでに発達した。
ボーマンを船長とし、人類史上最高の人工知能『HAL9000』によって制御される宇宙船・ディスカバリー号は、木星への途上にあった(映画ではここが目的地だが、小説では土星到達のためのスイングバイの対象だった)。
人工冬眠をとりつつ、交代で数ヶ月に渡って長い旅を続ける一行。
しかし、ミスを犯しえないはずのHALが、船長にこの旅についての疑問を呈したのを皮切りに、船に異常が発生し始める。
ボーマンと共に船内活動中のプールはHALのシャットダウンを検討するが、これを知ったHALはとうとう暴走し、船員を殺害する。
1人生き残ったボーマンは、HALのメモリを抜き取り、その活動を停止させた。
地球から遠く離れた宇宙で孤立したボーマン。ここで、隠されていたメッセージが再生される。それは、旅の真の目的についてであった。
18ヶ月前。月面探査の途上で、地中に、あの『モノリス』が発見されていたのだ。
『モノリス』の辺は、完璧な1:4:9の比率をしていた。人類の技術で計りうる限り、全く寸分の違いのない形状である。その上、どのような手段を用いても傷一つつけられない。間違いなく、人類には作成不可能な物体であった。
そして、『モノリス』は発掘されて太陽の光を浴びた瞬間、何らかの電気信号を木星へ向けて発信していた。
ディスカバリー号に課せられた真の任務、それはこの信号から端を発した木星調査だったのだ。
やがてボーマンは木星に到着した。
するとその軌道上にあったのは、巨大な『モノリス』であった。
『モノリス』は高度なパズルのように幾何学的に形を変え、宇宙の遠くかなたへの門――『スターゲート』となって、探査船に乗ったボーマンを導く。
想像を超えた風景を何度も通り抜けて、ボーマンは、とうとう『モノリス』を作った精神生命体との邂逅を遂げる。
そして、彼は肉体を捨て、彼らと同じ存在――『スターチャイルド』へと進化した。
400万年前、『モノリス』によってヒトザルから進化を遂げた人類は、ここに至ってとうとう彼らと同じ存在になったのだ。
『モノリス』は、ヒトザルを自らと同じ存在にまで導くために精神生命体が置いていったのだ。
物質文明に支えられた人類文明は最早限界に来ている。戦争や破壊行為は、300万年前からの努力を無に帰す、愚かな行為である。
人類には、知的生命体として宇宙に生まれた以上、そんなものよりもさらに重要な存在意義がある。
『スターチャイルド』となったボーマンは、超常的な力を携えて、人類にこのメッセージを伝えにいくのだった。
関連動画
関連項目
- SF
- 小説作品一覧
- 映画の一覧
- ツァラトゥストラはかく語りき
- モノリス
- HAL9000 / Daisy-Bell
- スタンリー・キューブリック
- アーサー・C・クラーク
- スターチャイルド
- 幼年期の終り
現在では映画のみならずSF界の金字塔として、小説と共に称されるまでに至っている。
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