グレイソヴリン(Grey Sovereign)とは1948年生まれのイギリスの競走馬、種牡馬。
競走馬としては一介のスプリンターでしか無かったが、種牡馬として大成功を収めて世界中に「芦毛」を撒き散らした、近代サラブレッドにおける芦毛中興の祖。
名前は「灰色の君主」、あるいは「灰色のソブリン金貨」を意味する、と思う。
父Nasrullah、母Kong、母父Baytownという血統。
親父のナスルーラはともかく、それ以外は古すぎてよく分からん血統であるが、一応母父はアイルランド二冠馬(2000ギニーとダービー)である。
本馬は母親譲りの芦毛の馬体をしており、この芦毛は母父であるBaytownの母母父、The Tetrarchという馬に由来する。このThe Tetrarchは芦毛の快速馬で種付けが嫌いながらリーディングサイアーに輝いた名馬である。日本において「3×4」のインブリードが知られるようになったのは、The Tetrarchの3×4のインブリードを持つトキノミノルがダービーを制したことに由来している。
グレイソヴリンがデビューした年には半兄Nimbus(父Nearco)が英2000ギニーとダービーステークスを優勝しており、本馬にかけられる期待も高かったが……
結論から言えばあんまり。通算24戦8勝。重賞を3勝したが全てスプリント戦である。
どうもこの馬はNasrullah譲りの気性難を持っていたらしい。そのせいで本馬目当てに1歳セリにやってきたジョージ・コーリング調教師(Nimbusの管理調教師)は買うのをやめてしまったほどだった。
その気性が原因かは分からないが距離が持たず、結果一介のスプリンター止まりで終わってしまったのだ。
二冠馬Nimbusの弟という血統が買われた事や、同時期に父Nasrullahがアメリカで活躍馬を輩出していたことから種牡馬入りすることとなった。
すると種牡馬として自らの持つ快速と芦毛を惜しげも無く伝えていき、活躍馬が多数輩出。
特に短い距離の多い2歳戦で無類の強さを発揮し、2歳リーディングを複数回獲得している。
産駒の特徴として、仕上がりが早く、もってマイル~中距離までの短距離馬が非常に多い。
現代的にはサクラバクシンオーやダイワメジャーが近いと思う。
特筆すべきは芦毛を受け継いだ産駒が種牡馬として大成功を収めたことだろう。
主にDon、Sovereign Path、Fortino、Zeddaanが後継種牡馬として活躍したが、4頭とも芦毛である。
芦毛の種をばらまけば、畑が何色であろうと、芦毛の花が咲くのだ(必ずではない)。
グレイソヴリンの子供は短距離馬が多かったのに対し、孫世代になると急に距離が持つようになった。
実際、孫・曾孫世代には障害競走や長距離レースを勝つ馬が多い。
グレイソヴリンは1972年に種牡馬を引退後、1976年に28歳で死亡した。
実は日本は隠れたグレイソヴリン大国である。
というのも、前述した後継種牡馬のうち、*ドンと*フォルティノ、*ゼダーンを輸入している。
その為か、海外からの輸入馬で血統表は英語ばっかりなのに一カ所だけカタカナ、もよくある。
更に彼らが海外で輩出した産駒も外国産馬や持込馬として輸入している。
子孫にはアローエクスプレスやサクラシンゲキ、タマモクロス、プレクラスニー、ビワハヤヒデ、アドマイヤコジーン、エイシンバーリンなど多様な産駒を送り出している。
ここにNever Say DieとMill Reef、*テスコボーイを加えまくった昭和の日本競馬はNasrullahまみれである。そりゃNorthern DancerとHai to Reasonが流行るわけだ。
日本におけるグレイソヴリン系の代表格は*トニービンである。
芦毛じゃない? 一応祖父Kalamounまでは芦毛だったよ。父*カンパラは黒鹿毛。
トニービンの活躍は知っての通りである。90年代に種牡馬御三家の一角を占め、現代でも途切れそうだけどジャングルポケットが後継としてサイアーラインを伸ばし、また母系に入ることで持続力、スタミナを補強している。母父トニービンは多くの種牡馬と相性が良い。
現在のグレイソヴリン系は、Fortino産駒であるCaroが北米で大成功を収め、CozzeneやKaldoun、Crystal Palaceが種牡馬として活躍し、衰退傾向ではあるものの直系は世界中に残っている。
母系に入って活躍する系統でもあり、グレイソヴリンの血は世界に行き渡っている。
現代競馬で芦毛を見かけたら、ほぼグレイソヴリンとその原因The Tetrarch由来と考えて良い。
The Tetrarchを介さない芦毛馬にNative Dancerがいるが、Native Dancerから芦毛の後継種牡馬が*ダンシングキャップ程度しか出なかったので、こちらは芦毛中興の祖と呼ばれる事は無い。一応クロフネが母母父のIcecapade(母父Native Dancer由来の芦毛馬)由来の芦毛だったりする。
因みに兄貴の*ニンバスは種牡馬として弟に及びもつかず(現代基準でGI馬を数頭出しているので失敗ではない)、後半生は日本で種牡馬入りし、グリーングラスの母父に名前を残している。
Nasrullah 1940 鹿毛 |
Nearco 1935 黒鹿毛 |
Pharos | Phalaris |
Scapa Flow | |||
Nogara | Havresac | ||
Catnip | |||
Mumtaz Begum 1932 鹿毛 |
Blenheim | Blandford | |
Malva | |||
Mumtaz Mahal | The Tetrarch | ||
Lady Josephine | |||
Kong 1933 芦毛 FNo.6-f |
Baytown 1925 芦毛 |
Achtoi | Santoi |
Achray | |||
Princess Herodias | Poor Boy | ||
Queen Herodias | |||
Clang 1925 黒鹿毛 |
Hainault | Swynford | |
Bromus | |||
Vibration | Black Jester | ||
Radiancy |
クロス:The Tetrarch 4×5(9.38%)、Swynford 5×4(9.38%)、Bromus 5×4(9.38%)、Polymerus 5×5(6.25%)、Sundridge 5×5(6.25%)
適当に芦毛の馬のぬいぐるみを買ってみよう。オグリも半分はThe Tetrarch由来です。
子孫達
Grey Sovereign 1948
|Sovereign Path 1956
||*スパニッシュイクスプレス 1962
|||アローエクスプレス 1967
||||リードワンダー 1978
|||||シヨノロマン 1985
||||ノアノハコブネ 1982
|*フォルティノ 1959
||Caro 1967
|||*クリスタルパレス 1974
||||プレクラスニー 1987
|||Cozzene 1980
||||Alphabet Soup 1991
||||アドマイヤコジーン 1996
|||||アストンマーチャン 2004
|||||スノードラゴン 2008
||||ローブデコルテ 2004
|||Siberian Express 1981
||||In Excess 1987
|||||Indian Charlie 1995
||||||Uncle Mo 2008
|||||||Bast 2017
|||*シャルード 1983
||||ビワハヤヒデ 1990
|||Winning Colors 1985
|||*ゴールデンフェザント 1986
||シービークロス 1975
|||タマモクロス 1984
||||カネツクロス 1991
|||ホワイトストーン 1987
|*グスタフ 1959
||プレストウコウ 1974
|*ゼダーン 1965
||Kalamoun 1970
|||*カンパラ 1976
||||*トニービン 1983 →トニービンの記事参照
||キョウワサンダー 1981(サラ系)
||ヤマニンアピール 1983
|*ドン 1966
||サクラシンゲキ 1977
||ダイシンフブキ 1983
掲示板
2 ななしのよっしん
2019/07/20(土) 10:10:53 ID: +Ea45yPnwW
オグリは母系にテトラテマ経由のザテトラーク系の葦毛遺伝子も入ってる
強い弱い以前に現代に葦毛遺伝子を伝えてるのはネイティヴダンサーとザテトラークとグレイソヴリンの系列だけだしな
ネイティヴダンサーは今をときめく流行血統の先祖だけど系統確立した種馬が全員葦毛を受け継がずザテトラークも種馬としてとてつもなく優秀だけど種付け嫌がって父系は廃れてるし最強の繁殖牝馬ムムタズマハルも流行血統に乗る頃には葦毛遺伝子が消滅してるから90年代まで直系が暴れてたグレイソヴリンの功績はかなりデカイよね
現代だと主牡馬で活躍できてるのはクロフネ位だからこれから広がるとしたらネイティヴダンサー由来かな?
ゴルシが流行ればザテトラーク系
エイシンヒカリがはやればグレイソヴリン系
3 ななしのよっしん
2022/01/02(日) 00:12:55 ID: NqXhviVzF3
「世界の芦毛の競走馬の約8割は、血統を遡ると何らかの形でグレイソヴリンの血を引いている」って言葉を昔、ワニブックスの競馬の本で見た事有るけど…
むべなるかな、って感じだわ
4 ななしのよっしん
2023/01/25(水) 17:57:40 ID: rrFtSbHhsF
ゼダーン系はジャングルポケットが後継種牡馬を残せず、トウキョウゴールド(米GI2着のほか、伊ダービー勝利)もインドで種牡馬入りだから、日本はゼダーン系も断絶かな。
トウキョウゴールドはナスルーラが入りすぎてたり、日本じゃまず見ないゲイメセンのクロスがあったりと、日本で産駒が走るかは確かに怪しいんだけど、日本で飽和状態のロイヤルチャージャー系がほとんど入っていないから、こういう馬が日本で本来なら種牡馬入りしてほしいんだけど、需要無しで切り捨てられたんだろうな。
吉田照哉氏も血統的に日本での種牡馬入りを期待してたんだろうけど……
急上昇ワード改
最終更新:2024/11/30(土) 04:00
最終更新:2024/11/30(土) 04:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。