ギルデッドエージ(Gilded Age)とは、1997年生まれの日本の競走馬。栗毛の牡馬。
ニュージーランドのロシェル・ロケット騎手との出会いで開花、JRA初の女性騎手による重賞制覇を贈り、引退後にはNHKのドラマで"主演"を務めた障害馬。
父*ティンバーカントリー、母モントタヤーラ、母父*ノーザンテーストという血統。
父は1994年のBCジュヴェナイル、1995年のプリークネスSなどGⅠ3勝を挙げたアメリカの馬。日本に種牡馬として輸入され、主にダート種牡馬としてアドマイヤドンなどを輩出し、産駒が中央の芝・ダート・障害GⅠ制覇という記録を初めて達成している。ギルデッドエージはその初年度産駒の1頭。
母は主にダートの短距離を走って18戦2勝。伯父にSir Ivorを持つ。ギルデッドエージは第5仔。
母父は社台グループ興隆の礎となった80年代の大種牡馬。
1997年5月6日、門別町の福満牧場という年間生産数が10頭未満の小さな牧場で誕生。オーナーはノースヒルズマネジメント。
馬名の「Gilded Age」とは、1870年代~80年代にかけてアメリカで急速に資本主義が発展した時代のこと。ギルデッ「ト」エージと誤記されることが多いが、ギルデッ「ド」エージである。
なお「ギルデッド」が冠名とかではなく、ギルデッドミラーとは特に全く何の関係もない(そもそもギルデッドミラーはシルクレーシングのクラブ馬だし)。
※本馬の現役期間は2001年の馬齢表記変更を挟みますが、本記事では現表記に統一します。
栗東・松元茂樹厩舎に入厩したギルデッドエージだが、デビューは遅れに遅れ、ようやく初出走にこぎつけたのは3歳の7月。しかし阪神・芝1600mのデビュー戦をブービー13着に敗れると、距離を伸ばしたりダートに転向したりといろいろ試しながらハイペースで出走を重ねたが、10月までに8戦して3着が最高。未勝利戦も終わってしまったため、障害競走に転向することになった。
明けて4歳となり、今村康成(今村聖奈の父)を鞍上に障害デビュー。ここでも初戦は9着とパッとしなかったが、徐々に着順を上げていき、9月の転向6戦目、通算14戦目でようやく初勝利を挙げる。続いて東京オータムジャンプ(J-GⅢ)で果敢に重賞初挑戦したが、あえなく落馬競走中止。
その後もギルデッドエージの戦績は特に書くことがないレベルで全くパッとしない。5歳となった翌2002年の10月までに障害オープンを10戦走って3着が1回あるだけである。
……本記事冒頭の主な勝ち鞍の表記をちょっと確認してきてほしい。その上で改めて繰り返しておきたい。ギルデッドエージの2002年の10月頭までの戦績は、阪神・京都・小倉の障害オープンを7戦して9着→12着→12着→8着→競走中止→10着→6着である。年末に中山大障害を勝つ馬の戦績か?これが……。
そんな凡も凡の障害オープン馬だったギルデッドエージに訪れた第一の転機は、1年ぶり2度目の重賞挑戦となった東京オータムジャンプ(J-GⅢ)。このとき、東京競馬場が改修工事のため、中山競馬場での代替開催だったことが彼の運命を変えた。96.8倍の最低人気だったギルデッドエージだったが、なんとここを勝ち馬から0.2秒差の4着に好走したのである。
そう、彼は今まで一度も中山を走ったことがなかった中山巧者だったのだ。もしこの年東京競馬場の工事がなければ、栗東の馬であった彼は永遠に得意コースを走ることなく無名の障害馬で終わっていたのかもしれない。
陣営も「中山なら走るのか?」と思ったようで、続いて中山の秋陽ジャンプステークス(OP)へ。ここで第二の転機がやってくる。ここまでの主戦だった今村康成騎手に代わって、ニュージーランドから短期免許でやって来た女性障害ジョッキー、ロシェル・ロケット騎手を迎えることになったのである。ここも3着に好走したギルデッドエージは、そのままロケット騎手と中山大障害を目指すことになった。
というわけで前哨戦のイルミネーションジャンプステークス(OP)へ向かうと、なんと堂々7馬身差の圧勝。中山競馬場という自分の戦場と、ロシェル・ロケット騎手という最高の相棒をいっぺんに手に入れたギルデッドエージは秘められた才能が一気に開花。10月まで障害オープンの底辺を彷徨っていた彼は、僅か1ヶ月で年末の大一番・中山大障害の最有力候補の1頭に躍り出た。
かくして迎えた中山大障害(J-GⅠ)。2ヶ月前にJ-GⅢで最低人気だった彼は、この大舞台で3.9倍ながら1番人気に支持された。
そしてレースは好スタートから2番手につけると、大竹柵を越えたところでハナを奪い先頭で逃げる態勢へ。8番人気ロングランニングと2番人気ダイワデュールと3頭で後ろを大きく離してレースを進め、大生垣を越えたところでロングランニングが遅れてダイワデュールと2頭の争いに。最終障害を越えたところで力尽きたダイワデュールを突き放していくと、後ろからメイショウワカシオが上がってきたが、ロシェル・ロケットの鞭に応えてギルデッドエージは後続を意に介さずあっという間に置き去りにして独走。終わってみれば2着メイショウワカシオに1.9秒差の大差圧勝でゴール板を駆け抜けた。
ロケット騎手はJRA史上初の女性騎手による重賞制覇を達成。この記録は2019年に藤田菜七子がコパノキッキングでカペラSを勝つまで、実に17年間にわたって唯一の記録であり続けた。そして女性騎手が初めて中央平地GⅠを制するのは、これから約22年後、レイチェル・キング騎手がコスタノヴァで制した2025年フェブラリーSでのことになる。
この年の中山GJは海外馬のセントスティーヴンに勝たれており、ギルデッドエージも10月までの戦績が戦績なので、JRA賞最優秀障害馬は「該当馬なし」になるのでは?とも言われたが、結局蓋を開けてみればギルデッドエージは281票中217票を集め(「該当馬なし」は57票)、JRA賞最優秀障害馬を受賞した。
明けて6歳となった2003年も引き続きロケット騎手と中山グランドジャンプを目指すことになり、ペガサスジャンプステークス(OP)から始動。ダイワデュールを1馬身半差抑えてきっちり3連勝、中山GJへ視界良好の勝利となる。
そして迎えた中山グランドジャンプ(J-GⅠ)では、前年覇者セントスティーヴンらを抑えて堂々1.9倍の断然人気。最初は人気薄のヒゼンホクショーが逃げ、4番手あたりで進めると、大竹柵でヒゼンホクショーが後退してセントスティーヴンが先頭に立ち、ギルデッドエージとロケット騎手はそれを2番手で追走する。向こう正面でカネトシガバナーが上がってきて2番手を譲るが、4コーナーで再びカネトシガバナーをかわしてセントスティーヴンを捕らえにかかり、直線入口でかわす。あとは最終障害を越えて押し切るだけ、勝った! ――と思った瞬間、後方から猛烈な末脚で追い込んできたのが4番人気のビッグテースト! ほぼ理想的なレースをしたギルデッドエージだったが、ビッグテーストの末脚に最後は1馬身半差屈して2着に敗れた。
瞬く間に障害トップホースへと駆け上がり、王座を獲り、王座を奪われたギルデッドエージ。その黄金時代は短かった。なんでかというと、この中山GJを最後にロケット騎手が短期免許の終了で帰国してしまったのである。さらにギルデッドエージ自身もこのあと1年近い休養に入ることになってしまう。
明けて7歳、阪神スプリングジャンプ(J-GⅡ)にて新たにアメリカのトーマス・フォリー騎手(国籍はアイルランド)を迎えて復帰したが、スタートから1番人気シアトルリーダーと2頭でやりあった挙げ句に7番人気の伏兵マイネルイースターにまとめて差されて3着。本番の中山グランドジャンプ(J-GⅠ)ではブランディスにぶっちぎられて見せ場なく4着に敗れた。
その後また1年近く休み、8歳となった2005年も現役を続けたが、以降は得意の中山ですら見る影も無く凡走が続き、2005年の中山大障害を10着に敗れたあと、屈腱炎を発症。現役引退となった。
引退後は馬事公苑で馬術競技馬に転向したのだが、そんな彼が2010年、思わぬ形で再びテレビに現れた。2010年8月から放送されたNHK土曜ドラマ『チャンス』に出演したのである。藤原紀香演じる証券会社のOLが、仕事の失敗で追いつめられたところから北海道で1頭の繁殖牝馬とその仔の競走馬に出会い、人生を立て直していくというストーリーで、ギルデッドエージはその馬側の主役となる競走馬「チャンス号」を演じたのである(ギルデッドエージだけでなく他の馬もチャンス号役をやったようだが)。
……ちなみにそのチャンス号、設定上は牝馬だったそうな。
その後は消息について公式な情報は出ておらず、本項執筆者が探した限りでは2014年9月に馬事公苑で撮影された写真が掲載された個人ブログの記事
やTwitterの呟きが見つかる。2016年にYouTubeに投稿された自衛隊朝霞駐屯地見学ツアーの動画
にて、自衛隊体育学校の近代5種競技練習馬用厩舎に「ギルデッド」の名前で映っているのが発見されており、現状ではこれが最新の消息である。
現役時代の馬柱を見ると本当に一瞬だけの輝きを見せた馬という印象だが、それだけロシェル・ロケット騎手と圧倒的に手が合っていたということなのだろう。たまたま代替開催で走るまで誰も気付かなかった中山適性の発見と、たまたま短期免許で来ていた女性騎手との出会いというふたつの偶然がもたらした「チャンス」を逃すことなく栄冠を手にした、そんな馬であった。
| *ティンバーカントリー 1992 栗毛 |
Woodman 1983 栗毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
| Gold Digger | |||
| *プレイメイト | Buckpasser | ||
| Intriguing | |||
| Fall Aspen 1976 栗毛 |
Pretense | Endeavour | |
| Imitation | |||
| Change Water | Swaps | ||
| Portage | |||
| モントタヤーラ 1987 黒鹿毛 FNo.8-g |
*ノーザンテースト 1971 栗毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
| Natalma | |||
| Lady Victoria | Victoria Park | ||
| Lady Angela | |||
| *ボウモント 1970 黒鹿毛 |
Bold Ruler | Nasrullah | |
| Miss Disco | |||
| Attica | Mr. Trouble | ||
| Athenia |
クロス:Swaps 5×4(9.38%)、Lady Angela 5×4(9.38%)、Nearco 5×5(6.25%)、Native Dancer 5×5(6.25%)、Hyperion 5×5(6.25%)
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最終更新:2025/12/05(金) 21:00
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