2000年代中頃のお笑いブームにて誕生した言葉。定義は曖昧であり、とある芸人を地下芸人として挙げると「○○はテレビに数回出たことがあるから地下じゃない」と論争になる事もしばしば。
狭義では「事務所主催のライブに出ることが出来ず、エントリーフィーを払えば誰でも出れる地下ライブに出ている事」とされる。全国各地に多数の劇場を持ち、芸歴1年目からライブに出る事が出来る吉本興業の場合は「劇場所属できていない若手」が地下扱いされる。なお、大阪の若手がしのぎを削る「YES THEATER」は本当になんばグランド花月の地下にある。
吉本以外で常設劇場(Beach V)を持つ数少ない事務所であるソニー・ミュージックアーティスツの場合、事務所ライブの最上位ランク「金のたまご」でも「そこらの地下ライブより地下」と言われる事もあり、やはり定義は曖昧である。
地下芸人は本名をそのまま芸名にしているのではなく、妙に長ったらしかったり、駄洒落だったり、正気かと思うような芸名である事が多く、インパクトある芸名・インパクトある風貌・正統派から逸脱したネタといった要素はTV・雑誌等のメディアでは重要な要素として扱われている。現に地下芸人の中では真摯に漫才に向き合っておりマトモな風貌のヤーレンズは括りに入れられる事が少ない。
ぶっちゃけ売れてない芸人は全て地下芸人と言って差し支えがなく、実に活動する8~9割は地下芸人である。メディアでフィーチャーされたり、地下出身の芸人のトークに名前が挙がる地下芸人はインパクトのある芸風が大半で、取っ掛かりがあるだけ幾分かマシである。
実は地下芸人=ヤバい・前衛的な芸風というのはメディアの作り出した幻想という側面が強く、あまり特徴の無い地下芸人が大半なのが実情である。地下芸人をよく知る野田クリスタルは以下のように語っている。
テレビでは「面白いけども、独自のお笑いをやりすぎて売れていない人のたまり場」っていう風に、ものすごくいい印象で映っている。でも違うんです。(略)
地下芸人の9.9割、つまり地下芸人が1000人いたら、990人が見よう見まねのお笑い。
「見よう見まね漫才」「見よう見まねコント」しかやってないんですよ。
ただ、たまたま10人くらいが変なことをやっていて、僕らが取り上げているのはその10人。
類義語に「カルト芸人」「アングラ芸人」がある。カルト芸人の方が地下芸人より先に使われていた。
2010年にはキャプテン渡辺が「モグラ芸人漫談」という新ネタを始め「モグラ芸人」という言葉も生まれた。モグラ芸人は地下芸人ほどではないが一時期かなり普及してモグラ芸人を冠したライブや地方団体も作られたが2014年には廃れてしまった。
初出は定かではないが、地下芸人という言葉が使われ始めたのは比較的最近のことである。
ただそれに類する言葉があったのは確かで、1970年代のタモリの芸(「思想模写」「マニアックモノマネ」など)は「密室芸」と21世紀の今であれば「地下芸人」と言い換えられるであろう言葉で指し示されていたし、「ラ・ママ新人コント大会」の初期には後述の「一般のヤベェ奴」が当たり前に出演しており、その1人である胎児をネタにしたコントをしていた名古屋在住70代のホームレス「一匹竜」は、主催の渡辺正行や当時の出演者である爆笑問題が折に触れてネタにしており、当時からヤバい芸風の舞台中心の芸人がいたことが伺い知れる。
初期の使用例では2006年12月31日にロフトプラスワン主催で行われたライブ「地下芸人だよ!全員集合」があった。またハリウッドザコシショウなど地下芸人大集合といった趣きのネタ番組「あらびき団」では2007年に出演した鳥居みゆきのキャッチコピーが「カルト系地下芸人」であった。
普及したのは「地下アイドル」の方が速く、AKB48ブームもあり2007年9月12日には2ちゃんねるに「地下アイドル板」が新設されている。また、地下アイドルという言葉はアイドル好きの間でも賛否があり媒体によっては使用が自粛されるが、地下芸人は特にそんな事はない(が前述の通り定義で頻繁に揉めている)。「地下プロレス」は更に前から使用されており、1970年前後には「タイガーマスク」作中に重要な要素として登場している。
広く使用されるようになるキッカケになったのが2009年3月26日に発売されたDVD「大爆笑オンエアできないバトル~地下芸人激ヤバネタ祭~」である。ほぼ同時期に放送された2009年4月7日のリンカーンでは「芸人タワー」というネタ見せ企画で地下芸人特集が行われた。番組では「普段テレビでお目にかかれない芸人『地下芸人』」と括っていた。
違う角度からの登場だと、2011年8月6日に放送された「人志松本のすきなものの話」に登場したハリウッドザコシショウをケンドーコバヤシが「地下プロレスの匂い」と評した。
その後はお笑いマニアの間ではひっそりと使用されていたが、2018年のトム・ブラウンのM-1グランプリ決勝進出を皮切りに地下芸人がコンテストで好成績を残すことが増え、深夜番組が中心ではあるが地下芸人を特集し押し出した番組が増えた。
そして2020年、マヂカルラブリーのM-1優勝により地下芸人が大きく取り上げられ決定的に言葉を普及させた。2021年に至ってはM-1ファイナリストの半数が地下の面子になった挙げ句に錦鯉が優勝するという新たな風が吹いた。
地下ライブとは、主催者にエントリーフィー(1,000~3,000円)を払えば誰でも出ることが可能な小規模なライブである。エントリーライブ・インディーズライブとも。会場のキャパシティは20~110人程度、実際に地下に位置することも多い。観客が10人以下という事は頻繁に起こり、客より演者の方が多いのはお約束。
お金を払えば誰でも出れるという形式上、芸人でもない一般のヤベェ奴が紛れることもある。
基本チケットノルマ制であり、主催者からチケットを自腹で買い取り、それを芸人自ら客に手売りしてマイナスを減らす。中には主催者が自腹を切って賞金を贈呈するライブもあるが、大抵はチケットノルマやエントリーフィーにより儲けは全く無いどころかマイナスになる。芸人の僅かながらの収益はファンのカンパや差し入れで賄われている。近年ではコロナ禍による有料ライブ配信の普及により、地下芸人の中でも表層に近い者は恩恵を受け、それなりに食べられるようになったりもした。
ほか、芸人が会場レンタルの予算を出し合って自主的に開催するライブもあるが同様に小規模である。
地下芸人の単独ライブは小劇場の他に会議室、公民館、カレー屋、自宅などで開催されることもある。単独ライブと言えば聞こえが良いが、観客は10人程度という事も多い。大抵打ち上げでマイナスになる。
なお、ランジャタイは地下時代に自宅で事前に録画した漫才を客として自分ら2人だけで見るライブを開催しスベる、トム・ブラウンはコロナ禍に無観客無配信ライブ(シークレットゲスト有)中止という離れ業を見せた。後に番組の取材でゲストは納言と判明した。
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最終更新:2024/05/29(水) 05:00
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