行動する保守とは、
である。
従来の保守系政治運動は、暴力団系の右翼団体による街宣活動を別とすれば、論文や論説の公表、講演会や勉強会の開催、辻立ち演説などの方法を用いて国民の理解を得ようとする民主的かつ穏健な運動手法が主流だった。
これらの運動形態を手ぬるい「語る保守」「綺麗事保守」と位置づけ、批判対象に対する直接の集団示威行動(デモ・街宣・シュプレヒコール等々)を主要な運動手法に据えたのが「行動する保守」である。
行動する保守に分類される諸勢力ごとに力点を置く主張は異なるが、一口で言うと「『反日』『売国』とみなした個人・団体を社会から放逐すること」を目的としている勢力と位置づけられる。また「嫌韓・嫌朝・嫌中・反在日」「反左派(民主党・社民党・官公労組、朝日新聞・毎日新聞などの各種メディア等)・反創価」という点は全ての団体に共通する中心的主張である。
これらはいわゆるネット右翼の思想と相通ずるところが多く、宣伝や勧誘にネットを多用していることもあって、行動する保守のネット上における存在感は近年急速に高まっている。ニコニコの政治カテゴリにおいても、行動する保守の関係者や支持者が投稿したデモ・街宣の動画がランキング入りすることが多い。
他方で、行動する保守の参加者の多くが、これらの批判対象に強烈な嫌悪・憎悪感情を抱いているうえに、集団行動でタガが外れやすくなっていることもある。最近では活動中の参加者が違法行為に及ぶことも珍しくなく、民事訴訟を起こされたり、逮捕・起訴されるようなケースが増えつつある。
なお公安調査庁では、これらの行動する保守系団体を「排外的主張を掲げ執拗な糾弾活動を展開する右派系グループ」「インターネットを通じて活動への参加を募り、集会やデモ行進など大衆運動の形態をとりながら、右翼的な主張を展開して執拗な抗議活動を行う『右派系グループ』」として把握し、毎年年末に公表している「内外情勢の回顧と展望」の「右翼」カテゴリに掲載するようにするなど警戒を強めている。
警察の呼称に「行動保守」があるが、これは街宣車を多用する旧タイプの右翼勢力に対するものであり、「行動する保守」とは無関係である。「行動する保守」やその支持者(いわゆるネット右翼)は「行動保守」を「愛国心や保守言論のイメージダウンを図る朝鮮人によるヤラセ」と主張し、自分たちと区別化する傾向にあるとされる。
なお「行動保守=朝鮮人」という彼らの主張は元公安警察の菅沼光弘氏が講演で語った内容をソースにしていることが多いが、これは山口組若頭から「ヤクザの6割は被差別部落民、3割は朝鮮人や」と聞いたことをそのまま伝えたもので、実際に収監された暴力団員の統計データで朝鮮人は2%程度だったこともあり、「行動保守=朝鮮人」を裏付ける客観的なソースはないのが実情である。
実際には「行動する保守」系団体の首脳陣には新右翼出身者(外国人犯罪追放運動の瀬戸弘幸、主権回復を目指す会の西村修平など)はもちろん、「行動保守」出身者(元全愛会議副議長でチーム関西の桂田智司など)も多く含まれている。在特会のHPに友好団体として「行動保守」系の千風の会(全愛会議系)や日本青年社(指定暴力団住吉会系)が挙げられていたり、平成23年8月15日の街宣で桜井誠会長が街宣右翼の街宣を取り上げ「最近の右翼も変わってたなと私は思ってる」として支持するなど、「行動する保守」と「行動保守」の関係は決して悪いものではない。
むしろ「行動する保守」は戦後三世代の右翼(反共主義・街宣右翼→民族主義・新右翼→嫌韓主義・ネット右翼)の人材と行動形態を融合させた一種のハイブリッド右翼とでも言うべき境地に達している。
なお「ネット言論」や「ネットで主張しているだけ」というイメージやレッテルを打破するために「行動」しているのだから「行動する保守」をネット右翼と呼ぶことは不適切であるとする見解も見られる。他方でネット右翼的な論調との一致点が多いことから「外に出たネット右翼」「行動するネット右翼」とみなす向きもある。これはネット右翼を「ネット上『だけで』活動する右翼系ネットユーザー」と位置づけるか、「ネット上の特徴的な右翼的論調を支持する者」と位置付けるかの違いが根底にある。
歴史認識問題における日本の正当性を確立し、在日朝鮮人が享受しているとされる「特権」を廃止することを目的とする団体。批判対象は主に在日朝鮮人とその支持団体、および在日朝鮮人に好意的な中道・左派政党とその支持母体。会長は桜井誠、副会長は八木康弘ほか6名。
平成24年(2012年)4月18日時点の公称会員数は11472人と行動する保守系諸団体の中でも最大勢力である。メール会員と特別会員があるがそれぞれの人数は不明。全国の34都道府県に支部を置いており、ネットで参加者を募りながら全国各地でかなりのハイペースで街宣・デモを実施している。マスコミに取り上げられることも多く、最近はニューヨークタイムスで取り上げられたこともあり、名実ともに「行動する保守」の顔と言える。
他団体に比べて人数が多く、少なからぬ武闘派を抱える一方で、政治運動歴の長いベテラン活動家や政治・法曹・報道関係の専門家との繋がりに乏しいという特徴がある。そのため最近は関西支部(チーム関西)を中心に、デモや街宣の際に不法行為に及んでしまい、民事・刑事事件を多数抱えて対応に苦慮する状況が続いている。
詳細は「在日特権を許さない市民の会」を参照。
日本は中国・アメリカ・朝鮮等々になお支配され主権を喪失しているとみなし、彼らとその協力者を排斥することで日本の主権を取り戻すことを目標とする団体。表向きは特に反中運動を主軸としているが、在特会を中心とした他の団体と同様に在日朝鮮人や民主党などを攻撃対象とすることも多い。代表は西村修平。
所属構成員は少ないが、西村代表をはじめベテラン活動家が中心となって、在特会などの他団体と共催で積極的なデモ・街宣を行っている。右派系知識人・地方議員・弁護士とのパイプも在特会よりは太く、関西で民事訴訟・刑事訴訟が相次いだ際にも直ちにベテランの右派弁護士を派遣することができた(在特会は公設弁護士事務所の新人弁護士しか用意できなかった)。
他方で西村代表の気性もあり他団体とトラブルを起こすことも多い。特にチャンネル桜とは断絶中である(西村代表が、ある人物を「老害」と批判し水島社長が激怒したためである)
また在特会とも関西での事件に対する対応を巡って非難の応酬となり、主権側が逮捕された在特会副会長の私生活に立ち入った批判をするに及んだため関係がかなり悪化している。さらに古参会員がクーデターを起こして解散を要求するという事件(下記動画右)も発生するなど、内外のトラブルに見舞われ続けている状態にある。
詳細は「主権回復を目指す会」を参照。
反創価学会・反マスコミを特に重視し、関東地方を中心に活動している団体。「集団ストーカー被害者」とも共闘している。代表は黒田大輔。かつて在特会と友好関係を結んでおり、自身を在特会に次ぐ行動する保守の第二勢力と位置づけていた(ただし黒田代表は「日護会は保守ではなくて護国だ」と主張している)。
変態毎日新聞問題に際してデモ・街宣を開催、2ちゃんねるなどのネット上で知名度を上げた。また東村山市で万引き容疑のかかった市議が転落死したという一連の事件を創価学会の陰謀によるものと主張(警察発表は自殺または事故死)、万引き事件の起きた洋品店や警察関係者・報道関係者を創価学会の手先として激しく糾弾している。この件で黒田代表は複数の民事訴訟を提起され、百数十万円の賠償金支払い義務を負うに至っている(ただし一部は他の被告人との連帯債務)。
また平成23年(2011年)に入って、会員をめぐるある事件が原因で在特会等との関係が急速に悪化、他の会との友好関係は完全に崩壊した。近年は在特会と法廷闘争を繰り広げつつ、同会を「カルトの手先」とみなして退会呼びかけを行うなど全面抗争に突入している。また会を脱退したメンバーとの民事訴訟も複数係属している。
詳細は「日本を護る市民の会」を参照。
在特会・主権の関西支部が中心となって発足させたグループ。基本的にメンバーは在特会か主権のいずれかに所属しているが、チーム関西のみの所属となっている者も多かった。代表は荒巻靖彦。主要幹部として中谷辰一郎、川東大了、西村斉。その他カメラマンの松本修一(bureno)など。
関西人気質なのか行動する保守の中でも突出して武闘派が多く、平成22年(2010年)だけで組織犯罪処罰法違反・威力業務妨害罪・住居侵入罪・器物損壊罪など諸々の罪状でのべ12名の逮捕者、のべ32名の書類送検者を輩出。さらに街宣をかけた朝鮮学校から最大3000万円の損害賠償と街宣差し止めを求める民事訴訟を提起されるなど、法的リスクの管理が大きな課題となっている。
平成24年(2012年)2月にメンバーの詐欺事件を巡るゴタゴタが原因で活動休止を宣言した。その後も個々のメンバーがHPのカレンダーを使ったり寄付金を募ったりしてばらばらに活動していたが、3月27日に在特会会長・桜井誠がニコ生において「あらためて話し合った結果、チーム関西は終わらせる。カレンダーも止めてもらう。寄付金口座も別に作ってもらう」と宣言。また併せて中心人物である川東副会長の「休養」も発表され、名実共に「チーム関西」としての活動は終焉を迎えた。今後は旧チーム関西メンバーが各自の活動を行っていくものと推測される。
詳細は「チーム関西」を参照。
チャンネル桜とは主張・行動に類似するところが多く、支持者も重複していることが多いが、行動する保守の各団体とチャンネル桜自体は実のところあまり仲が良くない。これは両勢力の主要人物同士の関係が悪く、互いを批判しあった経緯があるためと言われる。そのため、チャンネル桜が行動する保守系の活動を番組内で取り上げることはあまりない。
また維新政党・新風出身者は行動する保守の中で少なからぬ比重を占めているが、新風自体は行動する保守と距離を置いている。在特会主催のカルデロンのり子追放デモの翌日に「民族差別を許さない」とする声明を出したり(これに対して行動する保守系の党員から猛反発が起き、離党者も出た)、新風と在特会の役職を兼任しないよう通達を出すなど、行動する保守とは異なる穏健な路線を志向する傾向にある。
構成員が地方議会議員選挙に出馬することがあり、大半は落選しているものの、平成23年(2011年)4月の吹田市議会議員選挙では「吹田維新の会」を名乗って出馬した在特会・チーム関西の柿花道明がトップ当選を果たしている。なお「吹田維新の会」は、吹田市長選で公認候補を当選させるなど統一地方選で大躍進した橋下徹大阪府知事率いる「大阪維新の会」と全く無関係の個人団体であり、「維新詐欺」ではないかと各所で話題となった。
選挙日時 | 選挙名 | 候補者名 | 所属団体 | 得票数 | 順位 | 定数 | 当落 |
H15/04/27 | 中野区議会議員選挙 |
槇泰智 |
政経調査会 |
591 | 57/60 | 42 | 落 |
H19/04/22 | 516 | 52/56 | 42 | 落 | |||
H22/10/17 | 川西市議会議員選挙 | 中曽千鶴子 | チーム関西 | 837 | 33/35 | 26 | 落 |
H23/04/24 | 新宿区議会議員選挙 | 黒田大輔 | 日護会 | 1,093 | 44/62 | 38 | 落 |
吹田市議会議員選挙 | 柿花道明 | 在特会・チーム関西 | 11,443 | 1/47 | 36 | 当 |
上述の通り、柿花道明は「吹田維新の会公認」を名乗ったが、他はすべて無所属での出馬である。
警察沙汰・裁判沙汰が増えたこともあり、「行動する保守」全体のマスコミへの露出も増えているが、報道の際には基本的に「『在日特権を許さない市民の会』などの右派系市民団体」で一括りにされ、在特会以外の団体関係者が含まれる場合でも個々の団体名が挙げられることは少ない。
これは在特会とそれ以外の「行動する保守」系団体とで知名度や組織規模に大きな差があること、活動実態が似通っていること、構成員の重複が見られることなどを考慮したものと思われる。
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最終更新:2024/12/04(水) 04:00
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