国債とは、政府が発行する債券である。金融商品の一種として取り扱われている。
国債とは政府の債務をあらわす有価証券の事で、政府が他国政府・個人・企業・団体などに対してお金を借りる際に発行する。
日本国債の中で最も多く発行されているのは、10年後に元本が償還される固定利付債である。
自国通貨建ての国債と他国通貨建ての国債の2種類がある。日本国債は100%自国通貨建ての国債である。
発行した国債は国家の持つ通貨発行権を行使して償還するか、借り換えをして市中に残し続けるか、税収などによって償還するか、のいずれかになる。通貨発行権を使って償還する方法はインフレ圧力が高く、税収を使って償還する方法はデフレ圧力が高い。
銀行や証券会社で個人向け国債が購入できる他、現在銀行はその資産の多くを国債に割り振っている。またファンドなどでも国債を必要に応じて組み込んでいたりする。
国債そのものが金融商品のひとつという側面を持つ。つまり購入する側から見た場合には資産なのである。
金融商品ではあるが金融庁が監督していない。
日本国債の中で最も多く発行されている10年物固定利付債は、債券市場で売買され、利回りが変動している。この利回りが日本国において代表的な長期金利とされ、民間銀行が自動車・住宅のローンの金利を決めるときの指標となっている。
現在、日本国債(短期含む)の最大の保有主体は日本銀行である。日本銀行は、資本金の55%を日本国政府が出しており、日本政府の子会社である。このため「日銀保有の国債は、日本政府にとって元本や利子の支払いの負担がなく、実質的に債務ではない」と論じられることがある。
その他利払いや償還額、償還期間によっても複数種類に分かれるが原則、日本国債であることにはかわりない。個人向け国債は復興債などを個人が直接購入するものである。
財務省資料「国債等の保有者別内訳(平成29年3月末(速報))」から抜粋。保有率の単位は%。
保有者 | 保有率 | ||
---|---|---|---|
国債 | 国庫短期証券 | 全体 | |
一般政府(除く公的年金) | 0.4 | 0 | 0.4 |
財政投融資 | 0 | 0 | 0 |
日本銀行 | 40.0 | 35.2 | 39.5 |
銀行等 | 22.0 | 10.9 | 20.9 |
生損保等 | 21.0 | 2.0 | 19.0 |
公的年金 | 5.1 | 0 | 4.5 |
年金基金 | 3.2 | 0 | 2.8 |
海外 | 5.8 | 51.9 | 10.8 |
家計 | 1.3 | 0 | 1.2 |
その他 | 1.2 | 0 | 1.1 |
かつては銀行の保有率のみが単一で突出していた時代もあるが、現在は上記のように変化している。
上記数値は端数処理されているため国債保有率の合計値は100.2となる。
年度 | 普通国債残高 | 対GDP比 | 国・地方合計債務残高 | 対GDP比 |
---|---|---|---|---|
1998年(平成10年) | 295兆円 | 56% | 553兆円 | 105% |
2003年(平成15年) | 457兆円 | 88% | 692兆円 | 134% |
2009年(平成21年) | 594兆円 | 121% | 820兆円 | 167% |
2010年(平成22年) | 636兆円 | 127% | 862兆円 | 173% |
2011年(平成23年) | 670兆円 | 136% | 895兆円 | 181% |
2012年(平成24年) | 705兆円 | 143% | 932兆円 | 189% |
2013年(平成25年) | 744兆円 | 147% | 972兆円 | 192% |
2014年(平成26年) | 774兆円 | 149% | 1001兆円 | 193% |
2015年(平成27年) | 805兆円 | 151% | 1033兆円 | 194% |
2016年(平成28年) | 831兆円 | 155% | 1056兆円 | 197% |
2017年(平成29年) | 853兆円 | 156% | 1077兆円 | 197% |
財務省・財政関係パンフレット教材ページの中にある日本の財政関係資料(令和元年6月)から抜粋した。財務省・国債等関係諸資料ページの国債発行額の推移(実績ベース)でも普通国債残高の推移を確認できる。
2013年3月に黒田東彦が日銀総裁に就任してから、量的・質的金融緩和(異次元金融緩和)と称して大規模な買いオペレーションを進めた。
日銀は政府の子会社なので、日銀保有の国債の元本や利子の返済を考えなくてよい。日銀が買いオペをするたびに、政府の債務が減っている。
日銀保有の国債が急激に増加し、国債の総額から日銀保有分を差し引いた額がどんどん減少していることを示す表は以下のようになる。
発表時 | 国債などの総計 | 日銀保有分 | 総計-日銀保有分 | 日銀保有比率 |
---|---|---|---|---|
2010年(平成22年)12月末 | 727兆円 | 58兆円 | 669兆円 | 8.0% |
2011年(平成23年)12月末 | 755兆円 | 67兆円 | 687兆円 | 9.0% |
2013年(平成25年)3月末 | 807兆円 | 93兆円 | 713兆円 | 11.6% |
2014年(平成26年)3月末 | 840兆円 | 156兆円 | 683兆円 | 18.7% |
2015年(平成27年)3月末 | 883兆円 | 224兆円 | 658兆円 | 25.5% |
2016年(平成28年)3月末 | 955兆円 | 317兆円 | 637兆円 | 33.2% |
2016年(平成28年)12月末 | 958兆円 | 370兆円 | 587兆円 | 38.7% |
2017年(平成29年)12月末 | 988兆円 | 427兆円 | 560兆円 | 43.2% |
2018年(平成30年)12月末 | 1013兆円 | 466兆円 | 546兆円 | 46.0% |
財務省の国債出版物のページに、各年度の債務管理リポートが載っている。「保有者層の多様化」のページの「国債の保有者別内訳」を参考にした。
現在において国債発行額がGDP比で約1.6倍と世界最大の発行残高を維持している。
このままでは財政破綻するのではと危惧する声もあるし、日本の国債は自国通貨建てなのでデフォルト(債務不履行)に陥ることは絶対になく財政破綻はあり得ないと論ずる声もある。
2012年12月発足の安倍政権は財政再建という名の緊縮財政を志向しており、新規国債発行が年々減らされている。
2012年(平成24年)度 | 44兆2440億円 |
---|---|
2013年(平成25年)度 | 42兆8510億円 |
2014年(平成26年)度 | 41兆2500億円 |
2015年(平成27年)度 | 36兆8630億円 |
2016年(平成28年)度 | 34兆4320億円 |
2017年(平成29年)度 | 34兆3698億円 |
2018年(平成30年)度 | 33兆6922億円 |
2019年(平成31年)度 | 32兆6605億円 |
財務省・国債等関係諸資料のページの「国債発行額の推移(当初ベース)」を参考にした。
「国債を発行して民間銀行に買わせると、国債の金額だけ民間銀行の預金額が減っていく」というイメージがあるが、実際はそうなっていない。
「国債を発行するたびに、民間銀行の預金額が増えていく」というのが本当の姿になっている。
民間銀行が国債を購入する流れは以下のようになっている。
1.~5.を見てもわかるように、ある程度の日銀当座預金があれば、その日銀当座預金を全く減らさずに日本国債をどんどん買い続けることができる。「日本国政府が国債を発行しまくると、民間銀行は預金者から集めた預金をどんどん減らすことになる」という考え方は間違いである。実際はその逆で、日本国政府が国債を発行して公共事業に使うたびに、それと同額だけ民間銀行の預金額が増加するし、世の中の通貨流通量(マネーストック)が増加してインフレ圧力がかかる。
1.と5.を比べると、ニコニコ銀行は20億円だけ預金額が増えたし、20億円の国債を資産として保有することになった。しかも日銀当座預金を減らしていない。ニコニコ銀行が保有する20億円の国債はニコニコ銀行にとって20億円分の資産なので、財務状況が好転したことを意味し、ニコニコ銀行の会社としての評価が上がる。ニコニコ銀行の経営陣は大喜びとなる。
ニコニコ銀行にとって、国債とは、日本国政府からの素敵な贈り物と言える。
2019年6月3日の参議院決算委員会において、西田昌司参議院議員が、日本銀行の加藤毅企画局長に対して質問し、加藤局長は「政府が国債を発行し、その資金を国内で支出することにより、民間銀行の銀行預金が増加する」と答弁している。西田議員の質問のシーンはこちら、加藤局長の答弁のシーンはこちら。
2019年5月23日の参議院財政金融委員会において、西田昌司参議院議員が、日本銀行の雨宮正佳副総裁に対して質問し、雨宮副総裁は「国債発行による財政支出が預金通貨の創造につながるかどうかは、国債の最終的な消化形態によっても変わってくるわけでありまして・・・(中略)・・・銀行が保有している分について申し上げますと、それは信用創造を通じて預金が増加するという格好になります」と答弁している。雨宮副総裁の答弁のシーンはこちら。
こうした国会答弁の議事録のPDFファイルは、このページで検索するとすぐに見つかる。
ちなみに、「日本国政府が国債を発行しまくると、民間銀行は預金者から集めた預金をどんどん減らすことになる」という考え方から、クラウディングアウトという理論が導かれる。そして、その理論からプライマリーバランス黒字化方針というものが生まれる。
国債発行額を減らしてプライマリーバランス黒字化を達成すると、その直後に不況が訪れる・・・という法則がある。それについては、プライマリーバランスの記事を参照のこと。
国債には期日というものがあり、満期になると元本を償還しなければならない。このため、政府にとっての負債といえる。
満期が近づいてくる国債をどのように扱うかは、大きく分けて3つの方法がある。
1つは、国債の貨幣化や買いオペレーションである。前者は日本国政府が無償で日銀当座預金を手に入れて、その日銀当座預金で国債を償還する。後者は日銀が日銀当座預金を発行して民間金融機関から国債を買い上げる。どちらも、国家の持つ通貨発行権を行使している。いずれの場合でも、国債を持っていた民間金融機関は、日銀当座預金を増やすことになる。日銀当座預金が増えると、銀行にとっては融資可能額が大きく引き上げられることになり、インフレ圧力がかかりやすい状態になる(信用創造の記事でそのことが解説されている)。デフレに苦しんでいるときはこの方策を採用することになる。インフレで苦しんでいる状況では、あまりこの方策を採用したくないと言える。
1つは、国債の借り換えである。償還期日が近づく国債Aと全く同じ金額の国債Bを発行して、日本国政府の日銀当座預金を増やしておく。国債Aが満期になったら、日銀当座預金を支払って償還する。国債Aが国債Bに姿を変えただけで、国債が市中に存在し続けることに変わりがなく、現状維持の方策だといえる。市中の国債に対しては利子を支払う義務があり、日本国政府にとっては利払いをどうするのか考え続けねばならない。逆に言うと、日本政府は少額の利子を払いつづけるだけで巨額のお金を調達できる。インフレ圧力もデフレ圧力もあまりかからないので、インフレ率が2~3%でとてもちょうど良い状態の時は、この方策を採用することになる。
最後の1つは、税金を徴収して、日本国政府の日銀当座預金を増やし、その日銀当座預金で国債を償還するものである。必要に応じて税率を上げて、税収を増やす。税金というのは市中に出回っているお金(マネーストック)を吸い上げる行為であり、デフレ圧力が非常に強いものである。インフレで苦しんでいるときはこの方策を採用することになる。デフレに苦しんでいる状況では、あまりこの方策を採用すべきではないと言える。
日本政府の国債発行額が0、民間銀行の預金総額が0と仮定する。その状況で、日本政府が100兆円の国債を発行したらどうなるか。
先述のように、政府が国債を発行すると民間銀行の預金が増え、世の中に出回るお金(マネーストック)が増える。政府が100兆円の国債を発行すると、民間の企業・家計は100兆円の銀行預金を持つことになる。
国債発行額=民間の銀行預金額というのが、一番最初の姿である。
100兆円の銀行預金が与えられたので好景気になった。民間の企業・家計が旺盛に消費をして需要が増えると、民間銀行は貸し出しを盛んに行い、信用創造で民間の預金額がどんどん増える。
国債発行額<民間の銀行預金額になっていく。
あまりにも好景気が進み、信用創造を繰り返しすぎて民間の預金額が増えすぎると過度のインフレになる。過度のインフレになったら政府は徴税を強めて、民間の銀行預金を吸い上げて、インフレを押さえ込みにかかる。
人々が暮らしやすくすべく、好景気を引き起こすことと徴税をバランスよく行い、『国債発行額<民間の銀行預金額』の程度を適切に保つのは、政府と日本銀行の使命といえる。
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最終更新:2024/05/04(土) 23:00
最終更新:2024/05/04(土) 23:00
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