『スター・ウォーズ 新反乱軍』(Star Wars: The New Rebellion)とは、『スター・ウォーズ』サーガの小説である。
「レジェンズ」作品群に属する。単巻。著者はクリスティン・キャサリン・ラッシュ。
なお、当記事における人名・役職名など固有名詞の日本語表記は、原則的に本書邦訳に基づく。
概要
ルーク・スカイウォーカーをつけ狙い反乱を起こす新たな暗黒面の敵クェラーとの戦いを通し、いまや帝国を圧倒して銀河を代表する政府となった新共和国の理想を描く長編小説作品。
原著は長篇小説単巻(ペーパーバック)で1996年刊行。邦訳にあたっては文庫版上下巻構成で1998年に竹書房より出版された。日本語訳は富永和子による。邦訳本表紙イラストはドリュー・ストルーザンによる原書のものを使用した。
「スター・ウォーズ」サーガの大人向け邦訳小説は、本作を最後に竹書房での刊行を離れ、ソニー・マガジンズでの刊行へと移ることとなる(2012年に一時的に竹書房に戻る)。
ストーリー
皇帝を斃したエンドアの戦いから13年、銀河首都コルスカントの上院議場で爆破テロが発生し、多くの議員が命を落とす。事件の影にジェダイの道を去ったかつての弟子ブラキスと暗黒面の存在を感じたルーク・スカイウォーカーは、ブラキスを探し求めて旅立つ。いっぽう旧知の密輸業者ヤリルから助けを求められていたハン・ソロは、事件との関係を直感して密輸業者の巣窟スマグラーズ・ランに乗り込んだ。
新共和国を率いる主席レイア・オーガナ・ソロは、旧帝国人の議員資格を認めた上院に以前から危機感を覚えていたが、テロでの欠員を埋めるため緊急の選挙を経た上院では、案の定かつて帝国を支持していた人々が多数派となっていた。かれら旧帝国人の議員たちは、死体となって見つかったヤリルが遺していたのと同じ不可解な通信を根拠にハンをテロの関係者と糾弾し、レイアを陥れようとする。
ルークはテルティでドロイド工場を経営するブラキスと対決し、アルメニアに行けと示唆されるが、到着直前にXウイングが爆発する。これはアルメニアの支配者、暗黒面の使い手クェラーが新共和国に仕掛けた工作だった。さらにクェラーはレイアと交信し、無数の市民、そしてレイアの家族をも殺すと脅して新共和国の支配権を明け渡すよう要求した。直後、レイアはフォースから巨大な死の衝撃を感じ取る。この敵は、ひとつの星、100万もの人々をそっくり一時に殺すことができる力を持っているのだ……。
以下、中盤以降はネタバレ回避のため格納。
クェラーが隠す武器は、ブラキスの工場が生産したドロイドに仕込まれた爆弾だった。これが上院爆破テロの道具であり、命令ひとつで爆発して無数の人々を殺す「エレガントな」方法でもあった。クェラーの思惑を妨げるべくレイアは即時辞職し、主席の座をモン・モスマに譲って兄の救出に向かう。ハンも密輸業者が盗んできたランのドロイドが爆発したことでクェラーの企みを知り、密輸業者の大物タロン・カルデの協力で周囲のフォースを遮る生物イサラミリを得るとアルメニアへと急行した。
レイアと合流し、クェラーの圧倒的な力と対峙したルークは、自分の苦しみが相手の暗黒面の力を強めていく悪循環に気づく。彼はベン・ケノービの最期を思い起こした。自らをフォースにゆだね、霊体となってレイアを導くのだ。だが直後にイサラミリを連れたハンが到着し、彼らはフォースから遮られてしまう。事態に混乱するクェラーは、最後の切り札として全ドロイドの爆破命令を送信する。
だがその頃、コルスカントに残されたR2-D2とC-3POが、爆破テロの原因がドロイドだと発見してテルティの工場に潜入していた。2体は爆破の遠隔命令を実行寸前に上書きし、銀河中で無数のドロイドが爆発する事態はかろうじて阻止された。そしてレイアは、それが暗黒面に近づく行為だと感じながらも、クェラーを射殺して全てを終わらせる。ブラキスもまた、テルティから逃げ去った。
事の顛末が知れ渡ると、旧帝国人の議員たちもレイアを支持するほかなくなり、不信任投票は回避された。とはいえこれからの新共和国は、多様な意見を持つ人々がともに働く場所になる。主席に復帰するレイアが迎える新たな会期は、統一と尊敬が基調となるだろう。
アルメニアの蜂起
アウター・リムの辺境にあるアルメニアン星系の惑星アルメニアが新共和国に対して起こした反乱。暗黒面のフォースの使い手クェラーが指導する。
惑星アルメニアはもともとジェイハー政権の支配を受けており、反乱同盟軍と新共和国を支持していた。本作より7年前(エンドアの戦いの5年後)のスローン戦役のころ、ジェイハーは住民の大虐殺を引き起こしたが、皇帝にも無視されていたような辺境での出来事でもあり、新共和国は事態を見過ごし、ジェイハー政権を合法的な政府として扱い続けた。
そこに現れたクェラーは、ジェイハーの独裁を倒し、アルメニアを征服して自ら君臨した。彼は遺棄された帝国軍の装備を買い集め、ヴィクトリー級スター・デストロイヤーやTIEファイターなど、往時の帝国軍を思わせる有力な艦隊を揃えた。そして豊かな衛星ピディアの人々を皆殺しにし、新共和国への反乱の狼煙を上げたのである。
その他組織・集団等
新共和国
皇帝を斃したエンドアの戦いの後、反乱同盟軍が樹立した新たな国家。首都星はコルスカント(コルサント)。上院(元老院)の支持のもと、主席(元首)が率いる政府によって統治される。
幾度とない帝国軍残党との戦いを経て、旧共和国の再建として確固たる政体を確立した。帝国軍の衰退が著しいなか、加盟惑星を広げ、銀河を代表する新たな政府へと成長しつつある。物語当時の主席は第二代、レイア・オーガナ・ソロ。
スマグラーズ・ラン
小惑星帯に位置する密輸業者の隠れ家。「スキップ」と呼ばれる無数の小惑星基地で成り立っている。進入するにも複雑な経路を辿らなくてはならず、堅固な防御が施されていることから、昔から密輸業者や賞金稼ぎといったならず者がたむろしていた。
若い頃のハン・ソロやランド・カルリシアンも、このランで密輸業者として活動していた。しかしどうやら、最近のランではあふれんばかりの金がうなり、雰囲気もまったく変わってしまっているようだ。
登場人物
新共和国
- ルーク・スカイウォーカー Luke Skywalker
- 人間・男性。新たなジェダイ騎士団を率いるジェダイ・マスター。
かつて去った弟子ブラキスを追い、その示唆でアルメニアへと向かう。帝国に育てられたブラキスを挫折から救い出せなかったことを悔やみ、彼がいつか光に戻ると信じている。 - レイア・オーガナ・ソロ Leia Organa Solo
- 人間・女性。ハン・ソロの妻で三児の母。新共和国主席。
新共和国を精力的に指導するが、議場でのテロがもたらした旧帝国人の勢力拡大のため、またも政治的危地に陥る。銀河を導く政治家の仕事と愛する家族との板挟みとなり、思い悩んでいる。 - ハン・ソロ Han Solo
- 人間・男性。レイアの夫で三児の父。<ミレニアム・ファルコン>船長。
かつての同業者と爆破テロとの関係を直感し、相棒チューバッカとともにスマグラーズ・ランに乗り込み、昔の友人と邂逅する。愛する家族が幾度も命の危機にさらされ、無力感と焦燥に駆られる。 - ランド・カルリシアン Lando Calrissian
- 人間・男性。もと密輸業者の実業家。宇宙ヨット<レディ・ラック>船長。
かつて犯罪王ナンドリースンの恨みを買い、スマグラーズ・ランには近寄らないと公言している。しかし古い恩人ヤリルの遺体を発見してハンの危機を察し、彼を救うためランに赴くことを決意する。 - ウェッジ・アンティルス Wedge Antilles
- 人間・男性。新共和国の将軍。旗艦はモン・カラマリ巡航艦<ヤヴィン>。
ヤヴィンやエンドアで活躍した名パイロットで、今は艦隊を率いる。陳腐化したXウイングの安価で有効な改良策を実行に移すが、その影には全てのXウイングを危険に晒す大きな陰謀が隠されていた。 - モン・モスマ Mon Mothma
- 人間・女性。シャンドリラ出身。かつての反乱同盟軍の指導者。
レイアの盟友で新共和国の初代主席を務めたが、ダーラ戦役の際の病で公職を退き、レイアの相談役的な立場となっている。新共和国の未来のため、旧帝国人との融和は必要なことだとレイアを諭す。 - コール・ファードリーマー Cole Fardreamer
- 人間・男性。コルスカントの整備ベイに勤めるごく若い整備士。タトゥイーン出身。
ルークに改良のため分解されてしまった愛機の再組み立てを頼まれる。気難しいR2-D2と組んで作業にとりかかるが、そこからクェラーの事件に関わる厄介事に巻き込まれていくこととなる。 - R2-D2 Artoo-Detoo
- ルークの所有する宇宙船乗組用(アストロメク)ドロイド。C-3POの長年の相棒。
改良Xウイングがドロイド不要となったせいで居場所をなくし、コルスカントに留まる。コールによる再組み立てを口やかましく監督し、さらにはC-3POを従え爆破テロの調査に乗り出す。 - C-3PO See-Threepio
- レイアの所有する通訳兼式典用(プロトコル)ドロイド。R2-D2の長年の相棒。
わりと悲観的な気があり、今回なにかと独断で動き回るR2に(いつものことながら)叱言を言う係。しかし結局はR2に引きずり回され、愚痴をこぼしながらも爆破テロの調査に付き合う。
新共和国上院
- ミードー Meido
- 男性。上院議員(アディン選出)。アディンはかつて帝国の拠点だった。
レイアに反対する旧帝国系議員の代表格で、テロで欠員が生じた閣内評議会のメンバーに選出される。爆破テロの議員側調査チームのまとめ役となり、テロの首謀者はレイアだと強引に主張する。 - ボースク・フェイリャ Borsk Fey'lya
- ボサン・男性。上院議員。反乱同盟軍以来の古株で、陰謀好きのボサンを代表する権勢政治家。
シリーズを通したレイアの政敵であり、後ろ暗い政治的駆け引きを好む厄介な存在。ただ今回は旧帝国系議員が目下の問題であるためか、おとなしいどころか比較的レイアに好意的ですらある。
密輸業者たち
- ヤリル Jarril
- 男性。スマグラーズ・ランに居着く密輸業者でハンの旧知。貨物船<スパイシー・レディ>船長。
ランで起きている異様な事態の調査にハンの助けを求めるが、後に宇宙で遺体となってランドに発見される。彼の船には、上院でのテロにハンが関わっているかのようなメッセージが残されていた。 - セラース Seluss
- サラスト人(サラスタン)・男性。スマグラーズ・ランの密輸業者でヤリルの相棒。
ヤリルの不在を誤魔化すためランに残っていた。ランにやってきたハンに食って掛かるような様子を見せるが、実際にはヤリルからの言伝でハンの協力を求めていた。 - シニュイー・アナ・ブルー Sinewy Ana Blue
- 人間・女性。スマグラーズ・ランの密輸業者。
ハンの古馴染みで、彼が若いころから仕事仲間だった美しい女性。密輸業者らしく打算的かつ日和見的な人物ではあるが、今や密輸業者に警戒される側となったハンにも比較的穏健に接する。 - ウィニ Wynni
- ウーキー・女性。スマグラーズ・ランに居着く密輸業者でハンとチューバッカの旧知。
家族や「命の借り」を重んじず密輸業者を続ける掟破りのウーキー。そのうえ既婚者であるチューバッカに気がありしょっちゅう誘惑しようとするため、チューバッカには嫌われている。 - ナンドリースン Nandreeson
- グロッタルフィブ・男性。スマグラーズ・ランに居を構える犯罪王。
水中に適応し、鼻から火を吹き、強靭な外皮を持つ爬虫類種族。かつて彼の宝を盗み出したランドを強く恨んでおり、いつかランドを捕らえてなぶり殺そうと手ぐすね引いている。 - タロン・カルデ Talon Karrde
- 人間・男性。密輸業者かつ情報ブローカーで、<ワイルド・カルデ>の船長。
多くの部下と独立した勢力を持ち、密輸業者同盟の創設者でもある密輸業者界の大立者で、新共和国に好意的。最近のスマグラーズ・ランのきな臭さに感づいており、関与しないつもりでいる。 - マラ・ジェイド Mara Jade
- 人間・女性。カルデの副官を務める美女。かつては皇帝の秘密エージェント。
カルデの部下という立場ながらフォースの使い手でもあり、密輸業者とジェダイの双方に身をおく。立場柄ハンやランドと協力することも多いほか、ジェダイとしてルークとも縁がある。
クェラーとその関係者
- クェラー Kueller
- 人間・男性。暗黒面の使い手。恐ろしい髑髏の仮面を付けている。デザインがあまりにも微妙
惑星アルメニアの独裁者。旧敵を徹底的に叩き潰さない新共和国の「弱さ」を憎悪し、強権で宇宙を支配するため新共和国に反乱を起こす。その正体はルークの堕ちた弟子ドルフであり、自身がフォースで最も強い者として君臨するため、宇宙最強のジェダイであるルークを打ち破ろうとする。 - ブラキス Brakiss
- 人間・男性。もとジェダイ。テルティのドロイド工場を経営している。
かつて帝国軍に暗黒面の使い手として育てられ、ルークの作った新オーダーに潜入するも、改心して彼の弟子となった。しかし与えられた試練に失敗して挫折し、ルークのもとを去る。その後はクェラーに従っているが、彼の暗黒面の力を恐れ、自身の取るべき道に苦悩する。 - フェモン Femon
- 人間・女性。クェラーの腹心。家族を帝国の古い自動兵器<パルパタインの目>で失っている。
帝国軍の残党を放置している新共和国に反発し、銀河の鉄拳支配を標榜するクェラーに従っている。しかし彼の迂遠なやり方を新共和国と同種の弱さと感じ、取って代わろうとして逆に殺される。
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