チアリング上映とは、主にサイリウム(ケミカルライト・ペンライト)を持って、歓声を上げ、声援を送りながら映画を見てライブ的に楽しむ、観客参加型の特殊な映画上映スタイルである。
映画によっては「応援上映」「絶叫上映」「発声可能上映」「ライブスタイル上映」「マサラ上映」とも呼ばれる。
概要
映画館で見る映画は本来であれば座って静かに鑑賞するのがマナーであり一般的であるが、チアリング上映に該当する上映回においては映画鑑賞において下記の事柄を行っても良い。
特にアイドルアニメの映画作品において通常との上映とは別に、チアリング上映が設けられる事が顕著である。これは、劇中内でライブシーンが盛り込まれる事が殆どであるため、そのライブシーンでサイリウムを持ち声援を送りながら映画を見ることができ、通常の上映とは違い、ライブに参加するような映画鑑賞体験ができる。
「チアリング上映」という呼称は『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』が発祥であり、他の作品においては別の呼称になってるのが殆どだが、サイリウムを持って声援を送りながら映画を見るスタイル・上映回の総称として「チアリング上映」という言葉が映画を見るユーザ間で使われている。
歴史
一般的に日本での映画鑑賞は「静かにスクリーンをじっくり見ながら物語を楽しむ」というものだが、世界的に見れば、歓声を上げながら見ることもある。特に顕著なのがインド映画で、歓声どころかみんなで歌ったり踊ったり果ては花吹雪が飛び交ったりクラッカーが鳴ったりもする。そんなスタイルもあったりするわけだ。
とはいえ、日本でも歌舞伎のように大向こうから掛け声が飛ぶなど、昔からこういった文化もないわけではない。映画でもプリキュアシリーズのように来場した子供にミラクルライトを配布し、応援してもらって映画を楽しんでもらうという施策が行われている。
そんな中ファンレベルで劇場を借りて『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』や『映画 ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』などをわいわい楽しみながら鑑賞する「絶叫上映会」というイベントが行われ始める。また、時期的にもコンサート会場でのライブや劇場でのミュージカルの模様を映画館で生中継する「ライブビューイング」も一般化するようになった。
そうした流れで、立川市のシネマシティが『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』を実際のライブを見るように歓声を上げながら鑑賞してもらう「ライブスタイル上映」を実施、さらに『映画けいおん!』『劇場版マクロスF』ではサイリウムの持ち込みやコスプレも可能にした「絶叫上映」として開催し、好評を得た。こうした流れは塚口サンサン劇場など他の映画館にも波及し、前述のインド映画でも「マサラ上映」としてインド的な鑑賞イベントを行っている。
そして、マスコミに大々的に取り上げられるようになったのは『KING OF PRISM by Pretty Rhythm(キンプリ)』が公式的に行った「応援上映」である。応援上映をする為にあえて台詞の後に間を開けており、観客がそれに掛け合いやツッコミ、合いの手をいれるなど、さながらライブコンサート的に行った事で当初は観客が来なかったところ、口コミで話題が広がり、急激に観客を増やし異例のロングラン上映となった。これに呼応する形で他の映画でも公式に応援上映を開催する事例が増えている。
こうして見てみると、上映される作品はアニメや音楽をテーマにした(取り入れた)物が多い。インド映画も歌い踊るシーンがあるから最適ではあるし、アニメでも上述以外に『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』『ラブライブ!The School Idol Movie』『アイカツ!』『プリパラ』などやはり音楽やアイドル系メインとなっている。とはいえそういう音楽系が中心というわけでなく、アニメでも『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』が「大喝采上映」と称して上映を行った事例もあるし、実写でも『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のようなアクション作品や『貞子vs伽椰子』などのホラー作品でも絶叫上映が行われている。
また、ある意味話題になったのは『シン・ゴジラ』での「発声可能上映」で、これは庵野秀明総監督とは大学時代から浅からぬ関係を持つ漫画家の島本和彦氏が「ウンチク言っていい、語っていい、崩れ落ちていい上映時間を設けてくれるなら最前列で俺が見本を見せてやりたい」と発言したのを庵野氏が聞きつけ、東宝に承諾をとった上で実施ししてしまった物である。あまりの前評判の高さにチケットも即完売。当日は観客が大いに歓声を上げ、サイリウムを振り、上映後の挨拶では島本氏だけでなく、サプライズで庵野氏も登場するなど、大盛況に終わった。
2020年に新型コロナウイルスが猛威を振るって以降、映画鑑賞に制限が設けられ、ライブビューイングも含め応援上映はトーンダウンしたものの、後に声が出せない代わりにパソコンやスマートフォンでコメントを打ち込んでスクリーンに表示させる、以前からあったペンライトを振る、拍手や専用の楽器を鳴らすといった手法での応援上映が行われるようになった。2023年に制限が緩和されてからは声出しの応援上映も復活するようになっている。
チアリング上映の傾向と注意点
チアリング上映はこの様な事から特殊な上映になるため、まず映画を映画として静かに鑑賞する人には向かないため、注意が必要である。1回目の映画鑑賞(初見)でチアリング上映回もなるべく避ける事が望ましい。現に『遊☆戯☆王』の時にはそんな上映とも知らずに映画館に見に行ったらこれだったため(しかもそういうスタイルだというアナウンスもなかったという)、その観客と映画館側とでトラブルになった事例もある。
チアリング上映では上映中にどのタイミングでも声を出すことが認められている関係上、ライブシーン以外でも作品内の場面描写に対して観客がボケやツッコミを入れたりする場面(大喜利大会)も多く見られる。時としてイラっとする観客の発言もあるかもしれないが、ルール違反ではないため、これもチアリング上映の醍醐味と考えるのが良いだろう。ただ、勢い余って気に入らないキャラクターを罵倒するのは、同じ場内にそのキャラが好きな人がいることも考えると、トラブルを避ける意味でも控えておいた方がいいだろう。
一方で、上映中は何でもやってもいいという訳ではないので、ある程度の節度を持って鑑賞する事が求められる。声援は大丈夫だが、笛やクラッカーなどの音の鳴る物はルール上禁止されている場合が多い。コスプレが可能な上映もあるが、こちらも劇場が定めたルールに従ってコスプレするようにしたい(少なくとも衣装を着てきたまま来場するのはよろしくない)。
また、勢い余って座席を破壊するなど、迷惑行為に及んだ例もあり、この場合は弁償問題になるだけでなく、その映画館でこうした上映が今後行われなくなってしまう。一般的な常識を持った上で上映を楽しみましょう。
チアリング上映・応援上映を公式的に行った作品
映画公開日は作品の映画公開日を指すものであり、チアリング上映を行った日付ではありません。
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チアリング上映に参加する際にはあらかじめ市販のサイリウム・ペンライトを持って参加する事が望ましい。
ライブと違い長さや大きさ等は特に制限が無い場合が多いが、常識的な範囲に抑えましょう。
関連項目
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