概要
タイトルは"死者が黄泉から帰って来る"[1]という意味で、熊本市およびその周辺エリアで亡くなった人が大量に蘇ってくるという超常現象と、それにより生じた人々の関わり合いを描く群像劇である。もともと1999年4月から約1年間「熊本日日新聞」の夕刊に連載されたもので、そのため作中には熊本県内に実在する地名や学校名などが数多く登場している(なお、作者の梶尾も熊本生まれ熊本育ち熊本在住である)。
単行本は2000年10月に新潮社から刊行。2002年11月に新潮文庫で文庫化された。単行本化の際に、新聞連載時にはなかった超常現象に関するSF的な説明の描写が追加されている。文庫版も一時期は品切れになっていたが、後述の続編刊行時にカバーを新しくして増刷され、現在は新品で入手可能。
なお作品の後半では「益城町下を走る布田川活断層の熊本市寄りの地域」で「震度7の揺れ」を観測する巨大地震が描かれている。2016年に発生した熊本地震[2]の際、この設定があまりに酷似していることが話題となり、梶尾も親しい人から「予知だったのでは」と言われたことがあるという。その後、梶尾はこの地震を機に続編『黄泉がえりagain』を執筆。こちらも熊本日日新聞夕刊において、2017年7月から約1年連載され、2019年2月に新潮文庫から文庫オリジナルで刊行された。
ほか、スピンオフ短編として「黄泉びと知らず」があり、同題の短編集(新潮文庫刊)に収録されている。「黄泉びと知らず」は2004年に第35回星雲賞・日本短編部門を受賞。収録短編集は品切れだが、電子書籍で読める。
劇場映画版は2003年に公開され、興行収入30億円の大ヒットを記録した。原作小説とはストーリーが全く異なっており、どちらかといえばSFというより恋愛ファンタジー的な作品になっている。RUI(柴咲コウ)の主題歌「月のしずく」を覚えているという方も多いのではないだろうか。
あらすじ・登場人物
上記の通り映画と小説のストーリーが別物であるため、それぞれ分けて記載する。
小説
1999年5月、熊本市で火の玉らしきものの目撃情報が肥之国日報[3]に寄せられ、また、熊本地方を震源とする震度1の地震が観測された。この後、死んだはずの人が熊本市内で次々に蘇るという超常現象が起き、新聞記者の川田はこの現象について取材をしていくことになる。
- 川田平太
肥之国日報社会部記者。身なりは汚いが記者としては有能で、「黄泉がえり現象」を社内の誰よりも先につかみ取材する。通称「カワヘイ」。 - 児島雅人
鮒塚万盛堂総務課長。母・妻・娘との4人暮らしで、川田は小学校の同級生。勤務先で「今は亡き先代社長を見た」と女子社員たちが噂話をしていた日、27年前に急逝した父親・雅継が黄泉がえる。 - 中岡秀哉
鮒塚万盛堂営業見習い。30歳にして既に職歴が8社あり、どこも長続きしていない。そんな彼の前に、24年前に海の事故で亡くなった兄・優一が黄泉がえる。 - 相楽玲子
古書店店員。4年前に夫の周平を飲酒運転事故で失い、それ以降は息子を頑張って1人で育てている。中岡に交際を申し込まれた翌日、周平が黄泉がえる。 - 生田弥生
アイドル歌手で愛称は「マーチン」。熊本市民会館でのコンサート中に倒れ、そのまま帰らぬ人となった。彼女が発見されたことを機に、熊本での黄泉がえりがワイドショーなどで全国区の注目を集めるようになる。 - 三池義信
中九州警備に勤務する警備員でマーチンのファン。黄泉がえった彼女の第一発見者となり、交流を持つようになる。 - 山田克則
いじめを苦に自殺した中学生。黄泉がった後、本人の希望で以前と同じクラスに復帰する。 - 六本松三男
相楽周平を死亡させた交通事故を引き起こした本人。その後本人の私生活は完全に崩壊、再就職もままならないことからいつしか周平を逆恨みするようになっていた。
小説・続編
熊本地震から1年3ヶ月が経った2017年7月、熊本で再び黄泉がえり現象が起きる。17年前の黄泉がえり現象を新聞記者として取材し、その後フリーライターとなった川田平太のもとにも、2年前に逝去した母親が黄泉がえってきた。その後川田は17年前に黄泉がえった相楽周平が失踪したことを知り、その娘であるいずみと出会う。
- 川田平太
フリーライター。前回の黄泉がえり現象を本にまとめるべく10年前独立したが、他の業務に忙殺されその目的は達成されていない。そんな中、2年前に死去した母親が黄泉がえる。 - 山口美衣子
川田が熊本市役所でたまたまであった美女。川田とは5歳下のはずだが、前回の黄泉がえり期間中に病死、17年ぶりに黄泉がえったため見た目はそれ以上に若い。 - 相楽周平
17年前の黄泉がえり現象の生き残りで、そのとき中岡優一が立ち上げた企業「オフィスNA・SA」の社長。2016年の熊本地震直前に「また、布田川断層に何かを感じる」と言い残して姿を消す。 - 相楽玲子
周平の妻で、彼の失踪後にオフィスNA・SAの社長に就任。川田に夫のことを相談する。 - 相楽翔
周平と玲子の息子でオフィスNA・SAの取締役兼営業部長。 - 相楽いずみ
周平と玲子の娘で女子高生。周平が黄泉がえったあとに生まれており、特殊能力を持っている。 - 高田秋
いずみの幼馴染で男子高校生。いずみから信頼されており行動を共にする。 - 加藤清正
熊本藩初代藩主であり、熊本城を築城した郷土の偉人。清正廟のある本妙寺で夏祭りが行われていた日、約400年ぶりに黄泉がえる。 - 蒼木克史
熊本県立図書館の学芸員。黄泉がえった清正の第一発見者であり、彼から厚い信頼を得る。 - 吉田夕帆
薬剤師。夫の裕生は2011年に仙台市へ出張していた際、東日本大震災の津波に巻き込まれ行方不明になった。息子の裕馬を女手一つで育てている。 - 菊千代
裕馬が御船町恐竜博物館でもらってきた化石から黄泉がえったミフネリュウ。名前は裕生が好きだった映画の登場人物に由来し、「あれもミフネだったから」という理由で夕帆が命名した。
映画
熊本県阿蘇山周辺で死んだ人が蘇るという超常現象が起こる。厚生労働省職員の川田平太は、自分の生まれ故郷でもある現地に派遣され、現象について調査を進める。やがて山中で巨大なクレーターが発見され、また現象に対する研究も進められていく。
- 川田平太(演:草彅剛)
厚生労働省厚生科学課に勤務する真面目な公務員。東京在住だが黄泉がえり現象調査のため地元の阿蘇に向かい、幼馴染の葵と再会する。 - 橘葵(演:竹内結子)
川田の幼馴染で地元の役所に勤務。婚約者の俊介(演:伊勢谷友介)を海難事故で亡くし、婚約者の死を受け入れられずにいる。 - 斉藤幸子(演:伊東美咲)
聾学校の教師。聴覚障碍者の母が自分を出産した後に他界したことを、ずっと気に病んでいた。 - 斉藤医師(演:田中邦衛)
葵が俊介の死後にカウンセリングを受けている医者で、幸子の父親。 - 玲子(演:石田ゆり子)
夫である周平(演:哀川翔)の死後、幼い娘を抱えながらラーメン屋の経営をしている女性。 - 中島英也(演:山本圭壱)
玲子のラーメン屋のアルバイトで彼女を慕っている。彼の前に病死した兄の優一(演:東新良和)が黄泉がえる。 - 山田克典(演:市原隼人)
いじめを苦に自殺した中学生。クラスメイトだった直美(演:長澤まさみ)の強い思いにより、葬儀の最中に黄泉がえる。 - RUI(演:柴咲コウ)
歌手。ここ2年間音楽活動を一切していなかったことから、巷では死亡説が囁かれている。
関連動画
関連項目
脚注
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
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